人気ブログランキング |
タグ:八木正生 ( 2 ) タグの人気記事
東宝映画のOST2種―『白昼の襲撃』(日野皓正)と『さらばモスクワ愚連隊』(八木正生&黛敏郎) その2
 
『白昼の襲撃』の話に入る前に、前回の『さらばモスクワ愚連隊』のサンプルをもうひとつ貼りつけておきます。

サンプル 八木正生「セッション」(『さらばモスクワ愚連隊』より)

記憶というのは欠落したり、薄れたり、いろいろあって、これほど信頼できないものはないのですが、われわれの生活はこれを基礎に成り立っているのだから、驚きます。

映画や音楽なんていうのも、記憶を基礎に、さまざまな比較対照をおこない、いいだの、悪いだの、まあまあだのといっているのだから、なんだか申し訳ないようなものですが、ちょっと資料の助けを借りるぐらいしか、改善のしようがないように思えます。

『白昼の襲撃』のOSTをOさんに聴かせていただく段になって、ああ、あれか、と思った映画は、加山雄三がスナイパーに扮するものだったのですが、データを確認しようとしたら、そんなものは見あたりませんでした。

よくよくフィルモグラフィーを見ると、加山雄三がスナイパーをやるのは、堀川弘通監督『狙撃』(1968年)でした。東宝映画ですが、共演は浅丘ルリ子。

はじめて浅丘ルリ子が日活以外の映画に出ているのを見たのは、植木等主演の『日本一の男の中の男』だった、なんてことを思いだしましたが、そのつぎの他社出演が『狙撃』だったようです。

『白昼の襲撃』も『狙撃』も、封切り当時に見ています。残念ながら、どちらも記憶がうすれて、ディテールは浮かんできません。

加山雄三が、暗殺者というダーティー・ヒーローを演じるにいたったのはどういう理由だったのでしょうか。連想するのはアラン・ドロンが殺し屋になるジャン=ピエール・メルヴィルの『サムライ』です(音楽は『冒険者たち』のフランソワ・ド・ルーベ)。

ジャン=ピエール・メルヴィル監督『サムライ』予告編


『サムライ』には強い感銘を受けました。『サムライ』の日本公開は1968年3月、『狙撃』の封切は同年11月。『ゴルゴ13』も同じ11月に連載がはじまったそうです。

それぞれの作り手たちはなにも意識していなかったのかも知れませんが、すくなくとも受容のレベルにおいては、なにか、こういった傾向をよしとする気分があったのであり、中学生のわたしも、その時代の気分に反応したのだろうと思います。

東宝はアクション映画、アンチ・ヒーロー映画のメッカではなく、この時点で加山雄三にアクション映画のダーティー・ヒーローを演じさせたのは、やはりなにかの意図があったのだろうと思います。

正統的ヒーローの役に戻りますが、『狙撃』は、森谷司郎監督『弾痕』、西村潔監督『豹は走った』(1969年)へ、さらに再び殺し屋を演じた西村潔監督『薔薇の標的』(1972年)へとつながっていきました。『薔薇の標的』以外は封切で見ています。すでに若大将シリーズは見なくなっていて、こういう系統のものだけを選って見ていました。

そういう流れのなかで『白昼の襲撃』(西村潔監督、1970年、東宝)も封切で見ました。しかし、『狙撃』と混同するぐらいなので、ただ「見た」という記憶と、テーマ曲のシングル盤を友だちから買い取った記憶だけが残っています。シノプシスを読むと、『狙撃』のようなプロフェッショナルの話ではなく、アマチュアの犯罪物語のようです。

例によってゴタクが長くなりましたが、音を聴きましょう。『白昼の襲撃』の挿入曲のひとつ。

日野皓正クインテット「スネイクヒップ」(映画『白昼の襲撃』より)


つづいて、シングル・カットされたテーマもどうぞ。こちらはクリップがないので、サンプルで。

サンプル 日野皓正クインテット「白昼の襲撃のテーマ」

「スネイクヒップ」と同系統の、当時の言葉でいう「ジャズ・ロック」タイプのトラックです。

たぶん、1967年からはじまったインパルスの一連のアルバムが嚆矢なのでしょうが、69年にハービー・マンのMemphis Undergroundがヒットしたことによって、この「ジャズ・ロック」といった名前で呼ばれた、ジャズ・プレイヤーによる8ビート、ないしは、非オーソドクス4ビートのサウンドがひとつの潮流になっていました。

いっぽうで、ラロ・シフリンも思いだします。

Lalo Schifrin - On The Way to San Mateo (from a movie "Bullitt")


