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The Better of the Dave Clark Five 最後はベスト・オヴ
  
三島由紀夫の「太宰が浮かんで安吾が沈むとは、石が浮かんで木の葉が沈むようなものだ」というせりふはご存知でしょう。はじめてこれを読んだとき、太宰嫌いのわたしは快哉を叫びました。

デイヴ・クラーク・ファイヴが沈んだのも、わたしにとっては木の葉が沈むような椿事でした。ロッカー大得意、バラッド秀抜、リードヴォーカル超絶、ソングライティング卓越、ドラマー派手、ほかになにがいるのだ、というほどすべてを併せ持っていたのに、ユニフォームを着た、エド・サリヴァンがひいきにした、リードギターが15分もつづく退屈なソロをしなかった、といったつまらない理由で忘却されたのは、ロックンロールの歴史における最大の意外事です。

ロン・ライアンのDC5回想は示唆に富んだ面白いものでした。なによりも、DC5はキャンプまわりの芸人のなかでトップ・ランクだった、というのははじめての知見で、そうだったのか、と膝を叩きました。

ビートルズやキンクス以下、みな馬鹿げた契約をして、働いても働いても、マネージメント・オフィスとレコード会社だけが儲けていた時代に、二十一歳だったのでしょうか、自分のバンドをセルフ・マネージメントしていた若者が、EMIを相手に、なぜあれほど強硬というか巧妙というか、すばらしい交渉をやってのけられたのか納得がいきませんでした。

しかし、USベースの稼ぎ頭だった、とわかったら、だいぶ像がはっきりしてきました。キャンプ回りで有名だったということは、それだけですでにおおいに有利な立場にあります。会社のほうから契約「してもらいに」いく状況です。

もうひとつ、大いに稼いでいたのなら、自分でスタジオ・タイムを負担し、レコード会社の助けなしに原盤制作できたのも当然だったことになります。これで疑問解決です。

下手な考え休むに似たり、本日の一曲目は当時としては究極のラウド&ヘヴィーだった初期のヒット。

The Dave Clark Five - Any Way You Want It


このシリーズではバラッドを中心に並べてきましたが、リアルタイムのファンの多くは、DC5といえば、こういうタイプのサウンドを思い浮かべるのではないでしょうか、とくに初期はこのタイプのシングルがずらっと並びます。

マックス・ワインバーグは、この曲のとんでもないエコーが気になり(だれだって気になる)、御大に直接たずねています。DCは笑いながら、スタジオの裏手にいいコンクリートの壁があってね、と種を明かしていました。

録音というのは、そういうものであってほしいものだ、とわたしも笑いました。なんとかすごい音が録れないかと、みな変なことをやったものです。卓の前に坐っているばかりが録音ではないんだぜ、と思います。

いや、いまは卓の前ですべてを生み出せなければ、エンジニアとして一流ではないのでしょう。それは理解できますが、年寄りとしては、昔の音のほうに、やはり味わいを感じるというだけです。

同じタイプのトラックで、だれもが記憶しているのは、このコントゥアーズのカヴァー。いや、オリジナルなんか鎧袖一触、小指の先で吹っ飛ばすほど、マイク・スミスのヴォーカル・レンディションとDCのサウンドづくりは強力です。

The Dave Clark Five - Do You Love Me


わたしの観点からは、イントロ・ドラム・リックは、一打足りないのですが、あれ、足りないじゃん、とチラッと頭の片隅に引っかかるところが、かえってフックになっています。

計算したのでしょうかねえ。いや、しまった、と思ってから、プロデューサーとして、ミスはつねに魅力の一部、と考え直したのかもしれません。インタヴューで、しきりにドラミングのミスの話をしていましたから。

いまになるとわかりにくいかもしれませんが、当時としては、とてつもなく音圧の強いサウンドで、イギリスのみならず、アメリカを見渡しても、これほどすごい音を作っていた人はほかにいなかったのではないでしょうか。DCが私淑したスペクターだって、これほどの厚みは実現していません。

アーティスト・イメージというのは馬鹿にならないもので、反逆的ポーズなんていうのに、われわれ子どもはコロッと騙されたりしました。しかし、ユニフォームを着て、身奇麗にし、深々とお辞儀をして、にっこり笑い、手を振るのも商売なら、体制を嗤い、客を足蹴にするのもまた商売、どちらも商売にすぎません。

だったら、わたしは、これは芸術よ、なんていって盤を売りつける詐欺師より、これはただの商品、それ以上のものではない、よけいな期待はするな、とはじめから宣言して商品を売りつける商売人のほうが好きです。お芸術商人は陰湿で不愉快です。偉そうにするのは、タダで盤を配ってからにしてもらいたいものです。

ずっとバラッドを中心にやってきたので、もはやその系統の曲に大事な積み残しはなく、自然にロッカー、シャウターへと向かいます。つぎは、わがDC5フレンド、キムラセンセがコメント欄で、これがマイク・スミスのベストと断じられた曲を。

The Dave Clark Five - Concentration Baby!


わたしは、フィル・スペクターの強い影響下でつくられていた時期のDC5に執着がありますが、マイク・スミスの力量がこの曲に十分に発揮されているという点では、まったく異論がありません。

ジョン・レノンが一度だけDC5に言及したことがあります。「自分たちの曲でもっとも気に入っているのはどれか?」という記者の質問に、この曲をあげました。

The Dave Clark Five - Glad All Over


質問がアホだから、うんざりして、ビートルズの曲ではなく、そのときヒットしていた他人の曲をあげたのでしょう。でも、ほかにいくらでも曲があるのに、DC5のGlad All Overを選んだということは、それなりに意味があったのではないでしょうか。

Glad All OverはDC5の最初の大ヒットですが、すでにそのサウンドの特徴は明瞭にあらわれています。卓越した楽曲とアレンジメント、エコーを駆使した録音、ストレートで力強いビート、マイク・スミスの圧倒的ヴォーカル、コーラスというより、厚い「集団ヴォーカル」の突進、こういったものにプラスすることの、甘みの淡いあっさりした叙情性のある(これまた「集団ヴォーカル」による)バラッド群によって、彼らは多くのヒットと、忘れがたいオブスキュア・トラックを生みました。

もう一曲、ごく初期のストレート・ロッカーを。

The Dave Clark Five - Thinking of You Baby


どこからこういうアレンジが生まれことやら! ブライアン・ウィルソンも、ときおり、絶句するようなアレンジをしますが、DC5も、こうすればこうなると、計算があったのだろうか、と考え込んでしまうアレンジがかなりあります。このThinking of You Babyも、よくぞこんなグルーヴを発明した、と思います。

これまで、デニス・ペイトンのサックスにふれていないことを思いだしました。DC5の場合、ノーマルなブロウ・テナーもやらないではありませんが、サックスの主な用途は、ベースとやキック・ドラムと協力して、厚みのある低音部をつくることです。

DC5は、リーダーのDC以外が、だれも目立とうという気がなかったようで、いまさらのように、チーム・ワークのよさに感心します。とりわけ、デニス・ペイトンは地味な仕事をきっちりやっています。

当時だって、すごい音だとは思っていましたが、いま、そこにある、トランジスター・ラジオから、当たり前のように流れてきた曲でもあったので、DC5の特殊性をほんとうの意味で感じ、理解していたとはいえなかったのだなと、今回、すこし距離をとりながらまとめて聴き直してみて、改めて思いました。

まだヒット曲の積み残しがあるのですが、べつにすべてを網羅しなければならないというものではないし、そもそも、ノン・ヒットにスポットを当てようと思ってはじめたことなので、そろそろ店じまいにします。

最後の曲はBecause、なんていう手もあったでしょうが、それもしゃらくさいので、いまのいままでわたしも知らなかった曲にしました。

マイク・スミスとマンフレッド・マンのマイク・ダボの1976年のアルバムから。後年のポール・マッカトニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スターの曲とはべつものです。

MIke Smith & Mike D'Abo - Free As A Bird


クリップの説明によると、これは2008年のマイク・スミスの葬儀のときに流された曲だそうです。マイク・スミスに安らかな眠りを。


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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 1-Glad All Over/Return!/American Tour
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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 2-Having A Wild Weekend/Weekend In London/Coast To Coast
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Vol. 3-I Like It Like That/Try Too Hard/Satisfied With You
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Vol. 4-5x5/You Got What It Takes/Everybody Knows
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Vol. 5-Five By Five 1964-69/If Somebody Loves You
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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 7-Rarities,Hits & Singles Tracks
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by songsf4s | 2011-09-08 23:55 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その4
 
デイヴ・クラーク・ファイヴは、日本ではあまり人気がなかったようで、とどのつまりが、Becauseだけのグループと世の中ではみなされているようです。

しかし、ブルース・スプリングスティーンのドラマー、マックス・ワインバーグのように、DC5を見て人生が変わった、という人がいるほど、アメリカでは、かつては絶大な人気を誇りました。デイヴィッド・レターマンだったか、マイク・スミスをゲストに迎えて、俺の人生を変えた男と紹介していましたし、ホール・オヴ・フェイムへのインダクションのときに、トム・ハンクスは大熱演で子供のときのアイドルを賞賛しました。

