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Uncle John's Band by Grateful Dead その2
タイトル
Uncle John's Band
アーティスト
Grateful Dead
ライター
Robert Hunter, Jerry Garcia
収録アルバム
The Golden Road (1965-1973)
リリース年
1970年
他のヴァージョン
various live versions of the same artist, Phil Lesh & Phriends
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この曲をご存知ない方には、やはり先に聴いておいていただいたほうがいいでしょう。You Tubeにスタジオ・ヴァージョンがあるので、よろしければお聴きになってみてください。動画はありませんが、昨日あげておいたライヴより、こちらのほうがUncle John's Bandの本来の姿だと感じます。

◆ ヴァージョン一覧 ◆◆
各ヴァージョンの検討にとりかかるまえに、今日取り上げる正規盤収録の各種Uncle John's Bandの録音日時と収録アルバムの一覧を以下に示します。このほかに、わが家にない正規盤が10種以上ありますし、ブートやウェブで聴けるテーパーのプライヴェート録音も無数にあるので、とんでもない騒ぎなのです。

1969.11.08……Dick's Picks Vol 16 (jam only)
studio 1970……Workingman's Dead
1970.05.02……Dick's Picks Vol 8
1970.12.23……Workingman's Dead (remastered CD bonus)
1971.04.27……Ladies And Gentlemen ... The Grateful Dead
1971.08.24……Dick's Picks Vol 35
1972.09.17……Dick's Picks Vol 23
1972.09.27……Dick's Picks Vol 11
1974.03.23……Dick's Picks Vol 24
1974.08.06……Dick's Picks Vol 31
1974.10.19……Grateful Dead Movie (DVD and CD)
1977.05.19……Dick's Picks Vol 29
1979.12.26……Dick's Picks Vol 5
1989.10.16……Nightfall Of Diamonds
1990.03.24……Dozin' At The Knick

◆ スタジオ録音 ◆◆
UJBのスタジオ録音は、デッドの最初のアコースティック・アルバムであるWorkingman's Deadに収録されています。Dire WolfEyes of the Worldのときにも書きましたが、Workingman's Deadは、デッド史における最重要アルバムの一枚です。このアルバムで一気にファン層が広がり、現在では自壊現象を起こしそうなほどとほうもなく肥大化している、ラージャー・デッドヘッズ・コミュニティー構築への第一歩だったといっていいでしょう。

f0147840_23483381.jpgそれまでわたしが知っていたデッドは、Anthem of the SunとLive/Deadに記録された、実験音楽のバンドなので、個人的にも、このアルバムをはじめて聴いたときには驚きました。UJBはアルバム・オープナーですから、どんな音なのかわかっていないときに、アコースティック・ギターのイントロが流れてきたのだから、「えっ?」でした。

しかし、意外ではあったものの、デッドの文脈を離れて、もっと大きな時代の文脈からいえば、アコースティック・サウンドへのシフトはごく自然なことで、驚天動地の驚きというほどのことはなく、やっぱりな、と一面で納得もしました。

ビルボード・チャートには反映されませんでしたが、Uncle John's Bandは、当時、アメリカで勃興しつつあった各地のFM局(AM局が短い曲しかかけないのに対して、長い曲やアルバム全体をかけた)ではヘヴィー・ローテーションで流され、デッドというバンドを広く知らしめる結果になったそうです。

f0147840_23493112.jpgそれももっともだというサウンドです。イントロからして、じつに気持のいい音色とグルーヴなのです。ビル・クルツマンとフィル・レッシュのグルーヴというと、それまではハイ・テンション、ハイ・イナージーだと思っていましたが、この二人が、じつはゆったりした、懐の深いグッド・グルーヴもつくれることがこの曲でわかりました。デッドをグルーヴのバンドと考えはじめたのも、このアルバムからです(とくにCumberland BluesとDire Wolfがいい)。

