人気ブログランキング |
<   2009年 12月 ( 27 )   > この月の画像一覧
クリスマス映画4A White Christmas by Bing Crosby(映画『ホワイト・クリスマス』より その1)
タイトル
White Christmas
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
White Christmas Original Soundtrack
リリース年
1954年
f0147840_2355365.jpg


なんだかなあ、と思いながら、本日のクリスマス映画は『ホワイト・クリスマス』です。

なぜ「なんだかなあ」なのかというと、ひとつは、『スイング・ホテル』を取り上げた以上、その姉妹篇である『ホワイト・クリスマス』を無視するわけにもいかないだろうと、他動的理由で見たということです。

f0147840_0191950.jpg

もうひとつ、楽曲のほうのWhite Christmasには、人生をはかなんでしまうほど無数のヴァージョンがあり、とうていすべてを聴くことができないのは、わたしとしては癪なのです!

予告篇


◆ 一面銀世界のはずが…… ◆◆
ともあれ、梗概をできるだけ手早く述べます。

『ホワイト・クリスマス』は『スイング・ホテル』(『ホリデイ・イン』)の続篇ではないものの、同趣向の企画として、当初は『ホリデイ・イン』と同じく、ビング・クロスビーとフレッド・アステアという配役を予定していたようです。しかし、アステアが断ったために、その役はダニー・ケイがやることになりました。

『ホワイト・クリスマス』もまたバックステージものです。二人の主役は第二次大戦中に同じ部隊に配属され、ダニー・ケイがビング・クロスビーの命を救い、すでにソング・アンド・ダンス・マンとして名をなしていたビングが、戦後、ダニー・ケイとデュオを組み、おおいに売れる――ここまでが導入部です。

f0147840_019411.jpg

ビングのところにかつての戦友から手紙(いや、電報だったか。もう忘れてしまった!)が届き、フロリダで舞台に出ている妹たちの歌とダンスを見てくれないかと頼まれて、二人はそのクラブに行き、戦友の妹たちのパフォーマンスを見ます。

Sisters


ここでビング・クロスビーは姉のローズマリー・クルーニーを、ダニー・ケイが妹のヴェラ・エレンを好きになります。ダニー・ケイはひときわ熱心で、ビングを口説き落とし、姉妹のつぎの仕事先であるヴァーモントのインについて行くことになります。

車中では四人でSnowを歌い、いかにも『ホワイト・クリスマス』という気分になるのですが、登場人物や観客の期待に反して、ヴァーモントには雪がなく、ダニー・ケイが「列車をまちがえたぞ、まだフロリダにいるらしい」などといいます。



ウィンター・リゾートなのに雪がないのでは商売あがったり、姉妹の仕事先のインも客がなく、満足にギャラが払えそうもないことがわかります。仕方ない、帰ろうかといったところで主があらわれると、これがビングとダニーの軍隊時代の上官だった将軍。

f0147840_020182.jpg
今回の宿屋は「コロンビア・イン」という名前だが、外観、内装ともに『ホリデイ・イン』の農場によく似ている。こちらには母屋の隣に大きな納屋があることがもっとも目立つ相違点だろう。

f0147840_0202916.jpg

雪なしスキー・リゾート経営者であるこの将軍のピンチを救おうと、ビングとダニーがあれこれ画策し、いっぽうでビング・クロスビーが誤解され、腹を立てたローズマリー・クルーニーがニューヨークへ行ってしまうというルーティンがあったりして、最後はクリスマス・イヴにインで華やかなショウが繰り広げられ、誤解も解け、盛大にWhite Christmasを歌ってエンド・マーク、という運びになります。

◆ 50年代ハリウッドの色彩感覚 ◆◆
もちろん、傑作を期待したわけではなく、あくまでも個々のショウ・ナンバーの出来が優先、話は二の次と思って見ました。じっさい、プロットのほうはどうということもなく、やはりソング&ダンスの映画でした。

しかし、色彩感覚のすばらしさに圧倒されるいっぽうで、フレッド・アステアの不在を痛感させられるナンバーばかりでした。アステアを前提とした企画なのだから、アステアがダメだとなっても、方向転換はできなかったのでしょう。

The Best Thing Happen


このThe Best Things Happen When You're Dancingでは、ダニー・ケイもがんばっています。でも、これが精一杯で、激しい動きのあるダンスでは、べつのダンサーがヴェラ・エレンの相方をつとめています。

ヴェラ・エレンの姿態とダンスは魅力的なので、ダニー・ケイに合わせて振り付けをスケール・ダウンするわけにもいかず、肝心なところにくると主役はフレーム・アウトし、ヴェラ・エレンの動きについていける本職のダンサーが登場する、という処理にせざるをえなかったことがはっきりと伝わってきて、ちょっと居心地が悪くなります。いやはや困ったなあ、フレッド・アステアがダメなら、ジーン・ケリーに話をもっていくべきだったねえ、と55年遅れのボヤきがでますよ。

f0147840_0233662.jpg

しかし、ダニー・ケイとフレッド・アステアを比較するなどという無益なことをしない方なら、どのショウ・ナンバーも楽しめることでしょう。楽曲やアレンジもいいのですが、衣裳と装置の色彩が圧倒的なのです。アステアがダメならジーン・ケリーじゃん、などと無意味な無いものねだりをしなければ、この映画のショウ・ナンバーはどれもたいしたものです。

マンディー(クリスマス・カラー、タンバリン)


この赤と緑の補色をベースにした異様な配色は、クリスマスを意識したものなのでしょうが、それにしても、よくやるぜ、というデザイン。呆れつつ、おおいに楽しみました。楕円形の赤いタンバリンという発想もすごい!

