人気ブログランキング |
タグ:カーティス・メイフィールド ( 5 ) タグの人気記事
カーティス・メイフィールド・ソングブック6 He Will Break Your Heart その1

この曲は、ほんの少しだけややこしいところがあります。2種類のタイトルがあり、そのどちらにもヒット・ヴァージョンがあるのです。

オリジナル・タイトルはHe Will Break Your Heartだったのですが、ファースト・ラインそのままのHe Don't Love You (Like I Love You)というタイトルでも大ヒットしています。

それではまずオリジナル・ヒット・ヴァージョン、カーティス・メイフィールドとともにインプレッションズのファウンダーだったジェリー・バトラーが独立してからのシングル。

ジェリー・バトラー He Will Break Your Heart



◆ その場でマイナーX2 ◆◆
つづいて、70年代のリヴァイヴァル、トニー・オーランド&ドーンのヴァージョン。こちらのタイトルはHe Don't Love You (Like I Love You)です。YouTubeのクリップはいいものがなかったので、サンプルをアップしました。

サンプル Tony Orlando & Dawn "He Don't Love You"

ジェリー・バトラー盤が日本のラジオで流れたかどうかは知りませんが、トニー・オーランドのヴァージョンでこの曲を記憶している方が多いのではないかと思います。少なくとも、当時、FENではよくかかっていました。

とくに際だったところがあるわけではありませんが、シングル盤の作り方の基本に忠実で、ヒットも当然と思います。イントロは輪郭が明快で耳を引くようになっていますし、コーラスから入って、ヴァースがあとにくる形ですが、そのファースト・ヴァースへの接続部分のごく短いインストゥルメンタル・パートの造りもきれいです。

f0147840_23111340.jpg

面倒なところはどこにもない循環コードを利用した曲ですが、詰まるところ、魅力はその循環コードにあるわけで、トニー・オーランド盤はコードをもっともはっきりと意識させるようなかたちになっています。

以前、「That Thing You Do! by the Wonders (OST 『すべてをあなたに』より その1)」という記事で、「その場でマイナー」を2回使うのは60年代的ではない、パスティーシュだから60年代的特徴を誇張している、という趣旨のことを書きました。

ところがですね、このHe Will Break Your HeartまたはHe Don't Love Youは、気がつけば、ヴァースとコーラスの両方で「その場でマイナー」を使っているのです。キーをAとすると、A-A7-D-Dm-Aという進行が二度出てくるのです。

二度使うのは異例ですが、しかし、これは「その場でマイナー」の「正しい」用法です、ってだれが決めたといわれそうですが、断言しちゃいます。なぜか?

この曲の場合、Aのセヴンスの音はG、ここからDに移行するのでこのGより半音低いF#の音が入ります。そして、「その場でマイナー」なので、Dの3度のF#が半音下がってF、ここからAに戻るので、さらに半音低いEの音が入ります。結局、この進行はペダルポイントのように、GからEまで半音ずつ下がっていくことになり、ここが魅力的に響くメカニズムになっているのです。だから、どうせやるならセヴンスの音を入れたほうが、階段が一段増えて、響きがよくなります。

f0147840_23114042.jpg

また、トニー・オーランド盤は、もうひとついにしえのポップ・ミュージックが好んだ操作をしています。終盤にかけての半音転調です(こういう場合は「移調」といったほうがいいようだが、ポップ・ミュージックでは習慣的に「転調」といっている)。古めかしいといえば古めかしいし、いかにもレトロスペクティヴな面白みがあるともいえるわけで、どうとるかはリスナーの考え方しだいです。

それはそれとして、トニー・オーランド盤ですごく魅力的に感じるのは、ファースト・ヴァースで、トニー・オーランドが「Fare thee well, I know you're leavin'」というのに対して、ドーンが「 I know you're leavin'」と応じるところで、こういう女声コーラスは大好きです。

◆ リハーサルを重ねてきた男 ◆◆
各ヴァージョンを検討する余裕はなくなってしまったので、歌詞のことをほんの少々。コーラスもファースト・ヴァースもとくにどうということはないのですが、セカンド・ヴァースからすこしだけ面白くなります。タイトルの通り、新しい恋人のところに行こうとしている彼女に、彼はぼくほどきみのことを愛してはいない、という設定で、セカンド・ヴァースは以下のようになっています。

He uses all the great quotations
Says the things I wish I could say
But he's has so many rehearsals
Girl, to him it's just another play

