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【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇3 1963年の3
 
ビートルズはどこかの段階、たとえば、セカンド・アルバムWith the Beatlesあたりで、アメリカ市場を意識した気配があるが、サーチャーズ以下、同時代にファブ4のすぐ近くで動きまわっていた他のバンドはどうだったのだろうか?

彼らはしばしばアメリカ音楽をカヴァーしたが、その意図は、まず第一に、やはり日本の子供たち同じように、純粋に「格好いい」と感じたからだったのだろう。

一歩進んで、録音し、リリースするという段階におよぶのは、それを受け入れるリスナーが存在し、したがって商品として価値があったからに違いない。

日本の場合、それは明白で、ビートルズ登場以前の日本の音楽番組、とりわけ「ザ・ヒット・パレード」では、主としてアメリカのヒット曲に日本語の歌詞をつけて、日本人が歌ったものが流された。

「ザ・ヒット・パレード」から生まれた典型的なヒット曲をひとつ。もちろん、オリジナルはジェリー・ゴーフィン&キャロル・キング作、リトル・エヴァが歌った大ヒット。

伊東ゆかり「ロコモーション」


ドラムを中心にサウンドがきわめて弱いのがこの時代の日本の盤の特長だが、これでも十分に需要があり、ヒットした。

このような現地の言葉に訳したローカル盤は、日本以外にも例があり、たとえば、イタリアではそれなりの数がリリースされたらしい。ボビー・ソロなど、60年代に活躍したイタリアの歌手のベスト盤を聴いて、それを感じた。

イギリスの場合、同じ英語なのだから、このようなローカル盤は必要ないのではないかと思ってしまうが、いろいろな盤を眺めると、やはり、一定の需要はあったのだろうと推測できる。

言語の壁はないのに、なぜローカル化の必要があったのか?

たぶん、親近感の問題だろう。テレビで日常的に見られ、サーキットに組み込まれて、しばしばツアーで近所のクラブにやってくるシンガーたちのヴァージョンのほうを好む気分はよくわかる。

初期ブリティッシュ・ビート・グループがアメリカの曲をカヴァーしたのは、「内向き」だったのだろうと思う。国内市場のみを意識した「ローカル盤」だ。63年いっぱいは、ビートルズをのぞいて、そういう意図だったのだと見なしている。

◆ Since You Broke My Heart  ◆◆
サーチャーズのデビュー・アルバム、残りは4曲となった。B面の3曲目は、エヴァリー・ブラザーズの曲、作者は兄のドン・エヴァリー。

The Searchers - Since You Broke My Heart


The Everly Brothers - Since You Broke My Heart


完コピかい、と笑ってしまう。異なるのは、ドンとフィル・エヴァリーの声か、トニー・ジャクソンとマイク・ペンダーの声かという点だけ、と云いたくなる。

エヴァリーズはイレギュラーなハーモニー・ラインをつくることは稀なのに対して、サーチャーズは変なヴォーカル・アレンジを何度かしている、という違いはあるのだが、それでも、こういう曲を聴くと、やっぱりエヴァリーズが根っこにあって、あのハーモニーが作られたのだということに得心がいく。

◆ Tricky Dicky ◆◆
つづいてのTricky Dickyは、またもしてもジェリー・リーバー&マイク・ストーラーの作&プロダクション、歌ったのはリッチー・バレット。

The Searchers - Tricky Dicky


Richie Barrett - Tricky Dicky


サーチャーズがどういう経路で、このようなあまり有名ではないシンガーのノン・ヒット曲にたどり着いたかは、容易に想像がつく。リッチー・バレットのTricky Dickyはこの曲のB面としてリリースされたからだ。

Richard Barrett - Some Other Guy


作者はジェリー・リーバー&マイク・ストーラーおよびリッチー・バレット自身。プロデュースもおそらくリーバー&ストーラーだろう。

このSome Other Guyはリヴァプール勢が好んでカヴァーし、ビッグ・スリーのヴァージョンがイギリスではヒットすることになった。後年、売却されて有名になったジョン・レノンのジュークボックスには、オリジナルとビッグ・スリーのカヴァーの両方が収まっていた。

このシングルのB面としてTricky Dickyを知り、それをカヴァーしようと考えたのはいいとして、では、なぜSome Other Guyにたどり着いたかと根問いすると、ううむ、となってしまう。