このような伝統的な4ビートとは異なる、ジャズ・プレイヤーによるロック・ニュアンスの映画スコアというのは、同時多発的なものだったのでしょうが、やはりラロ・シフリンはその代表だったと思います。

4ビートではなく、5拍子ですが、『ブリット』よりすこし前のラロ・シフリンの中間的、折衷的スコアの代表作。

Lalo Schifrin - Mission: Impossible


こういうさまざまなものが、日野皓正の『白昼の襲撃』が生まれる前提、底流になっていると感じます。当時は、流れの真ん中をいくサウンドと捉えていました。つまり、すごく新しい音、というわけではないものの、これからはこういうのがふつうでしょ、といったニュアンスです。じっさい、ラロ・シフリンはDirty Harryでこのスタイルを確固たるものにし、大きな流れを形作ることになります。

いや、そこまでいくとお先走りになってしまうので、もう一曲、『白昼の襲撃』からサンプルを。こんどはオーソドクスな4ビートです。

サンプル 日野皓正クインテット「海」(映画『白昼の襲撃』より)

主としてドラムとベースが理由なのですが、いまになると、こちらのタイプのほうが好ましく感じます。ドラムの日野元彦はすこしタイムが早く、16分などで一部のビートを雑に叩く傾向があり(やはりジャズ・ロック系のスコアをたくさんやったジョン・グェランに似ている!)、また、キックの使い方も違和感があるので、テンポの遅い曲のほうが安心して聴けます。

クリップを探していて、『白昼の襲撃』の時期の日野皓正クインテットのライヴにぶつかったので、それも貼りつけておきます。

日野皓正クインテット with 井上忠夫、三原綱木「The Time And The Place」


やはり、ドラムのタイムが少し早いのが気になりますが、時代の気分がストレートにあらわれたサウンドだと感じます。

最後に、またまた記憶の話に戻ります。ご記憶の方がいらしたら、ぜひコメントしていただきたいのですが、日野皓正をわれわれ子どもが知ったのは、なにかのテレビ番組でのことだったのではないでしょか。日野皓正クインテットがハウス・バンドで、毎回なにかプレイしたという記憶があるのですが、ひょっとして末期の「ビート・ポップス」かもしれません。はっきり思い出せなくて、なんとも気色が悪いったらありません!


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



黛敏郎および八木正生(CD)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)


日野皓正クインテット(CD)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)


ラロ・シフリン
Bullitt (1968 Film)
Bullitt (1968 Film)


フランソワ・ド・ルーベ(『サムライ』と『冒険者たち』の2ファー)
Le Samourai/Les Aventuriers
Le Samourai/Les Aventuriers
by songsf4s | 2012-01-17 23:46 | 映画・TV音楽
東宝映画のOST2種―『白昼の襲撃』(日野皓正)と『さらばモスクワ愚連隊』(八木正生&黛敏郎)
 
折にふれてご紹介している畏友、三河の侍大将Oさんに、こういうのはどうですかと聴かせていただいたサウンドトラック盤で、ささやかな記憶がよみがえりました。

一枚は堀川弘通監督、加山雄三主演、黛敏郎および八木正生音楽監督『さらばモスクワ愚連隊』(東宝、1968年)です。

f0147840_2315757.jpg原作は五木寛之の同題短編小説で、単行本上梓の直後に読んだ記憶があります。理由は単純、ジャズをあつかった小説、という当時としてはきわめてめずらしいものだったからです。

あとから考えれば、河野典生のほうが先鞭をつけていたのかもしれませんが、当時、わたしはまだ中学生、読書量も知れたもの、作家の知識もありませんでした(それで思いだした。近々、河野典生原作の映画を取り上げたいと思っている)。

ジャズに関心を持ったのは中学三年からの三年間ほどで、以後はホームグラウンドに戻って、ジャズを聴くことはあまり多くありません。『さらばモスクワ愚連隊』は、そのプラハの春のように短かった「わたしのジャズの季節」に小説を読み、映画を見ました。

いま、キャストを見ていて、ドラマーの富樫雅彦が出演していたことに気づきました。すっかり忘れていましたが、ガキのころからドラム・クレイジー、当時、日本のドラマーでは富樫雅彦をとくに気にしていて、チャンスがあれば(たとえば、友だちのもっている盤に富樫雅彦のクレジットを見つけるとか)プレイを聴くようにしていました。したがって、この映画を見た小さな動機のひとつは、富樫雅彦の出演だったにちがいありません。

まずは音を聴かないと話になりません。ひとつだけ見つかったこの映画のクリップを貼りつけます。ありがたいことに、富樫雅彦の出演シーンです。音に動きをシンクさせていないのは残念ですが。