「彼はあらゆる名台詞をあやつる、ぼくにもあんなことが云えたらいいのにと思うよ、でも彼は何度もリハーサルしてきたんだ、彼にとってはきみはつぎの芝居にすぎないんだよ」

f0147840_2312761.jpgコーラスからしてHe DON'Tと文法無視でくるぐらいだから、ここも「He's has」という技で猫だましをかけてきますが、ノーマルにいえばHe's hadでしょう。「リハーサル」というのは、もちろん、過去に何人もの女性とつきあってきたことで、この演劇の比喩がつぎの「another play」という同工の、ただしダブル・ミーニングを使った比喩を導きだしています。「べつの芝居」であると同時に「べつの遊び相手」なのです。

サード・ヴァース(トニー・オーランド盤ではヴァースとはメロディーやコードを変えていて、ブリッジのように扱っている)でも演劇の比喩はつづきますが(bow、exit)、セカンドのような興趣はありません。

カーティス・メイフィールドの曲は、歌詞が気になったりはしないのですが、唯一、この曲はちょっとだけ耳を引っ張られました。That handsome guy that you've been datingもちらっと気になったりしますが、意味としてはとくにどうということはありません。

まだふれていないヴァージョンが数種類ありますが、それは次回に持ち越しとさせていただきます。


metalsideをフォローしましょう



ジェリー・バトラー
Best of the Vee-Jay Years (Ocrd)
Best of the Vee-Jay Years (Ocrd)


トニー・オーランド&ドーン
Definitive Collection
Definitive Collection


by songsf4s | 2010-12-07 22:37
カーティス・メイフィールド・ソングブック4 Gypsy Woman

Gypsy Womanもカヴァーがそれなりにあるのですが、クリップがそろっているので、今日はそれを貼りつけるだけという感じでいってみます。サンプルはもっとも好きなヴァージョンだけの予定です。

それでは例によってインプレッションズのオリジナル・ヴァージョンから。

インプレッションズ Gypsy Woman


ちょっと言葉に詰まるようなアレンジで、なんだか尻がむずむずします。いや、腹は立たないのですが、こういう方向になっちゃうのかなあ、変な趣味だなあ、と思うのです。わたしには面白くもなんともありません。よほどカーティス・メイフィールドとの相性が悪いのでしょう。

◆ カヴァーズ ◆◆
第三者的にいうと、Gypsy Womanは「だれの曲か」といった場合、この人の持ち歌と考えるリスナーがアメリカには多いでしょう。ブライアン・ハイランドによるGypsy Womanのヒット・ヴァージョン。

ブライアン・ハイランド Gypsy Woman


ブライアン・ハイランドのドラム・ストゥールにはハル・ブレインが坐ることもけっこうあったのですが、この曲はちがうようです。サウンドがハルより重く、タイムは中の上ぐらいです。

つぎはブライアン・ハイランド以上にオリジナルから遠い、ボビー・ウォマック盤。ちょっとファンク味が混入しているので、そのあたりで好みが分かれるでしょう。

ボビー・ウォマック Gypsy Woman


昔はボビー・ウォマックの声が好きではなかったのですが、どういうわけか最近はOKになってしまったので、このヴァージョンも、これはこれで悪くないか、です。結果の如何は問わず、「自分のもの」と胸を張って云えるアレンジをするのは重要なことですから。

ボビー・ウォマックのカヴァーというのも並べるとなかなか興味深いのですが、それはいずれ後日ということに。それまではアクセス数をみるかぎり当家では非常に人気が高い、Fly Me to the Moonでもお聴きあれ。一度聴いたら、二度と昔に戻れないヴァージョンです。シナトラ中和剤も効かないと思いますよ。

つぎは、音はたいしたことありません。このヴァージョンがなくても、Gypsy Womanという楽曲の集合的全体像は微動だにしないでしょう。でも、この曲にドアホな映画のショットをかぶせてしまったところがちょっと笑えるので、そういう意味で貼りつけておきます。

ジェイ&・ディ・アメリカンズ Gypsy Woman


この映画はなんなんでしょうか。50年代の後半から60年代前半にかけて、このてのコスチューム・プレイは山ほどあるので、なんともいえません。どなたかご存知ならご教示を願います。

◆ べつのジプシー女 ◆◆
サンプルにふさわしい出来のGypsy Womanはライ・クーダー盤です。

サンプル Ry Cooder "Gypsy Woman"

イントロのギターを聴いた瞬間、これはいい、と思いました。そういう直感はまずはずれないもので、ライ・クーダーのGypsy Womanは、Slide Areaというあまり乗れなかったLPで、もっとも魅力的なサウンドのトラックでした。うまい人はトーンの作り方もうまいものですが、ライ・クーダーはまさにそうで、いつもギター・サウンドのつくりに感心します。

f0147840_23541411.jpg

ドラム・ストゥールに坐ったのはいつものようにジム・ケルトナー。ファースト・ヴァースからコーラスへの移行部でのストレート・シクスティーンスのフィルインに心ときめきます。