64年から66年にかけてなら、DC5はビートルズのつぎにビッグなイギリスのアーティストだったといって大丈夫でしょう。そして、印税率からいって、メンバーが手にした金はビートルズを上まわっていたのではないでしょうか。あの時代、ツアーでの移動は自家用機で、なんていうのはDC5だけだったにちがいありません。

前回、LPリイシューがまったくといっていいほどなかった理由を書きました。これが忘却の最大の原因だと思いますが、「サイケデリックの断絶」を超えられなかったのもまた、忘れられた理由のひとつだろうと思います。影響力の問題です。

DC5と対照的なグループを措定すればはっきりします。たとえばヤードバーズです。彼らのアメリカ・ツアーは売り上げからいえば、DC5の足元にも及ばなかったでしょうが、ジェフ・ベックのデモーニッシュなギターは、自分でプレイしていた若者に強い影響を与え、サンセットのガレージ・バンド群の勃興の背景になりました。

バンドをやっている連中から見れば、DC5は、清潔なユニフォームをまとい、きれいに髪をセットアップして、エド・サリヴァンとにこやかに握手する、古めかしいバブルガムのバンドになってしまったのです。

しかし、時代のコンテクストというのは、いまではたいした意味がありません。ただ裸の音がそこにあるだけです。そろそろそのことに気づいてくれるといいのだが、と思ったのも、DC5を大々的にやってみようと考えた理由のひとつです。

このシリーズは、デイヴ・クラークと相方のマイク・スミス、レニー・デイヴィッドソン、デニス・ペイトンのソングブックのつもりで曲を選んできました。また、オブスキュアと銘打ったので、できるだけヒット曲を避け、アルバム・トラックやB面曲を中心にかけてきました。

しかし、そろそろその方針では苦しくなってきたので、今回は二つのルールをまとめてやぶって、カヴァーの大ヒット曲から入ります。DC5にとっては唯一のビルボード・チャート・トッパー、作者にしてオリジナル盤のシンガーはボビー・デイ。

The Dave Clark Five - Over And Over


ビルボード上では1965年のヒットですが、日本では66年はじめのヒットでした。最初に知ったのがCatch Us If You Can、そのつぎにヒットしたのがOver and Overと、わたしは記憶していますが、この順序は英米のディスコグラフィーとは矛盾します。二曲のあいだはそんなに接近していないのです。

日本ではリリース順が狂って、Catch Us If You Canが遅れ、Over and Overがきびすを接する形になったのか、あるいはわたしの記憶違いか、そのあたりはわかりません。はっきりした記憶のある方はどうぞコメント欄に。

Catch Us If You Canもそうでしたが、この曲もDCの「フライパンのような」ハイパー・ハイ・チューニングのスネアによる四分三連が小学生には大きな魅力でした。今にして思いますが、このチューニングは、やはり、AMラジオでもはっきり聴こえるようにという配慮だったのでしょう。

Gだったか、Cだったか、中学のバンドメイトがハーモニカをもってきたとき、この曲の間奏をやってみました。いまギターがないので、キーを確認できませんが、自分でやったときはG-Cにしました。コードはこの二つだけなので、Gキーのハーモニカなら、どの音を吹いても合ってしまい、間違えたくても間違えられない仕組みになっています。なるほど、ハーモニカというのはそういうものなのかと納得しました。

いちおうボビー・デイのオリジナルも聴いてみます。

Bobby Day - Over and Over


ドラムはアール・パーマーだったような記憶があるのですが、いまは確認できません。これを聴くと、なるほどと思います。ブリティッシュ・インヴェイジョン・グループがアメリカのR&Bチューンをカヴァーすると、たいていの場合、テンポ・ダウンし、ビートを重くします。典型はビートルズのTwist & Shoutです。DC5のOver and Overも、同じ方針によるサウンド構築です。

すこし時期が飛びますが、67年のシングルへ。これまたDC5が書いた曲ではないのですが、たんに外部の曲というだけで、DC5ヴァージョンがオリジナルではないでしょうか。どうであれ、他のヴァージョンというのをわたしは知りません。レス・リード&バリー・メイソン作。

The Dave Clark Five - Everybody Knows


リップシンクながら、このクリップから、リードはレニー・デイヴィッドソンとわかります。Everybody Knows以下のコーラス・パートでは、マイク・スミスの声がめだちますが!

67年でこれですからね。ミュージック・フェアかと思っちゃいます。ジェフ・ベックとヤードバーズに狂ったガレージ・バンドの観点からは、お呼びでないもいいところだったでしょう。

曲がまた、いや、ネガティヴにいうつもりはないのですが、エンゲルベルト・ハンパーディンクのRelease Meのコンビによるもので、いかにもそういうタイプのバラッドとくるわけで、子どもには受けなかったでしょう。

これは、主観的には「DC5の最後のヒット」、記憶にある最後のDC5のシングルです。ビルボード・チャートを見ても、この曲が43位でトップ40にとどかず、以後はバブリング・アンダーが二曲あるだけでなので、アメリカでも最後のヒットといっていいようです。

思うに、サイケデリックのギャップを乗り越えられなかったDC5は、ロックンロールから大人のバラッドへというシフトを試してみたのではないでしょうか。レターメンじゃあるまいし、そういうのは向いていないと思うのですが、ダウンヒルに入ると、人はいろいろ考えるものですから。

今回のために67年を中心に10曲リストアップしたのですが、ここまでくると、ファンもあまり聴かない時期なので、ユーチューブでは軒並みはずれ、クリップが見つかりません。

そんななかで、かろうじて見つかったデイヴ・クラーク&マイク・スミス作のバラッド。

Dave Clark Five - 34-06


気になる方もいらっしゃるだろうから、書いておきますが、タイトルは番地です。69年のシングル、(If) Paradise (Is Half as Nice)のB面としてリリースされたようです。A面のほうはエイメン・コーナーの大ヒットで、競作になったのか、それともたんなる後追いのカヴァーだったのか、そのへんはわかりませんが、すぐれたオリジナル曲が売りものだったバンドが、カヴァーばかりになっていくところに、終わりのときが近いことが暗示されています。

さらに末期のシングルを。こんどはA面のアップテンポ曲。なんだかスティーヴィー・ワンダーのFor Once in My Lifeに似ていますが、それはひとまずおいて……デイヴ・クラーク&マイク・スミス作、69年夏のシングル。

The Dave Clark Five - If Somebody Loves You


65年ごろとはずいぶんサウンドの手触りが違いますが、時代とともに変化するのは当然のことで、この時期のDC5としては、これは最良のサウンドだと思います。67年からオーケストラを多用するようになりますが、それがもっとも成功した曲といえるでしょう。だれがアレンジしたのかわかりませんが、管は好みです。

マイク・スミスはいつもコンボ・オルガンかピアノでしたが、この曲ではハモンドをプレイしていて、時代は変わるんだなあ、と思います。子どものころはVoxやフェンダーのコンボ・オルガンの音はあまり好きではありませんでしたが、いまになると、マイク・スミスはコンボ・オルガンのほうが似合うのに、と思います。

まあ、それは40年以上たって思うことであって、人はそのときそのときに最善と思うことをするしかないのですが。

後期になるとクリップがごくわずかしかなく、やむをえず、はじめのほうに遡って、デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作のロッカ・バラッドを。

The Dave Clark Five - I Said I Was Sorry


うーん。この曲は、いちどはかけようかと思ったのですが、そのときに選んだ他の曲にくらべて、いまひとつの出来というか、ちょっとメランコリックなところが気に入らなくてオミットしました。

ところが、68年から69年にかけての曲を聴いたあとで戻ると、すごくいい曲に聞こえました。それだけ64年から66年にかけてのDC5がすごかったということでしょう。

本日のラストは、またカヴァーですし、オーセンティックなDC5サウンドでもありませんが、明るくて軽快な曲です。1967年のシングル、最後のトップ40ヒットとなった、ジョニー・マーサー&ハリー・ウォーレン作のスタンダード。

The Dave Clark Five - You Must Have Been a Beautiful Baby


最後のビルボード・トップ40ヒットで、日本でもすくなくともビート・ポップスではよく流れていたのを記憶しています。青空がどうしたとかいう邦題でした。ほかのことはともかく、イントロは、オーセンティックなDC5サウンドではないものの、よくできていて、印象に残りました。Penny Laneを意識したのかもしれませんが。

気になる方もいらっしゃるでしょうから、You Must Have Been a Beautiful Babyの割にノーマルなヴァージョンも貼り付けておきます。こちらなら、ジョニー・マーサーとハリー・ウォーレンの曲だということが納得いくでしょう。

