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グレイトフル・デッドのブランチ探し その5 I've Got a Mind to Give Up Living
 
先月はアクセス・キーワード一覧をしませんでしたが、驚くようなリストでした。月が変わっても最後の状態だけはあとからも見られるようになっているので、それを以下に貼り付けます。

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ほとんどが成瀬巳喜男監督の映画『めし』にかかわるキーワードです。「めし」という語が含まれていませんが、「原節子」は『めし』の主演女優なので、10のうち7までが『めし』関係と解釈できます。

四月中旬から『めし』にかかわるキーワードが上位を占めるようになったのはわかっていましたが、最後までいくとは思いませんでした。まあ、あの映画については、ひねらずに、正面から四つに組んでいったので、どれほど大勢の方に、何度読まれても、それに耐え得る内容だと自負しています。もっと謙遜すると、わたしも人から好かれるようになるのでしょうけれどね!

今月も、ちょっと面白いリストです。以下は5月6日時点のアクセス・キーワード。

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ご存知のように、『浮雲』も成瀬巳喜男作品です。9番目の「娘・妻・母」というのも成瀬巳喜男の映画で、当家では『めし』の直後に取り上げ、「三界に家なし」という意味で、『めし』と同じテーマの作品であることにふれました。

白木マリは、主演作品を取り上げるという約束をまだ果たしていないことを思い出しました。近々なんとかしましょう。

ジム・ゴードンは、なんだか、ベスト集の再公開を迫られているような気になります。お盆休みあたりでしょうかね。

I Put Spell on Youは以前からよく上位に来ています。久生十蘭は定着でしょうか。って、それほど読むべきことは書いていないのですが。

i8080というのは、インテルの初期のマイクロプロセッサーの型番です。なにかの記事で触れた記憶はありますが、べつに読んでいただくほどのことは書いていません。失礼いたしました。

加山雄三のブーメラン・ベイビーはついこのあいだ、サンプルをアップしました。

以上、以前にくらべると、こういうキーワードで当家がヒットするのは変だ、と思うようなものはなくなり、どの語で来ていただいても、恥ずかしいことはあまりなくなりました。グーグルも進歩しているということでしょうか?

◆ 墓石でも買いに行くか ◆◆
さて、グレイトフル・デッドの「ブランチ」探しは今日もつづきます。今日はI've Got a Mind to Give Up Livingですが、ブルーズなので、別題がありますが、そのあたりはのちほど。

「グレイトフル・デッドのルーツ、ではなく、ブランチ探し序曲」という記事で取り上げた、Help Me Rhondaのように、今日のGot a Mind to Give Up Livingも、ジェリー・ガルシアやボブ・ウィアが歌ったわけではなく、ゲスト・シンガーのバッキングをしたものです。

これはクリップがないので、ファンのプライヴェート録音による音源をアップしました。

サンプル Grateful Dead with Boz Scaggs "I've Got a Mind to Give Up Living"

この1982年5月28日のギグでは、クウィック・シルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスのジョン・シポリーナもゲストだったそうで(そういえば、シポリーナがデッドといっしょにやっているヴィデオを見たことがある)、リード・ギターはシポリーナだろうと思います。ガルシアのプレイには思えません。

あまりいい録音ではないし、デッドも手探りでプレイしている印象ですが、これはたぶん、彼らがGot a Mind to Give Up Livingをやった唯一の機会で、ファンとしては、聴いてみたかった一曲です。

◆ 根無しの枝葉 ◆◆
この曲はトラッドで、だれのものがオリジナルとも知れませんが、もっとも有名なヴァージョンは、ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンドのセカンド・アルバム、East-Westに収録されたヴァージョンではないでしょうか。いや、まあ、好みはそれぞれでしょうが、わたしは、この曲でマイケル・ブルームフィールドのファンになりました。

もっとも好きなギター・プレイヤーなので、ライヴとスタジオの2種類のクリップを貼り付けます。まず、ライヴ・ヴァージョン。

ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド I've Got a Mind to Give Up Living (live)


このヴァージョンははじめて聴きましたが、ブートでもっているライヴより、はるかに魅力があります。いや、かなり荒っぽいのですが、ブルームフィールドのプレイには、何度か、「おっ」と思いました。スタジオとは大きく趣の異なるヴァージョンです。

つづいて、もっと静かなスタジオ・ヴァージョン。

ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド I've Got a Mind to Give Up Living (studio)


エロティックといいたくなるほど艶やかなトーン、どこまでも滑らかなラン、メロディックなラインづくり、マイケル・ブルームフィールドの魅力がコンパクトに詰め込まれたトラックです。

十五歳のときにこの曲やWork Songを聴いた子供は、彼の生涯のファンになりました。しかし、これ以上のプレイはないといっても過言ではありません。最初に聴いたのがベスト・トラックだったというのは、あまり幸福なこととはいえません。

バターフィールド・ブルーズ・バンドより、B・B・キングのヴァージョンのほうに親しんでいるという方もいらっしゃるでしょう。

B・B・キング I've Got a Mind to Give Up Living (TV live)


このごつごつした手ざわりには、やはり魅力があります。何度かギョッとしました。B・B・キングは何度もこの曲を録音しているようですが、手元にはあまりありません。そのなかから、ユーチューブにはないスタジオ録音をサンプルにしました。

サンプル B.B. King "All Over Again"

All Over Againというのは、この曲の別題で、B・B・キングはこちらのタイトルもしばしば使っているようです。

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この管のアレンジはおおいに好みです。バターフィールド・ブルーズ・バンドもサード・アルバムから管を入れますが、ホーンとブルーズのコンビネーションには独特の魅力があります。