なにしろSome Other Guy自体がノン・ヒットだから、どこから出現したのかと思うが、例によって、あの4人組が見つけた可能性が高い。ではあるものの、ではビートルズはなんだって、Some Other Guyを拾い上げたのか、そのへんはよくわからない。

いずれにしても、サーチャーズはこのシングルのA面、B面双方をカヴァーしているので、後日、Some Other Guyにたどり着いた時に再考する。

また、シンガーではなく、裏方としてのリッチー・バレットというのはちょっと興味を惹かれるのだが、あまりにも煩瑣なので、ここでは控える。いつか後日に。

◆ Where Have All the Flowers Gone ◆◆
こんどは、このアルバムの中ではちょっと変わり種の曲、といっても、昔は日本の子供でも知っていた有名曲だが。作者はピート・シーガー、オリジナル録音もやはりシーガー自身。

The Searchers - Where Have All the Flowers Gone


Pete Seeger - Where Have All the Flowers Gone


やはりMoneyなどと比べると、サーチャーズのキャラクターには、こういう曲のほうがはるかに合っている。のちに、彼らはフォークロックの始祖と目されることになるが、その出発点がこの曲だった。いや、まだ意識はしていなかったのだろうが。

サーチャーズが依拠したヴァージョンは、しかし、ピート・シーガーのものではないだろう。イントロから、このヴァージョンをベースにしたことがわかる。どうでもいいことだが、わたしも子供の時、このキングストン・トリオのヴァージョンを持っていた。

The Kingston Trio - Where Have All the Flowers Gone


どういう加減か、日本ではキングストン・トリオよりブラザーズ・フォーのほうが受けがよかったが、いま聴いても、キングストン・トリオのハーモニーは好ましく感じる。当時のカレッジ・フォーク・グループのなかでも抜きんでた売れ方をしたのも当然だと思う。湿度が低く、あっさりしていて、厭味がない。

サーチャーズはもちろん、もうひとつのヒット・ヴァージョンも聴いていただろう。日本ではこちらのほうが好まれた。

Peter, Paul & Mary - Where Have All the Flowers Gone


PP&Mのハーモニーはきわめてイレギュラーで興趣尽きないが、しかし、この曲に関しては、キングストン・トリオのほうが格段にすぐれていると思う。

やはりサーチャーズは自分たちの柄に合ったヴァージョンに依拠したことが、これでおわかりだろう。

◆ Twist and Shout ◆◆
サーチャーズのデビューLP、Meet The Searchersの最後の曲は、またまた例の4人組のデビュー盤であるPlease Please Meのラスト・ナンバーと同じ曲である!

ライターはバート・ラッセル(バート・バーンズ)とフィル・メドリー、オリジナル盤はトップノーツというフィリーのブラック・コーラス・グループ、プロデューサーはアトランティックと契約したばかりだったフィル・スペクター。フィルとしてもごく初期の仕事で、まだ見習い中という雰囲気が濃厚だが。

The Searchers - Twist and Shout


The Top Notes - Shake It Up, Baby (Twist and Shout)


はじめて聴いた時の脱力感を引きずって、長いあいだ、トップノーツのヴァージョンはダメ、と決めつけていたが、これだけ時間がたち、コンテクストから切り離されると、そして、ジョン・レノンの圧倒的ヴォーカル・レンディションを棚上げするなら、これはこれで悪くないか、という気がしてきた。

フィル・スペクターの意図はじつに明快だ。タイトル通り、トゥイストのグルーヴで、というのが前提にあり(踊れなければ無意味だ)、そこに、師匠であるジェリーリーバー&マイク・ストーラーの得意技である、ラテン・パーカッションの味つけを施してみた、というところだろう。

結果的にドリフターズのムード、たとえば、Sweets for My SweetやSave the Last Dance for Meのような感触になり、冷静に見れば、エチュードとしては成功している、というほうに、当方の見方は180度変化してしまった!

