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スウィング発→ロックンロール直行便――映画『ベニー・グッドマン物語』をめぐって
 
前回のアンドルーズ・シスターズ駆け足紹介をご覧になって、パイド・パイパーズを思い起こしたと、ツイッターで反応なさった方がいらっしゃいました。

The Pied Pipers - Route 66


「ルート66」というのは、子どもにはそれほど面白いドラマではなく、なんだか車が走ったり止まったりしていたなあ(当たり前だ!)ぐらいの記憶しかないのですが、曲は印象に残りました。作者はジュリー・ロンドンの夫君にしてシンガー、ピアニストのボビー・トゥループです。

当家で過去に紹介したパイド・パイパーズの曲は、クリップがなくて、ついこのあいだ、クリスマス・ソング特集の補綴のために、サンプルをアップしました。ここに再度貼りつけておきます。

サンプル Johnny Mercer with the Pied Pipers and the Paul Weston Orchestra "Jingle Bells"

ジョニー・マーサーのすっとぼけたキャラクター、パイド・パイパーズの柔らかいハーモニー、ポール・ウェストン・オーケストラの生き生きとしたグルーヴ、三位一体のすばらしいジングル・ベルズです。

1940年代の音楽を聴いていて思うのは、なぜこの流れがいったん断ち切られたのだろうか、ということです。戦時と戦争直後のハイ・テンションをいったん冷ます必要があったのでしょうか。

そのことを意識するようになったのは、この映画を見たのがきっかけになっています。トランペット・ソロはハリー・ジェイムズ、ドラムはジーン・クルーパ。いや、つまり音だけではなく、画面にもホンモノが登場しているという意味です。

映画『ベニー・グッドマン物語』よりSing Sing Sing


感じ方は人によってさまざま、よそさんのことは知りませんが、わたしはこういうグルーヴに、モダン・ジャズ的なものは感じません。なにを感じるかといったら、ロックンロール・スピリットです。

高校のころ、団塊の世代のモダン・ジャズ・ファンにゴチャゴチャいわれたのをいまだに根に持っているのと、新宿のジャズ喫茶なんてものに足を踏み入れてみたら、じっと黙って目をつぶり、陰険に音楽を聴いているゾンビの群がいて、ゾッとした記憶があるためですが、わたしは、いまだにいわゆる「モダン・ジャズ」にはいくぶんかの反感をもっています。

そういうもやもやしたものを、言語化できないまま大人になり、リヴァイヴァルで『ベニー・グッドマン物語』を見て、なんだ、モダン・ジャズのほうが鬼子だっただけじゃないか、と膝を叩きました。

アメリカ音楽の歴史は、モダン・ジャズとクルーナー時代を飛ばして、スウィングからロックンロールへと直接つなげれば、なんの疑問もなく、すっきりきれいに流れます。

映画『ベニー・グッドマン物語』よりLet's Dance/Stompin' At The Savoy


このあたりは、ベニー・グッドマンがまだ大物になっていない1930年代終わりの出来事ですが、いずれにせよ、このような新しいダンス・ミュージックが、スウィングという名のもとに40年代の潮流を形作ります。

後年のモダン・ジャズのようにインテリジェントでハイ・ブロウなものではありませんが、しかし、わたしは音楽をきわめて肉体的なものと考えているので、どちらがよりエッセンシャルであるかといえば、考えるまでもなく、スウィングのほうに軍配をあげます。人間の根元的音楽衝動により忠実なグルーヴです。その意味で、精神においてロックンロール的であって、アンチ・モダン・ジャズ的なのです。

映画としては、この前年に製作された『グレン・ミラー物語』のほうが出来がよかったのですが、つぎのシーンは強く印象に残りました。映画的に、ではなく、音楽的に、です。

映画『ベニー・グッドマン物語』よりOne O'Clock Jump


曲がはじまったときと後半では、客の数がぜんぜん違うという「映画的詐術」がおこなわれていますが、はじめて見たとき、なんとロックンロール的な、と思いました。

ダンスをするための音楽であり、同時に聴くための音楽である、という意味で、スウィングとロックンロールは「同系統」の音楽だということが、このシークェンスには端的にあらわれています。

レス・ポールがいっていました。マイルズ・デイヴィスに、どうしたらシングル・ヒットが出るんだときかれて、こう答えたのだそうです。「自分のために音楽をやっていたのでは駄目だ。彼らのための音楽をやるんだ」

モダン・ジャズというのは、音楽的にではなく、概念的に定義するならば「彼らのための音楽を軽蔑し、否定することによって自己を規定する音楽」といっていいでしょう。さすがにレス・ポールはスウィングの時代を生きたプレイヤーだけに、モダン・ジャズの根本的な欠陥が一目でわかったから、マイルズ・デイヴィスに、ストレートにそのことをいったのだと想像します。

『ベニー・グッドマン物語』製作の動機は、たんに1954年の『グレン・ミラー物語』がヒットしたので、その余慶にあずかろうという、どうということのないものだったのでしょう。

しかし、それでもなお、モダン・ジャズの時代が下り坂に入り、まさにロックンロールが生まれようとしていた時期に、スウィング・ミュージックをあつかった映画が立てつづけに製作され、どちらもヒットしたことは、たんなる偶然ではないと思います。


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パイド・パイパーズ
Dreams From the Sunny Side of the Street
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ジョニー・マーサー(すくなくとも数曲でパイド・パイパーズがコーラスで参加している)
Collector's Series
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グレン・ミラー物語 / ベニイ・グッドマン物語 Great Box [DVD]
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by songsf4s | 2011-12-19 23:56 | 映画・TV音楽