ここからの数年間は、クルツマン=レッシュのグルーヴを聴いているだけでも十分に楽しめるほどなのですが、この転換が起きた理由は、やはり、このアルバムで、それまでとは異なるアプローチが必要になり、表現(ベースでいえばラインの取り方、ドラムならフィルインや変拍子のプレイ)より、グルーヴを強く意識するようになったからではないかと、現在では考えています。

さまざまな意味できわめて重要な、ひょっとしたらデッド史の最大の転換点になった曲が、スタジオ録音のUncle John's Bandです。

◆ 1970年録音2種 ◆◆
f0147840_23543183.jpgUncle John's Bandのもっとも古いライヴ・ヴァージョンは、Dick's Picks Vol.16に収録された69年11月8日のエレクトリック・セットのものですが、これは歌なしで、中間部のAm7にいくところのフレーズを中心としたジャムです。歴史的意義はありますが、それ以上のものではないでしょう。

つぎはDick's Picks Vol 8に収録された、70年5月2日ヴァージョン。これはアコースティック・セットですし、スタジオ録音とほぼ同時期なので、スタジオ盤にもっとも近い雰囲気のあるライヴ録音です。

f0147840_23551379.jpg昔読んだものでは、初期のアコースティック・セットは、ガルシアとウィアの二人だけか、ここにニュー・ライダーズのメンバーが加わるだけだったとされていましたが、アーカイヴ・テープが出てきてみると、フル・メンバーでやっているものがずいぶんあります。この日も、控えめながら、ドラムとベースがちゃんと入っています。わたしは、UJBはアコースティックの曲と考えているので、このヴァージョンは好みです。

このUncle John's Bandの最後には、ガルシアのアナウンスが収録されています。どうやら、第一部のエンディングだったようで、われわれはこれでしばらく引っ込む、つぎはニュー・ライダーズがステージに上がる、そのあとはエレクトリック・グレイトフル・デッドだ、といっています。「アコースティック・デッド」だの、「エレクトリック・デッド」だのというのは、デッドヘッズが使う俗称みたいなものと思っていましたが、ガルシア自身がいっているのなら、これは正式名称なのだな、とよけいなことを思いました。

f0147840_00524.jpgつぎはWorkingman's Deadのリマスター拡大版に収録された、70年12月23日ヴァージョン。これはエレクトリック・セットです。しかし、たんにギターをアコースティックからエレクトリックに持ち替えただけという雰囲気で、アレンジも構成もオリジナルからそれほど遠くないものになっています。

ボブ・ウィアはしばしば音程を外していますし、ガルシアのギターもミス・タッチがありますが、全体の雰囲気は好みです。ストップ・タイムからエンディングにかけての盛り上げもけっこう。最後にガルシアとウィアがThanks a lot, see you laterといっているので(きれいにハモっているので笑ってしまう)、第一部のエンディングだったことがわかります。

◆ 71年から73年まで ◆◆
f0147840_03055.jpg71年最初のものは、Ladies and Gentlemen...The Grateful Deadに収録された、フィルモア・イーストで71年4月27日に録音されたヴァージョンです。まだアコースティック・ヴァージョンの尻尾がついているエレクトリック・ヴァージョンですが、クルツマンがスネアのフレーズをすこし変え、パラディドルを減らし、バックビートを増やしていて、過渡期という印象のプレイです。わたしはこの時期のクルツマンのスネアのチューニングが好きなので、これはこれで悪くないと思います(ミッキー・ハートはドラムではなく、ウッドブロックを叩いているらしい)。全体には、まだアコースティック・ヴァージョンの雰囲気が濃厚に残っています。

Dick's Picks Vol.35収録の71年8月24日ヴァージョンは、スタジオ録音のときのスタイルからすこし離れはじめています。とくにクルツマンが、パラディドルをやめ、あくまでもバックビート中心のプレイをしていることが目立ちます。Uncle John's Bandのヴァージョンとしての出来を云々する以前に、クルツマンのプレイが楽しくて、きれいなライド・ベルやスネアのサウンド、そして、この曲でもついに「攻め」に転じたフィル・レッシュの強いベースのほうを聴いてしまいますが、ヴォーカルもまあまあで、悪くないヴァージョンだと感じます。