Dean Martin - You Must Have Been a Beautiful Baby


次回は落穂ひろいをやります。時期にとらわれず、これまではオミットしてきたヒット曲をならべる予定です。


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デイヴ・クラーク・ファイヴ
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by songsf4s | 2011-09-06 23:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その3
 
そろそろ、デイヴ・クラーク・ファイヴのその後を決定したともいえる、EMIとの契約のことを書かないといけないと思うのですが、マックス・ワインバーグによるDCインタヴューがどこかに行ってしまったので、数字を確認できず、弱ったな、です。

まあとにかく、一曲いきます。66年にヒットした、デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作のロッカー。

The Dave Clark Five - At the Scene


これも66年に買ったベスト盤収録曲のなかで、とくに好きだった一曲です。

デイヴ・クラークはケレンの人なので、ドラムでもビシッと見得を切りますが、プロデューサーとしても、ケレンの重要性がよくわかっていて、ドラム・リックも含めて、いいイントロをたくさんつくっています。

At the Sceneのイントロは盛り上がりますし、ドラミングも総じてうまくいき、好ましいトラックになっています。

もう一曲、同じ時期のもの、ただし、バラッドを。デイヴ・クラーク&デニス・ペイトン作。

The Dave Clark Five - I Miss You


DC5の盤は長いことアウト・オヴ・プリントでした。わたしが知るかぎり、日本でのLPリイシューは一回だけ、それもベスト盤のみでした。なぜリイシューがなかったかは、マックス・ワインバーグのThe Big Beatに収録されたDCインタヴューを読んでやっとわかりました。

デイヴ・クラークというのは驚くべき人物です。彼は直接にレコード会社と契約するのではなく、楽曲だけを一定期間、一定の条件で貸し出す、いわゆる「原盤リース契約」をEMIと結びました。

原盤リース契約は現代ではごく一般的ですが、60年代にあっては少数派で、時代を先取りしたビジネス・スタイルでした。ミッキー・モストを見習ったのか、あるいはジョー・ミークの背中を見ていたのかもしれません。

DCはクレヴァーな若者でした。音楽ビジネスというものをよく研究し、すべてのトラブルの原因はマネージャーにあると見抜いたのでしょう、セルフ・プロデュースの道をとっただけでなく、セルフ・マネージメントが最善だと判断し、すべてのビジネス・マターをみずからおこないました。たぶん、二十一か二、大学生の年齢のときにです。

数字は忘れましたが、デイヴ・クラークはEMIに乗り込んで、その時点のプロデューサー印税率の最高値をきき、それにさらに上乗せしたレートで、自分がプロデュースした原盤をEMIにリースする、という契約を結んだのです。

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左からマイク・スミス(リード・ヴォーカル、キーボード)、リック・ハクスリー(ベース)、レニー・デイヴィッドソン(リード・ギター)、デイヴ・クラーク(ドラムズ、リーダー、プロデューサー、マネージャー)、デニス・ペイトン(サックス、アコースティック・ギター)。ハーモニーは全員参加だったことを、このマイク・セッティングも示している。

また、非常に不利な契約を強いられたビートルズの、たしか倍ほどのアーティスト印税率も契約に盛り込まれていました。たぶん、一発屋と思われたから、そんな提示が受け入れられたのだろう、とデイヴ・クラーク自身はいっています。しかし、二十歳そこそこでそこまでやったのだから、たいしたネゴシエイターぶりです。

セルフ・マネージメントによる中間搾取の排除、きわめて高い印税率、そして、アメリカでの大成功のおかげで、御大デイヴ・クラーク以下、全員が札束を抱えて引退し、その後もそれぞれに順調だったおかげで、たぶん、リイシューがなかったのです。

よく、ゴミもホコリもチリも、なんでもかんでもすべてリリースするアーティストがいますが、そのほとんどは金詰まりが理由でしょう。ビートルズだって、ジョージ・ハリソンが借金を抱えたことが、アンソロジー・シリーズのリリースにつながったといわれているほどですから。

まとめると、こうなります。原盤の権利はEMIではなく、デイヴ・クラーク自身が保持していたために、会社が勝手にリイシューすることはできなかった、しかも、DCが経済的に困ることはなく、その面からもリイシューの必要はなかった、これがDC5の盤が極度に入手困難だった理由です。

つぎは、あのころはよくあった、楽曲としてはバラッドなのに、ぜんぜんバラッドらしくないアレンジ、サウンドをかぶせた、典型的なミッド・シクスティーズ・スタイルの曲を。デイヴ・クラーク&デニス・ペイトン作。

The Dave Clark Five - Do You Still Love Me


塵芥までリイシューしたあげくに、大々的なツアーを繰り返して、衰えた姿をさらさなくてすんだのはまことに慶賀に堪えません。しかし、逆にいえば、70年代以降、いっさいのプロモーションをしなかったことになり、そのために、DC5は幻のバンドになってしまったのだから、痛し痒しです。

つぎはデイヴ・クラーク&マイク・スミス作のストレートなバラッド。フォー・トップスのヒット曲とは同題異曲です。

The Dave Clark Five - Bernadette


やっぱりコードが素直ではありません。だから、バラッドでも甘さに辟易することがなく、いまになると、DC5というのは、じつは、バラッドを得意としたグループだったのではないかという洞察に至ったりするわけですが。

いま、思いだしたことを、忘れないうちに書いておきます。たぶん1965年のことだろうと思いますが、全米ツアーのおり、NYのクラブに行ったデイヴ・クラークは、そこに出演していたバンドが気に入り、ツアーのオープニング・アクトとして起用しました。

それが、ヤング・ラスカルズだったというのだから、さもありなん、と笑いました。ラスカルズのディノ・ダネリとデイヴ・クラークよく似たタイプのドラマーで、ともに、明るく、派手で、ケレン味たっぷりのショウマンでした。デイヴ・クラークが惚れ込むドラマーがこの世にいるとしたら、それはディノ・ダネリにちがいありません。

いや、まじめに考えると、フィル・スペクターのファンだったデイヴ・クラークは、やはりハル・ブレインのドラミングを研究したと思います。DCの明るく華やかなサウンドとプレイは、ハル・ブレインに通じるものです。

ちょっと時期が前後して、65年にもどります。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - I'll Be Yours My Love


いかにもマイクらしい歌いっぷりで、好きだったなあ、と遠い目つきになってしまいます。いや、自分で歌うなら、アイルービーヨーズと、ヴァースのバッキングをやりたいですけれどね。

ドラムも自分でやりたくなるようなプレイで、これまた楽しいアレンジです。この曲にかぎったことではなく、レニー・デイヴィッドソンはよく使うのですが、ジャランという短いアルペジオないしはゆっくりしたコード・ストロークが、この曲でもドラマティックな味を加えています。これもDC5サウンドの大事な一部でした。

60年代の他のヒットメイカーとちがい、デイヴ・クラーク・ファイヴはすっかり忘れ去られた、と思っていたのですが、今回、検索してみて、相当オブスキュアな曲もユーチューブにあがっていることがわかりました。

われわれの世代が、ことのほか深い愛惜の念をもって懐かしんでいるのか、ようやくリイシューの成果が上がって、DC5があの当時「ビートルズのつぎにビッグ」だったことが理解されてきたのか、そのへんはわかりませんが、どうであれ、これだけ多くの曲が聴けるようになっていたのはうれしい驚きでした。

したがって、いままで、かけたいと思って見つからなかったのはただ一曲だけ、本日最後の曲は、このDC5特集で最初の自前サンプルです。

アルバムI Like It Like Thatから、デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

サンプル The Dave Clark Five "A Little Bit of Love"

かなり地味な曲ではありますが、じつに面白い展開で、最初に聴いたときは、へえ、といってしまいました。歌いだしのところのメロディーとコードの展開は大好きです。いやはや、それにしても、よくヴァースに戻れたものだ、といいたくなるような、変なコードの展開です。

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ミディアム・バラッドでDCがスネアをハード・ヒットするのは毎度のことで、Hurtin' Insideのようにブラシを使うほうが例外でした。このミディアム・テンポのバラッドでのスネアがまたいいサウンドで、改めて惚れ直します。プレイ・スタイルにはハル・ブレインの影響を感じます。

DCは、やりたいことを百パーセント実現できるだけの十分なテクニックは持ち合わせず、しばしば拍を食うミスをする人でしたが、プロデューサーとして、ドラマーとして、なにがしたいのかはプレイから明快に伝わってきますし、じつにいいドラミング・センスをもっていました。

次回の選曲をまだしていませんが、フリーハンドでどかどか曲があふれてくる状態は終わりました。次回は、カヴァー曲が中心になりそうな気もします。

でも、オミットしたヒット曲がずいぶんあるので、「ベスト・オヴ」をやれば一回分は軽く埋まりそうですし、探せば、まだオブスキュアな佳曲もかなりありそうな気もして、なんとも予想ができませんが、次回完了の可能性もあり、ということで本日はおしまいです。


