この曲のドラムはハル・ブレインでしょう。であるなら、というので、検索してみたら、Vinyl Highway: Singing as Dick and Dee Deeというディーディー・フェルプスの回想記に、ドラムはハル・ブレインかアール・パーマー、ベースはレイ・ポールマンかキャロル・ケイであると、ちゃんと書かれていました。
ギターだけを取り出せば、アルバムDedicated a Salute to The 5 Royalesにはもっとすぐれたプレイがいくつも入っているので、その点は誤解なきよう。ヴォーカルがあまり好きではないものが多く、ウィンウッドが歌うこのトラックをサンプルに選んだだけです。インスト曲も、クリップに選ばれたものより、いいものがあります。Thinkのほうがよほど盛り上がるのに、なぜあんなだるいブルーズにしたのやら……。
じっさい、この曲は彼らの唯一の主演映画『五人の週末』(英題Catch Us If You Can、米題Having a Wild Weekend)の挿入曲だったようです。『五人の週末』は小学校六年のときに一回見ただけなので、記憶から抜け落ちてしまい、後年、CDで聴いたときは、はじめての曲に感じました。
しかし、63年から66年までのDC5はつねにハイ・レベルのアルバムをつくっていて、OST盤の出来はちょっとしたものです。Catch Us If You Can、Having a Wild Weekend、Whenの三曲が入っているだけで十分に価値がありますが、New Kind of Love、I Said I Was Sorry、Don't You Realiseといった歌ものはいずれも文句なし、さらに、他のアルバムでは一曲ぐらいしか聴けないインストが五曲も入っていて、その面でも好ましいものになっています。
当家で過去に取り上げた曲としては、ボビー・ウォマックのFly Me to the Moonが、アメリカン・サウンド・スタジオで、ジーン・クリスマンがストゥールに坐って録音されたものです。メンバーは記憶していませんが、エルヴィス・プレスリーのIn the GhettoやSuspicious Mindもここで録音されました。
Bobby Womack - Fly Me to the Moon
こういう文脈においてみると、これはこれでなかなか涼しげな音に感じます。
さらに寄り道ですが、先日、エレクトリック・シタールの曲としてCry Like a Babyをとりあげたボックス・トップスもやはりここで録音していました。それで、はたと膝を叩きました。
クラッシュ・シンバルを軽めにヒットするところなんざあ、この人のスタイルなのね、です。キックのタイムもけっこうなものです。Memphis UndergroundもCry Like a Babyも同じころによく聴いていたのですが、さすがに、これは似ているぞ、なんて思いませんでしたねえ。やっぱり年はとっているみるものです。
これも手元に盤がないのですが、リードはアンドルー・ゴールドのダブルだったと思います。ひょっとしたら、すべてのギターがゴールドのプレイだったかもしれません。五本ぐらいでしょうか。ソロだけでなく、裏でちょっと鳴らしているオブリガートなんかも、アンドルー・ゴールドのアレンジャーとしてのセンスがあらわれています。こういう現場監督がいると、プロデューサーは左団扇でしょう。わたしでも務まってしまうにちがいありません。「よきにはからえ」といっていれば、シングル曲がin the canです。
先日、ご紹介したAdd More Musicの「レア・インスト」および「50ギターズ」、さらに上記のオオノさんのブログを合わせると、相当なトラック数になるので、トミーの紹介はそれで十分かもしれません。でもまあ、わたしなりに、好きなトラックもあれば、ちょっと書きたいこともあるので、いろいろダブりはありますが、しばらくは、Remembering Tommy Tedescoシリーズをつづけようと思います。
イントロでハル・ブレインがBe My Babyビートを使っているのが笑えます。セッションによってメンバーはちがいますが、アップライト・ベース=ジミー・ボンド、ピアノ=リオン・ラッセル、パーカッション=アール・パーマー、ギター=トミー・テデスコおよびレイ・ポールマン(および不明のギタリスト)、ダンエレクトロ6弦ベース=ビル・ピットマンといった編成の写真がCDには収録されています。