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つぎは72年に移り、Dick's Picks Vol 23収録の72年9月17日ヴァージョン。これはちょっと違和感があります。テンポが速すぎるのです。デッドはしばしばテンポを変えますが、これはアレンジ変更の際の手続きのようなもので、どうやるのがいちばんいいか模索する途上での「ためらいキズ」のようなものだと考えています。Uncle John's Bandについては、このテンポはダメだ、と判断したのではないでしょうか。

Dick's Picks Vol 11収録ヴァージョンは、Vol.23のわずか十日後、72年9月27日の録音ですが、テンポはもとにもどっています。テンポがもどったせいか、エレクトリック・アレンジも落ち着きはじめたという印象のあるヴァージョンです。これ以前からすでにキース・ゴッドショーが参加していますが、Uncle John's Bandでピアノがはっきり聞こえるのは、このヴァージョンが最初です。本質的なことではないのですが、ピアノ入りもいいなあ、と感じます。

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73年録音のUncle John's Bandはうちにはなくて(Winterland 1973 - The Complete Recordingsというボックス・セットには73年ヴァージョンが2種収録されている)、つぎは74年に飛び、Dick's Picks Vol 24収録の74年3月23日の2種です。同じセットで2回やったわけではなく、サウンド・チェックでプレイしたものです。そういうものまで正規盤に収録されてしまうのところがいかにもデッドらしいところ。サウンド・チェックでは参考程度の意味しかありませんが、ひとつだけ注目すべきことがあります。ボブ・ウィアがミュートを使っているのです。

◆ 74年の2種 ◆◆
f0147840_0171967.jpgつぎのDick's Picks Vol 31収録の74年8月6日ヴァージョンを聴くと、やはりウィアはあちこちでミュートを使っています。いいんだか悪いんだか、なんとも判断がつきませんが、スタジオ盤からかなり遠いところまできた証左ではあるでしょう。

アコースティック・ヴァージョンが躰に染みこんでいる人間にとっては、かなり違和感があるのはたしかですが、Uncle John's Bandではないと思って聴けば、これはこれでいいのかもしれないと思います。インプロヴに突入すると、まったくべつの曲のような気がしてきてしまうんですがねえ。ジャムが終わって歌にもどると、やっぱりUncle John's Bandなので、かえって驚いてしまうほどです。このヴァージョンからプレイング・タイムが10分を超えるようになるのも偶然ではなく、アコースティックの曲ではなくなり、エレクトリックの曲になった証拠です。

The Grateful Dead MovieおよびそのサウンドトラックCDに収録された、74年10月29日ヴァージョンを聴くと、ああ、やっぱり、72年からこの曲はちょっとダレはじめたのだな、と感じます。いや、このヴァージョンがよくないからではなく、逆に、ピシッとしたパフォーマンスだからです。

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ひところ、ガルシアがこの映画の編集にかかりきりだったというだけあって、どの曲も、無数の選択肢のなかから、非常にいいヴァージョンが収録されています。Uncle John's Bandも、全体としてみれば非常にいい出来だと思います。もちろん、あくまでもエレクトリック・ヴァージョンとしては、という限定つきですが、ガルシアのソロもいいし、ゴッドショーのピアノも、やっとこの曲での落ち着き場所を見つけたと感じます。オーディエンスの反応もよく、UJBがデッドを象徴する曲だというコンセンサスができあがったと感じます。

◆ 70年代後半以降 ◆◆
75年と76年は休眠期があることもあって、うちにはUJBはひとつもありません。正規盤としては、76年のLive at the Cow Palaceに収録されたヴァージョンがあるようですが、この盤はうちにはありません。

Dick's Picks Vol 29収録の77年5月19日ヴァージョンになると、アコースティック・ヴァージョンは遠くなりにけり、べつの曲だと思って聴いたほうがいいムードです。全員、スタジオ盤でやったプレイがどんなだったか、もう忘れちゃったにちがいありません。トーンもスタイルもラインもまったくスタジオ盤には似ていません。デッドの曲はしばしばそうなることになっていますが、この曲もついにジャムのヴィークルになったか、という感じです。ランニング・タイムも11:47と、現在までにリリースされたUJBとしては最長。

