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池部良主演、本多猪四郎監督『妖星ゴラス』(東宝映画、1962年) その3

訂正というほどでもないのですが、舌足らずだったところを補っておきます。前回、『サブウェイ・パニック』の邦題のつけ方について書きましたが、内容を批判したわけではありません。

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いや、じっさいのところ、映画も面白かったし(ウォルター・マソーよろし)、原作は映画以上に感心しました。ひどい邦題なので、「ケッ、『ポセイドン・アドベンチャー』の焼き直しか」なんて思い、危うく見逃しそうになりました。

成瀬巳喜男は、映画というのは映画館にかかっているその数週間だけの命のものだ、といったそうですが、現代のように「資産」とされる時代になると、その場かぎりの使い捨てタイトルでいい、という考え方は時代遅れです。人目を引く努力も必要ですが、とことん恥知らずなインチキをすると、あとで嗤いものになるだけでなく、「資産」の価値を減ずることにもなります。

『サブウェイ・パニック』はディザースター映画ではなく、典型的な泥棒もの、すぐれたアイディアとキレのいいひねりのある、上々のケイパー・ストーリーでした。泥棒ものが好きな映画ファンにも届くタイトルを付けるべきだったでしょう。

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地下鉄に勤めるウォルター・マソーは日本の鉄道会社の視察団の案内をさせられる。

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緊急事態が起きたことを察した日本人たちは、お邪魔でしょうからわれわれは引き上げます。どうもありがとうございましたと礼をいう。

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こいつら、ぜんぜん英語がわかっていない、というので、さんざん失礼なことを云ったウォルター・マソーは、完璧な英語の辞去の挨拶をきき、苦い顔をする。ひょっとしたら、シナリオ・ライターは、日本の鉄道運行ノウハウは世界に冠たるものだということを知っていたのかもしれない。よそがたいしたことないのをたしかめるためだけに視察団を送り込んだ、と。

以前、どれかの記事に書きましたが、『結婚しない女』なんて映画は、邦題に気をとられ、原題をたしかめもしなければ、レヴューも読まなかったので見逃してしまい、テレビで見ることになりました。

An Unmarried Womanすなわち「離婚した女」(字句通りには「未婚の女」の意もあるが、映画のヒロインは離婚されてしまう設定)が、一所懸命に再婚しようとする映画に「結婚しない女」のタイトルは無理の三乗でしょう。いまからでも遅くない、『やっぱり結婚したい女』と改題しましょう。「コンカツ」とかいう、狐をカツレツにしちゃうのかと思うようなブームにぴったり、二度のお務めが果たせるでしょう。

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◆ 「国際社会」のなかの「国際的日本人」コンプレクス ◆◆
まさか『妖星ゴラス』を三回もやるとは思いませんでした。そもそもディザースター映画とは、なんてよけいなゴタクを書くから、こういうことになってしまうのですが、『妖星ゴラス』は、ブーム以前の先駆的ディザースター映画ですから、どうしても、そういう文脈に置いて考えざるをえなかったというしだいです。

おかげで池部良を放り出してしまったのは本末転倒でした。池部良は、科学者(たぶん物理学者)の役で、上原謙扮する大物学者をかついで、ゴラス対策の中心人物をつとめます。この二人は見た目がいいので、政治家を説得するのに最適のムードをもっています。

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『ゴジラ』と同じように、志村喬が学者の役で出演しているにもかかわらず、池部良のみならず上原謙までキャストし、「近鉄バファローズのベンチ」みたいな雰囲気(わかる人は少ない喩えか!)をつくったのには、意味があると思います。

当時はべつになにも思いませんでしたが、国連が中心になって地球を危機から救うプロジェクトが繰り広げられ、日本人がその推進者のひとりになる、というのは、あの時代の日本人の願望を表現したものだったのでしょう。「国際社会への復帰」です。

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国連会議場

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中央、立ち上がっているのが上原謙、左端は池部良

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同じシーンのつづきで、南極にロケットを据えつけることで地球の軌道を変えられるということを説明する池部良。数式は「本物」だそうな!

