裏方としてのディスコグラフィーは見つかりませんでしたが、マーキュリー・レコードのA&Rの時代にデル・ヴァイキングスのアルバムでコンダクターとしてクレジットされている(ということはすなわち、たいていの場合、アレンジもしたことを意味する)のと、リプリーズで、サミー・デイヴィス・ジュニアのAt The Cocoanut Groveなど、いくつかの盤にアレンジャー、コンダクターとしてクレジットされている(別名のチャック・セイグルで)例がありました。
このHigh Society Twistは、1962年のリリースのようなので、ハリウッド録音かと考えたくなりますが、レーベルはマーキュリー、すなわちチェック・セイグル=カール・スティーヴンズのシカゴ、NY時代の勤め先なので、NY録音と考えられます。
データからもそういえるのですが、感覚的にも、このドラマーたちはハリウッドのエースたちより一段落ちるタイムで、ひとりはかなり困ったプレイヤーなので、ハリウッドではなく、NYの音に感じられます。そのNY的な欠点が露呈してしまったのがTea for Twoです。
しかし、サンプルにしたYellow Roses of Texasをはじめ、ギターについては、それなりに楽しめるトラックがあります。NY録音であるという仮定に立って、危なっかしい推測をするなら、トニー・モトーラ、アル・カイオラといった、NYの旧世代セッション・ギター・プレイヤーたちの仕事ではないかと思います。とくに、アル・カイオラのサウンドに近縁性を感じます。
なお、トミー・テデスコのTea for Twoを含むアルバム、Twangin' 12 Great Hitsは、右側のサイド・バーにリンクがあるAdd More Musicの「レア・インスト」ページでサンプル音源をダウンロードすることができます。No. 18がTwangin' 12 Great Hitsです。なかなか楽しいアルバムなので、Tea for Twoがお気に召した方は、AMMをご訪問なさるといいでしょう。
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それに対して、tonieさんは、ドゥエイン・エディーの40 Miles of Bad Roadがアレンジのベースだと思っていた、と反応されました。たしかに、そういわれれば、そのようにも思えます。大滝詠一は、何度も、これはこの曲が元だろうという人が多いが、そんな単純なものではない、ひととおりで考えるな、と書いています。過去のさまざまな音楽が流れ込んでいるので、源流は複数ある、ということです。
なるほどねえ。なにか賞をとりそうな出来ですな。It's the best on any stomachときましたか。たしかに、あのシュワーはききそうな気がします。って、べつにアルカセルツァーから一銭ももらっているわけじゃありませんよ。原発幇間学者じゃないんですから。「気がする」といっているだけですし。
それで思いだした、もう一曲のCM由来大ヒット曲。いや、CMのほうから先に行きます。TAA、"Fly The Friendly Way"
ジミー・ウェブのこの曲をもとに、ボーンズ・ハウがみごとにサウンドスケープを組み上げたシングル、ハル・ブレイン・オン・ドラムズ、トミー・テデスコ・オン・ギター、ジョー・オズボーン・オン・ベース、フィフス・ディメンション、Up Up and Away
さらに悪いことに、同じアルバムのなかであちこちに移動するので、サウンドもプレイも凸凹になってしまいます。「変化に富んだ音」という言い方もできるのですが、プレイと録音に関しては、やはり「出来不出来の差が大きい」という印象です。前作のYou Never Know Who Your Friends Areの出来が非常によかったのは、NYの音で統一したからでもあると思います(わたしの観点からは、ダメなドラマーがいなかったというのも非常に大きいが)。
Easy Does Itは、ソロとしてはおそらくはじめてのハリウッド録音のトラックを収録しています(Super SessionはハリウッドのCBSでの録音だったと思う)。プレイヤーの選択にミスはないのですが、惜しいかな、スタジオの鳴りがあまりよくありません。おそらくCBSを使ったのでしょう。
ハリウッドでは二度のセッションをしたらしく、メンバーの異なるものがあります。ジョー・オズボーンがプレイしたのが一曲、アール・パーマー、ライル・リッツ、トミー・テデスコ、ルイ・シェルトン、ラリー・ネクテルなどがプレイしたのが二曲です。トミー・テデスコ・ファンなら、She Gets Me Where I Liveは楽しめます。
しかし、アル・クーパーが抜けたあとのBS&Tがゾンビのように思考力を失って、つまらないことばかりした事実が端的に示しているように、アルは目に見えないところで仕事をするタイプのミュージシャンで、ただやりました、というノータリンなトラックはありません。失敗成功はどうであれ、つねに頭を使っているのです。それがI've Got a Womanの特異なアレンジにストレートにあらわれたと思います。