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78年(休止期か?)の録音は、うちにないだけでなく、リリースされたものがなく、つぎはDick's Picks Vol 5収録の79年12月26日ヴァージョン。これはちょっとどうも……。キーボードがキース・ゴッドショーからブレント・ミドランドになるのは80年だと思っていましたが、このヴァージョンのキーボードはミドランドで、ハイ・ハーモニーも彼の声です。ミドランドの声とキーボードはわたしの天敵で、三十六計逃げるに如かず。Dick's Picks Vol 5にはもうひとつ、Shakedown Street後半のジャムからなだれ込む、短いUJBが収録されていますが、当然、どうというものでなし。

つぎはずっと飛んで、Nightfall Of Diamonds収録の1989年10月16日ヴァージョン。もう箸にも棒にもかからないというべきでしょう。ほかのだれの声よりも、ブレント・ミドランドの声が大きく、しかも、みごとに外しまくっていて、最後まで聴くことすらできません。

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つぎは買ったことをおおいに後悔した、Dozin' At The Knick収録の1990年3月24日ヴァージョン。ミドランドが不愉快なだけでなく、この時期になると、クルツマンのスネアのチューニングがひどく低くなり、フィル・レッシュが高音部でのにぎやかなプレイをしなくなります。かつて愛したバンドが最後はどうなっていくのかという興味だけしかありません。

◆ その他のヴァージョン ◆◆
もうおしまいにしてもいいのですが、ウェブで手に入れたプライヴェート録音ヴァージョンその他にもふれて、Uncle John's Band棚卸しを完璧に終えておきたいと思います。

1970年1月16日、ポートランドのSpringer's Innで録音と記載されたものは、あらあらという脱力ヴァージョン。まだスタジオ録音もしていない段階での貴重な録音でしょうが、しかし、デモという雰囲気で、アレンジもまだ固まっていないことがうかがわれます。デッド史の脚注でしょう。

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Terrapin Station、Playing in the Band、Jam、Uncle John's Band、I Need A Miracle、Birtha、Good Lovin'、Casey Jonesとつづく1時間14分以上の長いものの一部としてUJBが登場するファイルもあります。録音日時は不明で、タグにはunknow 80's recordingとだけ記載されていますが、ミドランドの声とキーボードが聞こえるので、80年代であることは間違いありません。

UJBの出来がどうこうという以前に、この長丁場をほとんど止まらずに一気にやっているのに呆れます(76年の浅草国際のときのフランク・ザッパ&ザ・マザーズを思いだす)。初期からそうですが、こういうとき、どうやってタイミング出しをしているのかは興味深いところで、いくつか見たものでは、どうやらおもにガルシアが振り返り、ドラマーたちに目、口、手などできっかけを出しているようです。それにしても、それだけでどうにかなるのは、発足以来、生きたまま抜けたオリジナル・メンバーはいないバンドらしいところだと思います(抜けたのは途中加入のメンバーか、ロン・マカーナンとジェリー・ガルシアという在籍時死亡のオリジナル・メンバーのみ)。

でも、80年代のものとしては、このUJBはいいほうの部類なのではないでしょうか。ほんとうにプライヴェート録音かよ、という音質で、テーパー席(デッドのライヴでは、録音するオーディエンスのために特別席が設けられていた!)で録音したものではなく、サウンド・ボードからダイレクトに録ったものに思われます。正規盤並みの音質。UJBも悪くありませんが、ほかの曲のほうはもっとよくて、好調の日の録音です。

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フィル・レッシュのバンド、フィル・レッシュ&フレンズも、Uncle John's Bandをカヴァーしています。世界各地にあるシャドウズやヴェンチャーズのコピー・バンドと似たような存在なのですが、ホンモノがひとり入っているだけで、「ニセモノ感」はおおいに減じられるらしく、デッドのコピーに堕していないところが、このグループの面白いところです(デッド・コピー・バンドというのもけっこうあって、その名もアンクル・ジョンズ・バンドという名前のグループもある)。

