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いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その9 Here Todayセッション
 
今日はいろいろトラブルがあったりで、まったく余裕がなく、いきなり本題です。本日のPet SoundsトラックはHere Today、またしてもハル・ブレインのいない曲、いや、キャロル・ケイもいないリズム・セクションです。

さっそく完成品から。

The Beach Boys - Here Today (stereo)


またまた変なリズム・アレンジです。いや、Pet Soundsのなかで、このHere Todayがもっとも奇妙なドラム・アレンジといえるでしょう。いったいどうなっているのかと思います。

トラック・オンリーを聴くと、すこしわかってきます。

The Beach Boys- Here Today (track only, stereo)


例によってブラッド・エリオットによるパーソネルを書き写します。

ドラムズ……ニック・マーティニス
パーカッション……フランク・キャップ
タンバリン……テリー・メルチャー
アップライト・ベース……ライル・リッツ
エレクトリック・ベース……レイ・ポールマン
ギター……アル・ケイシー、マイク・デイシー
ピアノ……ドン・ランディー
オルガン……ラリー・ネクテル
バリトン・サックス……ジェイ・ミグリオーリ、ジャック・ニミッツ
トロンボーン……ゲイル・マーティン
ベース・トロンボーン……アーニー・タック

Pet Soundsはまったく同じメンバーの曲というのがない不思議なアルバムですが、なかでもHere Todayは異色です。

遊びに来た友だちのプレイというのもないアルバムですが、唯一、この曲でテリー・メルチャー(ブライアンのことを直接にも知っていただろうが、ブルース&テリー時代の相棒、ブルース・ジョンストンがちょうどビーチボーイズに加わったところだった)がタンバリンをプレイしています。

ベースはキャロル・ケイではなく、レイ・ポールマン。しかし、CKさんが何度もおっしゃっているように、はじめのころはビーチボーイズのベースはほとんどレイ・ポールマンがプレイし、彼女はギターだったのが、途中で交代したのであり、レイ・ポールマンがビーチボーイズのセッションでベースをプレイするのは異例ではありません。たんに、このころはギターのほうが多かっただけです。

ニック・マーティニスという人は、うちにあるものでは、ピアニストのピート・ジョリー(セッション・ワークとしては、クリス・モンテイズのA&Mのアルバムが有名)の盤でプレイしています。Pet Soundsに時期的に近いものとしては、1965年のToo Muchというピート・ジョリーのアルバムにクレジットされています。

ユーチューブで検索したら、オオノさんがアップしておいてくれた、トミー・テデスコとピート・ジョリー・トリオ(ベースはチャック・バーグホーファー)が共演したトラックがありました(助かりました>オオノさん)。

Tommy Tedesco with the Pete Jolly Trio (Nick Martinis on drums) - Dee Dee's Dilemma


ということで、瞠目するほどのテクニックの持ち主ではないものの、タイムはまずまず安定しています。ディスコグラフィーにはほかにドン・エリスだとかジャック・モントローズといった名前があるので、基本的にはジャズ・プレイヤーなのでしょう。ポップ系のセッションではPet Sounds以外で名前を見た記憶はありません。

Pet Soundsでは例外的なことですが、このトラックのパーソネルはほとんど疑問が残りません。セッションを聴くと、たしかにギターは、エレクトリックとアコースティックの二本です。

レイ・ポールマンはベースとありますが、フェンダー・ベースではなく、ダンエレクトロ6弦ベース(ダノ)をプレイしたのだろうと思います。ギターのように聞こえるのはダノでしょう。ギターは二本ともコード・ストロークだと思います。

ということで、ここにある以外の楽器が鳴っている、ということはありません。わからないのは、フランク・キャップのパーカッションとはなにか、だけです。初期テイクを聴きながら考えました。

サンプル The Beach Boys - "Here Today" (take 1 through 3)

ヴォーカルがないと、ドラムの変なパターンがいっそう奇妙に聞こえてきますが、だんだん、これはひとりのプレイではない、と思えてきました。ニック・マーティニスとフランク・キャップが分担して、このドラム・フレーズをプレイしているのではないでしょうか。

いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その9 Here Todayセッション_f0147840_0143750.jpg

冒頭のパターンは複雑ですが、フロアタム、スネア、フロアタム、タムタム、フロアタム、タムタム、フロアタム、タムタムといったパターンでやっているように思えます(この分担はあとのほうのテイクでは変更される)。

ひょっとしたら、このフロアタムに聞こえるものが、径の小さいコンサート・ベースドラム(要するに大太鼓)である可能性もあると思います。つまり、他の曲ではティンパニーとドラムのコンビネーションでやったことを、すこし変更したのではないかと感じます。フランク・キャップは、この曲ではベースドラムをスティックで叩くといった、変則的なことをやったのではないでしょうか。

この曲のドラムのパターンは、ひとりでやるより、二人で分担するほうがむずかしいので、もしもそういう変則的なことをしたのなら、あくまでも音色の問題でしょう。フロアタムのかわりにコンサート・ベースドラムを使った例としては、フィル・スペクターのDr. Kaplan's Officeがあります。

Phil Spector - Dr. Kaplan's Offic


この曲では、ハル・ブレインのスネアのバックビートに、コンサート・ベースドラム(ニーノ・テンポが、マレットではなく、スティックで叩いた)を重ねたそうです。

Here Todayに戻ります。ヴァースのパターンのいずれもがやっかいですが、この曲のハイライトは、風変わりなインストゥルメンタル・ブレイクです。そこだけを取り出したテイクが残されています。

サンプル The Beach Boys - "Here Today" (insert take 1 through 4)

よくこんなものを思いついたなあ、と感嘆しますが、はじめはブライアンも少し迷いがありますし、プレイヤーたち、とりわけダノも含む三人のギター陣が苦労しています。

とくにレイ・ポールマンは、弾きにくいダノで、高音部の16分のダブル・タイム・ピッキングをしなければならず、さらに、後半では低音弦と高音弦の速い往復もあり、うわあ、汗かいただろうなあ、です。

こういう無理を要求してかまわないのが、セッション・プレイヤーのありがたさ、ロックバンドでは、こうはいきません。テイク20までいってしまいますが、最後はきっちりまとめてくるハリウッドのスタジオ・プレイヤーのすごさ!

このシリーズでは、ヴォーカルはないものとして、トラックの検討ばかりやってきましたが、たまにはヴォーカルのほうのアウトテイクを聴いてみます。

完成品では主としてマイク・ラヴがリードを歌っています。しかし、初期テイクでは、いくつかブライアンが歌ったものがあります。最初のアテンプト、ダブルトラックにする以前の裸のヴォーカルをどうぞ。

サンプル The Beach Boys - "Here Today " (1st vocal overdubbing by Brian Wilson)

このトラックには、さらにあとでブライアン自身がヴォーカルを重ねています。よけいなことですが、そのときに、大きなゲップをしていて、ほかの曲でもそういうことがあったのを思いだしました。当てずっぽうですが、ブライアンは潰瘍を患っていたのではないかと思います。ドラッグ問題の淵源は案外そんなところにあったり、はしないかもしれませんが!

