人気ブログランキング |
タグ:エヴァリー・ブラザーズ ( 5 ) タグの人気記事
【ブリティッシュ・ビート根問い】サーチャーズ篇9 1963年の9
 
マーク・ルーイソンのThe Beatles Complete Recording Sessionsには、序文がわりにポール・マッカートニー・インタヴューが収録されている。

そのなかで、まだライヴ・バンドだったころ、将来をどう考えていたかという質問に、ポールは、レコーディング・アーティストになることが目標だったと答え、さらにこう云っている。

It was the currency of music: records. That's where we got our repertoire from, the B-sides, the 'Shot Of Rhythm And Blues', the lesser known stuff that we helped bring to the fore, the R&B stuff.

細かいことはどうでもよくて、「たとえばShot Of Rhythm And Bluesのように、われわれはB面からレパートリーを見つけた」と云っていることと、lesser known stuff、あまり知られていない曲、と云っていることが目を惹く。

なぜB面なのかということを、ポールは説明していないが、それは了解事項だからだろう。A面またはヒット曲をカヴァーするのは垢抜けないことだったからに決まっている。

わたしだって、中学の時ですら、B面やアルバム・トラックをやろうという意識はあったくらいで、すでにヒットした曲をカヴァーするのは野暮、というのは、バンドをやった人間の多くが思っていたことだ。

むろん、ヒットしたばかりの曲は、聴き手の誰にでもすぐ了解できるので、そういう曲もやるべきであり、レパートリーは単純な構成にはならないのだが、しかし、B面曲、アルバム・トラック、lesser known stuffはつねにヒット曲以上の価値があった。

サーチャーズも当然、ポール・マッカートニーと(そして、しいて云うなら、我々日本の子供とも)同じ感覚を共有していたに違いない。

プレイする人間というのは、多くの場合、ヴェテランのリスナー、根性の入ったリスナーである。ふつうの音楽ファンより深く音楽に入り込んだ結果として、自分でもやってみようと思い立つ。

だから、当然、ふつうのリスナーが知らないような曲をやるのは、プライドの問題として、きわめて大事なことだった。

◆ Hey Joe ◆◆
Hey Joeといったって、ジミ・ヘンドリクスが有名にした、ビリー・ロバーツの曲ではない。ケイデンス時代のエヴァリー・ブラザーズの「座付き作者」同然だったブードロー・ブライアント作で、オリジナルは1953年のカール・スミス盤らしい。

サーチャーズ盤のクリップはないので、サンプルにした。イントロがWhat'd I Sayそっくりだが、ちゃんとHey Joeになるので、ご心配なく!

サンプル The Searchers - Hey Joe

Carl Smith - Hey, Joe!


カール・スミス盤は大ヒットしたそうだが、どうもピンとこない曲で、じゃあ、歌詞かな、と思うのだが、これが面白いかなあ、昔は面白く感じたのか、という微妙な話だ。

ジョーという友だちに向かって、その娘はすごいな、どうだ、俺に譲らないか、とかなんとかいう品のない歌詞で、その品のなさがウケたのか、なんだったのか。

カール・スミス盤がアメリカでヒットしたのと同じ1953年に、イギリスではつぎのヴァージョンが大ヒットしたのだそうな。

Frankie Laine - Hey Joe


こちらのほうが、きちんとアレンジされていて(プロデューサーのミッチ・ミラーのアレンジか)、華やかな雰囲気があり、まだしも納得のいく「ヒット曲」である。ペダル・スティールの間奏も魅力的だし、バッキング・コーラスも、おお、いいな、と思う一瞬がある。

たんなる状況からの判断だが、サーチャーズは、オリジナルのカール・スミス盤ではなく、フランキー・レイン盤か、またはいまでは忘れられてしまったイギリスのローカル盤を元にしたのではないかと想像する。

◆ Always It's You ◆◆
もう一曲つづけて、ブードロー・ブライアントの曲で、こちらはHey Joeより新しく、オリジナルはエヴァリー・ブラザーズ。

サーチャーズ盤は、一応クリップはあるのだが、エンベッド不可なので、サンプルにした。

サンプル The Searchers - Always It's You

The Everly Brothers - Always It's You


この曲についてはややこしいことも、紆余曲折もなく、うちのHDDを検索しても、エヴァリーズ盤が数種類と、サーチャーズ盤しか出てこない。

エヴァリーズのオリジナルは、WB移籍後2枚目のアルバム、A Date with The Everly Brothersに収録されたもので、シングル・カットはされていない。WB移籍後にしては、作者もケイデンス時代と同じブライアント夫妻、サウンドもケイデンス時代のようにシンプルで、WBのアルバムのなかではちょっと据わりが悪い。アウトテイクを利用したのか?

