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胸の熱くなるビートルズ――Live in Washington D.C., Feb 1964
 
昔、まだLDだった時代に、The Beatles First U.S. Visitというものを買いました。ビートルズの最初のアメリカツアーの記録で、よくできたドキュメンタリーでした。

最初のツアーといっても、最大の目的はエド・サリヴァン・ショウ出演で、ほかには、ワシントンでのライヴが予定されていたことぐらいだったと思います。

最近はすっかり無精になってしまい、そのへんのことは調べて確認せずに先に進みます。

このドキュメンタリーに、ワシントンでのライヴ・フッティジが出てくるのですが、それを見て、うわあ、と思いました。いや、いろいろな意味で「うわあ」なので、簡単に説明はできません。

幸い、その後、このワシントン・コロシアムのライヴを丸ごと収めたパッケージがリリースされたので、それを見ながら説明します。

The Beatles - Washington D.C - Roll Over Beethoven


いきなりジョージの歌で来るとは思いませんでした。当時にあっては当然のことですが、見たとおり、モニター・スピーカーはありません。こんなワーキャー・カオスでは、自分の声も、自分の楽器も聞こえないでしょう。

それでいて、ジョージは向かって左のマイクが駄目だとすぐに判断し、隣のマイクに移動しています。慣れというのはすごいものです!

ここがどれほどひどい環境だったかということを知っていただくために、この直前の、ステージに上がったときのショットをご覧いただきたいと思います。

The Beatles - Washington D.C オープニング


中華料理じゃないんだから、ふつう、ドラマーは回転したくないと思いますよ。これは武道館のようなタイプの会場で、反対側にも向けるための仕掛けなのですが、リンゴはどう感じたでしょうかねえ。慣れたもの、かもしれませんが。

そんなことは気にならなかったのか、それとも、腹を立てて、それがアドレナリンを促進したのか、このライヴは、まずリンゴが爆発して、それが誘爆を起こしていく、という雰囲気です。

The Beatles - Washington D.C - From Me to You


古今亭志ん生が、本気でやるのはせいぜい年に一回だ、毎日本気でやっていたら身が持たない、といっていましたが、ビートルズも、いつもライヴはテキトーでした。こんなに本気なのは、記録されたものでは、これだけじゃないでしょうか。

The Beatles - Washington D.C - I Saw Her Standing There


史上最高のI Saw Her Standing Thereでしょう、これは。

つぎの曲もちょっと驚きました。

The Beatles - Washington D.C - This Boy


この環境で3パート・ハーモニーをやるんだから、大胆というか、慣れは怖ろしいというか、呆れます。さすがにポールが目立つところではずしていますが、無理もありませんよ。

すでにツイッターに書いてしまいましたが、つぎの曲もちょっと驚きました。

The Beatles - Washington D.C - All My Loving


なにに驚いたかというと、ギター・ブレイクのあとのヴァースでハーモニーをつけていたのが、ジョンではなく、ジョージだったということです。半世紀近く聴いていて、いまさらこんなことに気づくとは思いませんでした。

ふつうなら、どう考えてもジョンがハーモニーをつけるところなのに、なぜジョージが歌ったのか?

われわれの世代の多くが経験していますが、この曲のジョン・レノンのリズム・ギターはかなりタフなプレイです。三連のストロークですから、まじめにやらないとミスをします。

だから、ジョンはギターに集中したくて、この部分のハーモニーをジョージにやらせたのだと思います。ジョージは軽くカッティングしているだけですから。

この曲のスタジオ録音はどうなっているかというと、改めて確認したら、やはりジョージの声に聞こえました。先入観というのはおそるべきもので、何十年も知らずにいました!