フィル・レッシュ&フレンズのUJBはサンバ・アレンジです。後期デッドからブレント・ミドランドを抜いたような音で、ミドランド嫌いのわたしとしては、それなりに楽しめる音です。こうなると、ヴォーカルがピッチを外しているところまでがご愛敬に思えてきます。

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◆ 70年代初期のブート ◆◆
ブートももっています。初期のブートにはよくあったことで、録音日もロケーションも記載されていませんが、音からいって70年代初期、それも70年か71年のものと思われます。あまりいい音質とはいえませんし、モノーラルですが、それでも、70年代後半以降のUJBを聴いたあとだと、やっぱりこのほうがいいと感じます。

かなり出来はいいので、これがどの日の録音か同定したくなってきます。コンプリート・セットリスト・サイト(デッドのライヴがすべて記録されている!)を調べ、このあたりのプライヴェート録音を徹底的に収拾して、きちんと比較すればいいのですが、考えただけでも気が遠くなってしまいます。

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Grateful Dead "San Francisco 1" The early boot LP of the early 70's, recording date unknow, possibly 1970 or 71.
初期のブートをご存知のオールドタイマーなら懐かしいであろう、「品質保証」のブタ印ブート。あのころはこのような無地にスタンプを押したようなジャケットばかりで、デザインされたものは稀だった。ファクトリー・シールぐらい剥がしてスキャンしろよ、といわれそうだが、これにはやむをえない事情がある。それについてはつぎの写真のキャプションをご覧あれ。

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同じブートLPの裏。しかし、これはジャケットに糊づけすらされていない。ジャケットとシールのあいだにはさんであるだけ。おかげで、ひょいと抜き出してスキャンできたので楽だった!

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盤はイエロー・ビニール。レーベルにはアーティスト名やタイトルなどは記載されていなくて、他の盤にも使える汎用のもの。レーベルの円周に沿って、All rights reservedだのなんだのとタワゴトが並べてある。許可を得ずにこのディスクをコピーするのを禁ずる、などといっているが、そういうお手前が海賊盤業者ではないか! オールドタイマーはよくご記憶だろうが、70年代はじめのブートは日本に入ると4000円なんていう価格になったので、恨み骨髄に徹している。柏木にあったあの新×レコードが消えたときは、ボラれまくった人間として快哉を叫んだものである。

年老いたオリジナル・ヘッズだけの考えかもしれませんが、Uncle John's Bandは、やはり本来アコースティックの曲であり、どのヴァージョンがいいかとなれば、なによりもオリジナルのスタジオ録音、つぎがアコースティック・セットのライヴです。エレクトリック・ヴァージョンも、せいぜい72年ぐらいまでの、アコースティック・ヴァージョンの雰囲気を濃厚に残したものがいいと感じます。

いま、元にもどって、はじめから流していますが、Workingman's Deadリマスター拡大版収録のUJBは、エレクトリック・ヴァージョンとしては最良なのではないかと感じました。


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Grateful Dead "Workingman's Dead" DVD Audio
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Grateful Dead "Workingman's Dead" Remastered and Extended CD
Workingman's Dead
Workingman's Dead
by songsf4s | 2008-05-12 23:58 | 風の歌
Uncle John's Band by Grateful Dead その1
タイトル
Uncle John's Band
アーティスト
Grateful Dead
ライター
Robert Hunter, Jerry Garcia
収録アルバム
Workingman's Dead
リリース年
1970年
他のヴァージョン
various live versions of the same artist, Phil Lesh & Phriends
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これまでにもいろいろ大物を取り上げてきましたが、書きはじめたいまも、ほんとうにこの曲をやるのかよ、と自分自身に確認しています。なんたって、デッドヘッズにとっては「国歌」みたいな曲で、これが流れたら、起立、脱帽、直立不動で斉唱、てなものなんですからね。