◆ Hully Gully ◆◆
ほとんどがオブスキュアな曲で、タイトルを見ても、オリジナルがそらで出てきたりしないアルバムなので、昔からよく知っている曲が出てくると、ホッとする。

作者はフレッド・スミスとクリフ・ゴールドスミスで、オリンピックスを共同プロデュースしていたといった程度のことしか判明しなかった。後者はLAのワッツの生まれとあるから黒人だろう。のちにジョニー・テイラーをプロデュースしたこともあるとか。

オリジナルを歌ったのはスミス=ゴールドスミスのコンビがプロデュースしていたLAのオリンピックス。ヤング・ラスカルズのビルボード・チャート・トッパー、Good Lovin'のオリジナルを歌ったのも彼らだ。

The Searchers - Hully Gully (live)


The Olympics - Hully Gully


オリンピックスのオリジナルはたいしたヒットではなく、ホット100の下の方に潜り込んだ程度。それでもハリーガリーというダンスステップは流行し、多くのカヴァーが生まれた。

したがって、オリンピックスのHully GullyとサーチャーズのHully Gullyのあいだには多くのヴァージョンがあり、出自がはっきりしているわりには、考えどころには事欠かない。しかも、サーチャーズないしはイギリスのビート・グループが聴いていたであろうシンガーやグループが多い。

まずは前回も登場したこのスタジオ・グループ。

The Hollywood Argyles - Hully Gully


ハリウッド・アーガイルズと関係の深かったスキップ&フリップ(前者はのちにバーズでベースをプレイするスキップ・バッティン)のヴァージョンもあるが、クリップがないので飛ばし、つぎはトゥイストで売れに売れたこの人。

Chubby Checker - The Hully Gully


気になるのは、サーチャーズのライヴと同時期に、やはりハンブルクのスター・クラブで録音された、イギリスのグループ、クリフ・ベネット&ザ・レベル・ラウザーズのカヴァー。

Cliff Bennett & the Rebel Rousers


クリップは間違ってビートルズとクレジットしている。ビートルズのブートに収録されたかららしいが、これを聴いて、ビートルズじゃないとすぐにわからないのも、いわゆるひとつの才能かもしれない!

こういうライヴ向けの曲は、誰かが取り上げると、あっという間に他のバンドもレパートリーにしていくもので、イギリスのバンドでどこが最初にやったか、もはやなんとも言い難い。

イギリスで誰が最初にやったにせよ、まったくの山勘だが、ハリウッド・アーガイルズのヴァージョンが参照されたのではないか、と思う。

サーチャーズのこととは関係ないが、この曲がその後も聴かれたのは、つぎのカヴァーのおかげのような気がする。ボンゴはハル・ブレイン(ボンゴをやってもすごい!)、ベースはジョー・オズボーン。

The Beach Boys - Hully Gully


ドラムレスなのに、ざまざまなヴァージョンのなかでこれがもっともソリッドなビートで、なんだかなあ、と溜息が出る。

◆ What'd I Say ◆◆
なにも考えずにすむ曲は嬉しい。作者はレイ・チャールズ、オリジナルを歌ったのももちろん作者自身。わたしが子供のころは、しじゅうラジオから流れてきた。

サーチャーズのクリップは、63年のスター・クラブでのものはなかったので、別のもので代用した。

The Searchers - What'd I Say


Ray Charles - What'd I Say


山ほどカヴァーがあり、サーチャーズと同時代のブリティッシュ・ビート・グループに限っても、ビートルズ、ジェリー&ザ・ペースメイカーズ、ビッグ・スリーのヴァージョンがある。

あれこれ聴きはじめると話は長々しくなるだけなので、ひょっとしたら、イギリスの子供たちはこのヴァージョンではじめてこの曲を聴いたのかもしれない、というものだけを。

Cliff Richard & the Shadows - What'd I Say


ハンク・マーヴィンのギターがなかなか魅力的で、案外いいじゃないか、である。

わたしはレイ・チャールズのEPを買うはるか以前にこの曲を知っていたが、日本では誰が歌っていたのか、いちおう考えてみたものの、まったく思いだせなかった。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう


サーチャーズ
Definitive Pye Collection
Definitive Pye Collection

サーチャーズ
Meet the Searchers
Meet the Searchers

サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

サーチャーズ
Sugar & Spice
Sugar & Spice

サーチャーズ
Live at the Star-Club Hamburg
Live at the Star-Club Hamburg

マーク・ルーイソン(書籍)
The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970
The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970

カール・スミス
20 All Time Greatest Hits
20 All Time Greatest Hits

フランキー・レイン
The Collection
The Collection

オリンピックス
Doin' the Hully Gully/Dance By the Light of the Mo
Doin' the Hully Gully/Dance By the Light of the Mo

ハリウッド・アーガイルズ
The Hollywood Argyles featuring Gary Paxton
Hollywood Argyles Feat.

チャビー・チェッカー
Five Classic Albums Plus
Five Classic Albums Plus

ビーチボーイズ
Party / Stack-O-Tracks
Party / Stack-O-Tracks

レイ・チャールズ
Ray Charles The Ultimate Collection [Import]
Ray Charles The Ultimate Collection [Import]

クリフ・リチャード
Seven Classic Albums
Seven Classic Albums
by songsf4s | 2014-03-04 23:21 | ブリティシュ・インヴェイジョン
大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その5
 
はじめにお断りしておくが、今回と次回はとっちらかること確実である。これまでと違って、アメリカ、イギリス、日本と土地も移動するし、時代も十数年の振幅で、何度もジャンプしなければならないからだ。

論理は不明瞭になるだろうから、人やグループの名前、そして楽曲名などの名詞だけ読んでくださればそれで十分、と割りきって取りかかる。

さて――。

初期ブリティッシュ・ビート、という言葉を説明なしに使ってきたので、どのような集合体なのか、定義を試みる。

「クラウド」的に(あはは)表現すると、ビートルズ、サーチャーズ、マージービーツ、ハーマンズ・ハーミッツ、デイヴ・クラーク5、ゾンビーズ、スウィンギング・ブルージーンズ、フォーモスト、ビリー・J・クレイマー、ホリーズ、(時期的には合致するものの、スタイルとしてはやや異なり、境界線上にあるが)キンクス、といったあたりである。