つぎのクリップの冒頭のショットには、なんだか妙に胸が熱くなりました。

The Beatles - Washington D.C - She Loves You


She Loves Youだとわかった瞬間、客席がドーンと揺れます。そういう気分だろうなあ、と思いました。もうこうなったら、ピッチもタイムあるものか、ガッツだけだ、と思います。

このライヴのすごさはいろいろな面で感じるのですが、結局、客の聴きたい気分、見たい気分と、ビートルズのやりたい気分が、ものすごく高いところで、ガチッと噛み合って、合金化してしまった、ということなのだと思います。ビートルズとファンにとって、これほど幸せな日は、ほかにあったかどうか。

The Beatles - Washington D.C - I Want to Hold Your Hand


不思議です。数千人のキャパシティーのある箱でしょうに、ビートルズはまるで、小さなクラブで、なじみの仲間たちを前にしたような、俺たちとお前ら、といったムードでやっています。

いや、むろん、このステージに上がる前に、さすがに彼らも気合いを入れたはずです。この前々日ぐらいでしょうか、エド・サリヴァン・ショウ出演は、記録的な視聴率をとりました。

つぎはコンサートで成功すれば、「アメリカでの成功」は盤石になります。ここ一番の大勝負だと、彼らは意識してステージにあがったにちがいありません。

にもかかわらず、ただテンションを上げただけで、ファブ4はリラックスして、なおかつ、ホットにやっています。

レコーディングでも感じますが、ここが勝負の分かれ目、という大一番になると、ほんとうにビートルズは強かったなあ、とまたまた感心しました。とくに、ジョン・レノンの強さが際だっていると思いますがね。

キリがないので、つぎの曲でおしまいにします。この時期のジョン・レノンを象徴する一曲。

The Beatles - Washington D.C - Twist and Shout


I Want to Hold Your Handはちょっとテンションが下がった感じでしたが、 Twist and Shoutはなかなかけっこうな出来です。

わたしは、かならずしも熱狂というものに肯定的ではないのですが、1964年のビートルズに対するアメリカの子どもたちの熱狂は、無理もないなあ、と思います。

ロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』という映画を思いだしました。エド・サリヴァン・ショウに出演するビートルズをなんとしても見ようと決意した女の子たちの大騒動を描いた、ゼメキスの処女作です。次回は、DVDを見つけて、その映画のことでも書こうかと思います。


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by songsf4s | 2011-12-07 23:49 | 60年代
ビートルズのヴァリアント Rubber Soul Sessions
 
ブライアン・ウィルソンをやろうなんて考えもあったのですが、とても二、三時間の準備ではとりかかれず、前回までの延長線上で、Rubber Soul収録曲と同時期のシングル、アウトテイクを聴きます。

今回利用するのは、主としてユーチューブ、さらにThe Beatles Artifacts、The Beatles Mythology、などのシリーズです。

前回まで依拠してきたThe Beatles Studio Sessionsはそれなりに整理されてわかりやすいのですが、今回はデータが不備なものもあります。できるだけ、マーク・ルーイゾーンのThe Complete Beatles Recording Sessionsとつきあわせるつもりですが、未確認のまま貼りつけることになるかもしれないので、そのへんはご容赦を。

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◆ 森を見て木を見ず ◆◆
woodの第一義は森ではなく、「1 木質, 木部; 材木, 木材, 材; 薪」です。

彼女は、ねえ、これ、いいでしょう? ノルウェイの森なのよ、なんていうと思いますか? とーんでもない。「ねえ、これいいでしょう、ノルウェイの木なのよ」といったのです。といっても、暖炉のそばに薪ざっぽうが積んであったわけではないでしょうけれど!

それでは「鳥は飛び去った」のテイク2から。バックビートありです。

The Beatles - This Bird Has Flown (Take 2)


ドラムが入っているのもちょっとびっくりしますが、最大の驚きは、エンディングの手前、So I lit the fire(ジョンはaといったり、theといったりしている。部屋に火をつけた? なんて歌詞があるとは思えないが!)のところにハーモニーがつけられていることです。

一瞬なので聴き誤っているかもしれませんが、ジョン自身のダブル・トラックでしょう。最終的に、よけいな装飾はオミットということになったのかもしれません。

Norwegian Woodは、This Bird Has Flownのワーキング・タイトルで、Rubber Soulセッションの初日、1965年10月12日に1テイクだけ記録されています。同月21日リメイクがおこなわれ(リメイクとするほど大きな転換とは思えないが)、テイク2から4までが録音されました。