フィナーレ~ホワイト・クリスマス


サンタクロースの衣裳を女性向けにアレンジするというのは、あまり見ないような気がします。たいていは、あのまんまの衣裳を女性が着るのではないでしょうか。いや、アメリカのメンズ・マガジンには、超ミニのサンタクロース衣裳というルーティンがありますが、あれもコートはふつうのデザインでしょう。この映画はサンタクロース装束風ドレス! 後にも先にも、そんなものはこの映画でしか見たことがありません。

◆ 86種類のWhite Christmas ◆◆
さて、ほかにクリスマス・ソングがあればそちらへ逃げるのですが、どういうわけか、クリスマス映画なのに、『ホワイト・クリスマス』に登場するクリスマス・ソングは、White Christmasただ一曲なのです。

しいていうと、Snowは冬の歌なので、最近の超拡大解釈クリスマス・ソング・クラウドに入れても差し支えないかもしれません。とはいうものの、堂々とクリスマス・ソングを名乗って銀座八丁を練り歩けるほどのオーセンティシティーは、もちろんありません。ものを知らない若者を騙すクリスマス・ソング巨大オムニバス・ボックス販売業者の策略にのるなんてえのは、いい年をした大人(今日、アメリカ人の若者に道をきかれたときに、sirをつけられてしまった。よほどの年寄りに見えたのだろう!)のすることではないでしょう。

f0147840_0344879.jpg
White Christmasの爆発的増殖に備えて導入したメディア・プレイヤー・ソフト、Media Monkeyの検索結果には自動的にナンバーがつけられる。White Christmasは86種。他のソフトと併用しているが、大量のカヴァーがある曲に関してはこれが主力になりそうな気配だ。THX>キムラさん。

となると、このシリーズの趣旨からいって、ここでWhite Christmas各種ヴァージョンの検討へといくわけですが、そりゃ無理ってものです。いや、いちおう、できるだけたくさん聴いて、一昨年のWhite Christmas その1White Christmas その2に書ききれなかったこと、二年間で考えが変わった点を書こうと思ったのですよ。

でも、愕きました。いまのわたしの考えるようなことはどれも、すでに二年前のわたしがくわしく書いていたのです。86種のWhite Christmasを流しっぱなしにして、書きものや調べものをしているじゃないですか。で、曲が替わったとたんに、おお、鳴りのいいスタジオじゃん、いいエンジニアだねえ、みごとなバランシング、これこそが録音というものでありんす、いまどきの録音なんか薄っぺらくてお歯に合わないねえ、なんて思いつつ、プレイヤーにフォーカスを移して確認するじゃないですか。

そうすると、ヘンリー・マンシーニのWhite Christmasであると表示されているのです。マンシーニはいつもハリウッドのRCAのスタジオAだから、録音がよくて当たり前。で、一昨年の記事を見ると、ヘンリー・マンシーニのWhite Christmasは、冒頭を聴いた瞬間にすばらしいと感じると、もう先回りして書いてあるのですよ。われながら、なんとみごとな一貫性、と勘当しましたね。いや、感動しましたね。

f0147840_0351035.jpg

いや、こんな手前味噌だけで終わってはあんまりなので、なんとか次回、一昨年の自分をロール・オーヴァーするべく、White Christmasのかゆいところに手を届かせる努力をしてみるつもりです。つまり、今日はもう疲れた、さよなら、といいたいだけですけれどね。それはそうでしょうに。一日中、White Christmasを聴きつづけてごらんなさいな!

White Christmas Special Edition DVD
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]

ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
Holiday Inn & White Christmas

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas
Merry Mancini Christmas
by songsf4s | 2009-12-07 23:59 | クリスマス・ソング
クリスマス映画3B Happy Holiday by Bing Crosby(『スイング・ホテル』より その2)
タイトル
Happy Holiday
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1942年
f0147840_23534382.jpg

前回は、ビング・クロスビーがコネティカットの農場というか「ランチ」というか、そういう場所で、祝祭日だけ営業するインを開くことになった、というところまで書きました。

このインが成功するか否かはこの物語の焦点ではありません。年間15日の営業日数では、東京のホテルのショウの十倍ぐらいの値段にしないと、とてもペイしないでしょう。はじめから現実的な話ではないのです。

f0147840_23573649.jpg

f0147840_2357493.jpg

f0147840_23575890.jpg
本文とは関係ないが、この映画のアステアのダンスのなかでは、このかんしゃく玉を破裂させながら踊る場面が楽しめた。もちろん、いちいち投げつけていたのではきれいに破裂しないので、パイロがメカニズムをつくり、アステアが複雑なコレオグラフィーを完璧にこなして、きれいにタイミングを合わせたのだろう。また、アニメーションも補助的につかったのではないだろうか。

かつてのマネージャーの紹介で、このホリデイ・インで働きたいという若い女性(マージョリー・レイノルズ)がやってきます。ソング&ダンス・ガールです。そして、ビングが、こういう曲を作ったといって彼女に歌って聴かせるのがWhite Christmasです。

ホリデイ・イン ホワイト・クリスマス・シークェンス


このシークェンスはエンディングの伏線になっています。どうというほどのものではないのですが、でも、伏線を張っておくのはつねに大事なことです。ついでに、書き忘れないようにと自分に念を押すのですが、White Christmasの歌詞がああなった理由は、この映画を見てよくわかりました。これまたこの映画のエンディングの状況に根ざしているのです。その点についてはのちほど。

f0147840_23543329.jpg
ビング・クロスビーがWhite Christmasを歌いながら、パイプの柄でベルを叩いてオブリガートを入れる。これがエンディングの伏線。

◆ シンデレラを求めて ◆◆
こんな調子でプロットを書いていては終わらないので、すこし端折ります。マージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インでビング・クロスビーの相方として歌い、踊り、演じることになります。

いっぽう、フレッド・アステアがビング・クロスビーとの競争に勝って結婚したヴァージニア・デイルは、百万長者に引かれてどこかへ消えてしまいます。泥酔したアステアは「コネティカット」(アメリカでもいろいろな読み方をされるのだろう。「コネクティカット」へ行った、と発音が強調される)のホリデイ・インにやってきます。