彼らの特長は、初期ロックンロール(チャック・ベリー、リトル・リチャード、エルヴィス・プレスリー、バディー・ホリーその他)の強い影響下にあると同時に、エヴァリー・ブラザーズや同時期のアメリカのガール・グループのような、メロディーとハーモニーを重視するスタイルにも、同等の影響を受けていたことだ。

この後者の性質、「メロディーとハーモニーの重視」が消えると、ローリング・ストーンズ、ヤードバーズ、アニマルズ(いや、時期的にもスタイル的にも境界線上にあるが)、スペンサー・デイヴィス・グループ、フーといった、後年の、「ロール」が略された「ロック・ミュージック」の出現に強い影響を与えた、べつの集合体になり、わたしの考える「初期ブリティッシュ・ビート」からははずれる。

キンクスやアニマルズのように、どちらに重心があるとも云いかねるグループがあるのはご寛恕を。「自然現象」にあとから定義を与えようとすると、はみ出すものがあるのは当然なのだ。

文字ばかりつづくとうっとうしいので、わたしのイメージする「初期ブリティッシュ・ビート」の特長を濃厚にもつサンプルを。

The Swinging Blue Jeans - Promise You'll Tell Her


32小節のギター・ソロ、などというバカバカしいものは、襟苦倉布団さん(検索でやってきて怒り散らすお馬鹿さん対策なので、許されよ)がゴミを違法積載して疾走するトラックのように、そこらじゅうにばら撒きはじめるまでは存在しなかったので、ギターはあくまでも伴奏楽器であり、メロディー、ハーモニー、叙情性という三位一体が、すくなくともB面には必要だったし、A面に進出することもあった。

このシリーズの最初の記事へのtonieさんのコメントに引用された、大滝詠一のラジオ番組での発言に「この当時ピーター&ゴードンの曲が非常に好きで」とあったので、もう一曲このデュオのものを。

Peter & Gordon - I Don't Want to See You Again


ブリティッシュ・ビートの背景は、スキッフルがどうこうなどという意見もあることを承知で、そんな些末なことはあっさり無視して云うと、50年代のアメリカ音楽、なかんずく、エルヴィス・プレスリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード、バディー・ホリー、ジーン・ヴィンセント、エディー・コクランといった人々である。

しかし、こういった人々だけでは、初期ブリティッシュ・ビートのハーモニーへのこだわりは説明できない。では、あとは誰なのだ、と云うと、むろん、エヴァリー・ブラザーズなのだ。そして、もうひとつ、同時代のアメリカのガール・グループ・ブームも彼らに強い影響を与えた。

64年以降のいわゆる「英国の侵略」に、アメリカのガール・グループが壊滅的打撃を受けたのは皮肉なことだったが、同時に、当然とも云えた。

ブリティッシュ・ビート・グループは、じつは「ボーイ・グループ」であり、ビートとハーモニーと叙情性の結合、という意味で、ガール・グループと同質のものだったから、併存がむずかしかったのだ。

以下にずらずらと、初期ブリティッシュ・ビート・グループにカヴァーされたガール・グループ/シンガーのヒット曲を並べる。順に、ビートルズ、同じくビートルズ、ハーマンズ・ハーミッツ、サーチャーズにカヴァーされた。

The Cookies - Chains


The Shirelles - Baby It's You


Earl-Jean - I'm Into Something Good


Betty Everett - The Shoop Shoop Song (It's in His Kiss)


以上は昔からわかっていたことにすぎない。今回、エヴァリー・ブラザーズ、ブリティッシュ・ビート、大滝詠一と、音楽史三題噺をやってみて、以前は深く考えたことのなかった点が意識にのぼった。

デイヴ・クラーク5やピーター&ゴードンやビートルズやサーチャーズが、当然のように使った、あのイレギュラーなハーモニー・ラインはどこから湧いてきたのか?

彼らに強い影響を与えたと考えられるエヴァリー・ブラザーズは、きわめてスムーズなハーモニーをやっていて、その点がブリティッシュ・ビート・グループと決定的に異なっている。

それが書きはじめる前の認識だった。書きながらあれこれ考えて得た中間的な解釈はこうだ。

エヴァリーズが、イレギュラーなところのほとんどない、スムーズなハーモニーを実現したのは、彼らの資質やスタイル以上に、ブードロー・ブライアントの書く曲が、必然的に、そのようなハーモニーを要求する構造をとっていたからなのではないか?

前回、ブライアント夫妻のソングライティング・スタイルと循環コードの問題にふれたのは、これがあったからだ。

少しその話を繰り返す。循環コード、たとえばC→Am→F→G7にはドレミファソラシドのCメイジャー・スケールの音階がすべて含まれている。これは前回述べた。

そして、この4コードの循環のなかでメロディーを動かしているかぎりは、たとえば機械的にメロディーの3度上にハーモニーをつけても、メロディーがどう動こうが、まずまちがいなく音は合う。スケールからはずれた音は入ってこないのだから当然だ。逆に云うと、循環からはずれたコードがあると、この原則は崩壊する。

ハーモニーはメロディーの副産物として生まれる。ブードロー・ブライアントのメロディーが、ドンとフィルのエヴァリー兄弟に、とりわけ、主として3度のハーモニーをつけたフィル・エヴァリーに、あのようなスタイルを「強制した」と見ていいのではないだろうか。

(作曲のほうを担当したのは夫のブードロー・ブライアントだったと思われるが、彼はシンフォニック・オーケストラのヴァイオリニストも経験したものの、いっぽうで、南部出身者らしく、カントリー・フィドリングも好んだという。循環コードへのこだわりは、そのあたりに源泉があるのかもしれない。)