作者のひとりであるバート・ラッセル(バート・バーンズほか変名無数)は、誰もがそうだったように、たぶんフィル・スペクターが嫌いだったのだろう、俺の曲を台無しにしやがって、と怒ったと伝えられている。

バート・バーンズは、あの思い上がりの小僧に手本を見せてやる、というので、自分でプロデュースをやり直し、そのヴァージョンがヒットすることになった。

じつにめでたい。お前はダメだ、俺が手本を見せるといって、それが失敗したら、格好がつかないではないか。そのバーンズ先生のお手本盤。しだれ尾の長々しキャリアを誇るアイズリー・ブラザーズのごく初期のヒット。

The Isley Brothers - Twist and Shout


なるほど。バーンズ先生のおっしゃることもよくわかる。タイトルなんかに気をとられて適切なテンポを見つけられないヤツは阿呆だ、グリージーな感覚がゼロだから、お前の盤は音も立てずに消えたのだ、と云いたかったのだろう。

後年、バート・バーンズは黒っぽい感覚のソングライティングとプロダクションで成功し、フィル・スペクターは黒さを洗い流した音でチャートを席捲することになる。立場の違い、考え方の違いにすぎない。

さて、この曲は如何にして英国に伝播したのか? やはり、ここでもあの4人組がリーダーシップをとったと推測するしかない。

ジョン・レノンとビートルズのレンディションは、バート・バーンズがやってもまだ残ってしまった甘さを殺し、この曲の深いところに組み込まれたセックスの暗喩を強調したものになっている。お手本というなら、ジョン・レノンのレンディションこそが理想的なものだ。

では、締めはそのファブ4ヴァージョン。スタジオ録音ではなく、最初のアメリカ・ツアーでのホットな、ホットな、ホットなパフォーマンスを。

The Beatles - Twist and Shout [HD] Live at the Washington Collisium, 1964



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The Beatles In Washington D.C. Feb. 11th, 1964 / (Dol) [DVD] [Import]
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by songsf4s | 2014-02-10 22:50 | ブリティシュ・インヴェイジョン
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇2 1963年の2
 
用語のことを少々。

わたしが「初期ブリティッシュ・ビート」または略して「ブリティッシュ・ビート」と呼んでいる音楽は、われわれが子供のころの日本では「リヴァプール・サウンズ」と呼ばれた。

リヴァプール・サウンズという言葉を使わない理由は自明で、この一群の音楽をになったグループやシンガーはリヴァプール出身とはかぎらない、という一点に尽きる。

また、イギリスでは「マージー・ビート」という言葉がよく使われるが、これも「マージー河周辺のビート・グループ」という意味で、要するに日本語の「リヴァプール・サウンズ」の謂いにほかならず、同様に地域が狭く限定されている。

この用語は、地元の人々が好むものとして尊重はするが、われわれが使うのに適した言葉ではない。まあ、たまに気分転換として使うかもしれないが。

つまり、ロンドンやらグラスゴーやらトテナム(!)やらマンチェスターやら、そうした細かい差違はすっ飛ばし、イギリス全体を包含する用語が必要で、アメリカでよく使われる「ブリティッシュ・ビート」を選択した。

「初期ブリティッシュ・ビート」と、わざわざ「初期」というのにも理由がある。

65年あたりからのストーンズやヤードバーズの台頭以後、ブルース・ベースのグループが「表側」でも一大勢力となり、マージー勢を中心とする「イギリスの侵略」(「ブリティッシュ・インヴェイジョン」)の先鋒となったグループの(相対的に)ハーモニー重視のスタイルは、やがて押しのけられていくことになる。

この二大勢力は、重なる部分をもっているのだが、大きくニュアンスの異なる面もある。じっさい、ヤードバーズから語り起こすような「ロックな人」たちは、たとえば、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスには興味を示さないだろう。

The Yardbirds - Jeff's Blues


Billy J. Kramer & the Dakotas - Bad to Me


後年になると、仕切り線が引かれて、わたしが「初期ブリティッシュ・ビート」と呼ぶ一群のグループは、切り捨てられていった。あるいは「別扱い」にされた、といえばいいだろうか。

歴史的に見て、なんの影響力をもたなかった、一過性の商業主義音楽、というように扱われたような印象をもっている。ストーンズ、ヤードバーズ、フーといったあたりから線を引っ張ったものが「ブリティッシュ・ビート」とされたようだ。

それはそれでいいのだが、そのために一群のシンガー、プレイヤーたちが、「まつろわぬ民」として、荒野に放り出されたことには、異議を唱えておきたい。

◆ Stand by Me ◆◆
それでは前回のつづき、デビュー・アルバムMeet the SearchersのA面の5曲目は、ドリフターズのリード・テナーだったベニー・キング独立後の大ヒット。作者であるジェリー・リーバーとマイク・ストーラーがプロデュースもした。

The Searchers - Stand by Me


Ben E. King - Stand by Me


あまりくどくどいう必要のない曲だろう。この録音の時はもうフィル・スペクターがリーバー&ストーラーに弟子入りしていた。この曲にハル・ブレインのヘヴィー・バックビート加えると、スペクターのスタイルができあがりそうな気がチラとする。

