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デニス・ホッパー監督『イージー・ライダー』(1969年) その2

『イージー・ライダー』の当時の予告編やポスターには、A man went looking for America and couldn't find it anywhereと書かれています。「男はアメリカを見つけに行き、それがどこにもないことを知った」というのは、まあ、そうまとめていいのかもしれないと思ういっぽう、やはり、論理のレベルを超えたところにこそ映画は存在するのだ、という気もします。

『イージー・ライダー』トレイラー


『イージー・ライダー』は、音楽の使い方と絵作り、そして終盤の展開で新しい方向性を示しましたが(終盤の展開については、アーサー・ペンの『逃亡地帯』を連想した)、本質的には伝統的ロード・ムーヴィーという古い酒を、ロングヘアのヒッピー的風体の男たちがチョッパーに乗る、という新しい革袋に入れてみるという発想だったのでしょう。図式的には、新しい社会階層が古い社会階層に出合ってなにが起こるかを描いた、というようにストリップ・ダウンできます。

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シンボリズム。朝、ピーター・フォンダは前夜に野宿した場所を歩きまわる。まず目にするのは廃屋。

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朽ち果てた車の残骸

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廃屋のなかから屋根の残骸を通して、ラズロ・コヴァックスのキャメラは太陽を捉える。

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引き出しのなかに打ち捨てられたコンパス。明瞭なシンボリズム。

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ピーター・フォンダは落ちていた本を拾い上げる。

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◆ 食事と土地 ◆◆
出発の翌日ぐらいの出来事なのだと思いますが、ピーター・フォンダのバイクがパンクし、農場に行って納屋を借り、修理する場面があります。キャメラは、農場の男たちが馬の足に蹄鉄を打つ様子を手前に、都会から来た男たちがパンクの修理をする様子を奥に配して、ひとつのフレームに収めます。

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これは開巻早々、この映画が語ることを明瞭なシンボルを使って観客に伝える意図のもとに配されたショットなのでしょう。その直後、この農場の一家とともに二人が昼食のテーブルについた場面で、その意図は補強されます。

ステッペンウルフのThe PusherとBorn to Be Wildのつぎに流れるのは、バーズのWasn't Born to Followですが、その直前が農場のシークェンスで、以下のクリップはそれをひとつにしています。その意味で、他のWasn't Born to Followのクリップより、以下にあげたもののほうが切り取り方にセンスを感じます。ショット単体ではなく、ショットのつなぎがつくる「遷移」「移行過程」それ自体が重要なのですから。

バーズ Wasn't Born to Follow 1回目


これまたシンボリズムの一種といえるでしょうが、農場主とキャプテン・アメリカの対話はうまくつくってあります。「どこから来たんだ?」「LA」「エル・エイ?」「ロサンジェルス」というように、二人が異なる言語を使っていることが示されます。

つづくフォンダの言葉、

「You sure got a nice spread here」

は、農場主に「うまい食事だ」と解釈されてしまいます(口語ではspreadには「食事」の意味がある)。農場主が妻に「コーヒーのおかわりを」というのは、そういう意味です。フォンダは誤解されたことを知って、spreadを普通の言葉で言い換えます。

フォンダ「いや、そうじゃなくて、ここはいいところ(nice place)だっていいたかったんだ。自分の土地で得たもので生きていくというのは、だれもができることじゃない。自分の時間を使って自分のことをするっていうのは、自慢できることだよ」

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この映画は、主人公たちにほとんど心情を語らせないことに特長があるのですが、ここは、キャプテン・アメリカの価値観を、映像表現や間接的言葉に迂回させず、直截に表現した唯一の場面でしょう。

これは、静かでほとんどアクションがないにもかかわらず、強く印象に残るシーンでした。子どもだったわたしは、このシーンの陽射しの当たり方が気に入っただけで、対話の意味にまでは気がまわりませんでしたが(spreadの意味など知りもしなかった)、でも、それもまたいっぽうで意図されたことだと思います。こんなぐあいに食事するのはさぞかしいい気分だろうと感じたのは、「ほんとうの生活とはこういうものなのだ」というこの場面の意図を映像のレベルで表現しようとしたことを、論理ではなく、感覚のレベルで正確に受け取ったのだと思います。