Pet Soundsのなかにあっては、Here Todayは重要な曲とは見なされていないようですが、リズム・アレンジに関するかぎり、やはり尋常一様ではありません。ドラマーはこんなアレンジは絶対にしないでしょう。

また、中間のインストゥルメンタル・ブレイクは、God Only Knowsのunusualなインストゥルメンタル・ブレイクと並べて論じられてしかるべきシークェンスだと考えます。ただごとじゃないですよ、こんなシークェンスをつくるセンスと脳髄は。

いまさらのようにPet Soundsを聴きなおしてみる その9 Here Todayセッション_f0147840_0154851.jpg

ボツになったブライアンのヴォーカル・オーヴァーダブを聴いているうちに、なんだか、あまりの大きさと重さに呆然となってしまいました。

まず、メロディーか、すくなくともコード・チェンジのアイディアを得るのでしょう。すぐに、たとえばホーン・ラインの断片なり、ギターのオブリガートが思い浮かぶかも知れません。

頭で考えたり、ピアノに向かったりしながら、だんだんヴァース、コーラス、ブリッジが姿をあらわし、歌詞を依頼できる段階にたどりつきます。

このあと、あるいはすでにメロディーを整えている段階で並行して、アレンジの想を練らなければなりません。右から左に流す、クリシェ満載のイージーなアレンジではありません。だれも聴いたことがないような音を配した野心的なサウンド構築です。

ふつうのアレンジャーは、弦 and/or 管の譜面を書き、コピイスト(写符)にまわし、あとはセッションでコンダクトをするだけでおしまいです。

でも、ブライアンは、ギター、ベース、ピアノ、ドラム、複数のパーカッション、こうした、ふつうのアレンジャーなら手をつけないところまですべて自分でやりました。

また、通常なら、ヴォーカル・アレンジは、管や弦のアレンジャーではなく、専門のアレンジャーがおこないます。ブライアンはそれも自分でやりました。しかも、ビーチボーイズの五人が何度も繰り返しオーヴァーダブしなければならないほど複雑なヴォーカル・ハーモニーをつくったのです。

そして、こうしたパーツが意図どおりに完璧に組み上げられるように、セッションをスーパヴァイズしました。

これでもまだ終わりではありません。こんどは自分でリード・ヴォーカルを歌い、うまくいかなければ、あるいは気に入らなければ、弟なり、マイク・ラヴなりに、その役割を手渡すことを決断しなければなりませんでした。

ここまであらゆることをしたミュージシャンというのは、音楽史全体を見渡しても、ほかにいないのではないでしょうか。

Here Todayのセッションを聴きながら、ブライアン・ウィルソンは究極のサウンド・クリエイターだったのだと、改めて溜息をついたのでした。


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ビーチボーイズ
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The Pet Sounds Sessions
The Pet Sounds Sessions


ピート・ジョリー
Yeah!
Yeah!
by songsf4s | 2011-11-07 23:58 | 60年代
Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)
 
本題の前に、例によって、お知らせです。散歩ブログを更新しました。外題は、

「ツバメの電線音頭」

です。前回は、こちらとツイッターの両方に更新情報を書いたら、本来は閑散たるはずのわが散歩ブログとしては前代未聞の多数のお客さんがいらしたので、今回はツイッターはなし、こちらだけにしました。プレッシャーがかかるのは当家だけで十分、あちらはまだしばらく、気ままにやりたいと思っています。

◆ 二の枕: 長門裕之 ◆◆
すでにご存知のように、長門裕之没だそうです。かつて日活で活躍した俳優ではありますが、当家で取り上げた映画で、長門裕之が出演したのはたった一本、『狂った果実』だけです。

いちおう、リンクを張っておきましたが、ご覧になるほどのことは書いていません。なにしろ、この映画の長門裕之はあくまでもカメオ・アピアランス、『太陽の季節』と出演者やスタッフが重なるからという理由と、映画初出演の弟・津川雅彦への激励という意味で登場しただけでしょう。

もうひとりの出演者の兄・石原慎太郎といっしょに、不良学生として登場し、石原裕次郎たちと浜辺でもめて、あっさりのされてしまいます。あちらの記事を開くのも面倒だという方のために、その部分をコピーしておきます。写真とそのキャプションでしか言及していないのです。

Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)_f0147840_23242922.jpg

Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)_f0147840_23245022.jpg
カメオ・アピアランスと特別出演は、『太陽の季節』に主演した(というより津川雅彦の兄としてか)長門裕之と、裕次郎の兄で、この映画の原作、脚本を書いた東京都知事。海岸の遊園地で岡田真澄にからんだばかりに、裕次郎たちとゴロをまくハメになり、二人ともあっさり片づけられてしまう。痛そうかつ悔しそうな顔の都知事は、素人にしては演技派!

以上、ペースト終わり。

◆ プレイヤー、トム・テデスコ ◆◆
今日もトミー・テデスコについて少々。

まず、ウェブ上でもっともたくさんトミー・テデスコのトラックが聴ける、オオノさんのブログへのリンクを。右のサイド・バーにあるリンクと同じものですが。

オオノさんのブログ

オオノさんのブログのトミー・テデスコ・タグ

このタグで引っかかるページにおかれたサンプルを聴けば、トミーのプレイの概要は簡単にわかります。わたしの記事ではまだるっこしいという方は、直接、オオノさんのサンプルをお聴きになってください。

先日、ご紹介したAdd More Musicの「レア・インスト」および「50ギターズ」、さらに上記のオオノさんのブログを合わせると、相当なトラック数になるので、トミーの紹介はそれで十分かもしれません。でもまあ、わたしなりに、好きなトラックもあれば、ちょっと書きたいこともあるので、いろいろダブりはありますが、しばらくは、Remembering Tommy Tedescoシリーズをつづけようと思います。

とりあえず一曲、オオノさんがユーチューブにアップされたものを。

トミー・テデスコ Dee Dee's Dilemma


オオノさんがクリップに注記されていますが、これはトミー・テデスコとピート・ジョリー・トリオの共演です。わたしはピアノを聴かない人間ですが、ピート・ジョリーとリオン・ラッセルは例外で、ピアノ単体でも面白いと感じます。

ピート・ジョリー・トリオのベースはチャック・バーグホーファーで、この人もまたジョリー同様、ハリウッドのスタジオでセッション・プレイヤーとして活躍しました。二人ともクリス・モンテイズ・セッションの常連でした。