ダブル・アルバムで値段が高く、高校生は迷って先送りし、Easy Does Itを買ったのはリリースから2、3年後だったと思います。そのときにはすでにレイ・チャールズのヴァージョンを知っていたので、アル・クーパーのカヴァーを聴いたときは、ちょっと驚きました。出来の善し悪しということになると微妙になってしまいますが、他のヴァージョンにはまったく似ていないという一点は賞美できます。
アール・パーマーの伝記の写真キャプションに、「Album a day, man」つまり「一日でアルバム一枚だぜ」というものがありました。ハリウッドの音楽スタジオは、午前、午後、夜間のそれぞれに一回ずつ、3時間単位のセットで仕事をするルールになっていました。セットとセットのあいだには90分ないしはそれ以上の空きがあり、その時間に食事と移動とセットアップをすることになっていました
トミー・テデスコの自伝、Confessions of a Guitar Playerに、『結婚しない族』という映画のスコアの録音が出てきます。プレイバックを聴いていた音楽監督のミシェル・ルグランがトミーに、ピックで弾いたのか、指で弾いたのか、とたずねました。ファンならだれでも知っているように、トミー・テデスコはフラット・ピッキングによるフラメンコ・ギターの名手です。ぜったいに指では弾きません。しかし、ルグランは、指で弾いてくれ、とトミーに注文し、トミーは了解しました。
クリスマス・ストーリーのアンゾロジーにもっとも頻繁に採られているのは、『ダンシング・ダンのクリスマス』(Dancing Dan's Christmas)と『三人の賢者』(The Three Wise Guys)でしょう。クリスマス・ストーリーか否かということにはかかわりなく、『三人の賢者』はラニアンの代表作といえるもので、こちらは妥当な選択だと思います。
The Three Wise Guysは1936年に一度、そして2005年にも映像化されている(後者はテレビドラマらしい)ことが、このリストでわかります。同じくらいに有名な『ダンシング・ダンのクリスマス』が映画化されていないのは、プロットがシンプルで、時間的スパンもクリスマス・イヴの数時間にすぎず、話をふくらませて本編に仕立てるのがむずかしいからでしょう。昔の「ヒチコック劇場」のような30分ドラマの枠なら、ちょうどいいような話です。
いっぽう『三人の賢者』(もちろん「東方の三博士」Three Kings of Orientを下敷きにしている。したがって、キリストの誕生にまつわる物語を知らないと笑えない話)は、またしても語り手が、グッド・タイム・チャーリー・バーンスティーンの酒場で、クリスマス・イヴに飲んだくれていると(ラム酒ではなく、氷砂糖を入れた甘いライ・ウィスキー)、またしてもワルがワルを呼び、またしても語り手は悪党どもの悪事の現場に立ち会うことになります。
The Brothers Four, the Ventures, the 50 Guitars, Nelson Riddle, Herb Alpert & The Tijuana Brass, Johnny Smith, Patti Page, Frankie Laine, Frankie Avalon, Mantovani
◆ Can't Remember the Alamo ◆◆
アイディアの善し悪しという面では『アラモ』は凡庸で、たんに歴史上の有名な出来事を正面から描いただけの映画です。しかも、われわれにはなじみのない「テキサス革命」(ないしは「テキサス独立戦争」)の転回点となった、アラモ砦(というか、元は「ミッション」=布教拠点の僧院だが)の戦いを題材にしています。いちおう、以下に辞書の記述をペーストしておきます。
「アラモ砦 テキサス独立戦争に際し,テキサス人の小部隊がたてこもったサン・アントニオ(現、アメリカ合衆国テキサス州南部)の僧院。これを包囲したサンタ・アナの率いる約3000のメキシコ軍を相手に、1836年2月23日から3月6日まで戦い、指揮官トラビスWilliam B. Travis、デービー・クロケット、ブーイJames Bowieを含む187名が戦死した。なお非戦闘員約30名はメキシコ軍によって放免された。〈アラモを忘れるな Remember the Alamo!〉は、以後テキサス軍の合言葉となった」(『世界大百科』)
最初にThe Green Leaves of Summerが流れるのは、ジョン・ウェイン扮するデイヴィー・クロケットとメキシコ女性フラーカの散策と対話の場面でのこと。心惹かれる女性に向かって演説してしまうのだからかなり不思議な人物だが、二人で大木を見上げるショットは、郷土への愛というテーマの愚直な表現なのだろう。