東宝特撮映画にはしばしば外国人俳優が必要になり、主人公たちが、外国人と対等に渡り合うシーンが撮られたのは、たぶん、プロレスで外人レスラーが必要だったのと似たような意味なのでしょう。いえ、否定的に云っているわけではなく、時代の気分は映画に色濃く反映されるものだというだけです。

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劇中では「カプセル」と呼んでいるが(当時、NASAも、宇宙船の、地球に帰ってくる先端部分をそう呼んでいた)、後年いうところの小型探査艇を搭載していて、ゴラスに接近して観測する。この探査艇のノーズのデザインは、ジェミニ宇宙船に範をとったのだろうが、古めかしさがなく、スター・ウォーズにも使えなくはない。ただし、全体のデザインはそれほどシャープではない。

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◆ ただの「大勢の人びと」 ◆◆
ディザースター映画でも、怪獣映画でも、同じことですが、一般映画と決定的に異なるのは、個々の人間の重みです。いや、主要人物があっさり死んだりはしませんし、命を軽く扱ったりはしません。

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上原謙扮する科学者は池部良に向かってつくづく述懐する。「徒然草だったかな、蟻のごとく集い、東西に急ぎ、南北に走る。人間はいつの時代も、ただ目先のことに追われて生きていくようにできているらしいね」。東宝特撮はつねにこういう視点でつくられていた。「思いきりキャメラを引いた人類の絵」である。

でも、だれかの悪意や作為ではなく、巨大な災害で多くの人が死んでいくのがディザースター映画というものです。われわれは否応なく視点と考え方の基準を変更せざるをえなくなります。ひとりの人間の生き死にと、全市民、全国民、全世界の人びとの比較、世界を救うために犠牲になるヒーロー、というのは、この種の映画ではルーティンです。

大災害で人びとが死んでいくのを見ながらなにを考えるかは人それぞれでしょうが、子どものわたしは「自己の価値の相対的低さ」を感じとったようです。ゴジラを相手に素手で戦うことはできないのだから、所詮、人間ひとりの価値など多寡が知れています。

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南極の工事現場で落盤が起きる。

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掘削現場から避難する人びと。

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「地底探検」映画に化けてしまいそうな、とんでもない空洞ができてしまった。子どものころ、こういうはめ込み合成が大好きだった。左上の赤と黄色の点が人物のはめ込み。

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いや、それよりも、大勢の人が避難しているシーンがあり、そのシーンにおいて、個々の人物は認識できず、「大勢の人」でしかないことのほうが、ずっと重要だったかもしれません。自分や友だちや親兄弟ではなく、「人類」という、べつの価値体系で計るべきなにものかの存在を教えてくれたと、でもいいましょうか。

ときおり、ディザースター映画や怪獣映画を見て、圧倒的な力に追われて逃げまどう人びとのなかに身を置いてみるのは、夜郎自大になるのをふせぎ、精神のバランスをとるのに有効だろうと思います。

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久保明は探査艇に乗ってゴラスに接近するが……。

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ゴラスの表面。子どものころは気味悪く感じた。

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ゴラスを観察しているうちに久保明の容子がおかしくなる。奇妙なことに、このあたりは『2001年宇宙の旅』でフランク・ボーマンがスペース・コリダーに突入するところに酷似している。スタンリー・キューブリックは参考に東宝特撮映画を見た?

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かろうじて帰投した久保明を助けに、母船から仲間が向かう。

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結局、久保明は記憶喪失になってしまう。このエピソードは全体のプロットにほとんど影響を与えないのだが、子どものときは、どういうわけか、このあたりがひどく怖かった。なにかのきっかけで精神に異常を来すことに対する強い恐怖心をもっていたらしい。

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こういう絵柄だけ捉えれば、後年のフルスケールの宇宙ものにそれほどひけをとるわけではない。モーション・コントロールという発想があれば、と惜しまれる。