ブリティッシュ・ビートのハーモニーの基礎はエヴァリー・ブラザーズである。だが、エヴァリーズそのままでは、ブリティッシュ・ビートの特長である変則的なハーモニーは生まれない。

なぜ、あの量子的跳躍が起きたのかと云えば、シンプルな循環コードからの逸脱がそれを要求したからだ、というのが目下の結論である。

くどいようだが、話の筋道がはっきりしたところで、すでに提示したサンプルの一部を再度貼り付ける。

The Beatles - If I Fell


The Dave Clark 5 - Beacause


Peter & Gordon - I Go to Pieces


The Searchers - Someday We're Gonna Love Again


最初の二曲、ビートルズのIf I Fellと、DC5のBecauseは、コード進行が要求した結果、ハーモニーが変則的な響きになった例である。

たとえば、Becauseのヴァースの冒頭は、G→Gaug→G6→G7→Cという進行になっている。それほどめずらしい進行ではないが、メイジャー・スケールからはずれない循環コードでもない。

では、ハーモニー・ラインはどうなっているかというと、じつは、素直にメロディーの5度を歌っている。ただ、コードが変化しても、主音(ルート)であるソが動かないのに対して、5度の音がコード進行の関係で、レ→ミ♭→ミ→ファというように、半音ずつあがってしまうため、結果的に、変則的な響きになってしまったのである。

ビートルズのIf I Fellはもう少しコードが面倒なので、ピーター&ゴードンやサーチャーズともども、次回に、ということにさせていただく。

気がつけば、またしても、大滝詠一とエヴァリー・ブラザーズと初期ブリティッシュ・ビートの関係に踏み込めなかった。次回はそこへたどり着けるだろう。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう
by songsf4s | 2014-01-09 22:56 | 60年代
大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その4
 
ポップ、ロックの世界で、3コードや4コードの循環コードが多用されるのは、ブルースやヒルビリーが基礎になっているからだ、という説明を読んだことがある。これは説明になっているようで、なっていない。

「では、なぜブルースのコード進行はみなああいう風になっているのか?」という、さらなる疑問を引き出すだけでしかないからだ。

3コードの循環、たとえばCキーでのI-IV-V循環、じっさいのコードに置き換えると、C-F-Gの循環(FはしばしばDm7で代替される)には、ドレミファソラシドのCメイジャー・スケールの音がすべて含まれている。

これが、ポピュラーソングで、この三つのコードによる循環コードが多用される理由なのだ、という説明もある。このほうが納得がいく。C-Am-F-Gという4コードの循環コードも、C-F-Gと同じことだと考えていいらしい。

この説明に説得力があると感じるかどうかは人それぞれだろうが、ケイデンス時代のエヴァリー・ブラザーズのヒット曲の大部分を書いたブードロー&フェリス・ブライアントは、史上まれに見るほど徹底した「循環コード使い」のソングライター・チームだった。

前回とりあげた曲はいずれもブライアント夫妻の作で、みなシンプルな循環コードを利用した、不自然なところのまったくない、スムーズなメロディーラインをもつものばかりだった。

今日の一曲目もブードロー&フェリス・ブライアント作。クリップがないのだが、ないのならしかたない、ではすまされない重要な曲なので、box.netにサンプル音源をアップした。

Bob Dylan - Take a Message to Mary (サンプル)

The Everly Brothers - Take a Message to Mary


ブライアント夫妻がエヴァリーズに提供したもののなかでも、もっともコードが複雑な部類だと思うが、それでも、E、B7、C#m、G#m、F#、A、の6コード、メイジャー、マイナー、セヴンスしか使っていないし、キーがEなら、当然出てくるであろうコードばかりで、おやおや、そんなところに行くのか、という意外なものはない。

メロディー・ライン、ハーモニー・ラインともに、どちらがどちらなのかわからないほどスムーズで、じつは、わたしには、シャレでもなんでもなく、いまだにどちらがどっちなのか判断できない! たぶん、フィルが歌っている上の方がメロディーなのだと思うが、確信はない。

You can say she better not wait for meのラインの、B7→E→G#m→A→Eという早いコード・チェンジのところは、ブライアント夫妻の曲としては、やや強引な流れに感じられる。

しかし、そこがむしろこの曲の魅力のひとつになっていて、say she betterのフィルが歌う上のパートが、ちょっとだけジャンプする(最高音はミだが)ところに耳を引っ張られる。

ここはじつに面白い箇所で、フィルのパートは高くて明瞭に聴き取れ、これはまちがいなくハーモニー・ラインだと、一瞬は思う。

しかし、落ち着いて同じところのドンのラインを聴くと、こちらもメロディーではなく、ハーモニー・パートに聞こえて、見当識喪失に陥る。いや、失ったのは見当識ではなく、メロディーだ。メロディー・ラインはどこに消えた?