日本で最初にこの曲をやったバンドはゴールデン・カップスではないでしょうか。ヴォーカルはマモル・マヌー。

ゴールデン・カップス 絶望の人生


ギタリストにとってはなんとも魅力的な曲なので、エディ藩がやりたがったのではないでしょうか。この「絶望の人生」が収録されたサード・アルバムでは、Walking Bluesなど、他のバターフィールド・ブルーズ・バンドのトラックもカヴァーしていて、当時の彼らの傾倒ぶりが如実に伝わってきます。横浜の子供としては、このサードまではカップスの大ファンでした。

もうひとつ、やはりブルームフィールドのカヴァーで埋め尽くされたフォード・ブルーズ・バンドのButterfield/Bloomfield Concertに収録されたヴァージョンをサンプルにしました。

サンプル The Ford Blues Band "I've Got a Mind to Give Up Living"

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このアルバムは、盤屋で買物をしているときに流れてきてはじめて聴きましたが、つぎつぎとブルームフィールドのトラックが流れるのに、ギターはだれか別人に思われ、すごく妙な感じがしました。いま聴けば、くっつきすぎず、信奉者にしてはいい距離のとり方をしていると感じます。

もうひとつ、これは今日はじめて聴いたものですが、なかなか楽しめるギター・プレイでした。

フリートウッド・マック I've Got a Mind to Give Up Living (live)



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ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド
East-West
East-West


ポール・バターフィールド・ブルーズ・バンド
The Paul Butterfield Blues Band (Original Album Series)
The Paul Butterfield Blues Band (Original Album Series)
(バターフィールド・ブルーズ・バンドの最初の5枚をまとめたもの。ブルームフィールドはセカンド・アルバムまでだが、ホーン・セクションが加わった3、4枚目もきわめて出来がいい。バンドのアンサンブルとしては4枚目がベストと考える。また、若きデイヴ・サンボーンのプレイが聴ける盤としての側面もある。5枚目では、まだティーネイジャーだったバジー・フェイトンのプレイが聞ける。ブルームフィールド、サンボーン、フェイトンと、バタ-フィールドの伯楽ぶりの跡をたどる旅でもある。卓越した若いプレイヤーを無名のうちに3人も見出した耳はただ事ではない。「オリジナル・アルバム・シリーズ」でもっとも興趣あふれるセット。)


B・B・キング
His Best…The Electric B.B. King
His Best…The Electric B.B. King


ゴールデン・カップス ボックス
ザ・ゴールデン・ボックス
ザ・ゴールデン・ボックス


フォード・ブルーズ・バンド
Butterfield / Bloomfield Concert
Butterfield / Bloomfield Concert
by songsf4s | 2011-05-08 00:02
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その11 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇3

長ったらしいこのシリーズも、ようやく「終」の文字がぼんやりフェイドインしてくるのが見えるところまで来ました。とはいえ、どこまでやって終わりにするかはまだ決めかねていて、エンディングを前に、取りこぼしはないか、点検しました。

BS&Tの1枚目には、R&B的な曲(I Love You More Than You'll Ever Know)は入っていますが、R&Bカヴァーはありません。ニルソンやランディー・ニューマンの曲をカヴァーしていたりします。

その前までいくと、一考を要します。ブルーズ・プロジェクトにはR&Bカヴァーがありそうな気がして、ディスコグラフィーを眺めました。オリジナル・アルバムはもっていなくて、アンソロジーしかないので、よくわからないところもありますが、カヴァーはブルーズが大部分で、R&Bと呼べるようなものはないだろうと思います。しいていうと、You Can't Catch Meが境界線上という感じでしょうか。

R&Bカヴァーがあるか否かはべつとして、ずいぶん長いあいだ聴いていなかったので、懐かしく感じました。いちばん好きなのは……。

ブルーズ・プロジェクト No Time Like the Right Time


同率首位という感じで、こちらも好きでした。

ブルーズ・プロジェクト Wake Me, Shake Me


ファンのあいだで人気が高いのは、リリカルなこちらのほうでしょうか、

ブルーズ・プロジェクト Flute Thing


あっはっは。あの時代はいわばロックンロールの思春期で、ちょっと背伸びして大人っぽくやってみたかったのです。そして、われわれ子どもリスナーも、ちょっと背伸びして大人っぽい音が聴きたかったのです。可愛い気取り、ということにしておきましょう。

ブルーズ・プロジェクト Violets of Dawn


ブルーズ・プロジェクトというのは、ついに熟さないまま終わったバンドで、惜しいなあと思います。このViolets of Dawnなんか、アレンジに時間をかけ、トミー・フランダースがもっときちんと歌えば、フォーク・ロック・クラシックに数えられたでしょうに、いかにも雑です。アル・クーパーはのちにライヴでやっていますし、チャド・ミッチェル・トリオの悪くないヴァージョンもあります。

◆ 裏声のような愛 ◆◆
Live Adventuresのディスク2もカヴァーだらけですが、一曲が長いので、トラック数は少なめです。サニー・ボーイ・ウィリアムソンのNo More Lonely Nightsは略し、最後の面に移動します。長いので、頭のほうだけ聴くぐらいのつもりでどうぞ。

サンプル Mike Bloomfield & Al Kooper "Don't Throw Your Love on Me So Strong"