また、バーグホーファーはハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスのメイン・ベース・プレイヤーでもあったそうで、二人ともA&Mレコードとのつながりが強かったことになります。ピート・ジョリー、チャック・バーグホーファー、ともにタイムがいいのでスタジオ・ワークの適性がありました。

Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)_f0147840_2048188.jpg

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写真上 右からピート・ジョリー、ひとりおいてハル・ブレイン、ジェリー・マリガン。写真下 チャック・バーグホーファー(中央)

ドラムのニコラス・マーティニスというプレイヤーは、ピート・ジョリーの盤でしか見た記憶がありませんが、マックス・ローチやグレイディー・テイトのような、ひどいタイムではなく、安定しています。タイムのいい人は、概してタイムの悪いプレイヤーを嫌うものなので、ピート・ジョリーとチャック・バーグホーファーのいるところには、やはりそれにふさわしいドラマーがやってきたのでしょう。

トミー・テデスコは、このトラックでは当然、L5あたりのギブソン・ジャズ・ギターを使っていると思われます。テレキャスターのときとはちがって、ギブソンをもったときのトミー・テデスコはまじめに弾きます。

このGuitars of Tom Tedescoというアルバムは、企画者側の考え(すなわちセールス重視)と、トミーの考えが入り混じったような選曲に見えますが、この曲はトミーの考えで選ばれたのではないでしょうか。

◆ 雇われガンマン、トミー・テデスコ ◆◆
トミー・テデスコは、自伝のなかで、「マーケッツのギタリスト」などとは呼ばれたくないと明言しています。嫌がらせをするわけではないのですが、実物を聴くと、トミーのコメントの意味がより明確になるので、おひとつどうぞ。

マーケッツ Out of Limits


こちらはテレキャスターでしょう。バーニー・ケッセルやハワード・ロバーツなど、ジャズ・プレイヤーがセッション・ワークにしばしばテレキャスターを使っているのを不思議に思ったことがあります。ケッセルがいっていたのだと思いますが、その理由は、軽くて持ち運びが楽だからだそうです!

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フェンダー・テレキャスターとバーニー・ケッセル

トミーがなぜマーケッツでのプレイを嫌ったかは、たちどころにおわかりでしょう。ギター・プレイヤー、などと胸を張れるような仕事はしていません。アレンジャー(このアルバムはギタリストでもあるレイ・ポールマンが譜面を書いたのだろう)に指定されたとおりに弾いているだけです。彼は読譜と運指とピッキングの技術を提供したのであって、音楽的な意味では貢献していません。

このあたりはひとそれぞれですが、トミーは傍観者的タイプだったのだと思います。要求されたことはなんでもする(あるいは「できる」)かわりに、要求されないことはまったくしないタイプだと考えています。

しかし、できあがったアルバムをトータルで見れば、プロデューサーのジョー・サラシーノの意図したとおりになったのだと感じます。ハル・ブレインが叩きまくっていることや、管のアレンジやレズリー・ギターの効果的な使用などのおかげで、なかなか楽しめるものになっています。

もう一曲いこうと思い、ユーチューブを検索したら、インチキな再録音ヴァージョン(そんなものがつくられるほど売れているのか?)が転がり出てしまったので、正しいヴァージョンを自分でアップしました。同じく、アルバムOut of Limits収録のトラックです。

サンプル The Marketts "Twilight City"

イントロでハル・ブレインがBe My Babyビートを使っているのが笑えます。セッションによってメンバーはちがいますが、アップライト・ベース=ジミー・ボンド、ピアノ=リオン・ラッセル、パーカッション=アール・パーマー、ギター=トミー・テデスコおよびレイ・ポールマン(および不明のギタリスト)、ダンエレクトロ6弦ベース=ビル・ピットマンといった編成の写真がCDには収録されています。

Remembering Tommy Tedesco 2: Out of Limits (The Marketts)_f0147840_214353.jpg

このTwilight Cityは、上記パーソネルに近いと感じます。ギターは4本、テレキャスター、レズリー・ギター、アコースティック(ないしはアンプラグドしたフルアコースティック・ジャズ・ギター)、ダンエレクトロ(AFMのコントラクト・シートでは、ベースではなく、ギターと記載される習慣だった。つまり、ベースではなく、1オクターヴ低くチューニングするギターとみなされたので、パーソネルを読むときには注意が必要)=ビル・ピットマンでしょう。

トミーはこの曲でも、譜面に書かれたラインを弾いただけに聴こえます。ポップの世界はジャズやクラシックと違うので、自己主張をするのはプロデューサーひとりだけで十分なケースがしばしばあります。この盤はジョー・サラシーノのものであり、プレイヤーはみな雇われガンマンにすぎません。ハル・ブレインがやりたい放題に叩いているのは、たんに結果というか、サラシーノがそう望んだからにすぎないのだと想像します。

あと二曲用意してあったのですが、長門裕之関連記事のことを書き足したので、今日はここまでで切り上げます。


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マーケッツ
Out of Limits
Out of Limits
by songsf4s | 2011-05-22 18:04 | Guitar Instro
ギター・オン・ギター3 ヴェンチャーズのLolita Ya Ya他
タイトル
Lolita Ya Ya
アーティスト
The Ventures
ライター
Bob Harris, Nelson Riddle
収録アルバム
Going to the Ventures Dance Party!
リリース年
1962年
ギター・オン・ギター3 ヴェンチャーズのLolita Ya Ya他_f0147840_19144223.jpg

「恒例」などといっておいて、先月はウェブが使えなかったのでサボってしまった、アクセス・キーワードのリスト、はや今月も下旬になってしまいましたが、昨日までの結果をご覧いただきましょう。

ギター・オン・ギター3 ヴェンチャーズのLolita Ya Ya他_f0147840_23503167.jpg

「パシフィック・パーク茅ヶ崎」にふれたのは、ビリー・ヴォーンのPearly Shellsの記事です。とくにくわしくふれたわけではありませんが、例によってブックマークがわりにこのキーワードをご利用の方がいらっしゃるのでしょう。

「芦川いづみ」キーワードは、毎度どうもありがとうございます、と頭が下がってしまいます。月初めのまだキーワードが少ないとき、「芦川いづみDVDセレクション」というものもランクインしていました。

『硝子のジョニー 野獣のように見えて』
『あした晴れるか』
『誘惑』

という三本がセットになったDVDボックスだそうです。『硝子のジョニー』は、宍戸錠、アイジョージとの共演で、芦川いづみは、彼女としてはほとんどスペクトル領域外というべき、汚れ役を演じていました。数十年前に見たきりで、ディテールは忘れてしまいましたが、あまり日活らしさのない映画です。



わたしとしては、お嬢様風の芦川いづみのほうがずっといいと思いますが、女優のキャリアにはこういう役も必要だったのでしょう。でも、やっぱり、こういう映画のほうが……。