くどくも同じことを繰り返してしまいますが、うまい人は魅力的なサウンドをつくるもので、このときのケルトナーのタムタム、フロアタムのチューニングとサウンドはじつにすばらしく、それを精確なタイムと訛りのない端正なアクセントで連打するのだから、気持よくないはずがないのです。

以上で話としてはおしまい。以下はおまけです。タイトルはGypsy Womanですが、同題異曲です。ただし、楽曲とは関係なく、へえ、と思ったのです。

リック・ネルソン&ザ・グループ Gypsy Woman


ファンはおわかりでしょう。ウソみたいに若いジェイムズ・バートンが動いている、めずらしいクリップなのです。スティルは何枚も見ていますが、この時代のバートンが動いているのははじめてみました。リックにスカウトされたのが十七歳のときだったというのだから、このクリップのときは二十三四歳ぐらいでしょうか。ジム・ゴードンほどじゃないにしても、バートンも神童というべきでしょう。

ところで、このクリップでストゥールに坐っているのは、リッチー・フロストなのでしょうか。ふつうならフロストのはずですが、これは変なクリップで、いなければいけないジョー・オズボーンのすがたがなく、なんとなく、バートンだけをつかまえて、とりあえず撮影してしまった、という間に合わせのクリップにも感じます。

だれが映っているにせよ、スタジオでこの曲のストゥールに坐ったのはフロストではありません。ハル・ブレインでしょう。リック・ネルソンは義理堅いのか、ほとんどつねにツアー・バンドのメンバーで録音したらしく、初期のアール・パーマーをのぞけば、たいていはフロストなのですが、たぶん、このときにはもうツアー・バンドを維持しなくなっていたので、ハルを呼んでも気まずいことにはならなかったのでしょう。ベースはいつものようにジョー・オズボーンに聞こえます。


metalsideをフォローしましょう



インプレッションズ2ファー
Impressions/the Never Ending Impressions
Impressions/the Never Ending Impressions


カーティス・メイフィールド/インプレッションズ
Anthology
Anthology


ブライアン・ハイランド
Greatest Hits
Greatest Hits


ライ・クーダー
スライド・エリア(紙ジャケットCD)
スライド・エリア(紙ジャケットCD)


ボビー・ウォマック
Collection
Collection


by songsf4s | 2010-12-04 23:39
カーティス・メイフィールド・ソングブック3 I'm So Proud

I'm So Proudは話が枝分かれしてしまう面倒な曲なのですが、早くやってしまわないと、あとで苦労しそうなので、腹をくくって挑戦します。

まずはオリジナルのインプレッションズ・ヴァージョン。

インプレッションズ


ストレートなバラッドで、あまりいじりようがなかったのだろうと想像します。インプレッションズのアレンジが単調になってしまうのは、ひょっとしたら、カーティス・メイフィールドがそういうタイプの曲を書くからなのか、なんてことをいいたくなります。

仮にそうだとしても、このトランペットはなんなの、いらないでしょ、ということだけはいっておきます。どうしてこういうマヌケな譜面を書き、マヌケなプレイをするのでしょうか。トランペットが出てくるたびにコケます。

◆ 主たる材料 ◆◆
大物にいくまえに、中間のところを片づけます。

メイン・イングリーディエント


メインになるイングリーディエントは砂糖だったのね、というアレンジで、ここまで甘いと、甘味処に入り、汁粉を注文しておいて、いまさら、甘すぎる、とクレームをつけるわけにもいかねーか、というあきらめの心境です。でも、管と弦はなし、リズム・セクションだけで甘くしてあったら、好みだったかもしれません。オーボエだけは、なんとかしてくれ、と泣きが入りますが。

以上、地ならし終わり。ここからが八甲田山死の彷徨です。

◆ トッド・ラングレンの4段変速R&Bメドレー ◆◆
わたしがこの曲を知ったのは、トッド・ラングレンのカヴァーによります。

トッド・ラングレン I'm So Proud~Ooh Baby Baby~La La Means I Love Youライヴ


ほんとうは、このあとにさらにトッド自身のI Saw the Lightも接続されているのですが、このクリップでは聴けません。

どちらがいいかは微妙なところですが、とにかく、同じメドレーのスタジオ・ヴァージョンをサンプルにします。4曲をメドレーにし、どの曲もたぶんフル・ヴァース歌っているので、ランニング・タイムは10:36です。お聴きになるなら覚悟してからどうぞ。

ただし、I'm So Proudは最初にやっているので、そこだけ聴く、という手もありますが、そうすると、あとの展開がわからなくなるので、お時間と根気があれば、全曲通しで聴いておいていただければ好都合と愚考仕り候。いずれもトッドがハンド・ピッキングした佳曲です。

サンプル Todd Rundgren "Medley: I'm So Proud/Ooh Baby Baby/La La Means I Love You/Cool Jerk"

