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カテゴリ:クリスマス・ソング( 56 )
クリスマス映画6B Pocketful of Miracles (映画『ポケット一杯の幸福』より その2)
タイトル
Pocketful of Miracles
アーティスト
OST
ライター
Sammy Cahn, Jimmy Van Heusen
収録アルバム
N/A
リリース年
1961年
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たとえブログでも、好不調、仕上がりの善し悪しは当然あります。前回の記事、『ポケット一杯の幸福』の前篇は、われながら不出来だったと反省しています。急いだからなのですが、急いだというのなら、いつだって残り何分と時計を見ながら書いているので、自分を納得させる弁解にはなりません。

それよりも、一度書いたことをどういうアングルから書き直すかということのほうが問題で、このクリスマス・スペシャル2では、毎度、過去の記事に苦しめられています。一昨年とちがう点は、今回は映画を見直したことと、前回は文字だけだったテーマ曲の二種類のカヴァーのサンプルを提示できたことです。

◆ 豪快なセット ◆◆
どんなものでも、同じものを繰り返し見たり聴いたりすれば、最初のときとはずいぶん見方聴き方が変わるものです。わたしの場合、明白な傾向は、二度目以降、スコアの出来とセットの細部が気になりはじめることです。

『ポケット一杯の幸福』に関してはちょっとおかしな具合になり、「細部」ではなく、エーと、反対語はあるのでしょうかね、「大部」なんていわないでしょうな、ま、とにかく、以前は木を見て森を見ず、画面の端ばかり見ていて、とんでもなく大きなセットを見逃していたことに気づき、呆然としました。以下のシークェンスです。

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船が動いているので以前は気づきませんでしたが、これはセットでしょう。こういう撮影をロケでやるのは大いなるトラブルのもとです。

日本でこれだけのセットを組むのは、予算からいってむずかしいでしょう。ただの板壁とはいいながら、ちゃんと大勢の人が乗れるだけの船腹をつくったうえに、入港らしくするために、全体をゆっくりスライドさせているのだから、ちょっとしたものです。

そもそも、この埠頭の場面が気になったのは、タイトルを見ていて、ニューヨークの町並みがオープン・セットに思えたからです。町並みをつくることにくらべれば、たいていのセットは楽勝だからと思い、ほかに大きなセットはないのかと見ていて、ああ、これもそうか、と思ったのです。

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それにしても、ホテルのファサードや裏口は何回か必要になるとはいえ、どうしても必要というわけではない付近の通りや建物もつくってしまうところが、やはりハリウッドの大監督によるA級映画らしいところです。

◆ あまった40分 ◆◆
しかし、フランク・キャプラはこの『ポケット一杯の幸福』を最後に、二度と映画をつくることはありませんでした。どちらかというと「強いられた引退」だったようです。当然、『ポケット一杯の幸福』も、大セットに見合うほどの興行成績は上げられませんでした。なにがいけなかったのやら。

好き嫌いでいうなら、わたしは『ポケット一杯の幸福』が好きです。テーマ曲も好きだし、リアリズムに毒されていない話のつくりにも、昔のものの香りがたっぷりあって好ましい雰囲気をもっています。でも、意地悪く観察すると、キャプラも年をとって耄碌したのかもしれないと感じます。

なによりも損なのは、自分自身の昔のヒット作を再映画化した点です。どうしてもヴェテランの批評家の目には、若きキャプラの清新な演出の記憶が残っているから、リメイクの評価はじっさいよりも悪くなってしまうでしょう。

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本文とは関係ないのだが、これほどすごい男女のケンカのシーンはほかに見た記憶がない。

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たとえベッドとはいえ、グレン・フォードはホープ・ラングを豪快に投げ飛ばす!

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服がやぶれて見えたクラシックなアンダーウェアがまたけっこう哉。

オリジナルの『一日だけの淑女』と比較していうなら、もっともいけないのは上映時間です。『一日だけの淑女』はいたってノーマルな90分程度、それに対して『ポケット一杯の幸福』は130分、これは長すぎるでしょう。どうしたって、どこかでダレます。

どこでダレたかというと、困ったことに冒頭付近です。オリジナルとリメイクの上映時間を差し引いた40分、これがリメイクの最大の欠陥で、アップル・アニーの娘がニューヨークにやってくる(シノプシスについては一昨年の記事をご覧あれ)という、メイン・ストーリーにたどり着くまでが、むやみに、そしてムダに長いのです。