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by songsf4s | 2011-09-05 22:47 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その2
 
昨日、ツイッターには書いたのですが、先月下旬に、ジェリー・リーバーが没したそうです。

何度も追悼記事を書いたせいで、そういう話をするのはやめようと思いました。自分自身が年をとって、死の可能性が高まっているのだから、これから、かつて好きだった人たちの死はどんどん増えていくことを覚悟せざるをえず、気が重くなったのです。

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ジェリー・リーバー(左)とマイク・ストーラー。伝記映画を作るなら、中年以降のジェリー・リーバーはロバート・デニーロに演じてもらいたい。

しかし、「ロックンロールをつくった男たち」の片割れの死となると、さすがに、感慨があります。昨日はNYタイムズとLAタイムズの追悼記事を読みました。やはりアメリカ現代史の偉人の死だけに、どちらもよく調べた丁寧な記事でした。

この二つがあれば、とくにわたしがなにか書く必要もない、リーバー&ストーラーの伝記すら読んでいない人間にたいしたことが書けるはずもない、と思わなくもないのですが、できれば、いずれ、ジェリー・リーバーの仕事についてなにか書こうと思っています。

◆ ワイルド・ウィークエンド ◆◆
さて、ベター・オヴ・ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴの二回目です。

前回は間違いだらけの状態で公開することになり、公開してから必死で直し、どうにか文章として格好がついたのは午前二時のことでした。それまでの二時間のあいだにいらした五十数人のお客さんには、お詫び申し上げます。

最後の四曲は二〇分ほどのあいだに選んで探して貼りつけて書くというスクランブル、文字校もせずにアップしたくらいで、書き忘れが山ほどありました。自分自身のための覚え書きとして、今後、書き落とさないようにがんばれよ、というリストを。

・ベースのアレンジ
・エコーの問題
・EMIとの契約
・なぜLPリイシューがなかったか
・なぜ忘れられたか
・ソングライターとしてのレニー・デイヴィッドソン

てなあたりを、今後、徐々に書いていこうと思います。

それでは、本日はバラッドではなく、ロッカーでスタートします。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作、映画『五人の週末』の主題歌。

The Dave Clark Five - Having a Wild Weekend


デイヴ・クラークは、マックス・ワインバーグに、ドラムがフロントのバンドなんてほかにはなかった、といわれ、だって、マイク・スミスが、俺はフロントなんかイヤだ、というから、しかたがなかったんだ、と答えていました。

このクリップにはそれがよくあらわれています。フロントであるはずのスミスが、いちばんうしろで歌っているんですから、笑っちゃいます。シャイな人だったようですが、しかし、ロン・ライアンは、戦争中に生まれた労働階級の子どものつねで、マイクはファイターだった、といっています。いや、むろん、シャイであることと、ファイターであることは矛盾しませんが。

主題歌と書きましたが、これははじめから意図されたものではなく、英版ではCatch Us If You Canといっていたものが、米版ではHaving a Wild Weekendと変更されたために、結果的にこの曲がテーマになってしまっただけです。

しかし、盛り上がる曲です。マイク・スミスの力量が遺憾なく発揮されていますし、DCもこういうストレートな曲ではいいドラミングをします。「フライパンを叩いたような」といわれたスネアのハイ・チューニングがぴったりはまるタイプの曲です。

大ヒット曲は避けようと思ったのですが、DC5を知っているのは、わたしらの世代が最後、後年のリイシューというのはわたしが知るかぎり一回だけ、それもベスト盤のみだったので、わたしらの世代にとっては自明の曲でも、いまではまったく自明などではないでしょうから、『五人の週末』の大ヒットした本来の主題歌も聴いてみましょう。

レベルが低くて聴きにくいのですが、映画からとったクリップにしました。タイトル・シークェンスです。デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

The Dave Clark Five - Catch Us If You Can


小学校のとき、このスネアの三連がたまらなく好きでした。いかにも十二歳の子どもが好みそうなサウンド、プレイです。DC5はしばしばハーモニカを使いましたが、この曲がもっとも成功した例でしょう。

小さなことですが、イントロのフィンガーティップスを聴くと、エコーのかけ方がみごとだと改めて感心します。デイヴ・クラークは、もっとも影響を受けたミュージシャンとしてフィル・スペクターをあげています。さもありなん、です。

1963年から68年という彼らの全盛期のエンジニアはエイドリアン・ケリッジという人で、現在のベストCDも、クラークとケリッジがリマスターしたとあります(エンジニアの名前は、コメントでtonieさんのご指摘を受けて修正。あとから過去の記事を調べたら、自分でエンジニアのことを書いていたので、それを再利用した!)。

この曲は日本でも(「若さをつかもう」という恐るべきタイトルで!)かなりエア・プレイがありました。わたし自身、DC5というバンドを認識したのはこの曲を聴いてのことで、すぐにEPを買いました。

そのEPには、ほかにHaving a Wild Weekend、I Like It Like That、そして残るもう一曲はクリップでどうぞ。本日最初のバラッドにして、わがオールタイム・フェイヴ、デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - Hurtin' Inside


中学のバンドでDC5のものを二曲やりました。Come HomeとこのHurtin' Insideです。Come Homeをやったのは、コードが単純(C-Am-F-Gタイプ)でテンポが遅い、したがって中学生にもできそう、という面が多分にあって、とくにフェイヴというわけではありません。

しかしHurtin' Insideは、その後も、このときのバンドメイトと会い、ギターがあれば、よく歌いました(近ごろ歌っていないな、Mよ)。循環コード依存のわかりやすい進行なのですが、循環コードをうまく組み合わせて使えるのもソングライターの才能のひとつです。

つぎもバラッド、ふたたびデイヴ・クラーク&マイク・スミス作、こちらはちょっとコードが複雑です。

The Dave Clark Five - Your Turn to Cry


すばらしい! オルガンの使い方、メロディーラインとコードの意外性(お得意のオーギュメントの導入)、そして甘さ控えめの乾いた叙情性、これこそがプリ・サイケデリック時代の音楽だ、といいたくなります。

「サイケデリックの断層」というものがありました。1967年を境にして、音楽タイプ、サウンドの手触り、楽曲の構造と外観、そしてパフォーマーが大きく変化し、1967年以降、急速に人気を失っていた「被害者」がたくさん生まれました。ロックンロールが直面した、大人になるための通過儀礼といっていいでしょう。

デイヴ・クラーク・ファイヴは、「サイケデリックの断層」を越えられなかった代表的アーティストです。古めかしい音楽スタイルに固執した、と断じることもできるでしょうが、これだけ時間がたってしまうと、その時代その時代の「明日への意思」など、どうでもいい塵芥に見えます。大事なのは音そのものの手触りだけです。

サイケデリックの断層を越えられなかったおかげで、それ以前の、わたしにとってはもっとも音楽的に幸福だった時代の空気が、彼らの音楽には真空パックされていると感じます。

なかでも、とりわけあの時代を空気を濃厚をまとった曲がありますが、このYour Turn to Cryなどはその代表で、当時は知らず、90年代のCDリイシューではじめて聴いたにもかかわらず、ああ1965年だ、横浜の裏町を徘徊し、楽器屋の前に立ち尽くし、若葉町の三本立て映画館でナポレオン・ソロを見ていた十二歳の俺がこの歌のなかにいる、と涙が出そうになりました。

そして、つくづく思うのです。日々サウンドが変化した時代は、毎日が興奮だったが、でも結局、サイケデリックもウッドストックも、なくてもいっこうにかまわなかった、1965年のほうがずっと楽しかった、と。

しかし、冷静になれば、時代の変化のなかでさまざまなものが失われ、忘れられていくからこそ、過去への執着が生まれ、当時は当たり前に思っていたものが、じつはソリッド・ゴールドだったことを認識できるのだから、このディレンマは受け入れるしかないという諦念にいたります。

オブスキュアという看板を裏切ってしまいますが、つぎはアップテンポのヒット曲を。といってもマイナーコードですが。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

Dave Clark Five - Try Too Hard


これは1966年に買ったベスト盤の収録曲のなかでも、とくに好きなトラックでした。スネアをいつもより少し低いチューニングにして、でもいつものように四分三連と、さらにストレート・シクスティーンスも織り交ぜて攻めるドラミングは、いま聴いてもDCらしい、いいプレイだと思います。

四分で押し通すとベースとキック・ドラムとそれにかぶさるピアノがつくる直線的なグルーヴ、そして、マイク・スミスを中心に全員一丸となった典型的なDC5コーラスを両輪に、力強く突き進むのを聴いていると、DC5はもともとサッカー・クラブだったというデイヴ・クラークの話を思い出します。

毎回、LP片面分、すなわち六曲はやろうと思っているのですが、つぎが今日の六曲目です。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

Dave Clark Five - New Kind of Love


この記事の冒頭のほうで、DC5のベースのアレンジのことを書くのだ、と宣言したのに、前回と異なり、その話題にふさわしい曲が出てきませんでした。やっと最後に登場です。