あいつと私


大々的に記事にしたときにはなかったクリップを見つけたので、もうひとついってみましょう。豪快なキャメラワークによるオープニング・クレジットは素晴らしいのですが、芦川いづみはなかなか出てきません。でも、いざ登場の段になれば、これがじつに印象的なのです。『俺は待ってるぜ』の北原美枝の登場するところとどっちがいいかってくらいです。

霧笛が俺を呼んでいる


『あした晴れるか』は重要性の低い作品とみなされていますが、わたしは好きです。いきなり昔のやっちゃば(秋葉原駅付近にあった東京青果市場)から、石原裕次郎が三輪トラックに乗って飛び出してくるという、いかにも日活らしい、ただし、陰影のない、したがって評論家がほめない、明朗闊達な映画でした。芦川いづみは、裕次郎を担当する雑誌編集者という役だったような気がします。カチッとした珍妙な黒縁眼鏡をかけて、変なインテリ女性を演じていました。

裕次郎の役はたしかカメラマンで、東京中を写して歩くという話なので、町の風景を見るのが大好きなわたしのような人間は、むやみにストップして、ディテールを確認しながら見ちゃうという、素晴らしい映画です。裕次郎は、佃島に住んでいるという設定だったような記憶あり。映画の出来がどうのなどというまえに、記録された東京に圧倒されます。最後の『誘惑』という映画は未見です。

ギター・オン・ギター3 ヴェンチャーズのLolita Ya Ya他_f0147840_23511037.jpg

『日本のいちばん長い日』『ジム・ゴードン』『八月の濡れた砂』に関しては、たっぷり文字を費やしたので、検索されても不思議はありませんし、こうしたキーワードで当家にいらしても、なんだ、これだけか、と失望なさることはないだろうと思います(まあ、腹を立てる方はいらっしゃるかもしれませんが!)。

「バークレー牧場」については、それほどくわしくふれたわけではないのですが(再見できず、記憶のみに頼って書いた)、そもそも、このドラマにふれている日本語のページなど、ほとんどないでしょうから、粗末な記事でもそれなりに読んでいただけたかもしれません。

バークレー牧場(The Big Valley)オープニング&エンディング・クレジット


いやまったく、けっこうな楽曲、けっこうなサウンド、申し分ありません。ジョージ・デューニングの曲だけ集めて聴いてみたくなります。

Beyond the Reef(「珊瑚礁の彼方に」)は、四回に分けて、マーティー・ロビンズエルヴィス・プレスリーヴェンチャーズ、そして山口淑子(李香蘭)のヴァージョンにふれています。

How High the Moonのキーワードもつねに上位にありますし、ヴォーン・モンローヴェンチャーズの二回に分けてとりあげた(Ghost) Riders in the Skyも同様です。

パトリシア・ニールは、『007は二度死ぬ』のテーマ曲を取り上げたときに、脚本家としてこの映画の製作に参加したロアルド・ダールの夫人としてご紹介しただけで、ほんのわずかな言及しかしていません。相済みません。昔見た『摩天楼』、ちょっと再見したいような気がします(いま『蜃気楼』と書きそうになり、ちがうような気がして、フィルモグラフィーを見た。ボケはじめたかもしれない)。

以上、検索で当家にたどり着かれたかたにも、ブックマークなさっているかたにも、いつものように厚く御礼申し上げます。

◆ Lolita Ya YaとLucille ◆◆
例によって長い枕になりましたが、ここから本題です。比較的最近のことですが、その1その2の二度にわたって、「ギター・オン・ギター」という記事を掲載しました。8ビートの世界では、複数のギターを重ねるのは当たり前、でも、そういうことはめったにしない4ビートの世界にもギター・アンサンブルはある、というので、そういう例をいくつかお聴きいただきました。

しかし、かつてLolita Ya Ya by the Venturesという記事に書いたように、8ビートの世界にも、「当たり前」とはいえないほど、複数のギターの配置の仕方に知恵を絞ったものがあります。今日から数回に分けて、そういうものをお聴きいただく予定です。まずは、そのヴェンチャーズのLolita Ya Yaからです。

サンプル The Ventures "Lolita Ya Ya"

この曲については、オリジナル記事である、上記Lolita Ya Ya by the Venturesで詳細に書いたので、気になることがあれば、そちらをご覧ください。

いや、聴けば聴くほど、ハリウッドのインフラストラクチャーの厚みをひしひしと感じたあげく、圧死しそうになります。多数の楽器をいかに配置するかという設計も素晴らしいし、全員一糸乱れぬ規定演技もお見事、数回にわたるオーヴァーダブをしたであろうに、それをまったく感じさせない録音とミックスダウンも素晴らしく、文句のつけようがありません。

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データがないのですが、やっぱり場所はユナイティッド・ウェスタン、卓に坐ったのはボーンズ・ハウでしょうか。すごい音だとつくづく感心します。

それにしても、こういうアレンジをしてみようというのは、だれのアイディアだったのでしょうか。ボブ・レイズドーフ? ほとんどオーケストレーターの発想で、ロックンロールのニュアンスはありません。

しかし、ロックンロール・ニュアンスのギター・アンサンブルもあります。Lolita Ya Yaが収録されたGoing to the Ventures Dance Partyのひとつ前のアルバム、Mashed Potatoes and Gravyから1曲。

サンプル The Ventures "Lucille"

こちらはリードは2本、せいぜい多いところでも3本とシンプルですし、インフラストラクチャーの厚みというより、個人技の集積というムードです。こんな曲、インストにならんだろうといいたくなりますが、案に相違して、じつに面白い味のあるトラックに仕上がっています。ベンドのかけ方がなんとも微妙で、そのあたりが味の出た理由のような気がします。

ギター・オン・ギター3 ヴェンチャーズのLolita Ya Ya他_f0147840_21342210.jpg

時期的に考えて、リードのひとりはビリー・ストレンジ御大でしょう。もうひとりはだれでしょうか。まあ、トミー・テデスコ、グレン・キャンベル、ジェイムズ・バートン、その他うまい人はいくらでもいるので、特定は困難です。

奇妙なストローク・パターンのリズム・ギターはやはりCKさんだろうと推測します。凡庸なプレイが大嫌いな人ですから。ベースはレイ・ポールマンだろうと思います。何カ所か、遅れているところがあるのは、親指ピッキングのせいでしょう。かつてCKさんに、レイ・ポールマンは親指ピッキングだったという話を伺って、親指では16分は無理では、といったら、そう、だからわたしに仕事が来るようになった、とのことでした。親指だと、アップのときにタイムが乱れやすいと思います。そのあたりは、人差し指一本だったチャック・レイニーも同じで、ダウンのときにタイムが乱れることがあります。ラスカルズのIf You Knewが典型。まあ、レイニーの乱れは味になっていましたが。