先月の馬鹿ソング特集では、当ブログの三役である、グレイトフル・デッド、キンクス、プロコール・ハルムの曲をまったく取り上げませんでした(特集が終わってから、ハルムのHomburgは馬鹿ソングだったことに気づいた)。今月は、ハルムは登場しないものの、キンクスは登場の予定ですし、デッドにいたっては山ほどあり、絞りに絞り込んで、やっと三曲まで減らしましたが、これ以上は無理なので、いまは三曲とも取り上げる気でいます。よって、そろそろとりかからないと、今月下旬は屍累々のデッドだらけになってしまいそうなのです。

この曲には長い年月のあいだに、デッドの歴史とともにいろいろな属性が付与されてきましたが、そうしたことはあとにして、まずは歌詞を見ていくことにします。といっても、今日じゅうに最後までたどり着ける見込みは立たず、ひょっとしたら、歌詞だけで二日がかり、20種におよぶヴァージョンの検討にまた二日、なんてことになるのではないかと心配しています。デッドがやっても短い曲ではなく、時代が下ると10分台に突入しますが、フィル・レッシュ&フレンズのカヴァーにいたっては20分を超えるため、ただ聴くだけだって、ただごとではないのです。

You Tubeに1980年のレイディオ・シティー・ミュージック・ホールでのライヴ・ヴァージョンがありますので、よろしかったらどうぞ。すでにキーボードはブレント・ミドランドなので、わたしの好まない時期のものですが、公平にいって、いいほうの出来です。すくなくとも、いつもは外しまくるボブ・ウィアが比較的まともに歌っているので、デッドに不慣れな方でも大きな違和は感じないだろうと思います。警告しておきますが、デッドの場合、ハーモニーは「外すためにある」ので、ピッチがどうこうという批評は、はじめから無効です。

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◆ バック・ダンサーズ・チョイス ◆◆
ではファースト・ヴァース。例によって、デイヴィッド・ドッドの注釈入りデッド歌詞サイトに掲載されているものをそのまま使います。行の区切り、大文字小文字の使い分け、カンマなど、まったくいじっていません。

Well, the first days are the hardest days,
don't you worry anymore
When life looks like Easy Street
there is danger at your door
Think this through with me
Let me know your mind
Wo-oah, what I want to know
is are you kind?

「最初のうちがいちばんきついものさ、だから心配することはない、生活が楽になったと思ったときこそ、すぐそこに危険が近づいているものだ、いっしょにこのことをよく考えてみよう、きみの気持を教えてくれないか、ぼくが知りたいのは、きみがやさしい心の持主かどうかということだ」

f0147840_2131640.jpg歌詞のいっていることとは逆に、ファースト・ヴァースがいちばん楽です。問題になるのはeasy streetぐらいでしょう。辞書には「《口》 裕福な境遇、金に困らない身の上」とあります。日本語の「生活が楽」「暮らし向きがよい」というニュアンスより、もっと金がある状態でしょう。また、チャップリンの映画にEasy Streetというタイトルのものがあるとも出ています。ロバート・ハンターはしばしばいろいろなものを引用するので、そういうこともつねに念頭に置かなくてはいけないのです。

言葉の表面的な意味はむずかしくないのですが、なにをいわんとしているかとなると、むずかしいヴァースです。この曲は反戦歌として解釈することもできるので、そういう前提で読み直すと、その方向に沿った解釈も可能だとわかりますが、とりあえず、いまは限定せずにおきます。

セカンド・ヴァース。

It's a Buck Dancer's Choice, my friend,
better take my advice
You know all the rules by now
and the fire from the ice
Will you come with me?
Won't you come with me?
Wo-oah, what I want to know,
will you come with me?