サーチャーズのヴァージョンはあまりしっくりこないが、たぶんこのデビュー盤は、ビートルズ同様、当時の彼らのステージでのレパートリーを再現したものなのではないかと思う。

ストレート・ロッカーと、このStand by Meのようなバラッドは、昔のバンドの両輪だった。チーク・タイム(などというものがリヴァプールのクラブにあったかどうかは知らないが)にこの曲をやっていたのだろうと想像する。

◆ Money (That's What I Want) ◆◆
デビュー・アルバムA面の6曲目は、バレット・ストロングのヒット、というより、モータウンのオーナーであるベリー・ゴーディーがジェイニーブラッドフォードと書いた、モータウン・レコード最初のヒットのカヴァー。

The Searchers - Money (That's What I Want)


Barrett Strong - Money (That's What I Want)


会社設立後まもないので、作者でもある社長の陣頭指揮の録音なのだろう、バレット・ストロングのオリジナルも、時代を考えれば、なかなかのサウンドだ。いいビートがあり、ちょっとした薬味程度のえぐさもあり、それでいて、白人市場から閉め出されない程度には洗練されている。

歌詞が歌詞なので(いや、それがこの曲のポイントだが)、あまりグリージーにやるわけにはいかず、そのへんの匙加減はわかっていたのだろう。そうでなければ、モータウンは成功しなかった。

サーチャーズはバレット・ストロングのオリジナルに依拠したのだろうか? たぶんそうではない。例によってこの四人がやっているのに刺激されたのだろう。

The Beatles - Money (With Pete Best, at the Cavern)


ビートルズはブライアン・エプスタインのネムズでバレット・ストロング盤を見つけたといわれている。エプスタインがファブ4を「発見」するに至るあの有名なエピソードをよもやお忘れではあるまい。ネムズは充実の品揃えを誇っていたのだ!

ビートルズがこの曲をやった結果、リヴァプールのキャヴァーンやら、ハンブルクのスター・クラブあたりをぐるぐる廻っていたバンドのあいだで、このMoneyは共有されるに至ったのだろうと想像する。

このようなシンプルなダンス・チューンというのは、ライヴ・バンドには必須のもので、やる側から云えばやりやすく(酔っぱらっていてもなんとかなるだろう!)、客の側から云えば、盛り上がりやすく、踊りやすい。

サーチャーズのキャラクターに合った曲だとは思わないが、以上のような事情から、彼らもこういう曲をレパートリーに入れておく必要があったに違いない。

以上三者のほかに、わが家には、エヴァリー・ブラザーズ、ルー・クリスティー、バディー・ガイ、ジュニア・ウォーカー、ハイ・ナンバーズ(ザ・フー)、トッド・ラングレン、スタンデルズ、ランディー&ザ・ラディアンツ、アンダーテイカーズ、リチャード・ウィリー&ヒズ・バンド、ローリング・ストーンズなどなど多数のカヴァーがあるが、やはり、With the Beatlesの最後に収録された彼らのスタジオ録音がベストだと思う。

以上のなかでは、このカヴァーがなかなか好ましい。やはりモータウンのロースターだが、このヴァージョンはヒットしなかった。

Richard Wylie & His Band - Money 1961


◆ Da Doo Ron Ron ◆◆
B面のオープナーは、フィル・スペクター・プロデュースによるクリスタルズの大ヒットのカヴァー。ジェフ・バリーとエリー・グリニッジ夫妻、およびフィル・スペクターの共作。すばらしい4分3連のライド・シンバル・プレイはもちろんハル・ブレイン。

The Searchers - Da Doo Ron Ron


The Crystals - Da Doo Ron Ron


とくにサーチャーズに合った曲には思えないし、ハーモニーの面白さもあまりない。アルバム・トラックとして、さしたるアレンジも施さずに録音したものだろうから、フィル・スペクターの金も時間もかけたプロダクションと比較しては気の毒だ。これまた、アメリカのヒット曲の軽いローカル盤のつもりだったか、あるいはライヴでのレパートリーだったのだろう。

フィル・スペクター=クリスタルズのDa Doo Ron Ronオリジナルは、ビルボード・チャート3位までいく大ヒットになった。チャート・トッパーになったクリスタルズの前作He's Rebelには、チャート・アクションの面では劣ったが、スペクターのプロダクション・テクニックはこの曲でさらに深まり、巨大な音のボールはサイズと強さを大きく増した。