◆ 悪名高きバード兄弟 ◆◆
そして、この直後に出てくるバーズのWasn't Born to Followは、『イージー・ライダー』に使われた曲でもっとも好きなものです。1968年のアルバムThe Notorious Byrd Brothersに収録されたもので、ライターはジェリー・ゴーフィンとキャロル・キングです。

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The Notorious Byrd Brothersは、オリジナル・バーズの最後のアルバムといえます。このLPの録音の途中で、ロジャー・マギンとクリス・ヒルマンは、デイヴィッド・クロスビーに、おまえは首だ、と言い渡し、残りのトラックはトリオで録音されます。バーズのドラマー、マイケル・クラークは録音にはほとんど参加せず、主としてジム・ゴードンがプレイしていたと考えられるので(このアルバムだけジム・ゴードンのクレジットがある)、実質的にはデュオにまで縮小してしまったのです。このつぎのSweetheart of the Rodeoでは、グラム・パーソンズが参加し、カントリーへと大きく舵を切ることになるので、「オリジナル・バーズの最後のアルバム」とみなしています。

マギン=ヒルマン組とクロスビーの対立は先鋭化し、バンドの状況はどん底だったように思えますが、どういうわけか、後年振り返って彼らのベストと感じるアルバムができてしまいました。もっとも苦しいときに、最良の作品が生まれるというのは、じつはそれほど珍しいことではないのでしょうけれど。

クロスビーは後年、あんなゴーフィン=キング作品をバーズが歌うのはまちがっている、という趣旨のことをいっていました。Wasn't Born to Followのみならず、The Notorious Byrd Brothersでは、Goin' Backというゴーフィン=キングの曲も歌っています。

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どちらもジェリー・ゴーフィンの最良の作品に繰り入れられる出来で、とくにGoin' Backはいい歌詞だと考えています。ゴーフィンだって馬鹿ではないのだから、ティーン・ポップの時代はとうに終わったことを知らないはずもなく、このころから、「作家性」の強い歌詞を書くようになっていきます。

デイヴィッド・クロスビーは、ジェリー・ゴーフィンを一時代前の保守的作詞家の親玉と考え、そのイメージだけで曲を拒否したのでしょう。そういうのを馬鹿といいます。先入観を排して、実体を見る意志も能力もないのです。その意味で、ゴーフィン=キングの曲を歌おうと考えたロジャー・マギンばかりでなく、二度にわたってWasn't Born to Followを『イージー・ライダー』に流したピーター・フォンダおよびデニス・ホッパーも賢明でした。

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◆ やっと好きになった映画 ◆◆
撮影監督のラズロ・コヴァックスは、長いあいだ『イージー・ライダー』が嫌いだったそうです。ひどい心痛の最悪の時期(私生活のことだろう)に撮った映画だし、この映画の撮影監督だったというおかげで「拒否された」(仕事の面でだろう)のだそうです。単に「I was rejected」とあるだけで、なにについて、だれに拒否されたのかはわかりませんが、『イージー・ライダー』の仕事をなんらかの意味で嫌った人たちが映画界にいたのでしょう。

この追想はおそらく最晩年のものでしょうが、コヴァックスは『イージー・ライダー』に惚れ込んだ(fell in love)のはつい最近のことだといっています。その理由は、

「あの映画のある場面はわたしにとってとくに重要なものなのだ。バイクが森や草原を抜けていくショットが山ほどあるが、そのなかに、光がまだらになってレンズの反射で虹色になるところがある。あれは当時としてはきわめてユニークだった。それまで、だれもそんなことはしなかったんだ」

だそうです。レンズ・フレアが起きないように慎重に撮影プランを立てることが、当時は撮影監督の責任のひとつだったのでしょう。

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黒澤明の『羅生門』の冒頭、志村喬が歩くシーン、いや、森雅之と京マチ子が山を行くシーン、いやいや、三船敏郎が居眠りをしているシーンだったか、宮川一夫のキャメラが捉えた、あの木もれ陽を連想した方がいらっしゃるかもしれませんが、あの映画はモノクロなので虹色になったりはしませんでした。