よけいなことを書いて混乱させて申し訳ないのですが、マーク・ルーイゾーンは、take 2は「has a heavy sitar introduction and was recorded without drums or bass」と書いています。

はて? 上掲のクリップがほんとうにテイク2だとすると、ルーイゾーンのいう裸のテイク以外に、ドラムとベースとヴォーカルがオーヴァーダブされたものも存在する、ということだろうと考えられます。

こんどはほんとうにドラムもベースもなし、それどころか、シタールもないアコースティック・ヴァージョン。

The Beatles - Norwegian Wood (This Bird Has Flown) Take 3


ノーマン・スミスは、シタールはイヤなピークが出たりして、じつに録りにくい楽器だったと回想しています。シタールなしヴァージョンはノーマン・スミスのリクエストでしょう(嘘)。

つぎのテイク4が最終的にリリースされたものなので、この曲はこれでおしまいですが、謎が残りますなあ。ノルウェイの木とはなんなのか? ポールによると、壁や床も木でできた部屋なのだそうです。当たり前みたいな気がしますが。

So I lit the fire, isn't it good, Norwegian wood

朝早く、彼女は仕事に出かけ、部屋にとり残された男は、火をつけて、ノルウェイの木か、とひとりごちます。火をつけて? まあ、ストーヴかなにかと解釈しておきますが、謎の残る歌詞です。

◆ オーヴァーダブ多くしてテイク少なし ◆◆
なんだか、今回はすべてクリップがありそうな気がしたのです。まだすべて確認したわけではないですが、ここまでで狙ったものはみなクリップがありました。たとえば、

The Beatles - Nowhere Man (track only)


ヴォーカルがあると隠してくれるのですが、トラックのみだと、リンゴのロールが中途半端なのが気になります。ハル・ブレインのようなプロフェッショナルは、陶然となるほど美しいロールを聴かせてくれるのですが、バンドのドラマーは基礎ができていないものなのです。

本来ならリテイクするべきでしょうが、どうせヴォーカルが載る、気にするな、というあたりでOKとなったと思われます。じつにタイトなスケデュールのセッションでしたから。

つぎは手元のブートには収録されていないトラック・オンリー。

The Beatles - What Goes On (track only)


これは楽曲がどうこうというより、ジョンとポールがそろってバッキングにまわっているところがすばらしい(とくにジョンがおいしいところをいただいている)ので、バックトラックだけになってしまうと、そんなものか、ですがね。

それにしても、ポールのベースのグルーヴはすごいものだなあ、と毎度のように感心しちゃいます。リンゴのタイムがよくなっていくのは、ポールのおかげでしょう。

すごく面白い、というわけでもないのですが、いろいろ検索して、クリップを発見できなかったので、好き者のために貼りつけておきます。間奏がぜんぜんちがいます。たぶん、多くの方はコケると思うので、足下ご注意。

サンプル The Beatles "In My Life" (with alt. instrumental break)

これではどうもよろしくないよなあ、というので、後日、ジョージ・マーティンがあのピアノを弾くことになりますが、ピアニストではないので、ああいうものはうまく弾けないとご本人が認めているのでありまして、あれはスロウダウンしてオーヴァーダブしました。そのピアノの部分、スピード・アップ前の姿。

サンプル The Beatles "In My Life" (slowed-down piano break)

あとはとくにめずらしいものは発見できないので、つぎの曲でおしまいにします。

このヴァリアントは、ブートには何度も採録されていますし、めでたくAnthology入りも果たしています。しかし、(突然、プライヴェートな話になるが)中学時代のバンドメイトが、リリース・ヴァージョンよりこっちのほうがいいと思うといっていたのを思い出したので、貼りつけます。

The Beatles - I'm Looking Through You (take 1)