◆ 滅びよ、と悪魔は云った ◆◆
そういうことと表裏一体なのですが、人間が営々と築いてきたものが、瞬時にして破壊されていくのは、爽快な眺めです。ディザースター映画が好まれるのは、ひとつにはそれが理由だと確信しています。

たとえば大地震などで現実に大規模な破壊が起きればやっかいなことだし、起きて欲しくはないのですが、なにかを大事に守るというのは、一面で重荷でもあるので、都市が消えたら、いっそ、せいせいするかもしれないと、われわれは心のどこかで思っているのでしょう。

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東京暮色。白川由美と水野久美が疎開の支度をしている。外の風景はもちろんセットだが、なんだか妙に好ましい絵柄に感じる。

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フィアンセを失ってメランコリックになった水野久美は「いっそのことゴラスが地球にぶつかって、みんな死んじまったほうが幸せなのかもしれないわ」という。そのためのこの夕景デザインか。

『妖星ゴラス』は、他の天体衝突ものディザースター映画とは異なり、ほとんど無傷で地球を救ってしまうため、破壊シーンは数えるほどです。南極の掘削現場での落盤事故、南極の氷の下に眠っていたオットセイ風モンスター(この映画には怪獣はいらないのに、やっぱり出てきた)が施設を破壊するところ、最後にゴラスとすれちがうときに高潮や山崩れが起きるぐらいで、いたって穏やかなものです。

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空、月、ゴラスはマット・ペインティング、そして地上は模型またはマットだろうが、それがSF映画にふさわしいかどうかはさておき、やはり広重、清親の伝統が生きていることを感じる。

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それでも、エンディングの高潮が引いていくシーンなんか、じつに子ども心をそそる出来で、おお、と思います。予算が僅少だったのでしょうが、もうすこし破壊シーンがあったら、子どもはさらに盛り上がったことでしょう。

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この場面で流れる叙情的な曲をサンプルにしました。

サンプル 石井歓「エンディング」

大昔のSF映画ですから、いろいろな不満はありますが、いま振り返れば、(予算が少ないことの反映でもあったのだろうが)後年のディザースター映画のような「ケレン倒れ」に陥らない、生真面目な映画に見えます(まあ、オットセイの怪獣だけはよけいだったが!)。そして、わたしにとっては、後年のディザースター映画好きの原因となる映画でもあり、再見して懐かしく感じました。

結局、いちばん好きなディザースター映画はどれだ、なんてことも考えてみたのですが、また話が長くなるので、そのあたりは次回に。

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by songsf4s | 2010-10-18 23:45 | 映画・TV音楽
池部良主演、本多猪四郎監督『妖星ゴラス』(東宝映画、1962年) その2

前回、現代的ディザースター映画の嚆矢は『タワーリング・インフェルノ』と書きましたが、こちらは1974年の製作、『ポセイドン・アドベンチャー』は1972年の製作だそうです。後者のほうが日本でいう「パニック映画」の嚆矢ということになります。

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しかし、どちらもわたしの理想「大災害映画」にはほど遠い、限定された空間のなかでの小さな出来事をあつかったものにすぎません。『エアポート'75』(1974年)も同断です。

映画配給会社の宣伝部というのは、ほんとうに想像力豊かな人たちが集まっていて、しばしば驚かされますが、「パニック映画」ブームのときは彼らの才能が極点に達しました。The Taking of Pelham 1-2-3、すなわち「ペラム行123番列車乗っ取り」というケイパー物語を『サブウェイ・パニック』と命名したり、(ここで、あとはなんだっけとMovie Walkerで検索し)Two Minutes Warningというクライム・サスペンスを『パニック・イン・スタジアム』と命名したり、みごとなものでした。

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巡り合わせにすぎませんが、ちょうど『ジョーズ』というモンスター映画の亜種のようなものが大ヒットして、この種の、人間以外の生物が人間に襲いかかるものも「パニック映画」のサブジャンルとみなされるようになったようです。クモとかヘビとかアリとかハチとかシャチとかワニとかアマゾンの小魚とか、いやはやいろいろなものに襲われたものです。

ということは、大昔の『恐怖のミイラ男』とか『大アマゾンの半魚人』(ATOKは「半漁」と変換し、危なく確定しそうになった。そりゃ半農半漁というやつでしょうに!)なんてのも「パニック映画」かよ、と思ったら、Movie Walker(ということはすなわち責任はキネマ旬報)では「ホラー・パニック映画」という言葉をつくっていました。ジョージ・ロメロのゾンビものはこちらに分類されるようです!