この曲のイントロで(いや、その後も同じプレイをしているらしいのだが、歌が入ってくるとわかりにくくなる)、リック・ハクスリーは部分的に16分を使っています。

こんな変なスタイルのベースは、DC5以外では聴いたことがありません。そして、彼らはしばしばこのアレンジを使っているのです。前回取り上げた曲では、Sometimesがそうですし、To Meでも16分を使っていました。

わたしは、これはレニー・ハクスリーのスタイルというより、プロデューサーのデイヴ・クラークの好みだったのだと考えています。スペクターに私淑しただけに、さまざまな面で、人のやらないことをやり、独特のサウンド構築をした人なので、無意識におかれた音などあるはずがなく、すべては計算の結果として配置されたに違いありません。

まだComplete Historyの二枚目までしか来ていないのですが、気長に進めることにして、以下、次回へ。


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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 1-Glad All Over/Return!/American Tour
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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 2-Having A Wild Weekend/Weekend In London/Coast To Coast
Vol. 2-Having A Wild Weekend/Weekend In London/Coast To Coast
by songsf4s | 2011-09-04 23:21 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Better of the Dave Clark Five オブスキュア・トラックから見たDC5 その1
 
今回からしばらく、デイヴ・クラーク・ファイヴのトラックの棚卸しをしようと思います。

ベスト・オヴではなく、ベター・オヴ・ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴという変なタイトルにしたのは、かならずしも有名なヒット曲を並べるわけではない、あまり知られていない佳曲を中心に聴く、という意味です。

いや、DC5の場合、この、有名ではない、すなわち、オブスキュアな佳曲というのが山ほどあって、呆然とするほどです。彼らの64年から66年にかけてのアルバムより佳曲含有率が高いのはビートルズだけではないかと思うほどです。

そのデイヴ・クラークがすっかり忘れられたについては、いくつかの理由があると思いますが、そのあたりはおいおい考えていくことにして、まずは一曲行きます。

Glad All Overでもなく、Bits and Piecesでもなく、Do You Love Meでも、Anyway You Want Itでもないので、コケないようにシート・ベルトをしめてください。いや、逆か。シート・ベルトをゆるめてリラックスしてください。バラッドです。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - Forever and a Day


DC5のメンバーはみな曲を書き(ただし、ベースのリック・ハクスリーの曲というのは記憶にないが)、それぞれにいいものがありますが、やはりメイン・ライターはデイヴ・クラーク御大とマイク・スミスでしょう。マイク・スミスはスティーヴ・ウィンウッドとどっちがすごいか、というぐらいの歌い手で、そちらの系統の派手な曲を連想しがちですが、バラッドがまたじつにうまいのです。コードの扱いが独特で、やはりピアニスト的だと感じます。

順序が後先になりましたが、The Complete History of the Dave Clark Fiveという7枚シリーズのCDがありまして、これをVol.1から順次プレイヤーに載せ、適当に見つくろっていく、という安直な方針でやります。

ただし、これは必ずしもクロノロジカル・オーダーではありません。このシリーズは米盤LPをベースにしているようですが、アメリカでのリリースはイギリスより遅れたために、順序が混乱しているうえ、映画の都合など、さまざまな理由からダブって収録されている曲もあります。

CD1枚にLP3枚分のトラックが収録されていて、最低限、各LPから一曲ずつぐらいは拾いたいと思いますが、どうなりますやら。最後のあたりはあまりよくないのでオミットし、真ん中あたりを厚く盛ることになりそうです。

いや、それにしても、知られざる好バラッドの多いこと、とても二回や三回では終わりそうもありません。

それでは二曲目。今度もバラッドですが、ミディアム・テンポでバックビート付きです。デイヴ・クラーク&ロン・ライアン作。

The Dave Clark Five - Sometimes


いまになって、あわてて、ロン・ライアンてだれよ、と調べました。ファン・サイトにロン・ライアン・インタヴューがあり、これで完璧にわかりました。

簡単にいうと、初期にDC5のメンバーだったミック・ライアンの兄弟(たぶん兄)で、別のバンドでギターとヴォーカルをやっていた人だそうです。のちにライオット・スクォドをつくりますが、そのドラマーがミッチ・ミッチェルだったと。

ロン・ライアンの話は非常に興味深いもので、DC5ファンと当時のロンドン・シーンに関心のある方は読んで損はないでしょう。

面白いのは、DC5はUSベースで最高のランクだったそうで、なんだか、日本の話を読んでいるようです。日本の場合、ジャズのほうにそういう人が多いのですが、ロック系でも、たとえばスパイダースなどは米軍キャンプの仕事をしたという話を読んだ記憶があります。

また、デイヴ・クラークはドラムを叩かなかったのではないか、という疑いを、ライアンは一笑に付しています(チラッとその疑いが生じる曲もわずかにあるが、わたしはDCはスタジオでプレイしたと考えている)。

そのくだりで話題になった曲を貼りつけます。バラッドばかりでは退屈するので、こんどはロッカーです。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

The Dave Clark Five - No Time to Lose


もちろんロン・ライアンは、この曲もDC自身が叩いた、と証言しています。ちょっと手こずってテイクを重ねたが、最後はきめた、と。ユーチューブの音質では魅力が伝わりませんが、本物を聴くと、ドラム小僧は燃えます。

Do You Love MeかTwist and Shoutの焼き直しのようなシンプルな曲ですが、たしかに、このドラム・イントロはちょっとしたものです。DCにはこういうガッツがあるから、マックス・ワインバーグやわたしのような当時の子ども(いっしょにしてすまん>マックス)は、DCのプレイに惚れて、ドラマーになりたい、と切に願ったのです。

ファン・サイトにはQ&Aがあり、彼らは自分たちでプレイしたのか、なんて設問もありますが、アンサーは「断じて絶対にイエス!!!」となっています。そういう疑いがもたれた理由のひとつは、残された映像がみなリップ・シンクだからだそうです。

また、同時代のバンドに比べて、コード進行が複雑な曲が多く、ストイックでプロフェッショナルなプレイ・スタイルであることも、疑いをもたれる原因なのだとか。

このあたりは長年のファンにとっては非常に興味深いところです。ギターのレニー・デイヴィッドソンなんか、ソロは極度にシンプル、でも、バッキングではときおり光るプレイがあって、おや、と疑いが湧きます、ホントに。

またデイヴ・クラークのドラミングというのが面白いのです。けっこうミスをするのですが、タイムはきちんとしています。彼がいうように「バディー・リッチなどではない」のですが、当時のロック・コンボのドラマーとしては優秀で、プロデューサー的センスのすぐれたドラミング設計をしています。たんに、たとえばDo You Love Meにあらわれたように、ドラミング設計意図をつねに百パーセント実現するだけのテクニックを持ち合わせていなかったにすぎません。

バンドのドラマーはテクニックで勝負するわけではなく、タイムとキャラクターが重要です。その意味で、デイヴ・クラークは立派なレジデント・ドラマーでした。なにしろ彼自身がプロデューサーであり、マネージャーだったのだから、理想的な状況でもありました。

ふたたびバラッドを。デイヴ・クラークと、サックスのデニス・ペイトン作。

The Dave Clark Five - To Me


リード・ヴォーカルはマイク・スミスには聞こえません。ひょっとして、デニス・ペイトン自身がリードをとったのでしょうか。マイクをくわえて生まれてきたようなマイク・スミスに匹敵する技量ではありませんが、おおいに魅力的な声で、スミスの厚みのある声といいコントラストをなしています。

DC5はしばしば集団になって疾走するようなヴォーカル・アレンジをするので、サウンドの塊として聴いてしまうのですが、その気で聴くと、スミス以外の声が前に出ている曲もかなりあります。しかし、全体的にはよくミックスして、個々の声の違いを意識しないことも多く、この点はDC5のひとつの特徴であり、魅力でもあると感じます。

つぎもまたミディアム・バラッドです。デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

The Dave Clark Five - Everybody Knows (I Still Love You)


リードはマイク・スミスだと思うのですが、三人ほどが団子になって歌っているところがあり、はっきりしません。一番目立つのはスミスの声だというだけです。

DC5の後年のヒットに、Everybody Knowsという曲があって、まぎらわしいのですが、こちらは(I Still Love You)がくっついています。どちらもいい曲なので、たぶんもう一曲のほうもこのシリーズでご紹介することになるでしょう。

どなたもご存知の初期のバラッド・ヒット、日本ではDC5はこの曲だけと思われているBecauseはオミットしましたが、アメリカでの三枚目ぐらいからバラッドの佳曲がつぎつぎと登場し、ため息が出るような豊穣がはじまります。

つぎは、のちに映画『五人の週末』にも登場することになるバラッドの秀作です。デイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。映画からとったクリップで。

Dave Clark Five - When (from a John Boorman film "Having a Wild Weekend")