ヴァースのギター・アルペジオが入っている部分に強く感じますが、こちらのほうがリリース・ヴァージョンよりリリカルで、メロディーのよさが生かされています。

You're not the sameなどという、つなぎ目の部分は、逆にリリース・ヴァージョンよりラウド&ヘヴィーになっていて、これはこれでヴァースと対照的な味があります。

問題は、イントロではっきり聞こえるパーカッションに代表されるように、よけいな飾りを入れたことでしょう。いじりすぎてスッキリしなくなったので、いったんチャラにして、あのヴァージョンができあがったということじゃないでしょうか。ちょっと惜しかったと思います。

ブライアン・ウィルソン山脈登攀の準備はまだ整わないので、たぶん、この調子でSgt. Pepper'sまではやることになるだろうと思います。


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ビートルズ(オフィシャル・リリース盤)
ラバー・ソウル
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ビートルズ
アンソロジー(2)
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ビートルズ(DVDボックス)
ザ・ビートルズ・アンソロジー DVD BOX 通常盤
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by songsf4s | 2011-10-18 23:57 | ブリティシュ・インヴェイジョン
The Beatles Studio Sessionsを聴く その7 Help! 後編
 
毎回、トラック・リスティングを見て、この曲が入っているなら、そっちを聴かせろよ、と思われる方も多いだろうと想像します。

しかし、ラフ・ミックスのアセテートだとか、DVDからの切り出しといった、たんなるミックス違いもたくさんありますし、すでに多数のブートで出回っているものや、音質のよくないものもあり、そういうのを選り分けていると、こうなってしまうのです。ご寛恕を。

いまではユーチューブにも多数の別テイクがあがっているので、探せば相当数が聴けると思います。わたしがオミットしても、やはり気になる、という曲がある場合は、検索なさってみるといいでしょう。

◆ Ticket to Ride唯一のテイク ◆◆
マーク・ルーイゾーンのThe Complete Beatles Recording Sessionsは、上梓のときにすぐにあの重いLPサイズのハードカヴァーを買って(銀座イエナで。まだアマゾンがなかった)通読しましたし、折にふれて参照してきました。

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しかし、こういう機会に改めて調べると、びっくりすることがまだあります。今回の驚きは、Ticket to Rideが、後にも先にも2テイクしかなく、しかも最後までいったのはテイク2のみだということです。だから、あのよく知っているサウンドのものしか聴けないのです。

しかし、これはTwist & Shoutが2テイクで完了した(テイク1がリリースされた)のとは意味が違うことが、The Complete Beatles Recording Sessionsを読むとわかります。説明の前に(と気を持たせるほどのことではないのだが)、話が長くなったので、音を貼りつけます。

オフィシャル・リリースと並べて聴かないと違いがわからないと思いますが、Ticket to Rideのステレオ定位を広げたリミックス・ヴァージョンというのをおいてみます。

サンプル The Beatles "Ticket to Ride" (take 2 wide stereo remix)

どうしてそういうことになったかというと、テイク・ナンバーをふらずに、リハーサルからテープを廻し、いいものがあれば、それ(トラックのみであったりする)をOKとするという方法を使いはじめたのがひとつ。

リハーサルであれ、テイクであれ、いいバックトラックを選んで、ここにあらゆるものを積み重ねるという方法をとりはじめたので、テイクがほとんどない曲というのも散見するようになった、といったぐあいに、マーク・ルーイゾーンは説明しています。その典型がTicket to Rideなのだと。

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したがって、ポールがリードを乗っ取る前の、ジョージのオブリガートが入ったTicket to Ride、なんていうのはありません。十代のときから兄貴分と弟分のような関係でやってきたから、それなりに収まっているのでしょうが、ふつう、揉めますよ、こういうことをすると。

いや、リードのプレイといい、これまたポールが考えたという、フラムを多用するドラム・パターンといい、まったく自明ではなく、立派なものだと思いますが、しかしそれゆえに、押しのけられたほうの腹立ちはいや増したことでしょう。ジョンのおかげで、パワーバランスがとれていたに違いありません。