これが収録されたA Wizard, A True Starというアルバムは、トッド・ラングレンの諸作のなかでも群を抜く退屈さで、オリジナル曲はほぼ全滅といっていいと思います。このR&Bメドレーをのぞくと、ベスト・テープをつくったときに入れたのは、大マケにマケてJust One Victoryだけでした。

しかし、オリジナル曲の壊滅状態をおぎなうかのように、このカヴァー4曲のメドレーは魅力的でした。こういうのは、やはりやってみたくなるものなのでしょう。

f0147840_23443090.jpg

◆ 「リズム・セクション」はdrum'n'bassならず ◆◆
イントロのテナー(スタジオ、ライヴ、ともにトッド自身がプレイしたのだったと思う)をのぞけば、リズム・セクションだけの編成ですが、あ、そのまえにちょっと脇道。このあいだ、英語と日本語の両方で、立てつづけに「リズム・セクション」という言葉の非伝統的な用法を見たので、注釈しておきます。

最近のお子様のなかには、日米ともに、ドラムとベース「だけ」を「リズム・セクション」と呼ぶのだと考えている新派がいらっしゃるようです。伝統的なこの語の用法は違います。

「管楽器や弦楽器をのぞくパート」です。具体的には、ドラムとベースはもちろん、ギター、ピアノ、オルガン、パーカッションといった楽器のプレイヤーが構成するのが「リズム・セクション」です。ジャズのほうでいいはじめたことでしょう。

こういう定義じゃないと、「4リズム+4管の8人編成」といった決まり切った言い回しが理解できなくなるでしょう。ドラムとベースだけで4人ということはふつうはありません。4リズムの内訳は、多くの場合、ドラム、ベース、ピアノ、ギター、4管は、たとえばテナー、アルト、トロンボーン、トランペットなどという編成が考えられます。

f0147840_23445468.jpg

しかし、これでは語として不都合なことがあり、もっとも重要なロックンロール楽器である、ドラムとベースだけをまとめていうときは、われわれはしばしば「リズム隊」という用語を使っています。これで、注釈がなくても、かつてのAMM-BBSでは通用しました。「この盤はハルとジョーのリズム隊です」なんて、よく書いたものです。しかし、これに相当する英語は知りません。drum'n'bassという言葉はニュアンス、意味、用法が違いますからね。それでアメリカのお子様も、rhythm sectionという伝統的な熟語を誤用したのかもしれません。

話を戻します。トッド・ラングレンのI'm So Proudが成功したのは、やはりアレンジのセンスのおかげです。イントロはべつとして、あとはリズム・セクションだけの編成ですが、シンセを薄く入れて甘みを加え、苦みとのバランスをうまくとっています。お呼びでないトランペットがないだけでも安心して聴けます!

そう書いてあるのを読んだことがないので、ほかの人はあまり感じないのかもしれませんが、わたしはトッドのヴォーカル・アレンジも好きです。この曲もトッドらしいアレンジで、それも魅力のひとつになっています。まあ、しばしば自分で全パートを歌うので、アレンジ譜の問題というより、声の質の問題のほうが大きいかもしれませんが。

◆ さらに脇道をさぐって ◆◆
「カーティス・メイフィールド・ソングブック」という文脈のなかでは、話はこれで終わりといえば終わりです。しかし、メドレーの残りの曲を無視できないのが悪い癖で、いちおう出所を書いておきます。なお、今日のサンプルはトッド・ラングレンのメドレーのみで、ここから下はクリップだけです。

2曲目のOoh Baby Babyは、いわずと知れたスモーキー・ロビンソンの代表作。

スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ Ooh Baby Baby


スモーキー・ロビンソンのレンディションは圧倒的で、オリジナルにここまでやられてしまうと、カヴァーは苦戦を強いられます。それでもカヴァーしたくなるだけの魅力のある歌で、リンダ・ロンシュタット盤でこの曲を知った方もいらっしゃるでしょう。トッドのカヴァーもなかなか魅力的で、ならぬカヴァーするがカヴァー(ん?)といった無理矢理な印象はありません。

3曲目のLa La Means I Love Youは、フィリー・ソウル初期の立役者、デルフォニックスがオリジナルです。作者はトム・ベルとウィリアム・ハート。ベルにとってもまた初期のヒット。

デルフォニックス La La Means I Love You


最初にこれを聴いたときは、遅いなあ、と思いましたが、慣れると、悪くないヴァージョンと考えるようになりました。左チャンネルを占領しているいかにもフィリーというストリングスがポイントなのですが、わたしは、日によって、いいと思ったり、ショボイと思ったりします。人数僅少を面白いと感じたり、貧乏たらしいと感じたり、自分の精神状態が反映してしまうのでしょう。