ここでコヴァックスがいっている、レンズ・フレアが虹色になるショットというのは、上述のWasn't Born to Followが流れるシーンのものなのです。わたしの場合も、『イージー・ライダー』の音楽が流れるところでいちばん好きなのはこのシーンだったので、ただの偶然にすぎませんが、撮影監督と好みが一致し、ちょっといい気分になりました。

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ラズロ・コヴァックスとデニス・ホッパー。彼らは、当時はまだあまり利用されていなかった高感度フィルムで『イージー・ライダー』を撮ったという。

こんどばかりは超高速で駆け抜けるぞ、と思って取りかかったのですが、見はじめれば、そして書きはじめれば、やっぱりいろいろなことがあるもので、予定通りには進んでいません。この調子では、あと3回ぐらいは『イージー・ライダー』をつづけることになりそうです。


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by songsf4s | 2010-06-14 23:55 | 映画・TV音楽
デニス・ホッパー監督『イージー・ライダー』(1969年) その1

先日、デニス・ホッパーの訃報を読んで思ったのは、長生きした破滅型人間というところか、なんてことでした。他人の生活ぶりなど知ったところでどうにもなりませんが、病との戦いはおくとして、それ以外に晩年に大きな悩みがなかったのならいいけれどね、と思いました。でも、人生というのは万事順調にはいかないのが当たり前、離婚のトラブルがあったと伝えられています。年をとるとはそういうことなのでしょうが、よそ様の死に際というのは妙に気になります。

デニス・ホッパーの死とは直接に関係なく、べつのことを考えていてたどり着いただけなのですが、いくぶんかは追悼の意味も込めて、須臾の間、デニス・ホッパーの監督処女作『イージー・ライダー』を見てみることにします。

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◆ ロックンロール・スコア ◆◆
ここで流れが変わった、とその場で洞察に達する映画というのを、生涯に何本見るのかわかりませんが、わたしの場合、『イージー・ライダー』のみでした。

もう記憶が薄れてしまいましたが、『イージー・ライダー』は、後年の『スター・ウォーズ』のように、公開前から大きな評判になっていました。わたしは学校の仲間と、公開直後の日曜に有楽町みゆき座に行き、朝から並んで見ました。

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ふだん、そういうことをしない人間なのに、なぜこのときだけ、日曜に早起きして列に並んだりしたのかといえば、この映画の音楽はすべてロックンロールだという記事を読んだからです。

いまになるとなんともバカげて聞こえるでしょうが、『イージー・ライダー』以前には、ロックンロールが流れるのは音楽映画のなかだけで、一般映画に使われることはめったにありませんでした。すくなくとも、子どものわたしが見た映画の音楽は、オーケストラやビッグバンドやジャズ・コンボによるものばかりでした。『卒業』(1967年製作)という映画も、その内容よりも、サイモン&ガーファンクルの曲が流れるというだけで革新的映画と受け取られたほど、あの時代の映画音楽は保守的だったのです。いやはや、自分で書いていても、バカげたパラグラフだな、と思います。

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いま思いましたが、『イージー・ライダー』とみゆき座というのは、妙な取り合わせですねえ。なぜかそれまで縁がなく、みゆき座に入ったのはこのときがはじめてだったのですが、ずいぶんクラッシーな劇場だなあ、と高校一年生はちょっとたじろぎました。有楽町周辺の映画館はみな高級感を漂わせていましたが、でも、日比谷映画街と道路一本隔たっただけで、一ランク上の造りに感じました。

ブルージーンズを穿いて、真鍮のポストと金モールで縁取られた廊下を、安物のスニーカーで赤絨毯を踏みしめながら歩いて入り、あの低予算バイカー・ムーヴィーを見たのは、いまではなんだか非現実的なことに思えます。

◆ Oh, goddamn pusher ◆◆
わたしの場合、冒頭に流れる音楽で乗ってしまった映画は、まずまちがいなく気分よく見終わることになっています。

ここでクイズ。『イージー・ライダー』で最初に流れる曲はなんでしょうか?