ここでマージョリー・レイノルズを相手に、フレッド・アステアは、そのキャリアのなかでもっとも奇妙な振り付けのダンスをやります。真っ直ぐに立っていられない男のダンスです。『ドランクモンキー酔拳』というカンフー映画がありましたが、あれはこれをヒントにしたのじゃないかと思ってしまいます!

f0147840_23551123.jpg

あとからきたマネージャーは、すばらしいパートナーだったという評判を聞き、その女性を新しい相方に、とは思うものの、だれと踊ったのかがわからず、彼女を求めて、アステアと二人で何度もホリデイ・インを訪れることになります。そのたびに季節に合わせた歌と踊りがあるというのが、この映画の趣向です。

ビング・クロスビーのほうは、またしても相方/想い人をアステアに奪われまいと、あれこれ策略を弄するというルーティンが繰り返され、結局、そのトリックに気づいたマージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インを去り、アステアの相方としてハリウッドでスターになります。

f0147840_23553626.jpg

◆ またしてもメタ映画シークェンス ◆◆
失意のビング・クロスビーは、ホリデイ・インを閉じてしまいますが、やがて気を取り直して、ハリウッドの撮影所を訪れます。エンディングに入るので、これから見るのだから、結末は知りたくないという方はここまでにして、つぎの見出しにジャンプしてください。

ビング・クロスビーとフレッド・アステアの顔合わせと、二人の「ソング&ダンス」は堪能できるものの、映画としては他愛のない話で、ここまでは可もなし不可もなし、と思って見ていました。でも、最後はちょっとしたものです。

f0147840_23593333.jpg
フィルムの音を低減するために、キャメラ全体を巨大なブリンプで覆った。厚田雄春によると、ブリンプがなくて布団をかぶせてやっていた時期があったという!

ハリウッドの撮影所は、ビング・クロスビーの「休日だけ営業する田舎のイン」というアイディアが気に入り、歌まで含めて、これを映画化します。ビングが訪れたのは、このセットなのですが、これがホリデイ・インをスタジオで再現したという設定なのです。

f0147840_001272.jpg
コネティカットの田舎にあるインだと言い張っていたものを、こんどはハリウッドのスタジオにつくられたホリデイ・インのセットであるといって見せる!

f0147840_002531.jpg

f0147840_004011.jpg
監督、撮影監督、撮影助手の3人が載るクレーンもすごいが、ブームはもっとすごい。鯨用釣り竿か! なぜこんなに太いのだろうと考え込んでしまった。細いと動かしたときに揺れてしまい、ドップラー効果でピッチが揺れてしまうから? いや、考え過ぎかもしれないが!

これはちょっとした「メタ」で、アッハッハでした。だって、この映画自体のここまでのシーンに使ってきたホリデイ・インのセットを、こんどはハリウッドのスタジオで再現されたホリデイ・インのセットだといって見せるわけですからね。同じセットに二つの役割をふったのです。このメタ映画的シークェンスが、『ホリデイ・イン』の映画としてもっとも楽しい部分です。

f0147840_02565.jpg
マージョリー・レイノルズがホリデイ・インのセットで演技をはじめる。この前に、ヒロインは女優で、ハリウッドでの成功の虚しさに気づき、自分があとにしてきたホリデイ・インを再訪する悲しい場面である、と説明される。このいけずうずうしい脚本はたいへんけっこう!

f0147840_0252712.jpg
セットにやってきたビングがそっと置いていったパイプに、マージョリー・レイノルズは目をとめる。

f0147840_028413.jpg
このセットでマージョリー・レイノルズはWhite Christmasを歌う。陽が燦々と輝くクリスマスのハリウッドで、コネティカットのホワイト・クリスマスを夢見て帰ってきた、というのがこの歌詞のオリジナルな意図だったのかもしれない。

◆ 昔の記事の訂正 ◆◆
昨年の元旦にこの映画の挿入曲、Let's Start the New Year Rightを取り上げ、そのなかでつぎのように書きました。

「ビング・クロスビー、フレッド・アステア、マージョリー・レイノルズという3人の主役たちのあいだで、なにかもつれたものがあり、それをチャラにして、新しい年はきちんとスタートしよう、というのではないでしょうか」

「シノプシスを読んでも、Let's Start the New Year Rightが劇中のどこに出てくるのかわかりませんが、歌詞から考えれば、エンディング近くではないでしょうか」

両方とも大ハズレのコンコンチキでした。Let's Start the New Year Rightが登場するのは、ホリデイ・インの営業中、キッチンでビング・クロスビーが調理をし、マージョリー・レイノルズがそれを皿に受けるといった場面です。もつれた関係をチャラにするとか、そういうコンテクストではありませんし、エンディングにはだいぶ間がある浅いところ(開業直後の大晦日)に出てきます。

f0147840_024176.jpg

いえ、エンディングでも出てくるのですが、さまざまな曲のハイライトの一部にすぎず、この曲で万事めでたく解決、かくして大団円、という使われ方ではなかったのです。

◆ ハッピー・ホリデイ ◆◆
さて、この映画で歌われる三大クリスマス・ソングのもう一曲、Happy Holidayが本日の眼目です。テーマ曲なので、まずオープニングのサウンド・コラージュの一部として登場します。しかし、フル・ヴァースが歌われるのは、ホリデイ・イン開業の日、クリスマスのことです。

Happy Holiday Bing Crosby


人生にうんざりしたらホリデイ・インにいらっしゃい、というコマーシャル・ソングなので、開業にはふさわしいというか、図々しいというか、そういう歌詞になっています。どうであれ、なかなかけっこうな曲で、こういう映画にはふさわしいテーマ曲です。

f0147840_0363787.jpg

◆ アンディー・ウィリアムズとペギー・リーのカヴァー ◆◆
ホリデイ・インのコマーシャル・ソングでは具合が悪いということで、カヴァー・ヴァージョンは異なる歌詞をつけています。アンディー・ウィリアムズ盤はサンタ・クロースが登場する、ご家庭向き、お子様向きの歌詞にしています。