わたしの判定は、4.5:5.5でトッドの勝ちです。テンポはトッドの判断が正しいと感じます。速くしたおかげで、過度の甘さに辟易することがなく、ロッカ・バラッドのさわやかさを獲得しています。まあ、フィリーの好きな方というのは、深夜のスケコマシ的ムードをよしとするのでしょうけれど。

締めのレヴ・アップ、Cool Jerkはキャピトルズのヒットです。といっても、このグループの曲はこれしかもっていませんが。

キャピトルズ Cool Jerk


本来、ジャークというステップのためのダンス・チューンなので、テンポはこれくらいが適当でしょう。いえ、ダンス・チューンか否かとは関係なく、トッドのヴァージョンは速すぎて面白みがありません。メドレーで、徐々に速くしていくというアレンジにしたため、最後は失敗してしまったというあたりです。まあ、シャレだから、それでいいのですが。

すでにロス・タイムに入っているのですが、さらにオマケで、Cool Jerkを2ヴァージョン。

ゴーゴーズ Cool Jerk


1990年のリリースだそうで、このあたりの音楽などまったく知りませんが、なかなかけっこうなヴァージョンで、ひょっとしたらキャピトルズよりいいかもしれません。

クリエイション Cool Jerk


いかにもブリティッシュ・ビート・グループらしいサウンド。どうせなら、スモール・フェイシーズあたりがやったら、もっと面白かったのではないでしょうか。スティーヴ・マリオットの歌でこの曲が聴きたくなりました。

これ以上枝分かれして八幡の藪知らずになるまえに、今日はこれにておしまい。


metalsideをフォローしましょう


インプレッションズ2ファー
Impressions/the Never Ending Impressions
Impressions/the Never Ending Impressions


カーティス・メイフィールド/インプレッションズ
Anthology
Anthology


トッド・ラングレン(スタジオ)
Wizard a True Star
Wizard a True Star


トッド・ラングレン(ライヴ)
バック・トゥ・ザ・バーズ(未来への回帰・ライヴ)(K2HD/紙ジャケット仕様)
バック・トゥ・ザ・バーズ(未来への回帰・ライヴ)(K2HD/紙ジャケット仕様)


スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ
Going to Go-Go / Away We Go-Go
Going to Go-Go / Away We Go-Go


デルフォニックス
Definitive Collection
Definitive Collection


キャピトルズ
Dance the Cool Jerk: We Got a Thing That's in the
Dance the Cool Jerk: We Got a Thing That's in the


メイン・イングリーディエント
Tasteful Soul/Bitter Sweet
Tasteful Soul/Bitter Sweet


by songsf4s | 2010-12-03 23:30
カーティス・メイフィールド・ソングブック2 People Get Ready

今日もなにも考えず、リストアップしてあった曲のひとつ、People Get Ready拾い上げて検索し、結果ウィンドウにリストアップされた各種ヴァージョンをプレイヤーにドラッグしただけでスタート。

こちらは前回のYou Must Believe Meとちがって、それなりに有名な曲なので、クリップがそろっていて、自前のサンプルは最小限ですみそうです。

◆ 決定版なし ◆◆
まずは、オリジナル・ヒット・ヴァージョン、いうまでもありませんが、インプレッションズ盤から。

インプレッションズ


Spanish Harlemなどと一緒で、すごい、完璧なアレンジ、なんていうふうにはならず、どうやってみても、うーん、なんかちがうなあ、もうすこしどこかをどうにか整えられないだろうかと、落ち着きの悪さが気になる曲で、決定版というのはありません。だから、逆にいうと、いつもはあまり好かないインプレッションズも、この曲は、まあ、こんなものでいいか、やりようがないもんな、と感じます。

いきなり時代は飛んで、このヴァージョンでPeople Get Readyを知った、という人も多いであろう、ジェフ・ベック盤。

ジェフ・ベック&ロッド・ステュワート


といって貼りつけたはいいけれど、ロッド・ステュワートは苦手、このヴァージョンは好みません。ベックのギターもとくにどうということもないプレイで、ベックとロッド・ステュワートという組み合わせという話題性だけで売ろうとしたのでしょう。じっさい、当時、MTVでクリップを見たときも、へえ、ベックがねえ、と思いました。まあ、ロッド・ステュワート嫌いだからそう思ったのかもしれません。「ほかにいくらでもシンガーなんかいるのに、よりによってロッド・ステュワートなんかとやるこたねーだろーに」です。

◆ 影の男 ◆◆
われわれの世代の多くは、ヴァニラ・ファッジのヴァージョンでPeople Get Readyを知ったのではないでしょうか。バンド小僧のあいだでは大ヒットとなった、彼らのデビュー盤に収録されていました。