序盤のサブ・プロット(シカゴの大物との交渉)があとで生きるならいいのですが、本筋に入ると放り出されたも同然になり、エンディングにからんでこないのだから、なんのためにもたもたした展開を我慢したのかと、あとで呆れることになります。こういうことをいうのは失礼きわまりないのですが、最初に見たテレビ放映ヴァージョンのほうが、よほど展開が速くて退屈しませんでした。不要なサブ・プロットを切ってしまったおかげです。

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フランク・キャプラが若いころのように頭が切れていれば、あるいは、セルフ・プロデュースではなく、だれかもののわかったプロデューサーがついていれば、よけいなことに金と時間を使うな、見せるべきものだけを見せろとキャプラを説得できたでしょうに。

◆ 雨の夜ではじまる不思議 ◆◆
気に入らないことは最初の30分に集中しています。タイトルからして首をかしげます。なにかべつの映画とまぎれてしまったのか、わたしは、タイトルかまたはその直後に、雪のちらつく街頭で、デイヴ・ザ・デュード(グレン・フォード)が、アップル・アニー(ベティー・デイヴィス)からリンゴを買うシーンがあったと思いこんでいました。

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ところがタイトルの街頭シーンは雪ではなく雨。なぜ開巻いきなり雨なのか、意味がわかりません。テーマ曲は軽快で明るいのに、あのざんざん降りの氷雨はなんなのでしょうか。雨に濡れた募金のサンタ・クロースの姿なんて、盛り上がるわけがありません。

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雪のちらつく夜に、デイヴ・ザ・デュードがアップル・アニーからリンゴを買う、というのは、わたしの勝手な思いこみ、たんなる記憶ちがいです。でも、なぜそういう記憶違いが起きたかといえば、そのほうがこの物語にふさわしい情景だからです。ざんざん降りの氷雨がまったくこの物語には不似合いだから、初見から再見までの数十年のあいだに、わたしの頭のなかで「正しいシーンが撮影された」のです。

クリスマスに雪が降っているなどというクリシェは、フランク・キャプラの趣味ではなかったのかもしれませんが、だからといって雨を降らせることはないでしょう。雨の夜からはじまる映画は、どう考えてもイヤな予感を抱かせます。いい娯楽映画をつくるには、居直ることも必要です。観客の予測をはずすのは快感を喚ぶ方向だけにかぎるべきで、予測をはずして不快感を与えてはなんの意味もありません。

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最初に見たのがテレビ放映だったので、冒頭の展開がこんなにだるいとは知らず、よくできた映画だと思いこんでいました。見返しても、最初の30分さえ切り抜ければ、あとは楽しめる出来だと感じます。ダレ場はどこにあっても困りますが、とりわけ冒頭でダレたら客は投げます。それくらいのことは、昔のキャプラならちゃんと計算していたでしょうにね。

◆ 俳優たち ◆◆
Look a little on the sunny sideといきましょう。リメイクの好ましい点をあげておきます。

まず、代貸役のピーター・フォークが、オリジナル版の代貸より楽しませてくれます。『刑事コロンボ』を見たあとで、若いころのピーター・フォークを見ると、なんだか落ち着かない思いをしますが、『ポケット一杯の幸福』は据わりのいい役で、楽しんで見ることができます。

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一昨年も書きましたが、これがデビュー作のアン=マーグレットが非常に魅力的です。一曲、アカペラで歌うシーンもあって、この歌声がまたけっこうなものです。

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アップル・アニーもリメイク版のベティー・デイヴィスのほうがいいと思います。シンデレラ変身シークェンスがいいのです。リンゴ売りの老婆から、みごとに貴婦人に変身します。オリジナルでも、リメイクでも、変身したアニーを見て、周囲が呆然とするのですが、リメイクのほうがリアリティーがあり、判事たちの褒めそやす言葉がお世辞に聞こえません。

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執事の役は、どちらの解釈が好ましいかという点についてはお好みしだいでしょう。オリジナルのほうがよりリアルなイギリス風謹厳実直バトラーです。リメイクはアメリカ風の軽い執事で、台詞が増えています。わたしはこの執事が「自分の意思でこの役割を引き受けた」というところと、「だれだってシンデレラ物語を愛しているものですよ」というところでは、思わず笑ってしまいました。

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『ポケット一杯の幸福』が、『一日だけの淑女』ほど世評が高くないのは、それだけの十分な理由があってのことだと認めたうえで、あえていいます。冒頭の30分さえなければ、わたしはリメイクのほうが好きです。