半数以上の方が、ステッペンウルフのBorn to Be Wildを思い浮かべたのではないでしょうか。しかし、じつは、同じステッペンウルフでも、いの一番に流れるのはBorn to Be Wildではなく、The Pusherのほうなのです。

『イージー・ライダー』フィル・スペクター~ザ・プッシャー


わたしは、ステッペンウルフの、たぶん日本で最初のシングルだったSookie Sookieが気に入り(自分のバンドでやるだけやってみたが……)、リリース直後にデビュー・アルバムを買いました。このアルバムのハイライトは、Sookie Sookie、Born to Be Wild、Desperation、そしてThe Pusherでした。映画を見る前から、ステッペンウルフの曲は、Born to Be Wildばかりでなく、つぎに大ヒットしたMagic Carpet Rideまで含めて、ほぼ知っていたのです。

だから、一発で乗りました。開巻早々にフィル・スペクターが登場したことも、気分が乗っていくことに寄与しています。このとき知っていたスペクターの曲というのは片手の指で足りる程度ですが、あの時代にあってもすでに伝説の人だったので、じっさいに見る前から、スペクターが出演したことは知っていたのです。

オープニング・タイトル Born to Be Wild


◆ Get your motor running ◆◆
プロットの輪郭線は明瞭ではないのですが、未見の方のために、設定程度のことは書いておきます。

〈キャプテン・アメリカ〉(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、メキシコに行ってコカインを仕入れ、アメリカに戻って、それをロールズに乗った男〈ザ・コネクション〉(フィル・スペクター)に売り、大金を得ます。

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アヴァン・タイトルのメキシコのシークェンスでは、二人のバイクはチョッパーではない。

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二人はバイクを買い、コカインを売って得た金をすこしずつ丸めて長いビニール・チューブに押し込み、そのままバイクのガソリン・タンクにしまって、「チョッパー」にまたがり、旅に出ます。この連続したシークェンスに、The Pusher(旅の準備のシークェンス)と、Born to Be Wild(出発からその直後のモーターサイクル・ライド・シークェンス)が流れるのです。

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キャプテン・アメリカとビリーの車に乗って、これからブツの品質をたしかめようというとき、〈ザ・コネクション〉(フィル・スペクター)はルーム・ミラーを見る。きっとカツラの装着ぐあいが気になったのだろう!

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あの当時のロックンロール・キッドのほとんどは、この二曲だけで完全に映画に入りこんだのではないでしょうか。いや、単純に、いいショットの連続といい曲の組み合わせ、ということではないのです。こういう「絵と音の組み合わせ」が存在しうるのは、なんと素晴らしいことだ、という「いままで見たことのなかったものを見た」感動です。最初に申し上げたとおり、一般映画をロックンロールで埋め尽くすのは、この映画ではじまったことなのだから、われわれはこういうものをはじめて目にし、耳にしたのです。

うーん、プロット略述に戻る気が失せました。ここからは曲を中心に追々プロットを書くという形にします。

◆ 音楽監督? ◆◆
久しぶりにオープニング・タイトルを見て、あれっと思ったことがひとつ、そうだったのかといまさらのように気づいたことが二つありました。

あれっと思ったのは、Music byのクレジットがなかったことです。調べると、いろいろまちまちに書かれています。The Byrdsとしているものもあれば、ロジャー・マギンとしているものもあり、なかには、uncreditedと注記して、マイク・デイシーの名前を書いているImdbのような奇妙なサイトもありました。

マイク・デイシー(Deasyと書くが、ディージーではなく、デイシーと読む)はハリウッドのレギュラー・セッション・ギタリストで、世代的にはビリー・ストレンジやトミー・テデスコよりあとになります。セッション・プレイヤーのつねでディスコグラフィーはむやみに長いので、マイク・デイシー・オフィシャル・サイトをご参照願います。

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そして、彼のディスコグラフィーにはバーズのBallad of Easy Riderが入っています。一見すると、これがこの映画への彼の関与を示しているように思えますが、しかし、ことはそう単純ではなく、その点については、この曲が出てくるエンディングのときに再考します。わたしはImdbの勇み足と考えています。

余談ですが、ディスコグラフィーには、フライング・ブリトー・ブラザーズのデビュー盤も入っていて、あれ、でした。ジャクソン5のABCもあります! トミー・ローは、Dizzyや当家でも取り上げたIt's Now Winters Dayをはじめ、多数やっています。