◆ 「それはたくさんを意味する」と自動翻訳はいった ◆◆
冒頭でご説明したとおり、Help!本体に関するかぎり、あとはミックス違いや、よくある別テイクが収録されているだけで、あえて取り上げるほどの曲はもうありません。

シングルについても似たようなものです。リンゴが歌ったIf You've Got Troublesは、以前から何度もブートに収録され、Anthology入りも果たしたので、たいていの方がご存知でしょう。

結局、ボツになって、リンゴはかわりにバック・オウエンズのAct Naturallyを歌うことになりますが、それもnaturallyだと思います。If You've Got Troublesはいかにもトラブルサムな曲で、彼らが放棄したのは当然です。

もう一曲、彼らが放棄した曲は、やむをえない判断ではあったものの、ちょっと惜しいと感じます。ポールの曲です(絵は『ヘルプ!』の撮影風景)。

The Beatles - That Means a Lot (take 1, Anthology ver.)


このヴァージョンが、従来からブートによく収録され、最終的にAnthologyでもとられることになりました。

はじめて聴いたときは、エコーのかけ方のせいもあって、まったくビートルズらしく聞こえませんでした。スペクターごっこかよ、です。

楽曲も、アレンジ、サウンドも、ポールのヴォーカルも、ジョンとジョージのコーラスも、それ自体はすべて、なにも悪い点はないと思います。たんにビートルズの音楽に聞こえないだけです。

テイク1は1965年2月20日に録音されましたが、それから40日ほどたって、彼らはThat Means a Lotのリメイクを試みます。録音されたものから、もうすこしバンド・サウンドらしくしようという意図だったと推測できます。

The Beatles - That Means a Lot (remake take 20)


ノーマン・スミスが冒頭でリメイクを宣言し、テイク・ナンバーはいきなり20に飛びます。

深いエコーはないギター・コンボ・アレンジ、ということで、こちらはビートルズの音に聞こえますが、だれが聴いても、やっぱりちがうだろー、という雰囲気です。

The Beatles - That Means a Lot (remake take 21)


The Beatles - That Means A Lot (remake take 23-4、クリップのタイトルはtake 22-24となっているが、22はない)


マーク・ルーイゾーンの本によれば、テイク24でリメイク・セッションは終わっています。これで彼らはこの曲の完成をあきらめ、P・J・プロビーが歌うことになります。

サンプル P.J. Proby "That Means a Lot"

バート・バカラックの曲をジーン・ピットニーが歌っているのかと思っちゃいます。これでこの曲がうまくいかなかったか理由は明らかです。

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構造的に見て、ビートルズが歌うべき曲になっているとは思えません。しいていうなら、Yesterdayのようにポールがひとりで歌えばうまくいったかもしれませんが、たとえそうしていても、あるいは、そうなればなおのこと、ビートルズのアルバムには収録できなかったでしょう。

最後の手段はI'll Be BackやAnd I Love Herのようなアコースティック・アレンジかな、と思いますが、その前に四人は、この曲は違うと判断したのだろうと思います。歌詞があいまいで、ビートルズの大きな魅力のひとつであった直截性に欠けるのも、致命的な短所だと思いますが。

Yesterdayといい、このThat Means a Lotといい、ポールはこの時期、マット・モンロー的ムードにあったのかもしれません。仕事のうえでか、プライヴェートでのことか、そんなことは知りませんが、なにかuneasyな状況があって、ややタイプの違う曲、というか、ここまではあまり表に出さなかった側面を強調しはじめたのかもしれません。

今回聴き直して、改めて感心したのは、彼らがこのやや異質な曲を、非ビートルズ的スタイルでさばいてみせたそのスキルの高さです。みなフィル・スペクターのファンだったのだから、わからなくはないのですが、それにしても、その気になりさえすれば、ビートルズ的相貌を捨てられるともわかったのは、この実を結ばなかったセッションの収穫だったと感じます。

That Means a Lotのテイク2は、ビートルズ以前の時代への先祖返りのような古めかしさをまとっていますが、ベクトルは異なるにせよ、非ビートルズ的という意味では、このあとのビートルズの変化と呼応するように感じます。