デイヴ・クラーク自身が書いたラインでしょうか、ファースト・ヴァースを聴くたびにちょっとしたセンティメントを感じます。

When the world looks dark all around you
All you need is love, I know
All your doubts and fears will disappear
And turn into song

すべての疑いと恐れは消え、やがてそれは歌へと昇華されるだろう、というのですからね。ロックンロールの歌詞のなかでももっとも好きなラインのひとつです。われわれ子どもにとって、音楽とはまさしく、疑いと恐れを雲散霧消させるための装置だったのですから。

しかし、DC5ではだれがヴォーカル・アレンジをしていたのでしょうか。わたしは正統的なハーモニーというのは好まず、ビーチボーイズやアソシエイションのヴォーカル・アレンジには退屈してしまいます。

それはたぶん、ロックンロールにのめり込んだ小学校の終わりが、ブリティッシュ・ビート・グループの全盛にぶつかったためだと思います。ジョン&ポールを筆頭とする、彼らのイレギュラーなヴォーカル・アレンジがつねに身近にあったせいであり、とりわけDC5のハーモニーを死ぬほど繰り返し聴いたからなのだと思います。

Whenも変なハーモニーが大きな魅力になっていますが、つぎも、ハーモニーが変なところに行くので、メランコリーが気にならなくなる曲です。同じくデイヴ・クラーク&レニー・デイヴィッドソン作。

Dave Clark Five - Crying Over You


メロディーを歌っているのはマイク・スミスだと思います。ハーモニーのほうはだれの声かはわかりませんが(レニー・デイヴィッドソンか?)、これが典型的なDC5スタイル・ヴォーカル・アレンジだとわたしは考えています。

ただし、しばしばワン・ノート・サンバ状態のシングル・ノートのお経じみたラインになるのは、たとえば、ピーター&ゴードンやサーチャーズなども使っている手法です。DC5の場合、それが固有のスタイルに聞こえるほどなのです。

バラッドで静かに終わる予定だったのですが、ごく初期のラウド&ヘヴィー・ヒットに戻って今回は終わることにします。デイヴ・クラーク&マイク・スミス作。

Dave Clark Five - Bits and Pieces


この曲をビートの面からではなく、ハーモニーの面から聴くという外道なことをやると、DC5って変なバンドだなあ、と思います。左チャンネルは間違いなくマイク・スミスですが、右はマイクのダブルなのか、あるいは別人なのか。まあ、ストップタイムでシャウトするところを聴くと、右もマイクのようですが。

だれがハーモニーを歌ったのであれ、こういう曲調で、こういうコーラスをやってしまうというのは、よく考えるとかなりunusualなことです。当時はモノーラル盤しか知らなかったので、ぼんやり聴き過ごしていましたが、ステレオ・ミックスをはじめて聴いたときは、えー、こんなだったのかよー、と驚きました。

いやはや、DC5は語っても語っても語り尽くせず、中途半端なところですが、以下は次回へと。


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Vol. 1-Glad All Over/Return!/American Tour
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Vol. 2-Having A Wild Weekend/Weekend In London/Coast To Coast
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by songsf4s | 2011-09-03 23:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Instrumental Dave Clark Five ドゥエイン・エディーの落とし子としてのDC5
 
前々回の「ジェイムズ・ボンド・テーマはだれがつくったのか: ヴィック・フリック・ストーリー」という記事に書きましたが、ヴィック・フリックのギターを聴いていて、思い出した曲があります。

The Dave Clark Five - Sweet Memories


これをはじめて聴いたとき、『ア・ハード・デイズ・ナイト』のRingo's Themeみたいだな、と思いました。

じっさい、この曲は彼らの唯一の主演映画『五人の週末』(英題Catch Us If You Can、米題Having a Wild Weekend)の挿入曲だったようです。『五人の週末』は小学校六年のときに一回見ただけなので、記憶から抜け落ちてしまい、後年、CDで聴いたときは、はじめての曲に感じました。

『五人の週末』予告編


なんだか散漫な予告編ですが、映画の出来自体もどうというほどのものではなく(十数年前、アメリカの友人がVHSを見つけてくれて再見できた)、DC5の熱心なファンと、スウィンギング・ロンドンのファッションに興味のある人、そして、断簡零墨までほしいというジョン・ブーアマン・ファン以外には用のないものでしょう。『ポイント・ブランク』から入ったブーアマン・ファンはがっかりすると思います。

しかし、63年から66年までのDC5はつねにハイ・レベルのアルバムをつくっていて、OST盤の出来はちょっとしたものです。Catch Us If You Can、Having a Wild Weekend、Whenの三曲が入っているだけで十分に価値がありますが、New Kind of Love、I Said I Was Sorry、Don't You Realiseといった歌ものはいずれも文句なし、さらに、他のアルバムでは一曲ぐらいしか聴けないインストが五曲も入っていて、その面でも好ましいものになっています。

Sweet Memoriesは、オーセンティックなDC5サウンドとはいえず、映画の挿入曲ということもあって、セッション・プレイヤーの録音をDC5名義にしたのではないか、という疑いが頭をもたげますが、とりあえず判断はできません。

ひとつだけいえることがあります。彼らがEMI(レーベルはColumbia)と契約する以前に、Ember(チャド&ジェレミーの最初のレーベルだった)からリリースしたシングルにもよく似た雰囲気のインストがあります。

The Dave Clark Five - First Love


これは、ドゥエイン・エディーの曲です。

Duane Eddy - First Love First Tears


ドゥエイン・エディーはイギリスで絶大な人気があり、ブリティッシュ・インヴェイジョン時代のバンドのギタリストの多くに影響を与えていますし、前々回に取り上げたヴィック・フリックも、エディーの影響であのようなサウンドをつくったと語っています。

わたしが、ヴィック・フリックを聴いているうちに、なんだかデイヴ・クラーク・ファイヴに似たようなインストがあったな、と思ったのも、あいだにドゥエイン・エディーをはさめば、当然ということになります。

もう少しデイヴ・クラーク・ファイヴのインストを並べてみます。まずは、同じサントラ盤から。

The Dave Clark Five - On The Move


こちらのほうは、セッション・プレイヤーではないか、なんて疑いはまったく感じません。スネアのサウンド、四分三連のフィルをはじめとするプレイ(基本的なタイムは悪くないのだが、けっこうミスが多い。この曲のイントロはかなり危ない)、ともにデイヴ・クラークその人だと感じますし、他のパートのプレイも、録音スタイルもいつものDC5です。

つぎの曲もまた、いかにもDC5らしいサウンドです。前の曲とタイトルが紛らわしいのは困ったものですが。

The Dave Clark Five - Move On


ストレート・ロッカーだから、ドラム・サウンドで判断できるわけですが、バラッドでも、DC5らしいと感じないでもないトラックがあります。

The Dave Clark Five - Theme Without A Name


60年代のポップ・グループによるバラッドの特徴であって、DC5だけの味というわけではないのですが、とりわけDC5のバラッドは、湿度がきわめて低く、さわやかな甘さがあります。

ねっからのファンなので、DC5をあれこれかけていると、止まらなくなります。ヴィック・フリックからの連想で、今回はインスト曲を並べましたが、DC5はマイク・スミスのヴォーカルを中心としたバンドであって、シャドウズのようなインスト・グループではありません。次回以降、数回にわたって、DC5の本線の曲を聴いてみようと思います。


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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 2-Having A Wild Weekend/Weekend In London/Coast To Coast
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デイヴ・クラーク・ファイヴ
Vol. 1-Glad All Over/Return!/American Tour
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by songsf4s | 2011-09-02 23:52 | Guitar Instro
Try Too Hard by the Dave Clark Five
タイトル
Try Too Hard
アーティスト
The Dave Clark Five
ライター
Dave Clark, Mike Smith
収録アルバム
Try Too Hard
リリース年
1966年
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Tonieさんから、DC5にもfoolの出てくる曲がありますよ、とご指摘のあったTry Too Hardです。これは当時から好きな曲で、なんだって見落としたのかと思いますが、毎度申し上げるように、人間の記憶力も注意力も当てにならない、という一証左にすぎないでしょう、と誤魔化しておくことにします。

今日は書くべきことが山ほどあるので、枕はこれでおしまい。この勢いで、歌詞もあっさり片づけます。

◆ 説得と威迫 ◆◆
それではファースト・ヴァース。なんせサイケデリック以前なので、たいしたことをいっているわけではありません。

Tell me, do you want my love
Tell me what you're thinking of
I've been waiting round so long
You don't try too hard
You don't try too hard

「僕の愛がほしいのか、いったいどう考えているのか、教えてほしいね、長いあいだずっと待っているんだぜ、きみはちゃんと努力しているとはいえないよ」

つづいてセカンド・ヴァース。

I hope you're not trying to make a fool of me
Cause if you are I know there's going to be some tears falling
And they won't be mine
You don't try too hard
You don't try too hard

f0147840_15431335.jpg「僕を騙そうなんて考えていないといいけれどね、もしそうなら、涙が流れることになるし、その涙は僕のものじゃない、きみはちゃんと努力していないじゃないか」