八木正生「Bフラットのブルース」(映画『さらばモスクワ愚連隊』より)


なかなかいいプレイで、脊椎損傷で下半身不随になってしまったのは、ほんとうに残念なことだと感じます(Wikiでも「事故」としているし、手元に資料がないので、詳しく書くことは避けるが、当時は「事件」として報道された。刃物で刺されたと記憶している)。

『さらばモスクワ愚連隊』という映画そのものは、すでに記憶から脱落していて、期待したほどは面白くなかった、という「感触」だけが残っています。

加山雄三は元ピアニストのプロモーターで、ジャズを通じて日ソ交流を試みて、政治的な理由から挫折する、といったようなプロットだったと記憶しています。

盤にはクレジットがないのですが、当時の雑誌記事では、加山雄三がピアノをプレイするシーンで流れたのは菊地雅章のプレイだと報道されていました。そのプレスコに、加山雄三がまじめに動きをシンクさせていたことが、この映画でもっとも強く印象に残ったことです。

いまでもそうでしょうが、当時は楽器をプレイできる主演クラスの俳優というのは見あたらなくて、そういう場面は、子どもにとってはフラストレーションばかりを感じるものでした。だから、加山雄三の本気の「シンク」に強い感銘を受けました。

一般映画でもそうですが、音楽がテーマになった映画は、これくらい本気でやってほしいものです。さりながら、俳優がまじめに楽器をプレイする演技をしたものといって、あとは『アマデウス』ぐらいしか思いつきません。

上掲のクリップのようなタイプの音のほうがわたしは好ましく感じますが、当時からすでに富樫雅彦はフリー・フォームのほうに傾斜していて、そういう雰囲気がいくぶんかあらわれたトラックがあるので、それをサンプルにします。

サンプル 八木正生&黛敏郎「モスクワの別れ」

黛敏郎はオーケストラ曲とクラシック・ピアノの曲、八木正生はコンボの曲とジャズ・ピアノの曲、というような役割分担だろうと思うのですが、この曲はジャズ・コンボにオーケストラをかぶせてあって、ここまでくると、どちらの仕事ともつきません。

すべてのパーソネルがわかっているわけではありませんが、いちおうコピーしておきます。

ピアノ……八木正生
ピアノ……宮沢明子
ドラム……富樫雅彦
トランペット……日野皓正
トロンポーン……東本安博
クラリネット……宮沢昭
ギター……沢田駿吾

ピアノが二人いますが、ジャズ系の曲は八木正生自身、宮沢明子がプレイしたのは、クラシック・ピアノのトラックでしょう。一曲だけ、ロック系のトラックがありますが、そちらは八木正生や富樫雅彦のプレイではなく、加山雄三周辺のバンドによるものではないでしょうか(寺内タケシとブルージーンズ、ワイルド・ワンズ、ランチャーズなど)。

もう一曲、ストレートな4ビートのトラックをサンプルにします。これまたけっこうなドラミングです。

サンプル 八木正夫「マイルス・ジョンソン・クインテットのコンサート・シーン」

わたしはすぐにジャズへの関心を失ってしまったので、復帰後の富樫雅彦のプレイというのを聴いたことがありませんでした。見つかったクリップはほとんどフリーフォームで、あまり趣味ではないのですが、ひとつ、ストレートなもの、しかも、プレイぶりが見られるものがありました。

Masahiko Togashi & J.J.Spirits - Memories


イントネーション、アクセントの付け方というのは、あまり変わらないもののようです。強いアクセントは若いころと同じようなイントネーションに聞こえます。

もうひとつ、富樫雅彦のクリップをおきます。ドン・チェリーおよびチャーリー・ヘイデンと共演したアルバムから。フリー・フォームなのですが、ドラム好きにはなかなか面白い曲です。

Masahiko Togashi, Don Cherry & Charlie Haden - June


音楽形式は異なっていても、ドラマーの本性というのは、かならずあらわれるものだなあ、と感心しました。タイムも変化しないものですが、イントネーションもまた、ドラマーの本然からわきあがってくるエモーションが、耳に聞こえる形としてあらわされたものなのでしょう。

タイトルに書いたとおり、もう一枚『白昼の襲撃』のOSTについても書くつもりだったのですが、まじめに富樫雅彦のプレイを聴いていたら疲労困憊してしまったので、そちらのほうは次回送りとさせていただきます。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



黛敏郎および八木正生(CD)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)


日野皓正クインテット(CD)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
by songsf4s | 2012-01-15 23:56 | 映画・TV音楽