いかにもビートルズらしいビートルズの時代は、このHelp!で終わります。ここから先は、変化につぐ変化の時期です。ビートルズ・ファンの好みも割れていきます。

わたしはRubber Soulを好みますが、わたしのあまり好まないRevolverを彼らのベスト・アルバムとする人もいます。好みかどうかは別として、Sgt. Peppersは驚きに満ちたアルバムでした。

ビートルズは、それまでのビートルズとは異なる音の可能性が広がっていることに気づき、よくいえば発見の旅に向かうことになります。悪くいえば、長い長いダウンヒルにさしかかります。

次回は、べつのブートレグを使ってRubber Soulをやるか、久しぶりにブライアン・ウィルソンに正面から向き合うか、はたまた日活を見るか、それともギターものか、まだ決めかねています。


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ザ・ビートルズ ヘルプ!(デラックス・エディション) [DVD]
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アンソロジー(2)
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ザ・ビートルズ・アンソロジー DVD BOX 通常盤
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オムニバス(P・J・プロビーのThat Means a Lotを収録)
ラヴ・レター・フロム・レノン&マッカートニー
ラヴ・レター・フロム・レノン&マッカートニー
by songsf4s | 2011-10-17 23:51 | ブリティシュ・インヴェイジョン
I'll Get You by the Beatles
タイトル
I'll Get You
アーティスト
The Beatles
ライター
John Lennon, Paul McCartney
収録アルバム
N/A (45 release)
リリース年
1963年
他のヴァージョン
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ビートルズの話はワン・ショットのつなぎのつもりだったのですが、きょうもまだ頭のなかはジョン・レノンの声で埋め尽くされているので、鈴木清順と宍戸錠の『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』は、今日も先送りにさせていただきます。日活ファンのみなさんには、どうかあしからず、と申し上げておきます。

◆ 軽くこじれてみる ◆◆
たとえば、古今亭志ん生をしつこく聴いているうちに、だんだんこじれてきて、好きなのは「火焔太鼓」ではなく、「佃祭」だの「二階ぞめき」だのと、妙なところに入りこんでいったりします。

これがビートルズともなると、こじれにこじれ、裏の裏の裏の裏で、結局、表に戻ってI Want to Hold Your Handがいい、などと言い出しかねないまでにふかーくふかーく掘ってしまいます。それではあまりにも高踏的かつアヴァンギャルドすぎて、だれにも話が通じなくなるので(通じるってば>俺)、ここではノーマルに、一回転半のこじれ、ぐらいで考えてみます。

だれにもそんなことはきかれないのに、自問自答しますが、「一回転半ひねる」とどういう曲が出てくるか? 筆頭はやっぱりI'll Get Youであり、Thank You Girlでしょう。とくに前者は、デビュー時の超高速時空のなかで、うっかりB面に入れてしまったジェムであり、むしろ、アルバム・トラックとして、重要なポジションをあたえるべきだったと思います。たとえば、It Won't Be Longのような、ノン・シングルの重要曲を思いだしていただきたいわけです。No Replyでもいいですけれどね。

いや、まあ、そこまでいうと、I'll Get Youには家賃が高すぎるかもしれませんが、公式見解でなく、友だちどうしの酒の席の話なら、わたしはI'll Get Youをビートルズのベスト14にいれます。なんで14なんだって? イギリスのLPのトラック数に決まっているじゃないですか。

ごちゃごちゃいわずに、「一回転半のひねり」で14曲を選んでみましょうか。

No Reply
I'll Get You
You're Gonna Lose That Girl
I'll Be Back
All I've Got to Do
Ask Me Why
I Should Have Known Better
Yes It Is
How Do You Do It
I Will
I Don't Want to Spoil the Party
What Goes On
If I Fell
You Won't See Me