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云わずと知れた『大アマゾンの半魚人』。これで子どもが生まれると、大アマゾンの4分の1魚人になる勘定。音楽はまだユニヴァーサルの社員だったヘンリー・マンシーニ。

こんなことをいっているとワケがわからなくなってきます。ヒチコックの『鳥』はどうなのだとか、『マタンゴ』もあるぞとか、『エイリアン』はどうしようとか、パアなことをいいだしかねません。

結論として、「パニック映画」という無茶苦茶な言葉は定義できない、したがって意味を成さないと考えます。だって、『ピラニア』と『サブウェイ・パニック』が同じジャンルというのは、いくらなんでも無理でしょうに。ディザースター映画のほうがまだしも意味を成します。

地道にディザースター映画にもどって考えると、『宇宙戦争』などというのは、ジョージ・パルのオリジナル版(1953年)も、スピルバーグのリメイクも、「地球規模の大災害を扱った映画」という定義でいえば、ディザースター映画に分類していいような気がします。まあ、どちらも感銘を受けるほどの出来ではありませんでしたが、リメイク版の最初の来襲シーンなど、大流星雨の降下と同じ絵柄でした。

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オリジナル版の『宇宙戦争』(1953年)。ひょっとしたら『ゴジラ』は、『キングコング』のみならず『宇宙戦争』の影響も受けたのではないかと思う。

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以上六葉はリメイク版『宇宙戦争』より。こちらを見ると、スピルバーグは『ゴジラ』をつくりたかったのではないかと感じる。ジョージ・パルのオリジナル『宇宙戦争』→本多猪四郎のオリジナル『ゴジラ』→スピルバーグのリメイク版『宇宙戦争』という影響関係を仮定したくなる。リメイク版の宇宙人のヴィークルだか戦闘ロボットだかは、オリジナルより爬虫類的につくられている。

◆ マニュアル航行 ◆◆
ジャンルなどというものは正面からぶつかると泥沼になるので、「そういうもの」と思っておけばいいのでしょう。広げすぎた風呂敷を畳み、『妖星ゴラス』へと撤退します。

古い映画を見ていると、製作者の意図とは関係なく、しばしばその時代の風物に惹きつけられてしまいます。『妖星ゴラス』は1980年代を想定した1960年代の未来映画ですが、当然ながら、1962年のパラダイムに縛りつけられています。

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ロケットには翼がありますし、航法はどうやらマニュアルらしく、spaceshipではなく、ただのshipのメタファーになっています。慣性航法に切り替えると(この考え方はすでに取り入れている。かなり早いのではないだろうか)、キャプテンは潜望鏡で周囲の容子を見ますし、航海図のように定規やコンパスで線など引くところはじつに新鮮です。

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コンピューターに見えなくはないものも積まれている。不思議にAltair(なんてコンピューターを覚えている人がいるかどうか知らないが)に似ている。

そういう映画をつくれたのは、このころが限界ではないでしょうか。たぶん、60年代後半には(それがどれほどアンリアリスティックな表現になっていようと)コンピューター制御の考え方が出てきて、三角定規の出番はなくなってしまうでしょう。

ギョッとしたのは「無重力室」です。

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名前のとおり、無重力状態になる部屋で、ここで宇宙飛行士たちが訓練しているのです。地上で無重力状態を実現するには、当然ながら重力を制御する技術が必要です。そんなことはできないから、大型の輸送機を高度何万フィートだかまで上昇させ、自由落下することで無重力状態をつくって訓練しているわけで(スカイツリーの最上階でエレヴェーターのワイヤが切れたら、なかにいる人はそれなりの長さの自由落下、すなわち無重力状態を経験できるだろう!)、重力の制御は昔から実現がきわめて困難と考えられています。