「これはバック・ダンサーズ・チョイスなんだ、ぼくのアドヴァイスをきいておくほうがいいと思うよ、もうこれですべてのルールはわかったはずだし、火と氷の区別もつくだろう、さあ、いっしょに来るかい? 頼むから来たまえよ、きみがいっしょに来るかどうか、それが知りたいね」

f0147840_1571249.jpgBuck Dancer's Choiceについては、いろいろな説が入り乱れています。Buck Danceというのは、19世紀終わりに登場したダンスで、シンプルなタップ・ダンスのようなものだそうです。buck-and-wingともいうそうで、このほうの語義は、リーダーズでは「黒人のダンスとアイルランド系のクロッグダンスの入りまじった複雑な速いタップダンス」となっていて、「シンプル」という他の辞書の定義と矛盾します。ともあれ、まずこれが一説。

他の意見としては、Buck Dancer's Choiceというタイトルの曲があり、それを指すというのもあります。これはfiddle tuneだというのだから、フォーク・ダンスのようなものだと思われますが、この曲が演奏されたら、buck=男鹿、つまり、男のほうがパートナーを選べるのだそうです。ほかにもさまざまな意見がありますが、わたしには、これがこのヴァースの文脈に合う、もっとも妥当な解釈のように思えます。

◆ 潮の満ちてくる川の畔 ◆◆
以下は、なんといえばいいのかよくわからない部分。ヴァースではないし、コーラスでもないのです。ということは、消去法でブリッジということになってしまいますが、それにしては位置が奇妙です。でも、現にそこにあるのだから、ああだこうだいってもはじまりません。

Goddamn, well I declare
Have you seen the like?
Their walls are built of cannonballs,
their motto is Don't Tread on Me

「なんてことだ、こいつは驚いた、これに似たものを見たことがあるか? 壁は砲弾でできている、連中のモットーは『俺を踏みつけるな』だ」

はじめからよくわかっていないのですが、ここにきていよいよ脈絡を失った感じです。デイヴィッド・ドッドの注釈では、Don't Tread on Meというのは、アメリカの愛国者、クリストファー・ギャズデンがデザインした「ギャズデン・フラグ」という旗に書かれたモットーなのだそうです。サンプルをいただいてきたので、ご覧あれ。

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つまり、踏みつけてみろ、ただじゃおかないからな、という威嚇なのでしょう。この旗のヘビは、ヤマカガシなんかではなく、ガラガラヘビだそうです。独立戦争のとき、バハマのイギリス基地を襲ったアメリカ海兵隊のドラムにも、このシンボルが描かれていたそうです。以上、砲弾でできた壁と平仄は合っています。

意味はなんだ、といわれると、口ごもらざるをえませんなあ。ひとつだけいえることは、このUncle John's Bandが書かれたとき、アメリカはヴェトナム戦争の泥沼でもがいていた、ということです。「これに似たもの」の「これ」はヴェトナム戦争を指しているのではないでしょうか。この線に沿って解釈すると、theirが指しているのは、アメリカの戦争推進派ではなく、ヴェトナムのことである可能性もあるように思います。アメリカはガラガラヘビを踏んでしまった、と。

つづいてコーラス。ここにコーラスがくるのです。ヴァースのあと、コーラスのまえなんていうところにブリッジがあるはずがない、というので、まえの4行をなんと呼べばいいのかわからなくなったのです。

Come hear Uncle John's Band
by the riverside
Got some things to talk about
here beside the rising tide

「この川の畔に来て、アンクル・ジョンズ・バンドを聴かないか、この満ちてくる潮のそばで話し合いたいことがあるんだ」

川の畔なのに、潮が満ちてくるということは、河口に近いということになります。どこか特定の川を指していたのかどうかはわかりません。ポトマック河だったりして? いや、これはただの思いつき。あの時代、戦争推進派のバンドなんていうのはめったになく、デッドも当然、戦争反対派でした。「話し合うべきこと」とは、戦争のことなのか、それとも、そんなふうに限定しないほうがいいのか、なんともいえません。仮に、あくまでも仮に、ヴェトナム戦争の文脈で捉えるなら、セカンド・ヴァースのwill you come with meという問いかけは、きみは戦争についてどちらの側に立つのだ、と解釈できるような気が、ここまでくるとしてきます。

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◆ 風のごとく去る ◆◆
サード・ヴァース。

It's the same story the crow told me
It's the only one he know
like the morning sun you come
and like the wind you go
Ain't no time to hate,
barely time to wait
Wo-oah, what I want to know,
where does the time go?