ボブ・ディランのカヴァーは、70年リリースのアルバム Self Portrait に収録された。ディラン・ショーヴィニストが蛇蝎のごとく嫌い、ディランのカタログから抹消したいとまで願っている盤だが、以前にも書いたように、ディランのアルバムのなかでは、Nashville Skylineと並ぶ四十数年来のわがフェイヴで、いまもしばしばプレイヤーにドラッグしている。最近のリマスターで一段と音がよくなり、慶賀に堪えない。

Self Portraitはカヴァーの多いアルバムで、そこに面白味もあるのだが、グレイトフル・デッドのWake Up Little Susie同様、ディランもまた、ふだん見せている顔に似合わず、十代の時にエヴァリーズをコピーしたことが、この選曲にあらわれたのだと考えている。

ディランはまた、同じSelf Portraitで、ブライアント夫妻の作でもないし、エヴァリーズがオリジナルでもないのだが、彼らのヴァージョンがもっともヒットした、ジルベール・ベコー作のLet It Be Meもカヴァーしている。

64年にはベティー・エヴァレット&ジェリー・バトラーのヴァージョンもヒットしているが、さして根拠のない山勘にすぎないものの、ディランはエヴァリーズを念頭にしてLet It Be Meをカヴァーしたのだと思う。

The Beach Boys - Devoted to You


大滝詠一&山下達郎 - Devoted to You


The Everly Brothers - Devoted to You


ビーチボーイズのDevoted to Youは、Pet Soundsの準備中で多忙なブライアン・ウィルソンが、リリース・スケジュールに追われ、苦しまぎれの時間稼ぎに考え出した、いわばやっつけのアルバム、スタジオ・ライヴのようなThe Beach Boys Party!に収録されたもの。

しかし、人間、冴えているときは怖いものなしの無敵、このときのブライアン・ウィルソンはまさにその状態で、時間稼ぎの誤魔化しだったアルバムは、ヒットしたばかりでなく、リラックスしたビーチボーイズの心地よいハーモニーを記録した好ましい盤になった。

ドンのパート(下)はブライアン・ウィルソン、フィルのパート(上)はカール・ウィルソンだろうか。ウィルソン兄弟も、エヴァリー兄弟に勝るとも劣らぬ、きれいにミックスした美しいハーモニーを聴かせてくれる。ま、当然だが!

この記事の主役のひとりである大滝詠一のものは、盤としてリリースしたものではなく、ラジオ番組でのライヴで、じつはこの曲ばかりではなく、All I Have to Do Is Dreamをはじめ、ベスト・オヴ・エヴァリーズかというくらいたくさん歌っているのだが、この曲は特別だからおいてみた。

しかし、これはフィル・エヴァリーのパートを歌っている人(呵々)がちょっと苦しそうで(じつは音域が狭いのか、それとも、苦しそうにみせるのがスタイルなのか)、大滝詠一だけが気持よさそうに歌っている。いや、この際、それでかまわないのだが。

エヴァリーズのオリジナルは文句なし、彼らのバラッド系の代表作である。フィル・エヴァリーの死を悼むにふさわしい。

つぎは、ブライアント夫妻ではなく、ほかならぬフィル・エヴァリー自身が書いた曲。エヴァリーズのビート系の曲では、これがもっとも好ましい。

Linda Ronstadt - When Will I Be Loved


The Everly Brothers - When Will I Be Loved


リンダ・ロンスタットのカヴァーは、だれだか知らないがドラムのタイムが悪くて、四分三連のフィルはひどいし、グルーヴも嫌いだが、間奏のギター・アンサンブルは、おそらくアンドルー・ゴールドの多重録音で、わたしのような、ギター・オン・ギターが好きな人間にはエクスタシーものである。ここだけはすごいと思う。

リンダ・ロンスタットは好きでも嫌いでもなく、フィル・エヴァリーのために印税をたくさん稼いでくれてありがとう、と思うのみ。こういう風にカヴァーがヒットしないと、昔の人は忘れられてしまうことがあるので、その点でもありがたい。いや、どうも相済まぬ。>リンダ・ロンスタット・ファン諸兄姉。

エヴァリーズのオリジナルは、これまた云うことなし、すばらしい。ナッシュヴィル時代の彼らのサウンドはおおむねシンプルで、ヴォーカルに耳が集中するようにつくられているのだが、ドラムのバディー・ハーマンをはじめ、上手い人ばかりなので、派手なことをしなくても、気持のよいトラックが多い。

しかし、この曲は、ハーマンのフロアタムが、エルヴィスの時のような音で、おお、と思うし、アップライト・ベースの下降ラインも気持がいい。WB時代のゴージャスなサウンドの予告編といった趣である。

つぎはまた、ブードロー&フェリス・ブライアントの曲に戻る。

Gram Parsons & Emmylou Harris - Sleepless Nights


The Everly Brothers - Sleepless Nights


これはシングル曲ではない。よくまあグラム・パーソンズは自分にぴったりの曲を見つけだしたものだと思う。むろん、この曲に関しては、出来は伯仲、というか、感傷の深さにおいて、GPとエミールーのデュエットの勝ちではないかと思う。はじめて聴いたときは、なぜこれがお蔵入りしたのだと驚いた。おそらく、自作の曲を優先したためであって、出来に不満足だったわけではないだろう。

エヴァリーズのオリジナルも悪いわけではない。いい出来である。たんに、グラム・パーソンズがすごかったにすぎない。

今回はこれでおしまい。冒頭でふれたブライアント夫妻のソングライティング・スタイル、そしてTake a Message to Maryの、ドンとフィルのどちらもハーモニー・ラインを歌っているように聞こえる部分、これがエヴァリーズ、ブリティッシュ・ビート、大滝詠一を結ぶ隠れた糸なのだが、それは大滝詠一の曲に戻る次回に再検討する。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう
by songsf4s | 2014-01-08 22:43 | 60年代
大滝詠一、フィル・エヴァリー、そして2パート・ハーモニー その3
 
前回は、タイトルに名前をかかげている大滝詠一の曲にも、フィル・エヴァリーすなわちエヴァリー・ブラザーズの曲にもふれず、看板に偽りありだったが、それは時間を遡行し、わたしの目から見た「中継点」を示すためだった。