それから、ハル・ブレインがいっていましたが、あのころのハリウッドでシタールが必要になると、かならずといっていいほどデイシーが呼ばれたのだとか。ハリウッドのスタジオとしてははじめてのロングへア・プレイヤーだったのだそうです。

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話を戻します。想像ですが、選曲をしたのは主としてピーター・フォンダではないでしょうか。彼はLAガレージ・シーンのインサイダーだったので、友だち(たとえばマギン)の曲を含めて、適当と思われるものをはめこんでいったのでしょう。その点で、前年に公開された、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』と同じ、ひどく変わった音楽の形だったことになります。

もちろん、デニス・ホッパーの意見も反映されたのでしょう。でも、ピーター・フォンダのほうは、自身もいちおうレコーディング・アーティストであり、ヒュー・マセケラのプロデュースで、グラム・パーソンズ作(!)のNovember Nightというシングルを出したほどだから、ホッパーより深く『イージー・ライダー』の音楽に関与したと考えられます。

◆ 撮影監督 ◆◆
f0147840_015485.jpgそうだったのか、といまさらのように認識したのは、まず撮影監督がラズロ・コヴァックスだということです。『イージー・ライダー』は、当時も頭の半分ではそう感じたし、いまになるといっそう強く思うのですが、本質的に「絵と音のアマルガム」です。

後半の展開とエンディングが当時はおおいに評判になりましたが、いまになると、そういう側面は当時ほどのインパクトはもたなくなったと感じます。あの時代には、ああいう南部の保守主義の怖さというのは知らなかったし、そもそもわたしは十六歳だったので、なんてことだ、と驚きましたが、いまでは、ああいう人びとの存在は常識の範疇に収まったと感じます。

しかし、絵と音のアマルガムは、今回の再見でも、依然として力強く感じられました。こちらが年をとったせいで、その側面のほうにかつてよりいっそう強く惹きつけられました。撮影、編集(デニス・ホッパーが編集室から出てこないので、ピーター・フォンダと諍いになったと伝えられる。この二人の主演俳優は、監督とプロデューサーの関係でもあった)、選曲、この三つの力によって、『イージー・ライダー』はエヴァー・グリーンになったのです。

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ピーター・フォンダ(左)とラズロ・コヴァックス

いま、ラズロ・コヴァックスのバイオを読んで、ヴィルモス・ジグモンドとは同じハンガリー人、同じ映画学校で学んだ親友だと知り、へえ、でした。ブタペストの映画学校からは、時を同じくしてハリウッド映画史に名を残す名撮影監督が二人も輩出したことになります。まあ、サリンジャーにいわせれば、学校に育てられる才能などというものはなく、才能のある人間は勝手に育つものなのですが。

◆ レイバート ◆◆
もうひとつ、トリヴィアのたぐいかもしれませんが、レイバート・プロダクションの名前がクレジットにあったのも、へえ、そうだったのか、でした。レイバートは、ボブ・レイフェルソン(レイ)とバート・シュナイダー(バート)の会社で、もっとも有名な製作物は、テレビの「モンキーズ」シリーズです。レイフェルソンは多くのエピソードを自身で演出していますし、ポール・マザースキーもいくつかエピソードを演出しています。やがて本編でも名をあげる監督が、二人もかかわったテレビ・シリーズだったのです。

『イージー・ライダー』については、レイバート・プロダクションは資金(わずか三十数万ドルの製作費だった)の少なくとも一部を出したのでしょうが、テレビ・ドラマにロックンロールを持ち込んだプロデューサーと監督の会社が、つぎにやったことは、フィーチャー・フィルムにロックンロールを持ち込むことだったわけで、なるほどねえ、でした。

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レイバート・プロダクションの二人、ボブ・レイフェルソン(左)とバート・シュナイダー

やがてボブ・レイフェルソンは、『イージー・ライダー』で声名の高まったジャック・ニコルソンを主演にして『ファイヴ・イージー・ピーセス』を監督し、オスカーを得ることになります。なるほど、そういう風につながっていたのか、といまさらのように認識したのでした。

次回はもうすこし映画の中身を見ることにします。


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by songsf4s | 2010-06-13 23:57 | 映画・TV音楽