ヴァニラ・ファッジ


高校のときにはもうそれほど好きではなくなっていたのですが、はじめてヴァニラを聴いた中学生のときは、ほんとうにビックリしました。あのサイケデリックど真ん中の時代には、しじゅうそういうものが出現したのですが、それでも、ヴァニラ・ファッジの出現はショッキングで、「ああ時代は変わる」と溜息が出ました。

その後、こういうスタイルもクリシェに堕していきますが、出現の時点では、それまでにないタイプのアレンジ、プレイでした。カーマイン・アピースのドラミングにも、ティム・ボガートのベースにも、その後興味を失ってしまいましたが、はじめて聴いたときは、なにしろ十五歳、すごく興奮しました。

なにが面白かったかというと、抽象的にいえば、パラダイムを壊されたことです。4小節のイントロがあり、ヴァースに移行するときに2分音符分か1小節のフィルインを入れる、ヴァースからコーラスに行くときも同様、コーラスからヴァースに戻るときにも、というようなドラミングのパラダイムがありました(いまでもあるといっていいだろう)。

f0147840_8344332.jpg

だから、はじめて聴いた曲でも、ここでフィルインが来るな、つぎはここだろう、という調子で予測できるのが、ロックンロール・ドラミングというものでした。バックビートだけの「空の小節」と、フィルインを入れるに適した場面というのが、きれいに分別されていたのです(むろん、意想外のところでフィルインを入れるといった例外はあった。いまは一般論をいっているにすぎない)。

ヴァニラ・ファッジの曲でも、そういう概念が完全に破壊されたわけではありません。しかし、たとえば、People Get Readyのイントロのドラミングをとっても、どう表現したものかと思います。伝統的な2&4(=トゥー・エンド・フォー、すなわち2拍目と4拍目のバックビートないしはダウンビートないしはアフタービート)ではないのは、だれにでもわかります。しかし、フィルインでもありません。ダウンビートのヴァリエーション(「2」を8分2打に分解するWalk Don't Runのパターンもバックビートの一種である)とはいえない、「パターンにおさまらない空の小節」といったところでしょうか。

フィルインも変なものがあります。Ticket to Rideで何回か使った、スネアの4分3連を小節の前半だけで打ち切り、後半はハイハットを叩く、つまり、フィルインの尻をシンバルで軽くしてしまうなどというのは、あの時代のロックンロールにあっては「異常」でした。

ヴァニラ・ファッジ Ticket to Ride


もちろん、この直後にジョン・ボーナムを聴いて、こっちにも異常な奴がいる、しかも、アピースよりずっとハイテクニックだ、と思うわけですが、とにかく、1968年の時点では、カーマイン・アピースのプレイは革命的に聞こえました。

全体のアレンジにしても、それまでの概念から大きく逸脱していて、その意味でもヴァニラ・ファッジはパラダイム破壊者でした。People Get Readyも、イントロだけで約2分半あります。たいていのヒット曲は2分半あればエンディングまでいけるわけで、当時としては、これまた異常な手法でした。長い曲というのはありましたが、そういうのは中間に長いインプロヴがあるというパターンで、ジャズの古くさい手法を引きずったクリシェにすぎませんでした。ヴァニラのように、曲によって構成をドラスティックに変化させるバンドなど、それまでになかったといっていいでしょう。むろん、ビートルズがRevoleverとPeppersをリリースしなければ、そういう変化の土台は形成されなかったわけですが。

そういうヴァニラの手法のショウケースとして選ばれた曲は、みな素材にすぎないので、オリジナルと比較してみてもあまり意味はないのですが、それにしても、あとからインプレッションズのPeople Get Readyを聴いたときは、気持がけつまずきました。

f0147840_836158.jpg

高校に入ってヴァニラに関心を失ったのは、直接的には、Near the BeginningとRock'n'Rollというアルバムがおそろしく退屈だったからです。あと知恵でいうと、なぜ退屈と感じたかといえば、ただラウド&ヘヴィーなだけで、デビュー盤や3枚目にあったインテリジェンスが雲散霧消していたからですが、その原因は、ずっと後年になってやっと理解できました。

つまり、ヴァニラ・ファッジという学生バンドには、あのデビュー盤を構成するだけのインテリジェンスはもともとなかったのです。ああいうサウンドを構想したのは、シャドウ・モートンだったのでしょう。だから、ライヴにはインテリジェンスのかけらもなかったのです。むろん、モートンとは関係のない、カクタスも、ベック・ボガート&アピースも、近年の再結成ヴァニラも、みな幼稚で、聴いていられません。いや、つまり、逆にいえば、みな聴くだけは聴いたということですが!