今回は水源地の話、ドンとフィルのエヴァリー兄弟のハーモニーについてであるが、ここでもまた、カヴァーからエヴァリーズのオリジナルへとたどって、時間を遡行してみる。

Simon & Garfunkel - Bye Bye Love


The Everly Brothers - Bye Bye Love


サイモン&ガーファンクルのカヴァーは、アルバム Bridge Over Troubled Water の最後から二番目に置かれていて、そのつぎのSong for the Askingは拍手のあとに登場することもあって、アンコールのニュアンスがあり、Bye Bye Loveは事実上のエンディング曲と意図されたように感じる。アルバムの終わりであり、このアルバムのリリース直後に解散を宣言した、このデュオの終幕を意味していた。

サイモン&ガーファンクルは、おそらくはディランの影響でモダン・フォークへとシフトする以前の、トム&ジェリーと名乗っていた時代には、明らかなエヴァリー・ブラザーズ・フォロワーのポップ・デュオだったので、ごく初期からこの曲をやっていたのだろう。

最後のアルバムの事実上のエンディングの位置にこの曲を置いたのは、出発点に戻り、円環を閉じて、デュオとしてのキャリアを終えようと云う意味だと思われる。

シングル・カットはされなかったものの、FENではしじゅう流れていて、ほとんどヒット曲同然だった。ポップ・チャートの世界ではよく起こる、いわば「借景」のような現象で、かつての大ヒット曲、大スターへのノスタルジー、とりわけ、50年代の音楽を体験したDJたちの記憶を刺激した結果のエアプレイだったのだろう。

そのオリジナルであるエヴァリー・ブラザーズのBye Bye Loveは、彼らのケイデンスからのデビュー・シングルであり、ビルボード・チャートの2位まで行く大ヒットになった。

エヴァリーズのオリジナルと比較すると、S&Gのカヴァーは楽器が多く、サウンドに厚みがあるが、基本的にはストレート・カヴァーであり、コピーといってよいだろう。

エヴァリーズのヴァージョンについていえば、ビートルズのShe Loves Youに似て、いきなりバイ・バイ・ラヴというコーラス・パートから入り、そのハーモニーの響きでリスナーの耳を引っ張っている点が印象的だ。

片や「イエー、イエー、イエー」、片や「バイ・バイ」と、聞き間違えようもなければ、誤解のしようもない、シンプルな言葉を投げつけてくる点にも、強い近縁性を感じる。

ジョン・レノンとポール・マッカートニーは、このような、気持のよいハーモニーの響き、シンプルで「強い」言葉、という二つの要素のコンビネーションを、曲の冒頭でいきなりぶつける、という「つかみ方」をエヴァリーズから学んだのではないだろうか。

他のカヴァーとしては、レイ・チャールズ、ボビー・ヴィー、ロイ・オービソン、デイル&グレイス、リッキー・ネルソン&ドン・エヴァリー、ジョージ・ハリソンのものをもっているが、ここでは略す。しいて云えば、ボビー・ヴィー盤は好ましい。ジョージ・ハリソンは、メロディーも歌詞もほとんど赤の他人のような、不思議な解釈をしている。

Grateful Dead - Wake Up Little Susie


The Everly Brothers - Wake Up Little Susie


1969年、グレイトフル・デッドは、彼らの家に居候してリハーサルをしていた、デイヴィッド・クロスビー、スティーヴ・スティルズ、グレアム・ナッシュの三人の、ヴォーカル・ハーモニーを中心にしたアコースティック・サウンドというアイディアに刺激され、自分たちもかつてのアコースティックなバンドへの回帰を試みた。

その結果、アコースティック・ギターを大々的に利用した(そしてペダル・スティールを導入した)、Workingman's DeadとAmerican Beautyという2枚のスタジオ・アルバムが生まれたが、それと並行して、ライヴでも、第一部をアコースティック・セットとし、旧来の彼らのスタイルは第二部に集中する、という形でツアーをおこなった。

アコースティック・セットで歌われた曲は、デッドのオリジナルは少なく、大部分がブルース、トラッドだった。そのなかにあっては、エヴァリー・ブラザーズの大ヒット曲であるWake Up Little Susieはきわめて例外的な、ポップ・フィールドからの選曲である。

S&Gの場合もそうだが、これはつまり、ジェリー・ガルシアやボブ・ウィアもまた、少年時代、ギターを手にし、ろくにコードも知らないまま、これならできると、ラジオから流れるエヴァリーズに合わせてギターを弾き、歌ったことのあらわれに違いない。

ライヴ録音でこの曲のイントロが流れたときの客の反応にも、彼らもまたデッド同様、少年時代にエヴァリーズに親しんだことを示す喜びが感じられる。

自分の経験をいうと、S&Gの時より、デッドがカヴァーしたことのほうが、のちにエヴァリーズを聴こうと思い立つ動機になった。

そのエヴァリーズのオリジナルは、Bye Bye Love以上に強く、「エヴァリーズ的ななにものか」を感じさせる。説明はあとまわしにして、キーワードだけいえば、3度のハーモニー、シンプルな循環コード、ブードローとフェリスのブライアント夫妻のソングライティング・スタイル、である。

なお、ほかにジョー・メルソン(ロイ・オービソンのソングライティング・パートナー)とフランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズのヴァージョンがある。フランキー・ライモンは2パート・アレンジだが、彼自身のダブル・トラックに聞こえる。なかなか好ましいヴォーカル・レンディションである。