アンディー・ウィリアムズのクリスマス・アルバムには、一昨年も何度か賛辞を呈しましたが、アンディー・ウィリアムズが好きとか嫌いとか、そういうことには関係なく、いいアレンジをきれいに録音した盤で、サウンドは楽しめます。アンディー・ウィリアムズは何度もこの曲を録音しているようで、ヴァリアントがありますが、どれも悪くありません。

歌ものとしてはもう一種、ドラスティックにアレンジを変えたペギー・リーのヴァージョンも魅力的です。

ペギー・リー ハッピー・ホリデイ


というように、ものすごく速いワルツ・タイムでやっているのです。ほかにこの曲の似たアレンジというのは、わが家にはありません。並べて聴くと異彩を放ちます。薄くミックスされた、管のアンサンブルによるカウンター・メロディーがクール。ドラマーも好みです。

これまた、先日の『めぐり逢えたら』の記事で、アル・カイオラとリズ・オルトラーニのSleigh Rideが収録された編集盤としてご紹介した、ウルトラ・ラウンジ・シリーズのクリスマス篇2に入っています。同じことばかり書いていますが、ウルトラ・ラウンジはハリウッド産ラウンジ・ミュージックの精華を集成した一大シリーズで、とりわけ3枚のクリスマス篇はじつに楽しい編集になっています。

f0147840_0374096.jpg
本文とは関係ないが、これはEaster Paradeを歌うシーン。

◆ オーケストラもの ◆◆
オーケストラによるカヴァーとしては、まずパーシー・フェイス盤があります。アップテンポの軽快なアレンジで、おめでたい祝日の気分になります。

ヘンリー・マンシーニほどの高打率ではないにしても、パーシー・フェイスもやはりハズレがありません。アレンジとコンダクトは重要ですし、この部分については、ヘンリー・マンシーニとパーシー・フェイスはまったくの別人です。しかし、両者ともハリウッドのRCAのスタジオAでの録音(マンシーニはほとんどつねにそうだったことがわかっている)でしょうから、音のテクスチャーが似ても不思議はありません。

さらにいえば、ツアーはべつとして、スタジオ録音に関するかぎり、相当数のプレイヤーが重なっているはずです。だれそれオーケストラとか、なにがしオーケストラといった名前がついていても、じっさいにスタジオでプレイするのはフルタイムのメンバーではなく、第一級の腕をもつスタジオ・プレイヤーです。そして、ポップ・オーケストラのメッカはハリウッドなのだから、時期の近いものはメンバーが重複している可能性が高いのです。

f0147840_0384278.jpg
独立記念日のショウ。こんな豪華版では、テーブル・チャージだけでとんでもない値段になるのは確実だなあ、と貧乏性のわたしは怖くなった!

f0147840_0385115.jpg
戦争中なので、国威発揚フィルムがショウのなかに織り込まれている。

それが、どのオーケストラもレベルが高く、録音がよく、多くのトラックが楽しめる造りになっている理由です。ハリウッド流の品質保持戦略なのです。もちろん、これはオーケストラにかぎった話ではなく、50年代後半から60年代にかけての、あらゆるハリウッド産ポップ・ミュージックに共通する基本理念なのですが!

ジャッキー・グリーソンもまたハリウッド録音なので、共通の基盤でオーケストラ音楽をつくっています。ただし、グリーソンの盤にははっきりとした型があります。「ナイス&イージー・サウンド」とでも名づけたくなるような、テンポの緩い、パーカッション系の音のほとんどない、ドリーミーなサウンドです。

Happy Holidayもやはり、典型的なジャッキー・グリーソン・スタイルでアレンジされていて、手ざわりはパーシー・フェイス盤の正反対ともいえるものです。にもかかわらず、というか、それゆえに、かもしれませんが、これはこれでおおいに楽しめるヴァージョンです。

f0147840_0414120.jpg

また、たんなる偶然ですが、ビング・クロスビーの歌うOST盤のあとにジャッキー・グリーソン盤Happy Holidayを置くと、後者がスロウなコーダに聞こえ、一体の曲のようになります。OSTはBフラットでスタートしますが、途中で転調し、Cで終わります。ジャッキー・グリーソン盤のキーはCなので、そのままつながってしまうのです。

同じように、パーシー・フェイス盤のあとにおいても、コーダに聞こえます。パーシー・フェイス盤はたしかFで終わるので(もう確認の余裕がない時間帯!)、きれいに転調した印象になります。

よけいな話はともかく、Happy Holidayは、オーケストラ・アレンジでも楽しく聴ける曲です。めずらしいことに、どのヴァージョンもどこかに魅力があるという、けっこうな取り組みでした。

f0147840_0415666.jpg

スイング・ホテル(ホリデイ・イン) 廉価版
スイング・ホテル [DVD] FRT-191
スイング・ホテル [DVD] FRT-191

スイング・ホテル(ホリデイ・イン) オフィシャル版
スイング・ホテル [DVD]
スイング・ホテル [DVD]

ホリデイ・イン OST(ホワイト・クリスマスOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
Holiday Inn & White Christmas

パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith
Christmas Is... Percy Faith

ジャッキー・グリーソン
Merry Christmas
Merry Christmas

ペギー・リー
Christmas with Peggy Lee
Christmas with Peggy Lee

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2

Andy Williams
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
by songsf4s | 2009-12-05 23:38 | クリスマス・ソング
I'll Capture Your Heart by Singing by Bing Crosby & Fred Astaire(『スイング・ホテル』より その1)
タイトル
I'll Capture Your Heart by Singing
アーティスト
Bing Crosby, Fred Astaire and Virginia Dale
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1942年
f0147840_23554314.jpg