まあまあ、旦那、そうとんがっちゃ、まとまる話もまとまりません、威嚇は穏やかじゃありませんよ、と幇間のようなことをいいそうになっちゃいます。ジョン・レノンもこういうのを好んだようで、You Can't Do ThatやRun for Your Lifeなどを思いだします。こういうタイプの歌詞もたまにありましたな。

短いブリッジとサード・ヴァースをつづけて。

Some people may want many loves, my friend
But we both know what happens to them in the end

So please listen to these words of mine
And let me know that I'm not wasting my time
I'm sure that we could get on very fine
You don't try too hard
You don't try too hard

「世の中には恋人はたくさんいたほうがいいと思っている人間もいるけれど、そういう連中が最後にはどうなるか、僕らは知っているじゃないか。だから僕の話をちゃんと聞いてくれ、そして、これが時間の無駄ではないことを望んでいるよ、僕らがうまくやれるのはまちがいないんだから」

◆ 音のかたまり ◆◆
歌詞はよくもなく、悪くもなく、というあたりですが、サウンドは厚く、子どものころも好きでしたし、いま聴いてもみごとなものだと感じます。ベスト盤のライナーによれば、デイヴ・クラーク自身も「Anyway You Want Itを洗練した」サウンドと表現し、とくにお気に入りの一曲にあげているそうです。

f0147840_15442216.jpgこれは本音だと感じます。デイヴ・クラークが初期から目指していたサウンドの集大成といっていい音になっているからです。どういう音を目指していたかというと、ずばり「コンボによるスペクター・サウンド」でしょう。楽器編成などの表面的なことでは、スペクターとDC5の音に共通点はありません。しかし、サウンドが巨大なボールになって飛んでくる、という一点で、同じ魂が生みだしたものであると感じます。

デイヴ・クラークというのは、あらゆる面にわたって賢明な人で、サウンド・プロダクションにおいても、凡百のスペクター・フォロワーとは隔絶した手腕を見せています。凡人がスペクター・サウンドの特長と考える、くだらない表面的なことはすべて無視し、本質だけをつかみだしたのです。これはスペクター・サウンドのすぐれた「批評」といってもいいくらいです。

なにも考えていない人は、スペクターはエコーだ、とか、スペクターはカスタネットだ、と考え、その勘違いをもとに、ろくでもないコピー商品を山ほどつくりました。Be My Babyのハル・ブレインのドラム・リックをそのままコピーした、とんでもない粗悪品もひとつや二つではすみません。

しかし、本質はそんなところにはありません。サウンドの「量塊性」massivenessこそがスペクターの本質です。デイヴ・クラークは、まさにその量塊性だけを抜き出して、自分のサウンドに応用したのです。これほどのスペクターの理解者は、同時代にはほかにブライアン・ウィルソンしかいなかったでしょう(ただし、ブライアンはスペクターの本質を量塊性と捉えたわけではない。ある楽器とある楽器が同じ音をプレイしたときに生じる「第三の音」が、彼がスペクターから得たものだった)。

f0147840_1547364.jpgいま、大人の耳でDC5のサウンドを聴くと、ひとつのポイントはサックスの使い方だと感じます。ロック・コンボでのサックスというと、たとえば、Tequilaのチャンプスのようなものを思い浮かべますが、DC5のサックスは、基本的には前に出てソロをとるものではありません。

では、なにをしているかというと、ベース、キック・ドラム、ピアノの左手と協力して、低音部に厚みをあたえているのです。「もうひとつのベース」といってもいいでしょう。トラック単位なら、こういうことをした人がほかにいないわけではありませんが(たとえばトラフィック)、サウンドのインテグラル・パートして、サックスを低音部の補強に使ったのは、きわめてクレヴァーなアイディアだったと思います。

サイケデリック以前にはそれがパラダイムだったといえばそれまでですが、DC5のバンドとしての一体感は、いま振り返ると尋常ではありません。リーダーが客寄せパンダをやるだけで、他の4人はだれも目立とうとしません。フォア・ザ・チームというけれど、野球チームにも、サッカー・クラブにも、これほどフォア・ザ・チーム、フォア・ザ・バンド・サウンドに徹したグループはないでしょう。

f0147840_15513748.jpgデイヴ・クラークは、リード・ヴォーカルのマイク・スミスのことを、もっとも過小評価されているシンガーといっています。そのとおりでしょう。同時代のバンドを見て、マイク・スミスよりすごいと感じるのは、スティーヴ・ウィンウッドただひとりです。しかし、スミスが目立たなくなったのは、彼の引っ込み思案な性格や名前のせいではなく(!)、極限にまで一体化した、DC5というバンドのあり方およびそのサウンドのせいだったにちがいありません。しばしばスミスの派手なヴォーカルを霞ませたDC5のハーモニーも、わたしにはおおいに魅力的でした。当時もいまも、ビーチボーイズなんかよりはるかに好きです。

ハーモニーとなるとバラッドですが、Because以外にもいい曲がたくさんあります。Hurting Inside、Come Home(2曲とも中学のときに自分のバンドでやった!)、When、Evetybody Knows(同じタイトルのものが2曲があるが、両方ともいい)、Crying Over You、I'll Be Yours、I Miss Youと、キリなくつづきます。

まだ付け加えることがありました。ブルース・スプリングスティーンがデイヴ・クラークに会ったとき、Anyway You Want Itのエコーはどうやったのだ、とたずねたそうです。これはわたしも知りたかったことです。答えは、スタジオの裏にあったコンクリート塀だ、とのことでした。これこそがエコーの基本です。

スペクター・サウンドの陰にエンジニアのラリー・レヴィンがいたように、DC5サウンドの陰にも優秀なエンジニアがいました。1963年から68年という彼らの全盛期のエンジニアはエイドリアン・ケリッジという人で、現在のベストCDも、クラークとケリッジがリマスターしたとあります。

f0147840_1604023.jpg
左からマイク・スミス(リード・ヴォーカル、キーボード)、リック・ハクスリー(ベース)、レニー・デイヴィッドソン(リード・ギター)、デイヴ・クラーク(ドラムズ、リーダー、プロデューサー、マネージャー)、デニス・ペイトン(サックス、アコースティック・ギター)。ハーモニーは全員参加だったことを、このマイク・セッティングも示している。

◆ ロックンロール・スーパーマン ◆◆
長いあいだ、デイヴ・クラークについてはなにも知らず、ただ音を聴いてきただけだったので、マックス・ワインバーグの"The Big Beat"に収録された、デイヴ・クラーク・インタヴューには、ほんとうに驚きました。

第一のビックリ仰天は、マスターを自分で管理し、当時からレコード会社にリースしていたということです。これはいまでは常識ですが、アーティストの立場が極度に弱い当時にあっては、きわめて異例です。ミッキー・モストが、アニマルズやハーマンズ・ハーミッツなど、彼がプロデュースしていたアーティストのマスターを所持し、リースしていたそうですし、サム・クックのマスターもアレン・クラインの会社がRCAにリースしていただけだそうですが、どちらもマネージメントであって、アーティスト自身ではありません。

f0147840_16393678.jpgマネージメントといえば、デイヴ・クラークは、マネージャーをおかず、すべて自分で交渉し、契約していたそうです。二十歳になるかならずかの年齢で、EMIに出かけ、独立プロデューサーの最高印税率というのを聞き出し、いざ契約交渉になったら、その税率の倍という条件を出したのだそうです。しかも、最高印税が変動したら、つねにその税率へと引き上げるという条項まで付け加えたというのだから、アレン・クラインも裸足で逃げだす、強面ネゴシエイターぶりです。

デイヴ・クラークは、たぶんワン・ヒット・ワンダーだと軽く見られたので、こんな条件が通ったのだろうといっていますが、価値がないと考えているものに、そんな気前のいい条件で契約する会社はないでしょう。どうであれ、彼がnobody's foolだったのはまちがいありません。みな、若くして非常に不利な契約を結び、盤もライヴも売れに売れているはずなのに、いっこうに金は入らず、結局、しばらく派手な生活をしただけで、どこかへ消えていった人たちが山ほどいます。まだ若かったのに、そういう仕組をよく観察し、みずからマネージメントをした、デイヴ・クラークの才覚と手腕にはほんとうに驚きます。

f0147840_16404932.jpg引き際もあざやかでした。もはやヒットは出ず、潮時と見るや、じたばたせずに、あっさり解散しています。ご本人がいう「トップのときに辞めた」というほどではないにしても、オールディーズ・ショウなどでまだツアーをつづけているアーティストたちが山ほどいるのに、そういう未練がましいことをいっさいしていません。これも、度胸と頭脳でみずからマネージメントし、稼げるときにフルに稼いでおいたおかげでしょう。ビジネスマンに転身してからも、ずいぶん稼いでいるようですし。