またノイズがでてしまっているところがなんですが、ブルームフィールドのプレイは楽しめます。アル・クーパーが、マイケルは伝統的なギターとヴォーカルのやり取りはうまい、といった、そのタイプのギター=ヴォーカル・インターアクションです。

オリジナルはアルバート・キング。

サンプル Albert King "Don't Throw Your Love on Me So Strong"

この曲で耳を引っ張られるラインは、

Your love is like a falsetto, you can turn it off and on

です。「お前の愛は裏声みたいだ」というのが謎かけのようで、どういう意味だ、と思うと、消したり付けたりできる、というサゲだから笑います。あまりノーマルな発想には思えないのですが、シンガーだからでしょう。もうひとつ、フォールセットという単語の語幹は、フォールス=false=まがい物、偽物だからでしょう。

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不思議なことに、マイケル・ブルームフィールドのトーン、音の出にふれたものは、英語日本語を問わず、読んだことがありません。中学生のわたしは、もちろん、速さに惹かれる愚かなギター小僧でしたが、年をとってもまだブルームフィールドを聴いている理由は、エロティックな艶のあるトーンです。あのすばらしいトーンと、ハイパー・スムーズな高音部のランの二つがそろわなくては、ブルームフィールドのプレイとはいえません。

B・B・キングはトーンに艶のあるほうですが、アルバート・キングになると、老婆の背中みたいにつまらねえ音だなあ、と思います。Don't Throw Your Love on Me So Strongも、だから、ブルームフィールドのほうがずっと好きです。

◆ 再びStop ◆◆
このシリーズの第一回目「Super Session篇」で、ハワード・テイトのStopを取り上げ、テイトのオリジナルと、Super Sessionヴァージョンを並べました。

その直後に見落としに気づいたのですが、填めこむ場所を見つけられなかったヴァージョンがあります。サム&デイヴの片割れ、サム・ムーアのものです。

サンプル Sam Moore "Stop"

これはこれで悪くないと思いますが、MG'sの音ではないようなので、データを見ました。パーソネルはありませんが、プロデューサーはキング・カーティスだから、メンフィス録音ではないでしょう。おそらくNY。

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ひとりになると、なんとなく落ち着きが悪いのもので、サム・ムーアも苦しんだそうです。ポップ・ミュージックの世界ではよくある判断ミスというところ。

デイヴ・ポーターとコンビ別れしたのも問題ですが、MG'sのサウンドから切り離されたのも、いいことではないでしょう。「サム・ムーア」の名前を聞いても、だれそれ、だし、しかも、サウンドを聴いてもなじみがないのだから、ゼロから出発のルーキーです。

まあ、そういうのは結果論。ヒットがでていれば問題なかったのでしょうが、そうはならなかったから、サム・ムーア自身も愚痴をいうし、こちらも一言いってみたりするのです。

次回、たぶんKooper Sessionをやって、このシリーズを完了する心づもりです。


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
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アルバート・キング
Complete King & Bobbin Recordings
Complete King & Bobbin Recordings



サム&デイヴ(ライノ)
Sam & Dave - Sweat & Soul: Anthology
Sweat & Soul: Anthology


by songsf4s | 2010-11-24 23:35
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その10 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇2

前回の記事の自己レスのようなものですが、一晩眠ったら、ノーマン・ロックウェルによるもう一枚のアルバム・カヴァーを思いだしました。So this is Christmas.

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フレッド・ウェアリング「'Twas the Night Before Christmas」装画:ノーマン・ロックウェル

Live Adventuresのカヴァーとは異なり、こちらはノーマン・ロックウェルを有名にした、やや様式化したスタイルです。

ロックウェルという人は、詰まるところ「古き良きアメリカのイメージを新たにつくりだした」のだと理解しています。画家はだれでも絵がうまいので、それだけでは売れません。ピカソがキュビズムを必要としたように、ロックウェルは独特の様式化によって、ひとつのペルソナをつくりだし、生きる道を見つけたのでしょう。その意味で、北斎的ではなく、広重的な絵描きです。

しかし、ものをつくる人間は一定の幅で揺れ動くもので、ロックウェルも、ときおり「古き良きアメリカの捏造者」のペルソナを脱ぐことがあるように思います。それがLive Adventuresのカヴァーの、非ロックウェル的簡素さ(いつものような「演出」がない。ロックウェルは本質的に「状況を描く画家」であり、物語作家的画家なのだが、ここでは物語も環境も捨て、顔しか描いていない)であり、ビジネスを離れた彼の地がでたのだと思います。

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ノーマン・ロックウェル画「Barber」 クリスマス・アルバムを探す過程で遭遇した。これはおおいに好み。小さくてわからないだろうが、向こうの部屋ではヴァイオリンやチェロをプレイしている。クリックすると拡大されるのでご自分の目でどうぞ。バーバー・ショップ・カルテットという言葉があるが、あれは素人が4パートのハーモニーを歌うことをいうはずで、楽器をプレイすることはそう呼ばないのではないか? デイモン・ラニアンの短編にバーバー・ショップ・カルテットというか、「バー・カウンター・カルテット」(いまつくったインチキ語)の話がある。ラニアンらしい奇妙なストーリーだったが、タイトルを忘れてしまった。

目に映ったものを解釈し、物語として再構成するといういつもの手続きを捨て、見たものをそのまま描いた美しさが、画家自身によって「Blues Singers」と題されたLive Adventuresの絵にはあります(ただし、アル・クーパーは、実物よりすこし膨らませてくれと頼んだそうな。あのころは痩せすぎていたからだろう)。