f0147840_8372560.jpg
ジョージ・“シャドウ”・モートンの適当な写真は見つからなかった。これはジャニス・イアンのサイトで見つけたもので、キャプションがなかったが、ジャニスとたぶんモートン。ジャニス・イアンのファンというわけでもなく、SFもジェイムズ・ティプトリーが死んだころに関心を失ってしまったが、ジャニスはSFを書いているのだそうな。ゲイだということなので(となるとAt Seventeenの歌詞の解釈も変わるのか?)、ティプトリーの短編のような、レスボス島が宇宙サイズに拡張されたような、男には怖い話を書いていたりして。

◆ ペット・クラークとアル・グリーン ◆◆
と書いたところで時間がなくなったので、ここまでで一回アップし、残りはパラグラフ単位であげていくことにします。

YouTubeには、チェンンバーズ・ブラザーズをはじめ、まだいくつもカヴァーがあるのですが、そのへんはわが家にはないので、ご興味のある向きは検索なさってみてください。

YouTubeにはないもので、ちょっと面白いのはペトゥラ・クラークのヴァージョン。

サンプル Petula Clark "People Get Ready"

全体のムードはジェフ・ベック盤に近いのですが(ベック=ステュワート盤はペット盤を参照したということか?)、あれほどテンポを落とさず、妙な重みを出そうとしなかったことは好ましく感じます。ペットらしい後口のよいヴァージョンです。メンフィス録音なのでしょうが、手元にあるのはオリジナル盤ではないので、メンバーなどはわかりません。シタール・ギターも魅力的。

f0147840_8381172.jpg

なんだか眠ってしまいそうなので、残りは簡単に。アル・グリーンのヴァージョンも、聴きどころがあります。

サンプル Al Green "People Get Ready"

相方の女性シンガー(ローラ・リー。Hot Waxのアンソロジーでちょっともっているだけ)はあまり好みではありませんが、アル・グリーンの声は、全盛期を過ぎてもやはり魅力を失っていません。ドラムが妙ちきりんなのも楽しめます。

f0147840_8384168.jpg

うわあ、ほんとうに船を漕ぎそうになったので、写真の貼り付けは明日に持ち越しとして、これにて就寝。


metalsideをフォローしましょう


インプレッションズ2ファー
Keep on Pushing / People Get Ready
Keep on Pushing / People Get Ready


カーティス・メイフィールド/インプレッションズ
Anthology
Anthology



ヴァニラ・ファッジ
Vanilla Fudge
Vanilla Fudge


ジェフ・ベック
Flash
Flash


ペット・クラーク Memphis
Memphis / Song of My
Memphis / Song of My

ペット・クラーク Pye Anthlogy1
Downtown
Downtown


by songsf4s | 2010-12-02 23:49
カーティス・メイフィールド・ソングブック1 You Must Believe Me

ライヴのほうはしばしば聴いているのですが、昨日、じつに久しぶりにスタジオ録音のほうで、デレク&ザ・ドミノーズのWhy Does Love Got to Be So Sadを聴きました。

「ベスト・オヴ・ジム・ゴードン」には、ライヴのほうをリストアップし、スタジオ盤はオミットしてしまったのですが、両方とも入れておくべきでした。どちらのジム・ゴードンも、神が降り立ち、悪魔が取り憑いたビートを叩いています。彼の20年弱のプロ人生のなかでも、何回あったかという絶好調の日です。

f0147840_21593563.jpg

どちらもYouTubeにクリップがあるのですが、ドラムはやはり音質が悪いと興趣半減または「全減」で、あまり面白くありません。音像がボケて、スティックがいつヘッドをヒットしたのかが曖昧になってしまうからでしょう。

ベスト・オヴ・ジム・ゴードン再公開予告篇として、256kbpsファイルをサンプルにしました。

サンプル Derek & the Dominos feat. Jim Gordon on drums "Why Does Love Got to Be So Sad" (original rev-up studio ver.)

◆ 他人がなんといおうと ◆◆
なにもアイディアが浮かばなくなったので、以前、準備しかけて途中で投げ出してしまった企画を棚からおろして、しばらくカーティス・メイフィールド・ソングブックなるものをやります。

ただし、まじめにやると鬱を誘発するので、テキトーにやります。順序は考えません。羊が草を食べながら歩くように、思いつきで目の前のものを取り上げ、なにかミスをしたら、あとで補足することにして、厳密性は放棄します。どっちが先かと録音デイトを調べたりもせず、たぶんこっちが先だろう、ぐらいの言い方をします。

f0147840_2213193.jpg

ソングブックなので、オリジナルがポイントではなく、カヴァーのほうに重心があります。カーティス・メイフィールドが書いた曲のオリジナルであるインプレッションズ・ヴァージョンは、わたしにとってはみな退屈なサウンドで、これほどソングブックを組む意味のあるソングライターはいないってくらいなのです。