破滅型の人物も魅力的ではありますが、それはそれでひとつの類型にすぎません。デイヴ・クラークのように、出処進退がみごとなミュージシャンというのは、類型にはほど遠く、ほかにだれかいるだろうかと考えこんでしまいます。しいていうと、ほかならぬフィル・スペクターでしょうかね! まあ、トランクいっぱいの札束といっしょに引退した、という共通点しかなくて、スペクターのその後の人生は、デイヴ・クラークほどきれいじゃありませんが。

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◆ ドラマー、デイヴ・クラーク ◆◆
デイヴ・クラークといえば、あのスネアのサウンドということになっています。もちろん、わたしもあのサウンドに強く惹かれました。なんたって、スネアのピッチが高い時代にあっても、飛びきりハイ・ピッチで、目立ったのなんの、ヘッドが破けそうなほど、パンパンにボルトを絞っていますからねえ。二度とスネアを高くチューニングする時代がもどらなかったこともあって、いまでは昔以上にあのチューニングに強く惹かれます。

f0147840_1644411.jpgデイヴ・クラークの盤でドラムを叩いたのは、ご本人ではなく、クレム・カッティーニだという噂があったそうですが、デイヴ・クラークは、それは70年代に彼がプロデュースした盤でのことだ、DC5時代は自分で叩いたといっています。

わたしは、このDCの主張をそのまま受け取ってよいと考えています。シンプル&ストレートフォーワードなものでは、ときにファイン・プレイを見せますし、意外な小技を聴かせてくれることもありますが、同時に、セッション・プレイヤーならしないであろうミスもやっているからです。あれはミスだ、と彼も認めている(ただし、プロデューサーとして、魅力的なミスはそのまま残すという方針だった)Bits and Piecesのイントロにおけるスネアの3連符が典型です。Do You Love Meのイントロ・リックも、これはミスといえるかどうか微妙ですが、寸足らずのパラディドルと感じます。

いや、ダメなドラマーだといっているのではありません。バンドのドラマーとしては最上の人で、同時代を見渡して、彼ほどの人はいないと感じます。キース・ムーンはタイムにおいてデイヴ・クラークの足元にも及びません。タイムの面ではホリーズのボビー・エリオットのほうがデイヴ・クラークよりいいかもしれませんが、華やかさにおいてはDCのほうが数段上でしょう。

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アメリカのバンドで当時、好きだったドラマーというと、デトロイト・ウィールズのジョニー・ビーと、ラスカルズのディノ・ダネリですが、どちらもスタートはDCよりあとです。わたしの主観では、67年暮れにプロコール・ハルムのB・J・ウィルソンを聴くまでは、DCはイギリスを代表するドラマーでした。

デイヴ・クラークは、アメリカ・ツアーのときに、まだ無名だったラスカルズをNYのクラブで見て、すっかり気に入ってしまい、ツアーに帯同したそうです。DC5とラスカルズを同系統のバンドと思っていたわたしとしては、この組み合わせは、ものごとはそうではなくてはいけない、というほど自然なものです(Silly Girl by the Rascalsをご参照あれ)。デイヴ・クラークとラスカルズのディノ・ダネリは「同じ系統」のドラマーでした。

f0147840_1654756.jpgわたしは知らなかったのですが、"The Big Beat"によると、デイヴ・クラークは、ステージではドラムをバンドの「前に」出してセットしていたそうです。バンドのスター、フロント・マンは、ヴォーカルのマイク・スミスではなく、ドラムのデイヴ・クラークだったのです。

これはそうしたくてやったとか、彼のバンドだからというわけではなく、マイク・スミスは目立つことが嫌いで、うしろに引っ込んでいることを好んだからだと(あの声とあの姿で!)、DCはいっています。どうであれ、これはサウンドときれいに符合したセットアップでした。盤で聴いても、スターはドラマーなのです。

f0147840_16555477.jpg十三歳のマックス・ワインバーグが、デイヴ・クラークの姿を見、音を聴いて、俺はドラマーになると決心した、というのも、わたしには当然のことに感じられます。小学生のわたしがドラマーになりたいと思った理由のかなりの部分も、やはりデイヴ・クラークでした。

年をとったわたしは、ドラムのテクニカルな面を尊重するようになっていますが、しかし、ドラムはなによりも派手で目立たなければいけない、剛球一直線こそドラムだ、という気持はやはり依然として強くもっています。ギターは羽織の裏地に凝ってもかまいませんが、ドラムは時代劇の主役のように、どこからどう見ても、俺が主役だ、というキンキラキンの錦の表地で勝負です。その究極の理想型がデイヴ・クラークでした。そもそも、こういう観念をもたらした張本人がデイヴ・クラークなのだから、当たり前ですが!

ハル・ブレインが、ドラマーになった動機を簡明に語っています。派手なことをやって目立ちたかった、と。わたしは断言します。「派手なことをやって目立ってやる」という魂のないドラマーは、たとえタイムは正確でも、一滴の魅力を持つこともないでしょう。音楽は、技術である以前に、芸能なのです。

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"The Best of the Dave Clark Five" LP sleeve, Toshiba Musical Industries, Tokyo, OP-7524, released in 1966 in red vinyl disk.
66年に買った『ベスト・オヴ・ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴ』。まさか、このLPを30年以上にわたって聴きつづけなければならないとは思わなかった。CDリイシューまでの長かったこと! 66年発売なので、Try Too Hardまでは入っているが、67年のYou've Got What It Takesは収録されていない。

◆ 1966年のやり残し ◆◆
以上で話の本体は終わりです。書きたいこと、書くべきことはまだ山ほどありますが、そんなことをいったら、本を一冊書くことになってしまいます。最後に、いたって個人的な思い出話にを書くことにします。何度か書いたことなので、すでにお読みの方には先に謝っておきます。

f0147840_1771541.jpg最初に気に入ったDC5の曲はCatch Us If You Canでした。たぶん、65年秋のヒットだと思います。翌年の正月だと思うのですが、このCatch Us If You Canをテーマ曲にした彼らの映画『五人の週末』が公開されました。同時上映はビートルズやスペンサー・デイヴィス・グループ、サーチャーズなどが出演する、当時のブリティッシュ・ビート・グループのパッケージ・ショウ映画『ポップ・ギア』でした。

これはもう見たくて見たくてたまらない組み合わせでした。ところが、わたしは中学受験を目前に控え、映画を見にいくとはいえず、はたと困惑しました。すぐにDVDになる、なんていう時代じゃありません。安価な家庭用VCRなんてものもなく、もちろん、ヴィデオ・パッケージなんて商品もありませんでした。公開されたときに劇場で見なければ、それで終わりだったのです。

f0147840_17103843.jpgやむをえず、一大決心をしました。塾をサボって映画館に行ったのです。しかし、根が正直なので、塾をサボって見にいくと決めたはいいけれど、疑われることを恐れ、いつもどおりの時間に家を出て、いつもどおりの時間に帰宅しました。これ、勘定合って銭足らず(ちょとちがうか)なんです。どうなったかというと、『ポップ・ギア』の途中から見て、『五人の週末』の途中で映画館を出たのです。

痛恨でした。『ポップ・ギア』は、脈絡もなくずらずらとバンドが出てきて、ただうたうだけの歌謡ショウみたいなものだからあきらめもつきますが、『五人の週末』は劇映画なのに、結末を見なかったのです。いまのわたしなら、どうせたいした結末じゃないさ、とうそぶきますが、小学生だから、悔しかったのなんの。後ろ髪を引かれるとはあのことですぜ。

f0147840_17124447.jpgそれから幾星霜。VCRの時代が来ても、DC5なんてバンドのことはだれも覚えていないのか、いっこうにヴィデオにならず、『五人の週末』は、もう一度見てみたい三本の映画の一本でありつづけました。監督が、その後、それなりに名を成したジョン・ブーアマン(『ポイント・ブランク』)だということに期待をかけたのですが、ブーアマン程度ではおまじないにもならなかったのでしょう。

ようやく結末を見られたのはほんの十年ほど前のこと、アメリカの友人がカセットを見つけて送ってくれたおかげでした。で、どうだったかというと、やっぱり、たいした結末じゃありませんでした。でも、そんなことは問題ではありません。おおいに満足しました。小学校のときにやり残したことに、きっちり落とし前をつけられるなんて、たぶん、これが最初で最後にちがいありませんからね!

付 記

さっき知ったのですが、マイク・スミスは今年二月に亡くなったそうです。三月のホール・オヴ・フェイム授賞式には出席するつもりだったのだとか。このページに晩年のスミスの写真がありますが、病み衰えた姿をお見せするのは忍びないので、コピーしません。気になる方はご自分でどうぞ。かわりにDC5時代のマイク・スミスと、DC5サウンドのトレードマークのひとつだったVOXのオルガンの写真をどうぞ。

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by songsf4s | 2008-04-26 17:20 | 愚者の船