ヴェンチャーズには、ほかにもリードを重ねたトラックがありますが、そんなことをいっていると終わらなくなるので、2曲だけにしておき、次回はべつのアーティストのロックンロール・ギター・アンサンブルを聴いてみようと思います。


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Mashed Potatoes & Gravy / Going to Ventures Dance
Mashed Potatoes & Gravy / Going to Ventures Dance

芦川いづみ DVDセレクション
芦川いづみ DVDセレクション


by songsf4s | 2010-08-23 23:54 | Guitar Instro
Tell'em I'm Surfin' by the Fantastic Baggys
タイトル
Tell'em I'm Surfin'
アーティスト
The Fantastic Baggys
ライター
Phil Sloan, Steve Barri
収録アルバム
Surfin' Craze
リリース年
1964年
他のヴァージョン
Jan & Dean
Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_1642138.jpg


ファンタスティック・バギーズの曲は、ついこのあいだ、Summer Means Funを取り上げました。あの曲は南カリフォルニアの夏のアイコンがずらっと並べられているだけでしたが、このTell'em I'm Surfin'は、ちゃんとした設定がありますし、ストーリーのようなものもあれば、ウィットもありで、歌詞の出来はこちらのほうがはるかに上です。

◆ 試合を放棄するキャプテン ◆◆
では、最初のヴァースとコーラスを見ます。パーレン内は右チャンネルに配された「レスポンス」です。

Hey mama, if any of the guys from my baseball team
Ever called me on the phone
To ask me to play in an important game
Just say their captain ain't at home

Tell'im I'm surfin'
(Don't care 'bout hittin' homeruns)
Tell'im I'm surfin'
(Wanna have me some fun, fun, fun now)
I'm trading in my bat and ball
Say I'll see you in the fall
I’m goin' surfin'

わたしは野球ファンなので、このファースト・ヴァースだけでノリました。「ねえママ、チームのだれかがもしも電話をかけてきて、だいじな試合に出てくれっていってきたら、キャプテンは留守だっていっといて」となっています。

これだけでいろいろなことがわかる仕掛けです。1)この歌は母親に語りかけるモノローグ形式らしい、2)語り手は高校生らしい(大学生の可能性もあるでしょうが、それにしてはちょっと子どもっぽいと感じます)、3)野球が得意、つまりスポーツは得意らしい。

コーラスでは、「ぼくはサーフィンをやっているっていっておいて」と、ゲームには出ないことを繰り返し宣言しています。それに対してバックコーラスが「ホームランを打つことなんてどうでもいいのさ」とレスポンスするところが、なんとも愉快です。

「バットとボールも売り飛ばす、秋に会おう、サーフィンにいくんだ」というわけで、野球は、サーフィンの楽しさを強調する引き立て役として登場したのでした。チームのみんなは、こんな身勝手な奴をキャプテンに選んでしまった不明を恥じていることでしょう。まあ、どんなチームでも中心選手の離脱はよくあることなので、サーフィン野郎には勝手に波に乗らせておいて、残ったみんなでがんばりましょう。

Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_16475463.jpgセカンドに滑り込むブライアン・ウィルソン。彼はサーフィンより野球が好きだったようです。よけいなお世話かもしれませんが、グラヴがスパイクとベースのあいだに入っているので、これはアウトですね。

Summer Means Fun同様、引用も出てきます。同じ年にリリースされたビーチボーイズのFun, Fun, Funです。こういう引用というのは、先達への賛辞、仲間意識の表明と考えておけばいいでしょう。

◆ すがりつく美少女をふりきって ◆◆
これで設定は(みごとに)完了したので、ソングライターは同じ方向で展開するための材料を見つければいいだけです。つぎのヴァースとコーラスでは、野球にかわって、女の子がサーフィンの犠牲になります。

And if that pretty little girl from across the street
Who's been bothering me for days
To go swimming in the pool
Well, her pool is real cool
But it hasn't got 10 foot waves

Tell'er I'm surfin'
(She's a mighty, mighty cute girl now)
Tell'er I'm surfin'
(Gonna rather be shooting the curl now)
If she wants my company,
I'll be out in wind and sea
I'm goin' surfin'

「通りの向かいのあの可愛い子がこのところずっと、プールで遊ぼうってしつこくいっているんだ、ま、彼女のうちのプールもすっごくいいけど、あそこには3メートルの波がないんだよ」と、サーフィンの魅力のまえには、近所の「むちゃくちゃに可愛い女の子」(She's a mighty, mighty cute girl)もかたなしです。

Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_17143123.jpg
Shoot the curlはサーフ熟語で、「パイプになった波に乗る」という意味。ブライアン・ウィルソンがプロデュースしたハニーズに、これをタイトルにした曲があります。

コーラスの後半は「彼女にぼくはサーフィンにいってるっていっといて、いっしょに遊びたいなら海にいるからってね」となっています。

サンディエゴについての歌というどこかのBBSで「ジャン&ディーンがWindanseaのことをTell'em I'm Surfin'で歌っている」といっている人がいました。サンディエゴにはたしかにWindanseaというサーフ・ポイントがあるようです。

しかし、この語り手は、サード・ヴァースで、マリブにいくといっているので、ここでサンディエゴが出てきては矛盾することになります。たんなる一般名詞のwind and sea、「海風のなかでサーフィンをしている」とみなすほうが合理的でしょう。マリブとサンディエゴとのあいだには(関東ローカル話で恐縮ですが)七里ヶ浜と九十九里どころではない距離があります。そんな距離を往復する時間があったら、海に出ているでしょう。

◆ サーファーの知られざる必需品 ◆◆
ブリッジでは、去年の夏は必死でバイトをやったので、新しいサーフボードを買う金ができた、今年の夏はずっと遊び暮らすんだ、といったことが語られて、最後のヴァースに入ります。

So just pack me a lunch and I'll be on my way
Oh yet there's one more thing to do
If the mailman comes with a letter for me
Just forward it to Malibu

「だから、早く弁当をつくって、すぐに出かけるから、あ、まだひとつあった、ぼく宛に手紙がきたら、マリブに転送してね」というわけで、Summer Means Funにつづいて、またマリブが登場しました。サンディエゴのウィンダンシーにいってしまっては、マリブに郵便物を転送してもらう意味がありません。

この曲のシングルは1964年6月のリリースと記録されています。ということは、語り手は、夏休みになったので、お母さん、オレ、出かけるからね、と、おそらくはキッチンで大騒ぎしていることになります。料理が得意なお母さんなら、Disney Girlsで書いたように、自家製レモネードのポットをもたせてくれるかもしれません。

高校のバンド仲間にサーファーがいたのですが、彼らは自分で弁当をつくっていました。素行を見れば、とうてい弁当などつくる殊勝な人間には思えなかったのですが、サーフィンのためならば、なんでもやる根性はもっていたようです。