一回目だからといって、とくに重要な曲を選んだわけではなく、たんなる思いつきで、ろくにヒットもしなかったであろうYou Must Believe Meをいってみます。いえ、嫌いな曲など取り上げないに決まっているわけで、けっこう好きなのですが。

YouTubeにはインプレッションズ・ヴァージョンのクリップもないありさまで、やむをえず自前サンプルをアップしました。

サンプル The Impressions "You Must Believe Me"

これをはじめて聴いたときは、あんまり遅いんで、ボールがホームベース上に来るまで待ちきれず、泳いで空振り三振しました。安田か松本か(古すぎる)という超遅球で、たいていの人はタイミングがとれずに三振でしょう。

最初に聴いたヴァージョンはどれだか記憶がハッキリしないのですが、とりあえずホリーズをいってみましょう。

ホリーズ


どっちのドラマーがうまいかというなら、インプレッションズで叩いたドラマーです。ホリーズのボビー・エリオットは、60年代のビートグループのドラマーとしてはもっともタイムの安定しているプレイヤーのひとりですが、このころはまだ若く、やや不安定なところが散見します。

いっぽうインプレッションズのドラマーはタイムも安定しているし、しばしば使っているフロアタムまで流すフィルインも、みなまずまずといえます。ホリーズと決定的に違うのは、音の手ざわりです。スネアおよびバックビートについては両者のあいだに大きな違いは感じられませんが、タムタムはエリオットのほうが重く派手な音で録音されていて、より「現代的」です。1965年を「現代」といえるなら、の話ですが!

トニー・ヒックスはうまいプレイヤーではありませんが、この曲に関しては、すこし歪ませたトーンの選択が時代のムードに合っていて、好ましく感じます。

f0147840_2295969.jpg

どちらもリリースの時点では聴いていませんが、かりにホリーズ盤がリリースされたときに、両者を聴きくらべたとしても、やはり、ホリーズのほうはいい曲だと感じ、インプレッションズの音はあまりにも古すぎると、一顧だにしなかったでしょう。

こういう感じ方の変化というのが、ポップ・ミュージックの音の手ざわりを変貌させていく原動力であるのはご存知の通りです。ドラムもベースも、重いほうへ、重いほうへと変化して、いまの音にたどり着いているのですから。

つぎのクリップは、ゾンビーズのBBCセッションに収録されたもので、当然、スタジオ・ライブです。モノなのはYouTubeだからではなく、80年代にライノがLPとしてリリースしたときからそうです。AM放送用だから昔のBBC音源はモノなのです。

ゾンビーズ


つづいて、スティーヴ・ウィンウッドのヴォーカルでスペンサー・デイヴィス・グループのヴァージョン。ホリーズも、ゾンビーズも、SDGも、ほぼ同時期のリリースのはずで、当時のブリティッシュ・ビート・グループがいかにカーティス・メイフィールドを好んだかが、こんなところにもあらわれています。

サンプル The Spencer Davis Group feat. Steve Winwood "You Must Believe Me"

イギリスのグループはいずれも水準以上のプレイをしていますが、アメリカは唖然とするプレイで対抗します。Psychotic Reactionのカウント・ファイヴ。

カウント・ファイヴ


フィルインでこれだけ派手に突っ込んでいるのに、全体としてはそこそこ辻褄を合わせているのだから、驚きます。ここまでくるといわゆるひとつの才能かもしれません。自前の演奏だとこうなってしまうわけで、なぜハル・ブレインが必要とされたかが、こういうお子様バンドのプレイを聴くと逆によくわかります。

最後に、ドン・コヴェイのクリップ。ただし、近年のリメイクです。60年代のものは、インプレッションズよりずっとホリーズやゾンビーズに近いアレンジで、ひょっとしたら、ブリティッシュ・ビート・グループは、インプレッションズ・ヴァージョンではなく、ドン・コヴェイ盤を参照したのかもしれません。

ドン・コヴェイ(1993年再録音)




metalsideをフォローしましょう


インプレッションズ2ファー
Keep on Pushing / People Get Ready
Keep on Pushing / People Get Ready


カーティス・メイフィールド/インプレッションズ
Anthology
Anthology


ホリーズ
Hollies / Would You Believe
Hollies / Would You Believe


ゾンビーズ
ライヴ・オン・ザ・BBC
ライヴ・オン・ザ・BBC


ゾンビーズ
Zombie Heaven
Zombie Heaven


スペンサー・デイヴィス・グループ
Eight Gigs a Week
Eight Gigs a Week


カウント・ファイヴ
Psychotic Reaction: Very Best of
Psychotic Reaction: Very Best of


ドン・コヴェイ
Mercy / See-Saw
Mercy / See-Saw


by songsf4s | 2010-12-01 21:00