このところ、毎日、タイトルが長いから削れといわれてばかりいます。そのため大幅に省略し、大事な情報をたくさん書き落としたので、以下にわたしが意図した正しいタイトルを書いておきます。

クリスマス映画3のA I'll Capture Your Heart by Singing by Bing Crosby, Fred Astaire and Virginia Dale(映画『スイング・ホテル』より その1)

エクサイトに思いきり嫌がらせをされましたが、気を取り直して、以下、本文。

f0147840_025618.jpg

これまで比較的新しい映画を見てきたので、こんどは古典的クリスマス映画にしようと思案し、『スイング・ホテル』にしました。

いまや原題の「ホリデイ・イン」のほうがわかりやすいのですが、公開当時は、もちろん、ホテル・チェーンのホリデイ・インは知られていなかったし(この映画がヒントになってホテル・チェーンが生まれたのだから当然!)、そもそも「イン」といわれても、宿屋、居酒屋を連想する観客はほとんどいなかったのでしょう。

f0147840_035058.jpg

それでやむをえず「ホテル」という言葉を織り込んで、ビング・クロスビーとフレッド・アステアの共演作にふさわしい単語をあれこれ考え、アステアのほうから『スウィング・タイム』を思いだし、『スイング・ホテル』というタイトルを捻り出したのだと想像します。出来の悪い邦題なので、そろそろ『ホリデイ・イン』と改題するべきです。ここでは原題のカタカナ書きで通します。

『ホリデイ・イン』は映画としての出来を云々する以前に、わたしの考えでは、三曲の有名なクリスマス・ソングが歌われたために、クリスマス映画の古典としてリストからはずすことができません(もう一曲、クリスマスとは関係のない有名曲の初出でもあるのだが、そのことは後述)。テーマ曲のHappy Holiday、Let's Start the New Year Right、そしてもちろん、White Christmasの三曲です。

f0147840_052771.jpg

たまたま、今日、バックアップをHDDに書き戻した関係で、検索するとWhite Christmasは80種ほどがあふれてこぼれだし、おぼれそうになったので、今日はやめておくことにしました。一昨年のWhite Christmas その1White Christmas その2で委曲は尽くしたので、今年はどこかで軽く補足するだけにするつもりです。

◆ 「ソング&ダンス・マン」の人格分離 ◆◆
いちおうプロットを追います。『ホリデイ・イン』は典型的なバックステージもので、ビング・クロスビーは歌手、フレッド・アステアはダンサーと、そのままの役を演じます。

話はクリスマス・イヴのナイトクラブからはじまります。ビング・クロスビー、フレッド・アステア、双方の相方をつとめている女性が、二人のあいだにはさまっていたけれど、結局、アステアを選び、ビングを袖にする、ビングはこれを機会にコネティカットの山荘に引っ込み、現今いうところの「スロウ・ライフ」を送ることにしたと宣言する、というのが導入部。

f0147840_0133047.jpg

このビング・クロスビーとフレッド・アステアの「友情ある対立」をめぐって、ストーリーは展開することになります。フレッド・アステアの役は、悪人ではないものの、ビング・クロスビーの敵役なので、脚本はそれなりに配慮してはいるものの、損な役回りです。でも、『アステア・ザ・ダンサー』によると、仲のいいビングと共演できて楽しかったと回想しているそうです。

f0147840_015597.jpg

この設定の妙味は、フレッド・アステアがしばしば演じた「ソング・アンド・ダンス・マン」の話ではなく、ソングとダンス、双方の第一人者の顔合わせなので、「ソング・マン」と「ダンス・マン」に役割が完全分離している点にあります。設定から考えて、主演はビング・クロスビーとフレッド・アステアしかない、となったのか、それとも、この顔合わせが先に決まって、それに添って書かれたのか。まあ、後者でしょうね。この二人でなければうまくいかない設定です。

もちろんミュージカル仕立てで、ビングは歌い、アステアはソング・アンド・ダンスの両方をやります。あまり目立たないようにと気を遣ったのでしょうが、アステアの歌だって、ビングほどではない、というだけで、十分に魅力的です。

I'll Capture Your Heart by Singing


最初のナンバー、ビング・クロスビー、フレッド・アステア、ヴァージニア・デイルの三人組ショウ芸人が演じるのは、"I'll Capture Your Heart by Singing"です。ビング・クロスビーのクルーニングとフレッド・アステアのタップを生かすための、バラッドとダンス・チューンを合体させたハイブリッド・アレンジが秀逸です。もちろん、楽曲の出来も上々。さすがはアーヴィング・バーリン、聴いたとたん、すぐに歌いたくなってしまいます。ファースト・ヴァースのhot toddyとdead bodyの押韻にはおおいに笑いました。

f0147840_01697.jpg

◆ 年間15日 ◆◆
しかし、コネティカットの田舎に引っ込んだビング・クロスビーは、翌年のホリデイ・シーズンにいたり、一年のカントリー・ライフをかえりみて、かくてはならじ、商売をしようと決意し、(たぶん)ニューヨークのフレッド・アステアの楽屋を訪ねます。

f0147840_0263946.jpg

f0147840_0162368.jpg

f0147840_0163837.jpg
「ハイウェイの生活は一休み、農場でくつろぎの一時をどうぞ、ダンス、フロア・ショウ、家庭料理、休日のみ営業」といったことが書いてある。

というようなビラをわたし、休日にだけ営業するインを開きます。innは宿屋や居酒屋などの訳語をあてられますが、この「ホリデイ・イン」は二階があって宿泊できそうではあるものの、そういう様子はまったく描かれず、ナイトクラブのような営業形態です。つまり、飲食物とショウで客をもてなすのです。

この部分がアーヴィング・バーリンの原案のようで、年間15日の休日に合わせて、季節感のある曲をこのクラブを舞台に歌い、踊る、という趣向です。したがって、これまた純粋なクリスマス映画ではなく、クリスマスにはじまり、クリスマスに終わる、年中行事絵巻ミュージカルなのです。