不便な場所で一日乗りつづけるわけですし、近くにレストランがあっても、食べるには着替えなければならず、面倒だし、時間ももったいないので、つねに弁当持参だといっていました。この曲で、早く弁当つくってとアメリカの高校生もいっていることがわかり、洋の東西を問わず、サーファーにとって、ランチは普遍的な問題なのだな、と納得してしまいました。

◆ もうひとつの必需品、改造車 ◆◆
最後のコーラスです。

Where I'll be surfin'
(Just travel in my '34 Ford now)
Tell'em I'm surfin'
(I really wanna waxin' my board now)

どうやら語り手は自分の車、なんと1934年型フォードでマリブへ出かけることがわかります。もちろん、34年に製造されたままではなく、改造したものにちがいありません。

Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_17214281.jpg1934年型フォード3ウィンドウ・クーペ。リップコーズがThe toughest machine in townと歌ったのはこれでしょうか。

子どものころに見たビーチ・ムーヴィーのせいで、アメリカ人なら、高校生だってみんな自分の車を乗りまわしているものだと思いこんでいました。しかし、ハル・ブレインの回想記を読んで、そんなことはないのだとわかりました。東部のコネチカットで生まれたハルは、高校のときにカリフォルニアに引っ越してきたら、みんな自分の車をもっているのにびっくりした、といっています。これで彼は車に取り憑かれ、のちにあの「クラシック・ロールズ・ロイス・コレクション」が誕生することになったのだとか。

してみると、この歌で、高校生がお母さんに、何日か帰らないからね、手紙はマリブに転送して、なんて勝手なことをいって、自分の車で出かけてしまうのは、カリフォルニア以外の土地に住む同年代の子どもたちには、ちょっとした驚きだったのかもしれません。そういうカリフォルニアのサーファー少年の見栄、といってわるければ、プライドみたいなものが、この歌には感じられます。

いかにも南カリフォルニアらしい脳天気な歌詞で、個人的には、ゲーリー・ボンズのSchool Is Outに歌われた夏休みより、こちらのほうが好ましく感じられます。ニューヨークでは野球観戦だけお付き合いして、地下のクラブは遠慮させてもらい、あとはマリブですごすなんていうのだとうれしいんですが。それも浜辺で野宿ではなく、粋なビーチハウスだったりすると、いちだんとクールでしょう。

◆ 各ヴァージョン? ◆◆
各ヴァージョンといっても、うちにはほかにジャン&ディーン盤があるだけです。しかし、よく聴くと、それすらも存在しないように思えてきます。Summer Means Funの記事をお読みになった方は、もうすでに「またかよ」と思っていらっしゃるでしょう。そうです、どうやら、またこの二つのグループは同じトラックを共有したようなのです。

Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_17494290.jpgよって、深く考えずに、ひとつのものとして聴けばいいのですが、やっぱり、わたしはジャン&ディーン(とくにディーンなのだと思いますが、はっきり聞き分けられるわけではありません)のピッチの悪さがすこし気になるので、同じトラックであるならば、バギーズ盤のほうが好ましく感じます。そもそも、右チャンネルでハーモニーをつけているのは、バギーズもジャン&ディーンも、スローンとバリーの二人だから、ヴォーカルも半分は共通しているわけで、比較もなにもあったものじゃありません。

Summer Means Funのところで、ライノのCowabunga!のブックレットに収載されたパーソネルを書いておきましたが、もう一度、書き写します。

Steve Barri: vocals・P.F. Sloan:vocals, guitar・Tommy Tedesco: guitar・Ray Pohlman: bass・Hal Blaine: drums

このパーソネルは不完全です。盤ではピアノが聞こえるのに、だれなのかわかりません。プロデューサーはスローンとバリーの二人。

1964年は「ビートルズの年」でした。もう一年早くリリースされれば、この曲もチャートインしたかもしれませんが、アメリカのグループが大苦戦した年にぶつかったのは不運でした。もうサーフィン・ブームは終わってしまったのです。つぎの流行もの、フォーク・ロックが発明されると、バギーズの二人もそちらで活躍することになります。サーフ・ミュージックとフォーク・ロックの人脈の重なり方は興味深いのですが、それはまたべつの機会に。

◆ ハル・ブレインのシンコペーション ◆◆
Summer Means Funのように、思わずギターを引っ張り出すほどパワフルではありませんが、アップテンポなのに、走ったり、突っ込んだりしない、リラックスした気持ちのよいグルーヴです。ハル・ブレインも軽く流していますが、聴きどころはあります。

ヴァースが終わって、4分のキック・ドラムだけのストップに入り、そこからコーラスへの「戻り」で、ハルは、スネアでシンコペートした8分のビート(裏拍)を入れてきますが(こういう場合、キックでその表拍を入れるのも彼のいつものやり方ですが、この曲の場合は、わざわざそのためにキックを入れるまでもなく、そこまでのキックによる4分の連打の流れがあるので、とくに強く踏み込んで強調してはいません)、この際の微妙なタイムの遅らせ方は、彼のトレードマークで、60年代中期にはしばしば使っています。これを聴くと、あ、ハルだ、とニッコリなります。ドラム馬鹿としては、ちょっと血が騒ぐ一瞬です。

Tell\'em I\'m Surfin\' by the Fantastic Baggys_f0147840_17545224.jpgジャン&ディーンのライヴでストゥールに坐るハル・ブレイン。キック・ドラムのヘッドにはジャン&ディーンの似顔絵。右手の黒く四角いものはランプ付き譜面台。


ハル・ブレインというと、派手なフィルインで有名ですが、こういう、フィルともいえない、軽い一打にも特徴があり、工夫していることが感じられます。手数の多さ、華麗さ、明るさのみならず、わたしはハルのこういう「小さな」プレイも大好きです。ドラム好きには、ぜひ、そういう一面にも注目していただきたいと思います。

それにしても、トラックだけ聴いていると、ビーチボーイズだなあ、と思います。同じメンバーだから当然とはいえ、これではいくらなんでも「同じすぎる」(論理矛盾御免)といいたくなります。ブライアン・ウィルソンがそろそろ、サウンドを変えようとするのも当然です。このあんまりな「互換性」が、彼をしてPet Soundsに向かわせたのではないかと思うほどです。いや、珍説失礼。

◆ 歌詞のまとめ ◆◆
歌詞サイトでこの曲を取り上げているところは見あたらないので(たいして面白くもないSummer Means Funの歌詞があるのは、ささやかなりとはいえ、ヒットしたからでしょう)、以下にすべての歌詞をまとめておきます。