◆ 3X7=21 ◆◆
Live AdventuresのR&Bカヴァーはどういうわけかディスク1のB面に集中していて、ここまではトラック順にやっていますし、今日も前回のつぎのトラックからいきます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "That's Alright Mama"

いまはそれほどでもありませんが、これを買った中学3年のときには、イントロのドラム・リックが大好きでした。譜面にすればどうということはないのですが、スネアからタムタム、フロアタムへと流す4分3連をクレッシェンドにしている、つまり、弱く入ってあとのほうにいくほど強くしているのが非常に効果的です。ドラムはタイムの楽器でもありますが、抑揚の楽器でもあるのです。

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ファースト・コーラスが終わって、セカンド・ヴァースへという移行部で、アル・クーパーがミスっていますが、そこはまあライヴということで。

このトラックは結局、だれのプレイがどうこうというより、一体になって突進するところが最大の魅力でしょう。ライヴでは、客を熱くするこういうアップテンポの派手な曲が必要です。Fillmore East: The Lost Concert TapesにもThat's Alright Mamaは収録されていますが、ドラムが下手だと、こういう曲はただバタバタ騒々しいだけで、音楽になりません。

You know 3 times 7, that makes 21

というラインの意味がわからず、ちょっと調べました。聖書からの引用だとすると、21というのは完全性の象徴なのだそうです(いや、21は「完全数」ではないので誤解なきよう)。3と7という素数をかけることにどれほど神秘的な意味があるのやら。もうひとつ、成人のシンボリズムというのも、この歌にあてはめられるかもしれません。いや、ぜんぜん別のことを云っている可能性のほうが高いでしょうね。

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◆ アーサー・クルーダップ ◆◆
That's Alright Mamaのオリジナルはアーサー・ビッグボーイ・クルーダップです。Crudupを「クラダップ」と読んでいる盤があります。見た目からしてクルーダップ以外に読みようがないのですが、それでもまちがえる人がいるのだから、イギリス人男性による発音の例をあげておきます(中段左側の青い小さな三角をクリックする)。まったく、ウェブは楽です。こういうことを調べるのも面倒だし、わかっていることでも、他人を納得させるのは厄介だったりしたのですが、いまや一発です。

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ブルーズマンにはよくあることですが、ビッグボーイ・クルーダップのThat's Alright Mamaは何種類もあるようで、わが家でも2ヴァージョン出てきてしまいました。ステレオは新しすぎるに決まっているので、モノのほうをアップしました。YouTubeで、SP盤をかけているクリップを見ましたが、同じ音だったので、これがオリジナルだと思います。収録している盤もブルーズ研究みたいな、「学術盤」(なんてものはないが)かよ、というセットです。

先にお断りしておきますが、たんなるブルーズにすぎないので、聴いてしまったあとで文句を云わないでください。

サンプル Arthur "Big Boy" Crudup "That's Alright Mama"

この曲を有名にしたのはエルヴィス・プレスリーです。ただし、サン・セッションなので、ドラムレスだから、わたしはそれほど好きではありません。エルヴィスは60年代はじめ、陸軍除隊直後、バディー・ハーマンがストゥールに坐ったトラックがいい、という外道なので、わたしの云うことは気にしないでください。メイクミー、ノーウィット、なんて盛り上がりますぜ。



ビートルズも、ポールのリードで、BBCでやっていますが、それは省きます。うちにあるものでは、マーティー・ロビンズのものも悪くありませんが、ぜひに、というほどでもないので、これもやめておきます。つまるところ、こういう「曲」は楽曲としてどうこうということはなく、どうやるかにほぼすべてがかかっているといえます。ブルームフィールド=クーパー盤だけあれば、わたしには十分。

◆ R&Bインスト ◆◆
思いこみというのは強固なものです。いや、強固だからこそ「思いこみ」と呼ぶのでしょうけれど。当家のこのシリーズに反応して、ツイッターでGreen Onionsをあげた方がいらして、ちょっと虚を衝かれたように感じ、ワンテンポ遅れて、そういやそうだな、と思いました。

わたしはギター・インストが好きなので、ものごとをギター・インスト的に歪めて見る傾向があります。Green Onionsをどこかに分類するとしたら、オルガン・インストかギター・インストに丸を付けると思います。

でも、考えてみると、Soul ShotsというライノのR&B編集盤LPシリーズ(11枚)のインスト篇というのがあって、マーキーズとかバーケイズ(Soul Finger)などと一緒にMG'sもおさまっていました。

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曲はGreen Onionsではなく、Time Is TightとGroovin'でしたが、それはここではどうでもいいことで、問題はR&Bインストゥルメンタルというのは厳として存在するということです。

バーケイズ Soul Finger


バーケイズというバンドが存在したのは事実として、それとは関係なく、この盤を録音したのはMG'sでしょう。これがアル・ジャクソンじゃなかったら、いまここで切腹してみせます。ぜったいに大丈夫だから、強いことをいっちゃいますが、小林正樹の『切腹』みたいに竹光だってかまいませんぜ。

切腹するとまではいいませんが、ギターだってスティーヴ・クロッパー間違いなしです。ベースはダック・ダン、オルガンはブッカーT、って、いやだから、MG'sだっていうのです。MG'sがプレイしたものに、バーケイズの名前をつけただけでしょう。オーティス・レディングのツアー・バンドに箔をつけてやろうという親心か、はたまた、MG'sのだれかが、こんな馬鹿っぽい曲をやったことを知られるのは恥ずかしいといったか、事情は知りませんが、とにかくこれはMG's、ピリオド。