Glen Campbell & Bobbie Gentry - All I Have to Do Is Dream


The Everly Brothers - All I Have to Do Is Dream


グレン・キャンベルとボビー・ジェントリーの共演アルバムは1968年のリリースだが、グレンがBy the Time I Get to Phoenix以下のヒットを連発した結果、ボビーとのアルバムもあとになって売れはじめ、それを受けて、再度デュオを組み、シングルとしてリリースされたのが、エヴァリーズの大ヒット曲のカヴァーである、このAll I Have to Do Is Dreamだった。

アルバムのクレジットではドラムはハル・ブレイン、ベースはジョー・オズボーンになっているが、このシングルのほうのベースはキャロル・ケイのように思える。

カヴァーの多い曲なのだが、やはりヒットしただけあって、ほかのヴァージョンとは異なり、いいサウンドをつくっている。共演だから、クレジットには、ケリー・ゴードンとアル・ディローリーというそれぞれのプロデューサーが併記されているものの、基本的にはグレン・キャンベルが主体で、このサウンドもグレンのプロデューサー兼アレンジャーとして大ヒットを生み出していた、アル・ディローリーがつくったものだろう。

エヴァリーズのオリジナルについていえば、わたしは、これこそがオーセンティックなエヴァリー・ブラザーズ・スタイルなのだとみなしている。

・循環コードに載せた、無理のない自然なメロディーの流れ、
・それを背景とした、メロディー・ラインにしか思えないハーモニー・ライン、
・年齢の近い同性の肉親だけがもっている、区別ができないほど似た声、
・以上によって生み出される、きわめて心地のよい、ユートピア的な音像

といったことが、エヴァリーズのオーセンティシティーだとわたしは考えている。

これは、ケイデンス時代のエヴァリーズのほとんどの曲に当てはまることなのだが、なかでもAll I Have to Do Is Dreamは、すべての要素が百パーセントの濃度で含有された「エヴァリーズ的ななにものか」の化身のように思える。

ためしに、歌ってみると了解できるはずだ。メロディーである下のドンのパートは当然、楽に歌えるのだが、上のハーモニーであるフィルのパートも、ハーモニーを歌っている感覚はなく、ちょっと音域の高いところで動くメロディー・ラインを歌っているような気分になる。

歌ったときのこの感覚こそが、エヴァリーズなのだ。

ほかに、ゲーリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ、ロイ・オービソン、ニティー・グリティー・ダート・バンド、ジェフ・ブリッジズ&カレン・アレン(映画『スターマン』の挿入曲)、リンダ・ロンスタット&カーミット(つまり、セサミ・ストリートかなにかに出演したときのものだろう!)、ウィリアム・ベル&カーラ・トーマス(わが家にある唯一のソウル・レンディションw)、ヒューゴー・モンテネグロ・オーケストラ、ジャン&ディーン、サイモン&ガーファンクルなどのカヴァーがある。自分たちのスタイルに引っ張り込んでいるニティー・グリティー・ダート・バンド盤がもっとも好ましい。

なお、The Beatles at the Boobという、ラジオ番組でのプレイを収録したブートに、エヴァリーズがこの番組に出演した時のものがあるのだが、DJは「これはポールの選曲」といってから、All I Have to Do Is Dreamを流している。いきなりポールの名前が出てくるのだが、これはポール・マッカートニーと考えてよいだろう。

手を付けたときは三回ぐらいで終わるかと思ったが、今日はエヴァリーズの代表作を三曲並べただけになってしまった。この分ではあと三回ぐらいはつづきそうな気配である。次回はさらにエヴァリーズのヒット曲とその余波を聴く。


Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう
by songsf4s | 2014-01-07 23:15 | 60年代
ホリーズ60年代ボックス Clarke, Hicks & Nash Years (The Complete Hollies April 1963-October 1968)
 
今日はPCが落ちまくって、ほんの短時間しか使えない状態がつづいているので、『血槍富士』は一時棚上げして、なにも参照しなくても書けるものを。

わたしはホリーズの2枚組以上の編集盤はすべて聴いたと思うのですが、うっかりしていて、去年出た6枚組ボックスは見逃していました。

Clarke, Hicks & Nash Years (The Complete Hollies April 1963 - October 1968)というタイトルが示すように、アラン・クラーク、トニー・ヒックス、グレアム・ナッシュの三人がそろっていた時代のホリーズのコンプリート・レコーディングに、ライヴ録音をボーナスとして加えたものです。

ホリーズの編集盤を手に入れたら、この曲を比較に使うことにしています。

The Hollies - Carrie Anne


このクリップがどの盤からとられたかわかりませんが、こういう方向のバランシングが、Carrie Anneにはベストだと思います。昔のシングルはたしかモノで、CDになってはじめてステレオ・ミックスを聴きました。そのときのミックスに近いものが、今回のボックスにも収録されています。

しかし、とくに以前のステレオ・ミックスより改善されたわけではなく、人によっては、The Abbey Road Years収録のモノ・ミックスのほうがいいと思うかもしれません。わたしはステレオのほうが好きですが。

久しぶりに初期のトラックを聴いて、忘れていた佳曲がよみがえりました。たとえば、こんな曲。

The Hollies - When I'm Not There


いかにも60年代のホリーズらしい、思いきり元気がよく、アッパーな曲で、こういう軽さは、速さ、薄さは60年代だけの美質だなあと、バラッドじゃないのに、しみじみしてしまいます。なんでこんなにかったるい音ばかりになってしまったのか、沸々と怒りがこみ上げてきます。