He's a Rebelでフィル・スペクターが惚れ込んだハル・ブレインは、Da Doo Ron Ronでは正確で美しい4分3連のライド・シンバル・プレイでわれわれを圧倒する。

派手なフィルインは、ハル・ブレインのフロアタムではなく、ニーノ・テンポがマレットでキック・ドラムを叩いたと云われる。

フィル・スペクターにとっても、ハル・ブレインにとっても、文句なしの生涯の代表作である。

◆ Ain't Gonna Kiss Ya ◆◆
Ain't Gonna Kiss Yaはオリジナルを確定できなかった。

リボンズというLAベースのガール・グループのものがオリジナルである可能性が高いと感じるが、ノン・ヒットなので、さらにそれ以前に、誰も注目しなかった盤があった可能性は残る。

ソングライター・クレジットはJames Marcus Smithとなっていて、これはP・J・プロビーの本名。プロビー自身の盤は当時はないようで、ずっと後年の懐古的なアルバムで歌ったらしい。

プロビーはアメリカ人だが、シンガーとしてはイギリスで成功することになる。しかし、それは64年のこと。この時はまだアメリカ、おそらくはLA住まいだろう。

その根拠は、プロビーという芸名をつけたのがシャロン・シーリーであり、イギリスに渡ったのはジャッキー・デシャノンの紹介による、ということ。LAのソングライター・サークルと付き合いが深かったことがわかる。

The Searchers - Ain't Gonna Kiss Ya


The Ribbons - Ain't Gonna Kiss Ya


リボンズについてはほとんどなにも発見できない。LAのグループであり、メンバーはEvelyn Doty、Arthetta Gibson、LovieおよびVessie Simmonsの四人といった程度の記述しか見あたらなかった。

Discogsのリストには、Ain't Gonna Kiss Yaを含む2枚の45があるのみ。「のちにシークィンズ、サンドペイパーズになった」とあるが、「紙ヤスリ」なんてヤケクソな名前を選ぶようでは、もう先がなかったのがわかる。

リボンズ盤Ain't Gonna Kiss Yaのプロデューサーはマーシャル・リーブ、すなわち、テディー・ベアーズでのフィル・スペクターの相棒である。レーベルはMarshとなっている。マーシャル・リーブの会社なのだろう。

テディー・ベアーズのLPではアール・パーマーがドラム・ストゥールに坐ったが(最初のシングルのドラマーはサンディー・ネルソン!)、リボンズのAin't Gonna Kiss Yaも、どうもアール・パーマーのプレイに聞こえる。

ハリウッドのサウンドにはなってはいるものの、ハリウッド的洗練が強く感じられるものではないし、あまり叮嚀なアレンジでもなく、インスピレーショナルな録音とはいえない。マイナー・ヒットの可能性はあっただろうが。

惜しい、と思って拾い上げる気持はわかるが、サーチャーズの録音もそれほどインスピレーショナルとはいえない。少し速くしようという考えはけっこうだが、ちょっと速すぎて、かえって印象が薄くなった。

こんなノン・ヒットのオブスキュアな曲をどういう経緯で見つけたのやら。偶然、リボンズのシングルを聴いたのか、あるいは、パブリッシャーからデモがまわってきたのか……。

サーチャーズのヴァージョンは63年、それも秋のリリースらしいが、同年にはもうひとり、レイ・ピルグリムというイギリスのシンガーが、You'll Never Walk Alone b/w Ain't Gonna Kiss Yaというシングルをエンバシーからリリースしている。のちにスターリングスというグループ名でも再リリースしたようなのだが、逆の可能性なきにしもあらず。

レイ・ピルグリムの盤はサーチャーズとほぼ同時で、しかもシングルだが、B面ではあるし、この人のディスコグラフィーを見ると、ほとんど後追いばかりで、なんだか、パチモン専門のように感じられる。誰かがヒット・ヴァージョンと間違えて買うのを期待していたのか、なんて、厭味なことを思ってしまうほどだ。

興味が湧いてしまった方は、仕方ないから、ウィキのレイ・ピルグリムのエントリーの63年から64年ぐらいのリストをご覧あれ。この臆面のなさ。月に2枚ぐらいのペースで他人のヒットをじゃんじゃんリリースしている!


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by songsf4s | 2014-02-08 22:43 | ブリティシュ・インヴェイジョン