トレイラー


以上のクリップでおわかりでしょうが、この映画からはEaster Paradeも生まれています。休日に合わせて楽曲を書くとなると、当然、イースターの歌も必要で、この曲の誕生となったのでしょう。

わたしは、曲を聴いた順というか、映画を見た順が逆だったので、以前は、Easter Paradeが、フレッド・アステアではなく、ビング・クロスビーの持ち歌とされている意味がよくわかっていませんでした! 初出は『ホリデイ・イン』のビング・クロスビー・ヴァージョン、のちにこの曲からフレッド・アステアとジュディー・ガーランドの『イースター・パレード』がつくられた、という順番です。

話はまだ前ふりぐらいのところなのですが、例によってまったく時間が足りず、あとは次回へとつづく、とさせていただきます。

f0147840_027482.jpg

スイング・ホテル(ホリデイ・イン) 廉価版
スイング・ホテル [DVD] FRT-191
スイング・ホテル [DVD] FRT-191

スイング・ホテル(ホリデイ・イン) オフィシャル版
スイング・ホテル [DVD]
スイング・ホテル [DVD]

ホリデイ・イン OST(ホワイト・クリスマスOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
Holiday Inn & White Christmas
by songsf4s | 2009-12-04 23:31 | クリスマス・ソング
更新情報 黄金光音堂「Q&Aソングス その5 He'll Have to Go by Solomon Burke」

黄金光音堂を更新しました。「Q&Aソングス その5 He'll Have to Go by Solomon Burke」。

ソロモン・バーク盤He'll Have to Goのサンプルはこのページにおいてあります。

例によって、つぎの映画を見終わっていないので、当家の更新は24時間後になるでしょう。本格的にクリスマス・シーズンがはじまったのか、平日なのにすでに230人ほどの方がいらっしゃって、そういうときに更新しないのは気が引けるのですが、一昨年のクリスマス・スペシャルでもご覧になって、しばしお待ちあれ。

今夜はもう一カ所、猫町ぶらり散歩やせんとてを更新したいと思っています。といっても、なにも手をつけていないので、日付がかわってからになるかもしれませんが。

追記
散歩やせんとてを更新しました。「昭和戦前古建築散歩 同潤会アパートメント・ハウスB 柳島アパート(墨田区横川)」。
by songsf4s | 2009-12-03 23:25 | その他
クリスマス映画2 Sleigh Ride/Jingle Bells by Roy Rogers & Dale Evans(映画『めぐり逢えたら』より)
タイトル
Medley: Sleigh Ride/Jingle Bells
アーティスト
Roy Rogers & Dale Evans
ライター
Leroy Anderson and Mitchell Parish, James Pierpont
収録アルバム
Christmas Is Always
リリース年
1967年
f0147840_0475350.jpg

クリスマス映画2本目は、トム・ハンクスとメグ・ライアンの『めぐり逢えたら』(Sleepless in Seattle, 1993)です。

最初の葬礼のシークェンスで、トム・ハンクスが妻を失い、幼い息子と二人だけになってしまったことが描かれます。そして、妻のことを思いださせる場所ばかりのシカゴを去り、シアトルに移住するというのが導入部です。

Sleepless in Seattle pt.1


冒頭のクレーン・ショット、トム・ハンクス親子から、会葬者とその背後に見える町並みへとキャメラが移動していくところは、ちょっとハッとさせられます。

◆ またしてもアブノーマル・ヴァージョン ◆◆
それから一年半後、という文字が入って、クリスマス・イヴから話は動きはじめます。メグ・ライアンとビル・プルマンが、クリスマスの晩餐のために、メグ・ライアンの実家へと出発するところは、ちょっと笑いました。ビル・プルマンが晩餐に出席するメグ・ライアンの家族、親戚の名前と特徴を暗記するところです。

もっと可笑しかったのはつぎのクリップの冒頭。

Sleepless in Seattle pt.2


プロップか衣裳のだれかが仕込みをやったにちがいありませんが、ウェディング・ドレスの肩がみごとにビリッとやぶれて、その具合のよさに拍手したくなりました。仕込みの人間としては、きれいにやぶれた瞬間、監督をふりかえって、ガッツ・ポーズでしょう!

母親が昔着たウェディング・ドレスを試着しながら、メグ・ライアンと母親がかわす会話が、定石通りに、この物語の前口上になっています。「It's like a magic」がキーで、ドレスがやぶけてしまうのも「It's a sign!」、この結婚がうまくいかないことを暗示します。

f0147840_15412.jpg

f0147840_151427.jpg

以上、地ならし完了、恋人たちはべつべつの車で帰途につきます。このへんはややわざとらしい展開ですが、メグ・ライアンをひとりにして、車のなかでラジオをきかせ、そのラジオから流れてくる声に気持を添わせるには、婚約者といっしょではぐあいが悪いというのはよくわかります。観客にあまりわかられすぎても、ほんとうはまずいのですが。

車中最初のラジオ・プログラムは、これまたお約束という感じで、クリスマス・イヴだから、クリスマス・ソングが流れます。ちょっと変わった選択です。いえ、Jingle Bells(ジングル・ベルの過去記事)とSleigh Ride(スレイ・ライドの過去記事)を、メドレーではなく、合体させたもので、楽曲としてはノーマルです。でも、なぜロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤なのか?

サンプル ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ「ジングル・ベル/スレイ・ライド」

なんだか、この曲も、映画に使われたものは、盤としてリリースされているヴァージョンとは微妙に異なるように思えます。というのでコードを弾いてみたら、盤はノーマルなピッチ(D)、映画はクォーターノートで、盤より微妙にピッチをあげてありました。変なことをするものですねえ。どういう意図かはわかりません。ピッチがあがると明るくはなりますが、このロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズのジングル・ベル/スレイ・ライドは、もとのままのピッチで十分に明るいのに!