ホリーズのシングル曲は、子どものころからイヤっというほど聴いているので、今日はこのボックスに収録されたアルバム・トラックを並べてみます。いずれもシングル・カット・レディーの曲ばかりです。むろん、かったるいダウナーなど入れません。

The Hollies - It's You


これはイギリスではFor Cetain Because、アメリカではStop, Stop, Stopのタイトルでリリースされた1966年のアルバムに収録されていたもので、子どものころのフェイヴでした。サイケデリック分水嶺によって、ファンの好みは前後に割れるようですが、アルバムとしても、わたしはこれがもっとも好きです。

同じアルバムからもう一曲。こんどはB面のトラックを。

The Hollies - Peculiar Situation


For Certain Becauseセッションから生まれたシングルはBus Stopです。当時のイギリスの慣行で、これはアルバムには収録されませんでしたが、Bus Stop抜きでも、For Certain BecauseはシングルのA面とB面だけを並べたような、きわめてハイ・レベルなアルバムでした。

そのつぎのアルバムは、そこまで楽曲が充実していたわけではありませんが、やはり、シングル・カットしなかったのはあまりにも惜しいと思うトラックがいくつかありました。1967年のアルバム、Evolutionのクローザー。

The Hollies - The Games We Play


軽さ、速さ、薄さのホリーズ三位一体ソングの極北です。こういうのを聴いているのがいちばん幸せだったなあと、またしてもしみじみしました。

なんでモノなんだよ、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、当時日本でリリースされた盤はモノ・ミックスでした。パーロフォン盤に準拠したのでしょう。

同じような曲調で気が引けるのですが、今日は軽さ、速さ、薄さの三位一体を追求するので、この曲も断じて欠かせません。

The Hollies - When Your Light's Turned On


サイケデリック以降、ギターがどうのこうのという声がかまびすしくなり、わたしらジャリ・ロッカーもついそういう風潮に流されましたが、こうしてトニー・ヒックスのギター・ヒーロー以下、ジョージ・ハリソン以上みたいなプレイを聴いていると、歌の間奏なんて、これで十分じゃないか、と思います。どこで間違えて、こんなくだらない音楽ばかりの時代を招いてしまったのやら、またまた怒りがこみ上げてきます。

つぎの曲はすこし遅いような気がしましたが、聴き直したら、やっぱ速いわ、と笑いました。

The Hollies - You Need Love


どれもシングル曲同然なので、結局、どれもシングルにするのをやめたのか、といいたくなります。唯一、シングル・カットしたのがKing Midas in Reverseというのが解せませんが、サイケデリックの時代だから、あえてポップな曲を避けた、といったところでしょうか。

さらに軽さ、速さ、薄さを追求します。同じくEvolutionから。

The Hollies - Have You Ever Loved Somebody?


この曲は、アルバム・カットのままで打ち捨てるのはあまりにも惜しいと思ったのか、サーチャーズがシングルにしました。わたしはサーチャーズのファンですが、これはとくに出来がいい部類ではないと警告しておきます。

The Searchers - Have You Ever Loved Somebody?


つまり、速い曲となったら、ホリーズのほうが数段上を行っていたということじゃないでしょうかねえ。サーチャーズはミディアム・アップのほうが向いていると感じます。

エヴァリー・ブラザーズも、もったいないと思ったのか(くどい)、この曲をカヴァーしています。

The Everly Brothers - Have You Ever Loved Somebody?


うーむ、微妙な出来、といわざるをえません。エヴァリーズにはこういうタイプの曲は向かないんじゃないでしょうか。もうすこしメランコリックなほうがよろしかろうと思います。

この曲が収録された、Two Yanks in Englandというアルバムにはジム・ゴードンのクレジットがあるのですが、この曲はジミーのプレイではないようです。アンディー・ホワイトなのでしょうか

このつぎのアルバム、Butterflyは、ホリーズとしてはもっともサイケデリアに傾斜したもので、近年はそちら方面がかまびすしいため、ホリーズの代表作のようにいわれることもあります。しかし、楽曲の出来からいえば、For Certain Becauseがベスト、そのつぎがEvolution、Butterflyは着外、ずっとずっと下のほうです。

ということで、一部ホリーズ・ファンの予想をはずしてButterflyからは一曲もとらず、またFor Certain Becauseに戻ります。このアルバムは全曲聴いてもかまわないのです。

The Hollies - Don't Even Think About Changing


さらにさかのぼって初期のミディアム・ロッカ・バラッドを。ホリーズだって、たまにはメランコリックな味のある曲を歌うこともあります。まあ、当時としてはごく当たり前の、軽く流したバラッド。

The Hollies - Baby That's All


メランコリーなんてのは、この程度の混入率で十分なのです。俺は歌がうまいんだぞ、と主張するだけの、朗々たる、あるいは綿々たる歌なんてのは下の下。鈴木清順がいっていたでしょう、めそめそ泣く演技なんかうんざりだ、泣いていると観客がわかればそれで十分、と。

そろそろ時間切れ、ごく初期に戻って、若々しい声の曲を。イントロが切れていますが、わたしのせいではないので、ご容赦を。

The Hollies - Keep Off That Friend of Mine



Click and follow Songs for 4 Seasons/metalside on Twitter
metalsideをフォローしましょう



ホリーズ
Clarke Hicks & Nash Years: the Complete Hollies Ap
Clarke Hicks & Nash Years: the Complete Hollies Ap
by songsf4s | 2012-01-13 00:04 | 60年代