◆ 長ネギのように見えて長ネギにあらず ◆◆
寄り道終わり。元の話。ということで、Green OnionsもR&Bカヴァーに繰り入れることにしました。シンプルな曲で、ジャムにはもってこいですが、それだけにプレイヤーの力がストレートにあらわれます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Green Onions"

アル・クーパーの基本的な姿勢が「マイケルを前面に押し立てる」なので、やっぱりブルームフィールドがガンガン行きます。高音部で強いピッキングをしているときに、なにやら変なノイズが聞こえます。またケーブルかコネクターでしょうかね。ひょっとしたら、あまり強くピッキングするものだから(弦をしばいている!)、手がブリッジかどこかにぶつかっているのかもしれません。

どうであれ、じつにホットなプレイで、一見不似合いな曲でも、やっぱりマイケル・ブルームフィールドはいつものようにマイケル・ブルームフィールドです。

Green Onionsのオリジナルは、いうまでもなくブッカーT&ザ・MG'sです。



MG'sはいつでも盛り上がります。この日のアル・ジャクソンはむやみにハイ・ピッチのチューニングで、これはこれで「へえ」です。しかし、なんというひどい終わり方。ずっと「巻き」がでていたのでしょうか。

◆ クラウス・オーゲルマン他のカヴァー ◆◆
やや珍かもしれませんが、アントニオ・カルロス・ジョビンやレスリー・ゴアの譜面を書いたアレンジャーのクラウス・オーゲルマンのヴァージョンをサンプルにしてみました。

サンプル Claus Ogerman "Green Onions"

イントロがペギー・リーのFeverみたいで笑いました。オーケストラでやるにしても、オルガンとギターをはずさなかったのは正解だと思います。

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いわれないとわからないライトニン・ホプキンズのヴァージョンなんていうのもありました。なんだか、お座敷芸のような……。



この写真ではギブソンJ-160Eをプレイしています。なんだ、仲間だったのか。

YouTubeにはないものを、と考えると、わが家にはマシュー・フィッシャーのものがあります。

サンプル Mathew Fisher "Green Onions"

盤を手放したのでわからなくなってしまいましたが、British Beat All-Starsとかなんとかいう名前で、お父さんたちが小遣い稼ぎにツアーをやっているようで、そのバンドによるものです。ギターはだれだったか、知っているバンドのプレイヤーでした(意味のないセンテンス!)。プリティー・シングスだったか……。

マシュー・フィッシャーはすばらしいドロウバー・セッティング(言い換えればトーン、サウンド)で売ったプレイヤーですが、このGreen Onionsも、やはり、マシューらしく独特の音色でやっています。ハモンドはドロウバー・セッティングが死命を制します。

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あとはブルース・ジョンストンのものもありますが、これはフェンダー・ピアノでやっているところが変わっていますが、それだけのことで、とくに面白くもないし、ファイン・プレイもありません。

それから、アル・クーパーは近年のアルバム、Black CoffeeにもライヴのGreen Onionsを収録しています。

無理だろうと思っていましたが、やっぱり一曲こぼれてしまったので、もう一回、Live Adventuresをつづけることにします。


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
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アル・クーパー自伝増補改訂版
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Gonna Be Some Changes 1946-54
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エルヴィス・アット・サン
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Al Kooper - Black Coffee
ブラック・コーヒー
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by songsf4s | 2010-11-23 23:59
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その9 Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper篇1

アル・クーパーの(早すぎた)自伝『Backstage Passes』が引越荷物から出てきたので、拾い読みしました。

CBSのスタッフ・プロデューサーとしての初仕事、Supper Sessionがゴールドになり、それはめでたかったけれど、ティム・ローズのシングルがフロップしたり(あとで大変なコレクターズ・アイテムになったという。稀少になってしまうほど売れなかった)、あれこれあって、つぎの企画をどうするかで、ヒット作に舞い戻ったといっています。

Super Sessionのエディー・ホーは、マイケル・ブルームフィールドの縁でプレイしたのですが、スキップ・プロコップはアル・クーパーの知り合いで、彼が交渉したそうです。ともにPP&Mのトラックでプレイしたどうしですから、似たような場所を廻遊していて、知り合ったのでしょう。

ピーター・ポール&マリー(with スキップ・プロコップ) I Dig Rock and Roll Music


タイムが安定していて、このプレイヤーなら安心して仕事を頼めます。

のちにジェリー・ガルシアのソロ・プロジェクトの相棒となるジョン・カーンは、サンフランシスコ湾を廻遊しているどうしということなのでしょう、ブルームフィールドの推薦で、クーパーは初対面だったそうです。

Live Adventuresはブルーズの多いアルバムで、リハーサルはほとんどなしかと思いましたが、盤にするための企画だから、そこまで不用意ではなく、三日間のリハーサルをしたそうです。場所を提供したのはロック・スカリー、グレイトフル・デッドのマネージャーです。

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スキップ・プロコップのバンド、ポーパーズ

◆ Lord, I want you by my side ◆◆
ダブル・アルバム、Live Adventures of Mike Bloomfield and Al Kooperは、順番からいえば、Super Sessionのつぎのはずだったのですが、先送りにしました。カヴァーの数が多すぎたからです。

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Live Adventures of Mike Bloomfield and Al Kooperのフロント。ノーマン・ロックウェルがアルバム・カヴァーを描いたものはほかにあるのだろうか。近ごろは左肩に妙なロゴをおいたデザインの盤が出回っているらしいが、やはりオリジナルのほうが落ち着く。ロックウェルに肖像を描いてもらうというのはアル・クーパーのアイディア。「ノーミー」とは気が合ったと自伝でいっている。