つくられた時点では未来物語なのだから、なにをしてもいいようなものですが、無重力室などというものをつくれる技術があれば、ゴラスのコースを変えることも不可能ではありません。無重力室は重力の影響をキャンセルできるのだから、スケールこそ異なれ、ゴラスの重力の影響をキャンセルする基礎技術はすでに持っていることになるのですから。

どうしても南極にロケットを据えつけ、地球の軌道を変更したいのであっても、あんな「300人様収容大バーベQ場」みたいな代物をつくる必要はなく、炎の出ないクリーンな重力エンジンで太陽系の彼方にまでだってすっ飛んでいけます。水と炎は特撮の頭痛の種、そのひとつから解放されたのに、残念なことをしました。あのロケットはどう見てもガスレンジの親玉ですからね。

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でも、視覚的に表現しようのない重力エンジンでは「点火!」といったって、なにも起きず、計測機器のリードアウトが関の山だから、映画製作者としては、そんなもの使えるか、でしょうね。

◆ 俺ら宇宙のパイロット ◆◆
今日はなにがなんでも『妖星ゴラス』を終えようと、ちょっと無理矢理にまとめようとしたのですが、うまくいかず、その部分は次回まわしとして、今日も石井歓のスコアからサンプルをあげておきます。

今日は純粋なスコアではなく、また酒場で流れる「現実音」、それに挿入歌があるので、それをいってみます。

サンプル 石井歓「グランドキャバレー」

ゴラスの観測に行く宇宙飛行士たちが、出発の前夜に飲むシーンがあり、これはその酒場で流れている音楽です。

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バーカウンターには天本英世がいて、宇宙飛行士に一杯おごってやり、「宇宙に行く君たちが生き残って、地球にいる俺たちはゴラスにやられてあの世行き、ということもありうるな」などといいます。天本英世は役名もなく、このシーンにしか出てきません。

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映画では台詞がかぶったりしてよく聞こえないのですが、単体で聴くと、断片ではありますが、なかなかけっこうなラウンジ・ミュージックで、こういうのを使い捨てにしていかなければいけないのだから、映画音楽はなかなか大変です。

もう一曲は、シャレみたいなものなので、生真面目な方はお聴きにならないように警告しておきます。

サンプル 石井歓 「俺ら宇宙のパイロット」

「山男の歌」の宇宙版といったおもむきのシンガロング・ソングで、劇中、若い宇宙飛行士たちが二度にわたって歌います。サンプルにしたものはショート・ヴァージョンで、上述のキャバレー・シーンに使われたものです。リズムのとりにくいドドンパ・アレンジなのがくせ者で、素人たちの歌は乱れに乱れて、じつに楽しい仕上がりです!

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それでは次回こそ完結を目指して、またしても「つづく」とさせていただきます。


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by songsf4s | 2010-10-17 23:58 | 映画・TV音楽
池部良主演、本多猪四郎監督『妖星ゴラス』(東宝映画、1962年) その1

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ちょっと遅くなりましたが、やはり池部良追悼企画もやっておこうと思います。

池部良はどの映画がよかったか、などという話はよそでやっていらっしゃるでしょうから、当家では『乾いた花』も『昭和残侠伝』もさしおいて、とくに名作というわけでもない映画を取り上げることにします。

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いや、箸にも棒にもかからないわけではなく、十分に楽しめる映画です。少なくとも、小学生のわたしは満足した一本、怪獣のレスリングが出てこない(一匹だけのショボイ怪獣は出る!)東宝特撮映画『妖星ゴラス』です。

『妖星ゴラス』トレイラー


◆ ご存知天体衝突もの ◆◆
『妖星ゴラス』の設定はシンプルです。太陽系に向かってくる、大きさ(直径なのか体積なのかは不明だが)は地球の4分の3、質量は6000倍という黒色矮星が発見され、「ゴラス」と命名されます。そして、計算の結果、このままの針路なら、地球に衝突するか、ごく近くを通過することが判明します。