国内盤には歌詞カードがついているでしょうが、この曲には何カ所か非常に聴き取りにくいところがあるので、そのあたりをどう切り抜けたか、ちょっと興味があります。わたしは友人の助けを(おおいに)借りて切り抜けました(Thanks, Dean and Linda!)。コードは、ヴァースはG-Em-C-Dで、全体にシンプルなものです。


Tell'em I'm Surfin' lyrics
(Phil Sloan and Steve Barri)
Performed by the Fantastic Baggys

Hey mama, if any of the guys from my baseball team
Ever called me on the phone
To ask me to play in an important game
Just say their captain ain't at home

Tell'im I'm surfin'
(Don't care 'bout hittin' homeruns)
Tell'im I'm surfin'
(Wanna have me some fun, fun, fun now)
I'm trading in my bat and ball
Say I'll see you in the fall
I’m goin' surfin'

And if that pretty little girl from across the street
Who's been bothering me for days
To go swimming in the pool
Well, her pool is real cool
But it hasn't got 10 foot waves

Tell'er I'm surfin'
(She's a mighty, mighty cute girl now)
Tell'er I'm surfin'
(Gonna rather be shooting the curl now)
If she wants my company
I'll be out in wind and sea
I'm goin' surfin'

Last year I had a summer job
And all day long I had to run around
But now I can afford a new surf board
(Gonna be sleeping down at the beach inn)
And all summer long I'm gonna bum around

So just pack me a lunch and I'll be on my way
Oh yet there's one more thing to do
If the mailman comes with a letter for me
Just forward it to Malibu

Where I'll be surfin'
(Just travel in my '34 Ford now)
Tell'em I'm surfin'
(I really wanna waxin' my board now)
I won't be home for days
I'll be riding the waves
I'm going surfin'

I'm going surfin' (gonna throw my books away)
I'm going surfin' (you're gonna surf 24 hours a day now)
I won't be home for days
I'll be riding the waves
I'm going surfin'

by songsf4s | 2007-07-21 19:06 | サーフ・ミュージック
Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)
タイトル
Summer Means Fun
アーティスト
Jan & Dean
ライター
Phil Sloan, Steve Barri
収録アルバム
The Little Old Lady from Pasadena
リリース年
1964年
他のヴァージョン
Bruce & Terry, The Fantastic Baggys
Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)_f0147840_20433988.jpg

Summer Means Funその2よりつづく)

◆ 「互換性」のあるヴォーカル ◆◆
これを書くためにかなり真剣に録音デイトを調べたのですが、よくわかりませんでした。ブルース&テリー盤だけは1964年4月24日録音と明記されています。Summer Means Funが収録されたジャン&ディーンのアルバムThe Little Old Lady from Pasadenaのリリースが64年9月とジャン・ベリー・オフィシャル・ウェブサイトではいっています。フィル・スローンのインタヴューによると、日付は不明ですが、バギーズ盤が最初に録音されたのだそうです。ということは、64年はじめの録音なのでしょう。

Summer Means Funその1」で、ジャン&ディーンのSurf Cityのリード・ヴォーカルは、ジャンでもディーンでもなく、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンだということにふれました。匿名で友人のセッションに参加したり、グループ名をいろいろ変えて、適当な盤を出すというのは、この時代の流行病といってもいいほどで、わけがわからなくなります。

バギーズの二人(ジャケットにもう二人写っていることは忘れてください。グループらしく見せるために適当な人間を入れただけで、実態はスローンとバリーのデュオです)は、この時代、ジャン&ディーンのハーモニーをやっていました。だから、彼らはバギーズ盤とジャン&ディーン盤の両方のSummer Means Funで歌っています。

Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)_f0147840_20443449.jpgファンタスティック・バギーズはこの時期にいくつかべつの名前で盤を出したようですし(バギーズのバイオを参照)、ブルース&テリーも、リップコーズをはじめ、さまざまなグループ名を名乗ったといっています(ただし、リップコーズ自体は実在した。テリー・メルチャーが、ブルース&テリーよりも、リップコーズの名前を使ったほうが売りやすいと判断して、ある曲をそちらの名義にしてしまっただけだとか)。

話がよけいなところにいきましたが、ブルース&テリー盤のヴォーカルは、二人だけでオーヴァーダブを繰り返したことが、ブルースの談話でわかっています。バギーズもおそらくブルースたちと同じように、スローンとバリーだけで歌ったのでしょう。

◆ レイ・ポールマン王朝 ◆◆
3ヴァージョンの、というか、2つのトラックを比較すると、だいたい同じメンバーだろうと想像がつきます。ドラムはどちらもハル・ブレインです。ベースもレイ・ポールマンの音です。ブルースは前出の談話でポールマンの名前をあげています。

この時期のハリウッドのフェンダー・ベースは、ポールマンがほとんど一手に引き受けていました。そろそろキャロル・ケイが、数々のヒット曲にいろどりを添えた彼女のエピフォン・エンペラー・ギターから、フェンダー・プレシジョンへとメインの楽器を換える時期ですが、彼女はフラット・ピッキング、ポールマンは親指フィンガリングなので、サウンドもプレイも大きく異なります。

ヴェンチャーズに似ているって? それなら、レイ・ポールマンがヴェンチャーズの録音のレギュラーだったと考えるのが論理的思考というものです。ビーチボーイズのほうが似ているって? そりゃそうでしょう。ポールマンはビーチボーイズ初期のレギュラー・ベーシストです。しかし、彼はそろそろテレビの仕事が忙しくなるので、このあたりから、次の世代が登場しはじめます。キャロル・ケイ、ジョー・オズボーン、ラリー・ネクテルたちです。でも、それはべつの話。この時期は、フェンダー・ベースに関するかぎり、レイ・ポールマン王朝です。

◆ ギタリストの問題 ◆◆
スローンは前出のインタヴューで、金がなかったので、ファンタスティック・バギーズのギターはすべて自分が弾いた、1963年製フェンダー・ジャズマスターを使った、といっています。たしかに、バギーズ/ジャン&ディーン盤のSummer Means Funの間奏はジャズマスターの音に聞こえます。

ブルース&テリー盤の間奏はだれだかわかりません。グレン・キャンベルあたりでしょうか。われこそと思う方は、どうぞ、コメントに推測なり断定なり憶測なりを書き込んでください。

リズム・ギターについては、ブルース&テリー盤と、バギーズ/ジャン&ディーン盤を比較すると、ブルース&テリー盤のほうが血湧き肉躍るすばらしいカッティングをしています(というより、それを強調するミックスになっています)。ブルース&テリー盤Summer Means Funの特徴は、このリズム・ギター部隊だといっていいほどです。左チャンネルに一体化されてしまっているので、分離はむずかしいのですが、すくなくとも4本、ひょっとしたら5本のギターが入っているでしょう。