まずは「またかよ」の50ギターズです。なんたって、Six Flags Over Texasというタイトルのテキサスもの(?)企画盤があるのだから、この曲が入っていないはずがないってくらいなのです。もちろん、Add More MusicでLPリップを入手することができるので、ご興味のある方はそちらをどうぞ。
そのAMMの50ギターズ・ページでキムラさんがこの盤についておっしゃっているように、いつもとはだいぶ楽器編成が異なっていて(The Green Leaves of Summerについていえばハープシコードなんぞではじまったりする)、ちょっとチェンジアップがほしくてジタバタしはじめたというあたりかもしれません。もちろんリード楽器はギターで、そこは楽しめます(オリジナルよりキーを半音下げているのは、オープン・コードを使えるようにするため?)。
アルバム・フロントに描かれた旗がそれぞれなにをあらわすかはセンセが説明なさっていますが、The Lone Star Stateの意味が視覚的に説明されてもいます。一つ星は『アラモ』に描かれたようなテキサスの歴史に由来するわけで、それはいいのですが、州都オースティン、州最大の都市ヒューストン、ともにテキサス共和国の国務長官と大統領の名前に由来するとは知りませんでした。ダラスはもちろん、『我が輩はカモである』でチコが説明していたように、dollars, taxesに由来します(嘘だってば!)。
◆ その他のギターもの ◆◆
つぎはStranger in Paradise以来のジョニー・スミス。しかし、これは1962年、コロラド・スプリングスでの「ギター・ワークショップ」での録音とあり、バンドなし、スミスがひとりで弾いています。うーん、ギターは好きなのですが、なによりも複数の音が重なった音が好きな人間なので、せめてアップライト・ベースでもいてくれたら、と思います。もちろん、うまいのですが、プロのギタリストはみなうまいものなので、それだけでは不足なのです。
ビリー・ストレンジという人は、ピッチャーでいえば非常に球持ちのいいタイプで、遅いテンポに適応できる、というか、ハリウッドの強力ギター陣のなかでも、遅いテンポをもっとも得意としたプレイヤーといっていいほどです。だから、このThe Green Leaves of Summerも、悪いところはどこにもないのですが、どういうわけか、メロディーの美しさより、怠さが先に立ってしまいます。アレンジ、テンポの問題かもしれません。
The Green Leaves of Summerはヴォーカルには向かない曲のようで、まあ、そこそこかな、と思うのはパティー・ペイジ盤ぐらいです。しかし、このヴァージョンにも、コードの面白さがなくて、どうしてなのだろうと首をひねってしまいます。ヴォーカルになると、なんだかクリシェばかりのひどく凡庸な曲に聞こえてしまいます。
第一作がひとり、第二作がふたりと、シリーズがつづくにつれてガンマンが増えつづけ、今回は三人の対決になりますが、テーマ曲のほうも、このThe Good, the Bad and the Uglyが、ギター曲としてはもっとも弾きにくく感じます。そのこととまんざら無関係でもないのですが、だれもがテーマだと勘違いした『荒野の用心棒』挿入曲Titoliから『夕陽のガンマン』、そしてこの『続・夕陽のガンマン』と、「哀愁度」は右肩下がりで低下しています。
The Good, the Bad and the Uglyまでくると、演歌がまったくわからないアメリカ人にも了解できる音楽といえるでしょう。そもそも、ストレートなマイナー・スケールではなく、セヴンスの音が入っているため、マイナーの味わいは薄くなっています。たんに変化を求めてそうなっただけかもしれませんが、アメリカ市場を意識した結果なのかもしれないと感じます。
クルーがらみのカヴァーを先に見てしまいます。ビリー・ストレンジは、『夕陽のガンマン』同様、Great Western Themesでカヴァーしています。なんだかむやみにテンポが速く、どういうわけか、ハル・ブレインがむちゃくちゃに叩きまくっています。わたしの好みとしては、ここまで叩くのはどうだろうかという感じで、それほど好きではありません。
ヘンリー・マンシーニは、このリックを笛のたぐい(オカリナらしい)でやっていて、そこは違和感がないのですが、うーん、どうでしょうかねえ。マンシーニにしてはめずらしいことですが、どこにもいいところのない完璧な失敗だと感じます。The Big Latin Bandというアルバムに収録されているので、リズム・アレンジはチャチャチャ風なのですが、大編成のホーンはマーチング・バンド風、というのがどうも水と油です。
こうしてみると、The Good, the Bad and the Uglyというのはよほどの難曲なのか、はたまたアメリカ人はこういう曲のアレンジがとことん苦手なのか、どちらかと考えるしかないようです。ヘンリー・マンシーニがこれほどぎくしゃくしたアレンジをするなんて、まずありえませんからねえ。まったく不得手なタイプで、どうしていいかわからなくて途方に暮れたのでしょう。