ほとんど即興ですが、なかなか味があるじゃないか、と自画自賛しちゃいました。リンゴのリードは入れたのに、ジョージが入っていないのは不公平かもしれません。Devil in Her HeartかDon't Bother Meでしょうかね。いいえ、嫌がらせでこの2曲を挙げたわけではなく、はすに構えたわけでもなく、ジョージがリードをとったものとしては、わたしはまじめにこの2曲が好きなのです。でも、これでは泉下のジョージが赤面するかもしれないのですこし妥協すると、I Need Youでしょうか。

この即席リストをあれこれつつきまわすだけで、とうぶんのあいだ当家は、ほかになにもできなくなるような気がします。

思うのですが、上のリストを見て、快哉を叫んだ方が一握りはいらっしゃるのじゃないでしょうか。「だれもがずっといいたかったのに、どうしてもいいだせなかったビートルズについての7つの事柄 その1」なんていうタイトルにしてもいいか、と思うほどです。呵々。

ためしに、何曲かについて、なぜ選んだのかを書いてみましょうか。

◆ How Do You Do It? ◆◆
たかだか20年ぐらいしか聴いていない、というのが最大の理由です。まだ気分が摩滅していないのです。最初に聴いたときは、やっぱりジョンの声はすごい、と感じ入りました。この曲のギター・ブレイクからしてすでに遅れているジョージも、めずらしい人だと思います。ふつうは走るか突っ込むかするものなんですがね!

ビートルズ ハウ・ドゥー・ユー・ドゥー・イット


ただし、どちらのほうにヒット・ポテンシャルがあるかといったら、やはりジェリー&ザ・ペイスメイカーズのヴァージョンです。YouTubeにはライヴしかないので、彼らのヴァージョンはオミット。

ジョンとポールのレンディションは、「最低限の義務は果たした」といったあたりで、気が乗っていないのは明らかです。しかし、この楽曲とジョンの声の組み合わせは、やはりおおいに魅力的。

◆ Ask Me Why ◆◆
How Do You Do It?は風向きしだいで14曲からはずしてしまうでしょうが、Ask Me Whyは昔からつねに上位にとどまっています。理由は説明するまでもないでしょう。やはりジョンのヴォーカル、もっと正確にいえば、これほどジョンの声が魅力的に捉えられた録音はほかにあまりない、ということに尽きます。Makes me CRYのところでの、ヴォイス・クラッキングをお聴きなさいというのですよ。これがジョン・レノンとグラム・パーソンズの共通の魅力です。



いやはや、この曲はまずいですな。涙腺の元栓を狙い撃ちしてきます。

◆ I'll Get You ◆◆
まあ、正直にいえば、I'll Get Youを「ビートルズの14曲」に入れるのは、ちょっとやりすぎと思います。でも、散歩のときの鼻歌レパートリーとしては、つねにベスト・テンから脱落したことはなく、いまでもよくイマージン・アイム・イン・ラヴ・ウィズ・ユー、イッツ・イージー・コズ・アイ・ノウとがなっています。many, many, many times beforeと、never, never, never, never blueの繰り返しが楽しく、また、ちょっと難所でもあります。



ほんの初期だけですが、ビートルズは、というか、ジョン・レノンは、チャック・ベリーのひそみに倣ったのか、飾りとしてしばしば6thの音を入れました。この曲のリズム・ギターも、6thなんかなくてもまったく差し支えないのですが、いまになると、6thを入れるところがまさに初期のビートルズらしさに感じられます。

いま、6thを使わないアレンジを想像してみました。たぶん、ノーマルなコードでやると、甘みが強くなってしまったのではないでしょうか。6thをはさむロックンロール・リズム・ギターにすることで、微妙な甘みをつくりだしたように感じます。

これはささいなことのようですが、ビートルズのヒット・レシピの本質はそこにあったような気もします。美しいバラッドにロックンロールの「よごし」をかけて、時代の好尚にピッタリ合ったビター・スウィートネスを生み出した、といったあたりです。


Anthology 1
Anthology 1
Anthology 1


Please Please Me
Please Please Me
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Past Masters
Past Masters, Vol. 1
Past Masters, Vol. 1
by songsf4s | 2010-02-01 23:54 | その他