1本または2本は、低音弦を8分でストロークし、チャック・ベリー・スタイルで5度と6度の音を交互に入れています。2本ないしは3本は高音弦まで鳴らすストロークで、ときおり16分のダブル・ストロークをする、おそらくはアコースティック・ギターが印象的です。

しかし、この16分のダウン&アップは、ブルース&テリー盤ほど印象的ではありませんが、バギーズ/ジャン&ディーン盤でもちょっと使われています。スローンという人は、わたしが思っていたより、ずっとすばらしいリズム・ギタリストなのかもしれません。

◆ クレジット―信ずべきか、信ぜざるべきか ◆◆
じつは、わたしはスローンの言葉を百パーセント信じる気にはなれないのです。ほんとうに金がないなら、オフにミックスされ、ほとんど聞こえないピアノなんか、いらないじゃないか、50ドル節約しろよ、と思います。

プレイヤーの料金など、たかがしれているから、あってもなくてもいいけれど、あれば音にすこし厚みを加えてくれるピアノを入れたのじゃないでしょうか。たかが3時間50ドルです。だとするなら、ギターだって、音質を犠牲にしてまで、オーヴァーダブを繰り返す必要はありません。もう50ドルの追加で、名うてのエースが、不平もいわずに、注文どおりにリズム・ギターを弾いてくれるのです。

その傍証になるのではないかというクレジットをお目にかけましょう。ライノ・レコードの「Cowabunga!」という、サーフ・ミュージック・ボックスに付されたブックレットに出てくるものです。

Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)_f0147840_2045183.jpg

ここにはトミー・テデスコの名前があります。バギーズのギターはすべてわたしだ、というスローンの主張を、このクレジットは否定しています。

しかし、このボックス・セットのクレジットには、納得のいかないものも散見するので、全面的に信用しているわけでもありません。たとえば、ビーチボーイズのSurfin' U.S.A.のリード・ギターがカール・ウィルソンだなんて、昔はいざ知らず、いまどきそんな「公式発言」を信じる人がいるのでしょうか。

Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)_f0147840_204682.jpgいや、昔の音楽の研究は、ウソと記憶ちがいと誇張が生み出す誤情報との終わりなき戦いなのだといいたいだけです。データより、まず自分の耳を信じましょう。耳が肯定したときに、はじめてデータが意味をもつのです。わたしの耳は、バギーズのギターはすべてオレだ、というスローンの談話を否定します。録音にかかるコスト計算からいっても、録音現場のありようからいっても、当時のハリウッド音楽界のあり方からいっても、できあがった音からいっても、スローンの談話は不合理です。誇張ではないでしょうか。

◆ ビーバップとサーフ・ミュージック ◆◆
この時代、リズム・ギターで売った人はなんといってもキャロル・ケイでしょう。彼女の教則ヴィデオとトミー・テデスコの教則ヴィデオを見ると、コードについて、同じことをいっています。ストレートなコードは絶対に使わない、かならず代用コードを使う、というのです。キャロル・ケイにいたっては、たとえばジャン&ディーンの曲ではこのように弾いた、と模範演技までやってくれています。

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キャロルのBefore and After。エピフォン・エンペラーからフェンダー・プレシジョンへ。

では、どういう代用をするかというと、ケイは、たとえば指定がG7なら、D♭7を使うといっています。ケイはビーバッパーですから(子どものころはチャーリー・クリスチャンのファンだったそうです)、5度のフラットというテンションを好みます(この音がバーニー・ケッセルのプレイを経由して、アントニオ・カルロス・ジョビンに受け継がれ、ボサ・ノヴァ独特のコード・ワークが誕生した)。Dフラットの5度はAフラット、これを半音下げれば、もちろんGです。はい、5度をフラットさせるだけで、魔法のように、D♭7がG7に近似した和声構造に化けました。

このようにして、ビーバップのジャズ・プレイヤーの和声感覚が、ハリウッドのポップ・ミュージックに忍びこんでいき、たとえばジャン&ディーンのリズム・ギターに特徴をあたえました。ちなみにトミー・テデスコもビーバッパーです。

バギーズ盤とジャン&ディーン盤のキーはGで、ブルース&テリー盤だけBフラットです。これはリード・ヴォーカル(テリー)の音域からきた変更でしょう。「Summer Means Funその1」の冒頭においた作り話で、キャロル・ケイにキーのことをいわせたのは、わたしのイタズラです。彼女が、ジャン&ディーンは同じコード進行ばかりで退屈だったとコボしていたので、それをもとに話をでっち上げました。

◆ さて、ナンバーワンの栄冠は…… ◆◆
テリー・メルチャーは、家で音楽を聴くのは好きじゃない、カーラジオで聴くのが好きだといっています。アメリカのAMラジオの主流だった、リミッターをかけて高音部が存在しないかのようにしてしまった音を好んだわけです。日本ではFENがそういう音にしていました。わたしには懐かしい音です。同じ曲でも、日本の放送局で聴くより、ずっとクールに聞こえたものです。ブルース&テリー盤Summer Means Funも、中音域と低音域にアクセントがあります。

Summer Means Fun その3 (by Jan & Dean)_f0147840_20472868.jpg
パサディーナの豪快おバアちゃんはCDになって縮んでしまったが、しなびたわけではない。それをいうなら、LPのときからしなびていた。

さて、そろそろどのヴァージョンがいいかを決めなければと思うのですが、はっきりいって、どれも似たようなものです。しかし、あえていうと、サウンドの手触りの差で、わたしはジャン&ディーン盤がよいと感じます。高音域が他のヴァージョンより明るい響きになっているからです。ヴォーカルのピッチの悪さがちょっと引っかかりますが、テリー・メルチャーやスティーヴ・バリーにしたって、エルヴィスでもシナトラでもないわけで、五十歩百歩です。

バギーズ/ジャン&ディーン盤は、おそらく同じトラックであることをごまかすために、音の感触を変えてあります。ミックスもバギーズ盤はトラックがオフですし、リミッターをかけて高音成分をカットしているらしく、同じトラックでも、ジャン&ディーン盤のような明るさがありません。

しかし、ほんとうに好みの問題です。わたし自身、気分によってはブルース&テリー盤の音圧の強さのほうが好ましく感じるときもあります。繰り返しますが、リズム・ギターのグルーヴで血湧き肉躍るのはこちらのほうです。後半の転調するところは、燃えます(「萌え」なんてチャチなもんじゃございません。Burnするのです)。すばらしいのひと言。

「レッキング・クルー」が、一歩引いて、たんなる「日常業務」の一環、それもあまり重要ではないものとして、軽く数テイクで生み出したトラックのすばらしいグルーヴには、いまでも幻惑させられます。こんな音があたりまえのようにつくられていた時代にもどりたいと、深夜、痛切に思うことすらあります。ほんとうにすばらしいプレイヤーたちでした。
by songsf4s | 2007-07-11 20:56 | サーフ・ミュージック