星の数ほどあるJingle BellsやSleight Rideのなかから、どのような意図でこのロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤を選んだかはわかりませんが、このひょうきんなサウンドに乗ってメグ・ライアンが運転するすがたはおおいに魅力的で、そういうマッチングを狙ったのかもしれません。

f0147840_1212272.jpg

◆ クリスマスに欲しいものは? ◆◆
局を替えると、電話人生相談といった感じの番組になり、シアトルに住む八歳の子ども、冒頭に登場したトム・ハンクスの息子ジョナが登場し、クリスマスにはパパに新しい奥さんをプレゼントして欲しいといいます。

メグ・ライアンがラジオをききながら、思わず、イヤな女(電話相談の精神科の女医)、ジョナ、いうこときいちゃダメよ、電話を切りなさい、というけれど、結局、ドクターはトム・ハンクスを電話口に引きずり出します。

f0147840_1172831.jpg

f0147840_1174579.jpg

ここでトム・ハンクスが語った死んだ妻の思い出話がアメリカ中(といっても、もちろん、この番組がネットワークされている範囲だが)の女性の関心を喚んでしまう、というのが、この物語のほんとうの意味での発端です。

タイトルのSleepless in Seattleは、この女医がトム・ハンクスにつけたあだ名、「シアトルの不眠症さん」という意味です。ついでにいえば、邦題の『めぐり逢えたら』は、この映画が下敷きにしたケーリー・グラントとデボラ・カー主演の『めぐり逢い』(An Affaire to Remember。監督はなんとレオ・マケアリー!)に由来しています。

f0147840_122044.jpg

ということで、ここから、『ボギー俺も男だ』が『カサブランカ』のエンディングへと動いていったように、Sleepless in SeattleもAn Affair to Rememberのエンディングを再現するべく、アールデコの装飾が楽しいエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキを目指して動きはじめます。

この映画のいいところ、男でも楽しめる理由は、メタ・メロドラマになっているところです。メロドラマによるメロドラマ批評なのです。いや、ロマンティック・コメディーによるメロドラマ批評でしょうか。ストレートなコメディーでもなければ、ストレートなメロドラマでもなく、でもやっぱり、女性観客としては、エンディングでハンカチを取り出す、という風につくってあります。

f0147840_1231061.jpg

f0147840_1231923.jpg

f0147840_1232685.jpg

f0147840_1233899.jpg
メグ・ライアンが友だち(名前は忘れたがロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』で顔を覚えた)といっしょにヴィデオで『めぐり逢い』を見るという、いかにもメタ映画らしいシーン。

わたしは男なので、どこで泣けるかではなく、どこで笑えるかのほうが気になります。メタ・メロドラマであると同時に、映画によって映画を語るメタ映画でもあり、登場人物たちはしきりに昔の映画に言及します。

いちばん笑ったくだりは、トム・ハンクスと友人夫婦の会話です。ヴァレンタインズ・デイにエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキで待つという、「ファン」からの手紙(出版社社員のメグ・ライアンが、取材の一環として書いた)の話を聞き、友人の奥方が、それって『めぐり逢い』じゃないの、ほんとうにいい映画だったわ、もう泣けて泣けてと、エンディングの誤解とそれが解けるシーンの仕方話をひとくさりやります。

男たちは、An Affair to Rememberときいて、ありゃChick's movie(女が見るもの)だ、と関心を示しません。わたしもこの男たちに強く同意します! トム・ハンクスの友人は、いちばん泣ける映画はやっぱりDirty Dozen(特攻大作戦)だな、といって、ジム・ブラウンのことを話しはじめます。

f0147840_1294637.jpg
メグ・ライアンがエンパイア・ステート・ビルディングに駆けつけるが、もう展望デッキは閉まったといわれてしまう。どうしても人に逢わなくていけないのだと懇願すると、「『めぐり逢い』だね?」といわれる。「あの映画をご存知?」とメグ・ライアンがきくと、「女房が好きでね」とこたえたのは笑った。あくまでもchick's movieなのだ!

わたしも、そうだな、泣ける映画っていうのは、メロドラマじゃなくて、戦争映画とかウェスタンとか、そういうのが多いな、と笑いながら同意しました。ストイシズムが極点に達するようなシーンに、男の多くは反応するのではないでしょうか。このへんが、この映画の「メタ」な楽しさで、こいつはメロドラマじゃないの、と眉に唾しながら、最後まで見てしまう理由だと思います。

f0147840_1324654.jpg
展望デッキへのエレヴェーターは老警備員が運転する。この警備員が益田喜頓そっくり!

以上、映画としても悪くない出来で、ご家族で見ても、カップルで見ても、困惑するような場面はないでしょう。まあ、八歳の子どもが父親に、新しい奥さんをもらったらセックスするの? なんていうところで腹の底から笑うには、ひとりで見たほうがいいかもしれませんが!

クリスマス映画というより、冒頭にクリスマスが出てくるだけで、クライマクスはヴァレンタインズ・デイに設定されていますが(当然、中間にはニュー・イヤーズ・イヴのカウント・ダウン・パーティーと、日本でいえば除夜の鐘にあたる、新年の花火のシーンもある)、寒い時期の季節感に添ってつくられたウェルメイドな作品で、クリスマスに見るのもけっこうだろうと思います。

f0147840_1375596.jpg
展望デッキで待ちくたびれる子どもを空撮で捉える。ちょっとしたシーンにもヘリコプターを飛ばせるハリウッド映画はやはりうらやましい。

f0147840_138940.jpg

f0147840_1381760.jpg

◆ 追加ヴァージョン ◆◆
Jingle Bellsについては他の機会にゆずり、ここでは一昨年のSleigh Rideの記事をすこし補足しておきます。

アヴァランシェーズ盤がもっとも好きだというのは変わりませんし、他のヴァージョンに関する評価も、一昨年に書いたことを訂正する必要は感じません。ロネッツ、ヴェンチャーズ、アンディー・ウィリアムズ、リロイ・アンダーソンあたりも楽しめる、という考えも変わっていません。

f0147840_21957.jpg

一昨年にはふれなかったヴァージョンをいくつか見ます。なんといっても素晴らしいのは、またしてもアル・カイオラとリズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムSound Of Christmasに収録されたものです。

f0147840_0115293.jpg

イントロは印象的だし、カイオラにしてはめずらしく、オクターヴ奏法も織り込んで、技のあるところをほんのすこしだけ見せびらかしたプレイぶりも楽しいし、リズ・オルトラーニも、他のトラックより少し前に出るオーケストレーションをしています。コンボならアヴァランシェーズ、オーケストラありならこのアル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤でしょう。

目下、これを収めた編集盤は見あたらないようですが、ちょっと変則的なヴァージョンならCDで聴くことが出来ます。一昨年のクリスマス・スペシャルでは何度も称揚した、キャピトルのUltra Loungeシリーズのクリスマス篇第2集に収録されたヴァージョンです。

f0147840_213718.jpg

どこが変則的かというと、前半はふつうにアル・カイオラ&リズ・オルトラーニのSleigh Rideなのですが、途中でJingle Bellsに化けてしまうのです。これはジミー・マグリフのヴァージョンだそうで、別個に録音したものをあとから編集でつなげてしまったのです。

ただし、ほとんど短縮はしていなくて、ちゃんとエンディングまでたどりつき、そこからすぐにジミー・マグリフのJingle Bellsがはじまってしまうだけなので、それほど強引な処理というわけでもありません。LPとはだいぶマスタリングがちがうし、ステレオ定位も異なるので、わたしは、これはこれでいいと思います。

あと数分まできてしまったので、ここからは電報。無茶苦茶にいいとはいいませんが、ヴェラ・リンのヴァージョンもそこそこ楽しめます。70年代の録音ですが、ヴェラ・リンだから昔の風味でつくってあり、オーケストレーションもわるくありません。

スプートニクス盤は微妙です。ドラムが馬鹿みたいなのがいただけませんが、ギターはそこそこ楽しめます。ほかにもちょっと追加盤があるのですが、このへんでいいでしょう。アル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤はほんとうに素晴らしい出来です。

めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]
めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]


アヴァランシェーズ
Ski Surfin'
Ski Surfin'

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2

リロイ・アンダーソン
Sleigh Ride: The Best of Leroy Anderson
Sleigh Ride: The Best of Leroy Anderson

ヴェンチャーズ
The Ventures' Christmas Album
The Ventures' Christmas Album

Andy Williams
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム

ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ
Christmas Is Always
Christmas Is Always
by songsf4s | 2009-12-02 23:53 | クリスマス・ソング
更新情報 「猫町ぶらり ペレス・プラードのトムキャット・マンボ」と「散歩やせんとて」

FC2ブログのうち、「猫町ぶらり」と「散歩やせんとて」を更新しました。

「猫町ぶらり」のほうは、このところちょっと休んでいた「猫音楽思いつくまま、手あたりしだい」シリーズの第18回、Perez PradoのTomcat Mamboです。

f0147840_032987.jpg

「散歩やせんとて」のほうは、やっとスキャンにとりかかり、「同潤会アパートメント・ハウス」シリーズに突入。今回は同潤会の集合住宅としては最初のものとして、大正のギリギリどん詰まり、15年に竣工した「中ノ郷アパート」(墨田区押上)です。

当家のほうは今夜も準備が間に合いませんでした。つぎに予定している映画を半分ほど見たので、明日には更新できるものと思います。
by songsf4s | 2009-12-01 23:59 | その他
黄金光音堂の更新 エキゾティック・ギターズのHe'll Have to Go

更新情報です。順番からいくと、すでに24時間ほどたっていますが、「散歩やせんとて」を更新しました。「昭和戦前古建築散歩 四段分のきどり 森友通商(日本橋小網町)」。

また、ついさきほど黄金光音堂を更新しました。Q&Aソングス その5 エキゾティック・ギターズのHe'll Have to Go

今日は「散歩やせんとて」で、同潤会アパートの第一弾をやろうと思ったのですが、すでに力尽きて、果たせそうもありません。この半月、ずっと同潤会をやろうと思っているのですが、なにしろ写真点数が多く、本腰を据えないできないため、毎度毎度、写真一点のスキャンですむ、小品シリーズにいってしまいます。まあ、二階建てぐらいの古い建築というのは独特の魅力があるのですが。

肝心の当家は、いつ更新できるか、じつに心細いことになっています。なにしろ、ストックなしで突入しているので、映画を見ないことには話にならず、その肝心の作業がなかなか進まないのだから、書きようがないのです。がんばってはみますが、24時間後は無理、48時間後になるかもしれません。

◆ 求むデータベース・サーチ・メディア・プレイヤー ◆◆
クリスマス・ソングというのはじつにやっかいで、準備の段階で躓いてしまいます。曲数が多いので、検索結果から必要なトラックを拾い出して、プレイヤーにドラッグするだけで一仕事したような気分になってしまうのです。

考えてみると、検索とプレイを連動したメディア・プレイヤーというのがありそうな気がするのですが、どうでしょうか? 必要なのは、HDDサーチの結果をそのままプレイしてくれることです。この二つの作業のあいだに人力を介すのがやりきれないのです。

昔、プレイヤーを捜したとき、データベースをつくるものというのをいくつか見ました。そのときは、重すぎてアンインストールしてしまいましたが、検索ができるなら、その結果をそのままプレイできるのではないでしょうか? クリスマスともなると、重いぐらいのことは我慢、人力でやるよりはずっとマシです。

そういう目的なら、このプレイヤーがいい、というのをご存知だったら、コメント欄にどうぞ。
by songsf4s | 2009-12-01 00:18 | その他