世界各国は利害の対立、軍事的諸問題を乗り越え、資金と技術を集めて、南極に巨大なエンジンを据えつけ、地球全体をひとつの宇宙船として、ゴラスを回避しようとします。話はこれだけのことでして、特撮によってこの巨大プロジェクトを見せるのが、この映画の眼目です。

なんだかありふれた設定だなあ、とお感じになった方もいらっしゃると思います。たとえば、比較的近年では『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』(ともに1999年)というハリウッド製の天体衝突ものディザースター映画がありました。

さらにさかのぼると、『メテオ』(1979年)というのも見た記憶があります。

『メテオ』


どんな話だったか忘れてしまったので、いくつかのサイトでシノプシスを読んでみました。アメリカとソ連が核ミサイルを発射して、「メテオ」(meteorの仮名書きとしては「ミーティオ」あたりが妥当だろうが)すなわち隕石を破砕しようとするものの、東西両陣営の政治対立がからんで困難を極める、というプロットのようです。

『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』が公開されたころ、だれか物理学者が、地球に向かって来る彗星や小惑星を破砕した場合、被害が大きくなることはあっても、抑制することはできない、と発言したのを記憶しています。

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『ディープ・インパクト』のエンディング。小惑星を破砕して万々歳というシーン。あの破片はどこへ向かっているのか?

そりゃそうでしょうね。マグナム弾で撃たれるか、散弾銃で撃たれるかのちがいにすぎず、弾丸が飛んでくるのは防げない、というのは、中学の物理で落第点をとりそうになったわたしでも、直感的にわかります。選択肢は、蒸発させるか、コースを曲げるか、こちらがよけるか、この三つしか思いつきません。

つまり、『妖星ゴラス』はon the right trackだけれど、『メテオ』『ディープ・インパクト』『アルマゲドン』は失格という、意外な判定が科学的に下されるのではないでしょうかね。あらあら。

いちおう、爆破によってコースを変えるのだ、細かい破片による被害はやむをえない、としているものもありますが、破砕せずにまるのまま衝突したときと被害の大きさは変わらないのではないでしょうか。

『アルマゲドン』トレイラー


『アルマゲドン』の冒頭で、先触れの大流星雨が降り注ぎ、大きな被害が出ますが、巨大隕石なり小惑星なり、さらには黒色矮星(恒星がエネルギーを失って縮退し、電磁波を発しなくなって、電波望遠鏡では観測できない状態になったもの、なんて説明でいいのだろうか? どうであれ仮説にすぎず、観測されたことがあるわけではないそうな)なりを破砕しても、結局はこのような流星雨を引き起こすだけでしょう。「まあ、映画だからな」とリラックスして、大破壊場面を楽しむにかぎります。

◆ 石井歓のスコア ◆◆
映画の話が長引くと、音楽にふれる余裕がなくなる恐れがあるので、先に書いておきます。『妖星ゴラス』のスコアは石井歓によります。石井歓の父は舞踏家の石井漠だというので驚きましたが、まあ、それが音楽の出来に関係するわけではありません。

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石井歓の音楽は『妖星ゴラス』しか知りませんが、伊福部昭の映画音楽スタイルからそれほど遠くない、メインストリートを行く勇壮なオーケストラ曲がいくつかあって、なかなか楽しめるスコアです。

サンプルは、ひとつはタイトルの直後、白川由美と水野久美が、夜、海岸をドライヴしている場面で、ラジオから流れてくる曲です。

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曲のタイトルは「カーラジオ」となっているが、画面に出てくるのは車につまれたトランジスター・ラジオである。昔のトランジスター・ラジオは、カメラと同じように、こういう堅牢な革ケースに収まっているものだった。

「現実音」だから、ストレートなラウンジ・ミュージックで、こういうのがあるところが東宝特撮映画のスコアのうれしいところです。『妖星ゴラス』にはフルスコア盤があるので、以下のタイトルは正式のものですし、ステレオです(映画はモノーラル)。