もちろん、理由は単純、ワン・ショットのメンバーで2時間のステージをもたせるには、単純な構成の、できれば全員がすでになじんでいる曲をやるのが最善だからです。したがってブルーズが多くなります(マイケル・ブルームフィールドのギター・プレイのヴィークルとしての意味合いも強いが)。

Live Adventuresに収録されたすべてのR&Bおよびブルーズのカヴァーを取り上げていると、とんでもないことになるので、適当に端折りながらやります。最初のブルーズ、I Wonder Who(レイ・チャールズ作)は省き、そのつぎのMary Annへと進みます。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Mary Ann"

残念ながら、マイケル・ブルームフィールドのヴォーカルはすばらしいとはいいかねますし、(さらに悪いことに)「うまくないけれど独特の味わいがある」という方向に逃げるのもちょっとむずかしいでしょう。まあ、It's Not Killing Meなんか、それなりに工夫して、思ったよりちゃんと歌っていましたが。

マイケル・ブルームフィールド Next Time You See Me

(最初はカントリーもやっていることと、曲の短さに戸惑ったが、ずっと後年になって、悪くないアルバムと考えるようになった。この曲がベスト。エレクトリック・フラッグがつづいていれば、こんな感じのところに落ち着いたかもしれない)

マイケル・ブルームフィールド Don't Think About It Baby

(これもすばらしい! しかし、こう渋くては、二十歳そこそこの子どもが戸惑ったのも無理はないといまにして思う)

しかし、マイケル・ブルームフィールドにすばらしいヴォーカルを期待する人はいないから、そのへんはたんなる付帯条項、ギターを聴けばいいだけです。アル・クーパーは、伝統的なギターとヴォーカルのやり取りにおいては、ブルームフィールドはすぐれているとかばっています。

わたしは、歌の伴奏としてギターがあるのではなく、逆に、すばらしいギター・プレイの「伴奏」として歌が必要なだけ、と考えればよいと思っています。じっさい、このMary Annなんかインストゥルメンタル・イントロが、小節数をカウントしたくなるほど長く、ヴォーカルとインストゥルメンタルの構成の比率がひっくり返っています。32小節のヴォーカルのかわりにギター・プレイがあり、8小節の間奏のかわりに歌があるのです。

アル・クーパーのBackstage Passesによると、例によってブルームフィールドの状態は最悪で、リハーサルからずっと不眠症(アル・パチーノの映画のおかげでみな不眠症を英語で「インソムニア」ということを覚えた!)がつづいていたそうですが、それでも独特の艶のあるトーンはちゃんとでています。とくに二度目のソロ、そのままエンディングにつながるパートの高音部のプレイがすばらしい。

オリジナルはこれまたレイ・チャールズ。

サンプル Ray Charles "Mary Ann"

この曲はあまりいじらずにやったことがおわかりでしょう。レイ・チャールズ盤にあるラテン的楽天性は引き継いでいませんが、スキップ・プロコップはサイドスティックとタムタムのコンビネーションで、レイ・チャールズ盤に類似した雰囲気をつくっています。

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ドラマーがスキップ・プロコップだったのは幸運でした。近年、この数カ月後にNYで録音された、Fillmore East: The Lost Concert Tapes 12/13/68という、Live Adventuresの続篇のようなものがリリースされましたが、ドラムのひどさたるや、言語に絶します。

アル・クーパーが、あれをリリースした理由はただひとつ、マイケルのギターだ、といっていたのは、つまり、それ以外の点では話にならない、だから当時はお蔵入りにしたという意味でしょう。

Live Adventuresのような、ちょいちょいとやったステージをダブル・アルバムにして売りまくるとはいい商売だなと思いましたが、Lost Tapesを聴くと、Live Adventuresがすぐれたアルバムだということが改めて実感されます。

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そして、その出来を左右しているのは、ひょっとしたらアル・クーパーやマイケル・ブルームフィールドではなく、スキップ・プロコップとジョン・カーンなのではないかと思いました。ミスはあるし、そのフィルインはちがうのではないかといったプレイ・デザイン上の不満はあるものの、ステージ・プレイヤーとしては、これだけ安定したグルーヴを提供できれば立派なものです。

◆ In a world filled with so much sorrow ◆◆
Mary Annのつぎの曲は、モータウンLAのボス、フランク・ウィルソンが、彼が見つけて契約したモータウンLA最初のアーティスト、ブレンダ・ハロウェイのために書いた曲です。Super SessionのMan's Temptation同様、マイケル・ブルームフィールドのギターである必要のないソウル・バラッド。

サンプル Michael Bloomfield & Al Kooper "Together 'til the End of Time"

なかなかキュートな曲で、モノトーンのブルーズ系統の曲が多いLive Adventuresに色彩をあたえています。アル・クーパーはピアノとオルガンを弾いていますが、ライヴはオルガンのみで、ピアノはオーヴァーダブでしょう。

二種類の先行ヴァージョンを聴くと、アル・クーパーの意図がよくわかります。まずはオリジナルのブレンダ・ハロウェイ。



つぎはスペンサー・デイヴィス・グループ時代のスティーヴ・ウィンウッドのヴァージョン、といって自前サンプルを置くつもりだったのですが、スタジオ・ライヴがあったので、まずそちらをいき、そのあとに自前サンプルをおきます。