「それはカラスに聞かされたのと同じ話、あいつはこの話しか知らないんだ、きみは朝の太陽のようにやってきて、風のように去る、憎んでいる時間なんかない、待てる時間もほとんどない、ぼくが知りたいのは、時はどこへいってしまうのかということ」

カラスねえ。単純に伝承を探ると、たとえば世界大百科のカラスの項には、西洋の伝承として「カラスは不気味な鳴声、黒い姿から不吉な鳥とされ、死と関係づける俗信が多い。家のまわりをカラスが飛ぶのは死の前兆とされ、カラスの群れがけたたましく空中を飛びかうのは戦争を予言するのだという」とあります。また、ギリシャ神話には、告げ口をするおしゃべりな鳥として出てくるそうです。さらに、ジョニー・ホートンの1964年のシングルに、Same Old Tale The Crow Told Meという曲があるようです。そして、カラスといえば、エドガー・アラン・ポーの『大鴉』も無視するわけにはいかんだろう、という意見も当然ながらあります。

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「風のように去る」というと、日本人の場合、「風林火山」の「疾きこと風のごとし」を思い浮かべます。そんなの関係ないだろう、なんて頭から否定しないほうがいいのです。ロバート・ハンターは日本文化にも関心があり、歌詞のなかに「招き猫」を登場させたり(いや、断定はできないが、そう考えることができる)、芭蕉にインスパイアされたと思われる歌詞も書いています。

◆ この曲はどう進むのか? ◆◆
フォースにして最後のヴァース。

I live in a silver mine
and I call it Beggar's Tomb
I got me a violin
and I beg you call the tune
Anybody's choice
I can hear your voice
Wo-oah what I want to know,
how does the song go?

「ぼくは銀の鉱山に住んでいて、ここを乞食の墓穴と呼んでいる、ヴァイオリンをもっているんだけれど、なにか曲をあげてくれないか、だれのお好みでもかまわない、君たちの声は聞こえているよ、ぼくが知りたいのは、その曲がどういう風になっているかということだけさ」

むずかしいですねえ。デイヴィッド・ドッドのサイトにも、このヴァースについてはなんの意見も寄せられていません。文字通りに受け取ると、ここは戦争とは関係ないように読めるのですが、どうですかね。ロバート・ハンターの歌詞は、しばしば音楽、バンド、聴衆について語っています。そういう流れからいうと、ここはデッドとデッドヘッズのことを歌っているように、わたしには思えます。でも、silver mineとはなんのことなのか? beggar's tombはなにを指すのか……見当もつきません。

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最後のコーラス。

Come hear Uncle John's Band
by the riverside
Come with me or go alone
He's come to take his children home
Come hear Uncle John's Band
playing to the tide
Come on along or go alone
he's come to take his children home

「アンクル・ジョンズ・バンドよ、この川の畔に来ないか、ぼくといっしょに来るか、それともなければ、ひとりでいくか、彼は自分の子どもたちを連れ帰りにやってきた、アンクル・ジョンズ・バンドよ、潮の満ち干に合わせてプレイしてくれ、いっしょに来るか、ひとりでいくか、彼は自分の子どもたちを連れ帰りにやってきた」

何度いっしょに歌ったかわからないコーラスですが、いざ、意味を考えてみると、なんのことなのか、さっぱりわかりません。シングアロングした経験からいうと、ここは音としてうたって楽しいくだりです。高校生のときは、「潮の満ち干に合わせてプレイする」というのは、きれいなイメージだと思いました。いまでも悪くないと思いますが、そんなことをいっても解釈にはなんの多足にもなりませんな。

これでなにかを書いたことになるのかどうか、いたって心もとないのですが、まあ、とにもかくにも、よろめきつつではあれ、最後までたどり着けたので、諒としてください。本日は歌詞を見るだけで精いっぱいだったので、音の検討は明日以降にさせていただきます。

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by songsf4s | 2008-05-11 23:30 | 風の歌