サンプル 石井歓「カーラジオ」

すごく短いのが残念で、せめて一分ぐらいだったらよかったのにと思います。もう一曲はいかにも東宝特撮らしいオーケストラ曲です。

サンプル 石井歓「ジェットパイプ点火」

まだ面白い曲がありますが、ここまでちょっと書いた感じでは、『妖星ゴラス』は二回に分けることになりそうなので、今日は以上の二曲のみにしておきます。

◆ 破滅という名前のユートピア ◆◆
わたしはディザースター映画(かつて日本では「パニック映画」と呼んでいた)のファンです。当家では、最近の当たり前の映画は取り上げない方針ですが、見るだけはかなり見ています。近ごろでは『2012』が派手でした。まあ、あそこまでいくと、それは無理でしょうと(あのジェット機の離陸シーン!)、東宝特撮とは違う意味で笑ってしまいますが。

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『タワーリング・インフェルノ』が現代的なディザースター映画の概念を確立したといえるでしょうが、見ようによっては、東宝怪獣映画というのは、ディザースター映画の一サブジャンルともいえます。絵柄もしばしば似たようなものになりますしね。

『タワーリング・インフェルノ』がつまらないとか、嫌いだとかいうことはないのですが、ディザースター映画としては、あれでは不十分です。いかに大きかろうが、要するにひとつのビルの中の話、外の世界はなにも影響を受けません。

わたしが好むのは、できれば全地球規模、小さくてもせめて一国の全体が影響を受けるような災害(『日本沈没』)を前提とした映画です。そういう定義では、火山の爆発をあつかったもの(たとえば『ダンテズ・ピーク』)も、やはり地域が限定されることに不満を感じます。

なぜディザースター映画を好むのか、まじめに考えてみました。結論は「日常生活のモラトリアムまたは終焉」でした。

巨大な隕石が地球に向かっているとしたら、もはや勉強も仕事も資産も貯蓄もあったものではありません。日常は、すくなくとも停止されます。防ぎきれなければ、ラリー・ニーヴンとジェリー・パーネルの『悪魔のハンマー』(そう、小説もこの手のものは読むのです)のように、それまでの世界がチャラになってしまった、「ザ・デイ・アフター」の新しい世界のなかで生きる道を見つけることになります。

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大火球(「ボライド」「爆発流星」ともいう)が海に落下して、(たぶん)水蒸気爆発も起こす。その大津波が世界の都市を襲う。いずれも『ディープ・インパクト』より。

結局、わたしはこういうことが好きでディザースター映画ファンになったのだと思います。子どものころ、台風が接近して、ほんの一、二時間授業を受けただけで帰宅するなどということがあると、妙に浮き浮きした気分になりましたが、あれをフルサイズに拡大すると、わたしの「ずっとこれを待っていたぜ、うれし楽しの地球滅亡」になるような気がします。要するに、ふつうの日常のガチガチに固体化された空気が嫌いなのです。

さらにいうならば、『妖星ゴラス』のなかで水野久美が云うように「いっそのことゴラスが地球にぶつかって、みんな死んじまったほうが幸せなのかもしれないわ」という気分もチラッとあるようです。ひとりで割を食うのはゴメンですが、だれも逃れられない災厄なら、「それも悪くない」のではないでしょうか。

「日常」というのは、だれか不運な奴が貧乏くじを引いて、ひとりで割を食うことであり、地球規模の大災厄というのは、だれも割を食わずにすむユートピアだと、そのように感じるのです。

むろん、『ディープ・インパクト』や『2012』のように、特権階級や金持ちが生き残る確率は高いのですが、まあ、この世に完璧などありうべくもないので、それくらいの欠陥はやむをえないでしょう。

今日はディザースター映画だらだら考察で終わってしまったので、もう一回『妖星ゴラス』をつづけさせていただきます。


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by songsf4s | 2010-10-16 23:58 | 映画・TV音楽