これで話の流れが狂ってしまいました。ピート・ヨークがライヴでもきちんと叩いていて、当時のバンドのドラマーとしてはかなりいいほうだったことを確認できました。やっぱり、世代がひとつ上だけのことはある、まだプロフェッショナルが求められる時期にスタートした人だなあと思いました。芸能人である以前に、ミュージシャンなのです。

おかしなことに、スタジオ録音はもっと速いテンポでやっています。テンポの変化は、ふつうは逆なのですが。

サンプル The Spencer Davis Group feat. Steve Winwood "Together 'til the End of Time"

わたしが考えた筋道はこうです。アル・クーパーはスティーヴ・ウィンウッドのファンなので(たくさんカヴァーしている)、オルガンをフィーチャーしたSDG盤Together 'til the End of Timeが気に入ったのでしょう。でも、全体のムードとしては軽すぎるので、テンポはブレンダ・ハロウェイ盤を参考にした、とまあ、そう考えたのですが、スティーヴ・ウィンウッド自身、ライヴではテンポを落としていたので、あら、とコケてしまいました。

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それにしても、Live Adventuresは機材の不調に祟られたアルバムで(どうした、ウォーリー・ハイダー、らしくないぞ!)、この曲のようにクワイアット・パートがあると、ケーブルの不良と思われるノイズが聞こえてしまいます。まあ、それがライヴというものですが、惜しいなあ、と思います。

できれば二回でLive Adventuresを完了したいと思っていますが、いずれにしても、今回はここまで、とにかくディスク1のB面の途中まで来ています!


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アル・クーパー&マイケル・ブルームフィールド
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper
Live Adventures of Mike Bloomfield & Al Kooper


レイ・チャールズ Definitive Soul: Atlantic Years(Mary Ann収録)
Definitive Soul: Atlantic Years
Definitive Soul: Atlantic Years


レイ・チャールズ Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59(以前はもうすこしコンパクトなアトランティック時代のボックスがあったが、いまはこれしかない。当然、Mary AnnもI Wonder Whoも、このアル・クーパー特集の他の記事で取り上げたI've Got a Womanなども収録されている)
Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59
Pure Genius: Complete Atlantic Recordings 52-59



ブレンダ・ハロウェイ
Greatest Hits & Rare Classics
Greatest Hits & Rare Classics



ザ・スペンサー・デイヴィス・グループ・フィーチャーリング・スティーヴ・ウィンウッド
The Best of The Spencer Davis Group featuring Steve Winwood
Best of Spencer Davis


アル・クーパー自伝増補改訂版
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor
Backstage Passes & Backstabbing Bastards: Memoirs of a Rock 'n' Roll Survivor


by songsf4s | 2010-11-22 23:56
アル・クーパーのR&Bカヴァーとオリジナル その1 Super Session篇

今日も映画のことを書く気力がないので、「目をつぶっても通れる朝比奈峠」(わたしにしかわからない冗談、失礼)に逃げることにして、前回に引きつづき音楽駄話です。宙ぶらりんになっている『シャレード』が気になっているお客さんもいらっしゃるでしょうが、いましばらくお待ちください。

◆ 昔の企画の蒸し返し ◆◆
昼間、ツイッターでAdd More Musicのキムラセンセとちょっとお話しし、そのとき、アル・クーパーのリッピングをやり直しているということをうかがいました。最近、主体性を放棄しているので、じゃあ、夕食はうちもアル・クーパーにしよう、などと、献立を工夫するのに倦んだ主婦のようなことを考えました。

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そこまではいいのですが、アル・クーパーでなにをするのよ>俺、なのです。シャレで「名作」「傑作」の連呼でもやろうかと思ったのですが、主体性は放棄しても、プライドの破片の二、三粒はまだポケットの底に袂ぐそのように残っているので、名作と傑作の連呼はさすがにできませんやね。

で、以前、メーリング・リストで、アル・クーパーのカヴァー曲を列挙して、そのオリジナルや他のヴァージョンを並べるというのをやったことを思いだしたのです。

いまごろになってJollyがどうのとか騒いでいる鈍い連中がいるとかいう話を聞きましたが、なにをいまさらチャンチャラ可笑しい、今回のシリーズにはJollyはまったくお呼びではありません。アル・クーパーのオリジナル曲ではなく、R&Bカヴァーだけが対象です。

◆ Stop (Super Session) ◆◆
アル・クーパーのアルバムにはほとんどつねに、1、2曲、R&Bカヴァーが収録されています。それだけならまだしも、これがなかなか味のある選曲で、子どものときにすごく気になりましたし、あれこれとR&Bを集めるきっかけにもなりました。

ビルボード・トップ40を集めはじめて20年ほどもたつと、かつてアル・クーパーのカヴァーではじめて接した曲も、オリジナルがそろってきて、一堂に集めて聴いてみると、やはりささやかなイメージが浮かんできました。

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かつての企画をここにそのまま再現すると、サンプルの数がちょっとまずいほど多くなりそうな気もするので、適宜間引いたり、音質を落としたりすることになると思いますので、先にお詫びしておきます。

トップ・バッターはマイケル・ブルームフィールド、スティーヴ・スティルズという二人のギタリストを迎え、ベーシックはスタジオ・ライヴ、あとでホーンやヴォーカルをオーヴァーダブしただけというロウ・バジェットながら、ゴールド・ディスクになってウハウハだったというSuper Sessionからです。

Super Sessionには2曲のR&Bカヴァーが収録されていますが、まずマイケル・ブルームフィールドのギターをフィーチャーしたStopから行きます。

サンプル Al Kooper & Michael Bloomfield "Stop"

ドラムはエディー・ホー、ベースはハーヴィー・ブルックスです。この曲はAlbert's Shuffleと並んで、ブルームフィールドのギターのヴィークルなのですが、いまになるとエディー・ホーのドラミングにも耳を引っ張られます。

スネア、タムタムのチューニングもよく、タイムは精確、やるべきことはすべてやっていて、いいドラミングです。タムタムというのはどうしてドラマーの個性を強く反映してしまうのかと不思議に思います。ぜんぜん異なるコンテクストなのに、やっぱりモンキーズのDaydream Believerのプレイヤーだなあと感じるのだから面白いものです。

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オリジナルはハワード・テイトというジョージア出身のシンガーのヴァージョンです。

サンプル Howard Tate "Stop"

わたしはテイトの盤はもっていなくて、ライノのR&Bボックスに収録されたこのトラックだけしか知りません。はじめてこのオリジナルを聴いたときは、思わず笑ってしまいました。Super SessionのStopは、曲という感じではなく、ちょっとしたフレーズを元にしたジャムにしか聞こえなかったのに、元までたどったら、ちゃんと曲になっていたのだから、なんだか化かされたみたいで可笑しかったのです。ホントに曲だったのかよー、でした。

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しかし、よくこういう曲に目をつけたものだと思います。自分で歌う気でいたのかもしれませんが、インストにしてしまったのは、それはそれで好判断だったと思います。ブルームフィールドのベスト盤に入れるべきかどうかは微妙ですが、エディー・ホーのドラミングという付録も考慮して、わたしがコンパイルするとしたら、やはり繰り入れるでしょう。

◆ カーティス・メイフィールドのMan's Temptation ◆◆
Super Sessionにはもう一曲、R&Bカヴァーが入っています。Man's Temptationです。

サンプル Al Kooper & Michael Bloomfield "Man's Temptation"

子どものときは、この曲に対してアンビヴァレントな見方をしていました。いい曲だと好ましく感じるいっぽうで、ポップすぎて、このアルバムのジャム・セッションというコンテクストとは合致しないとも見ていました。こういうプレイならマイケル・ブルームフィールドである必要はなく、子どもはそこが不満でした。もっと弾きまくってほしいのです。

f0147840_0453781.jpgしかし、家貧しゅうして孝子出ず(は関係ないが)、マイケル・ブルームフィールドのギターが活躍しない分は、エディー・ホーが叩きまくって補っています。久しぶりに聴いて、こんなに叩いていたっけとビックリしてしまいました。ストップ・タイムのところではジム・ゴードンのようなハイ・ピッチの追加タムらしきものまで、深いリヴァーブをかけた派手な音で鳴らしていて、いやはや、です。

三島由紀夫は、太宰が浮いて安吾が沈むとは、石が浮いて木の葉が浮くようなものだ、といっていますが(太宰嫌いのわたしはガキのころ大拍手した)、ジョン・グェランやラス・カンケルが浮いて、エディー・ホーが沈むなんて、この宇宙の物理法則に反します。

タイムだけをとっても、グェランやカンケルは問題外、エディー・ホーはジム・ゴードンよりちょっと落ちるかな、ぐらいの精密さですからね。はじめからグェランやカンケルなんかとはリーグが二つぐらいちがいます。プロのミュージシャンのなかにも、音感はいいのに、タイムはまったくダメという人はめずらしくないですから、ドラマーの善し悪しが判断できないのでしょう。

この曲のオリジナルはインプレッションズまたはジーン・チャンドラーのどちらかだろうと思います。まずはジーン・チャンドラーから。

サンプル Gene Chandler "Man's Temptation"

同じ曲ではあるのですが、なんだか地味だなあ、と思います。

おっと、時間切れなので、いったんここまででアップし、残りは順次書き足します。

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つづいて、たぶんこちらのほうがオリジナルではないかと思われる、インプレッションズ盤。

サンプル The Impressions "Man's Temptation"

インプレッションズというのは不思議なグループです。いや、カーティス・メイフィールドが不思議な人というべきかもしれませんが、すばらしい楽曲が山ほどあるのに、アレンジとサウンドが退屈で、カヴァー盤の巨大供給源になっているのです。

インプレッションズのオリジナル対カヴァー・ヴァージョンの対戦成績は、わたしの基準からいうと、インプレッションズの全敗、カヴァーの全勝です。You Must Believe Me程度でも、ゾンビーズやホリーズの後塵を拝してしまうのだから、インプレッションズのレンディションをわたしがどれほど退屈に感じているかおわかりでしょう。

もちろん、Man's Temptationも、エディー・ホーが叩きまくるSuper Sessionヴァージョンの敵ではなく、なんでこんなボケボケの音なんだよ、と思うだけです。

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Super Sessionというのは、ジャム・セッションの流行をつくりだしたエポック・メイキングなアルバムでしたが、じつは、シンプルではあるものの、アレンジとサウンド・メイキングで勝利を手に入れた盤だと思います。

Man's Temptationにそれがはっきりとあらわれていますし、あとからホーンやヴォーカル・ハーモニーをオーヴァーダブした姿勢、考え方からも、アル・クーパーがジャムに強くこだわったわけではないことが明瞭にうかがえます。オリジナルと比較すると、プロデューサーが仕事をしたことがよくわかるのです。

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スーパー・セッション(紙ジャケット仕様)
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by songsf4s | 2010-11-14 23:51