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ハーパーズ Anything Goes
エニシング・ゴーズ
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by songsf4s | 2009-12-16 23:55 | クリスマス・ソング
クリスマス映画5B Silver Bells (映画『腰抜けペテン師』The Lemon Drop Kidより その2)
タイトル
Silver Bells
アーティスト
Marilyn Maxwell & Bob Hope
ライター
Jay Livingston, Ray Evans
収録アルバム
N/A
リリース年
1951年
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White Christmasをすべて聴いたおかげで、時間的余裕がゼロになり、きわどいところでデッドラインを切り抜けているため、書くはずだったことを忘れてしまったり、貼り付けるつもりで加工した写真が未使用のままフォルダーにたくさん残っていたり、もうさんざんのクリスマス・スペシャル第2弾です。まあ、一昨年の第1弾はもっと難行苦行の連続でしたが。

『レモン・ドロップ・キッド』から、書くはずだったこと、写真を貼り付けるはずだったもの、というのをちょっとだけ片づけておきます。前回、Silver Bellsが歌われるシークェンスのクリップを貼りつけておきましたが、あれは、『レモン・ドロップ・キッド』という映画のなかで、もっとも楽しめる箇所です。それはひとつにはディテールに富んでいるからです。

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この10セントのヤドリギ(mistletoe)の「お飾り」売りにはハッとしました。なんといいますかね、人種の壁、文化の壁というのが厳然と存在するいっぽう、人間のやることにはやはりパターンというのがある、という証拠を突きつけられた気分です。つまり、わたしはこれを見て、年末の街頭で売られている正月のお飾りを思いだしたのです。

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この焼き栗(roasted chestnuts)売りも、アメリカ人にとっては典型的なクリスマス風物のひとつなのでしょう。だれだって、The Christmas Songのファースト・ライン、Chestnuts roastin' on an open fireを思い起こすショットです。

◆ たんなる確認 ◆◆
さて、映画の紹介はすんだから、つぎは挿入曲のほうだと、一昨年のSilver Bellsの記事を補訂するべく、大量にSilver Bellsを聴いてみましたが、今回もやはり、一昨年の記事で書くべきことは書いたことを確認しただけでした。

ブラインドで聴いて、最初の1、2小節ですぐれたサウンド・テクスチャーだと判断できるのは、ヘンリー・マンシーニ、パーシー・フェイス、アンディー・ウィリアムズ、ダニー&マリー・オズモンドのヴァージョンです。ほかに、チェット・アトキンズ、ブッカー・T&ザ・MG's、ヴェンチャーズ、チップマンクスあたりも楽しいヴァージョンです。でも、これはみな一昨年の記事の確認にすぎません。

f0147840_2353853.jpgディーン・マーティンのSilver Bellsはすくなくとも2種類あるようです。どちらも悪くないので、どのエディションにぶつかっても不運ということはありません。しいていうと、何度もいろいろな形でリパッケージされている、Crooners at Christmasというオムニバスに収録されているスタジオ・ライヴは、クラリネットの間奏が楽しめます。それ以外のノーマルなスタジオ録音も、テイクは同じですが、ミックス、ステレオ定位はまったく異なるものが出回っています。

◆ やっぱりアル・カイオラ ◆◆
なにか付け加えるヴァージョンはないかと思っていろいろ聴いたのですが、一昨年言及しなかったSilver Bellsで、もっとも楽しめるのは、やはりアル・カイオラとリズ・オルトラーニのヴァージョンでした。

当然、サンプルをアップするに値するのですが、アル・カイオラはまったく人気がないらしく、前回のスレイ・ライドのサンプルはゼロ・ダウンロードという過去最低記録を達成したので、この曲はやめておきます。box.netのアカウントもそろそろ残りバイト数が気になってきたので、アル・カイオラとリズ・オルトラーニのスレイ・ライドは不評と判断し、記事中のリンクごと削除しました。

わたしが史上ベスト3に入れるクリスマス・アルバムは、聴くどころか、名前を見ただけで敬遠ということがわかって、大いなる苦笑をしました。すばらしいアルバムなんですがねえ。タダでもだれも聴きたくないというのだから、CD化は夢のまた夢。

ということで、ほかに付け加えるべきヴァージョンはないので、アル・カイオラのクリスマス・アルバムは傑作だ、Silver Bellsも上々の出来である、とだけいって、本日はピリオド。

MG's CD
In the Christmas Spirit
In the Christmas Spirit

MG's LP
In the Christmas Spirit [12 inch Analog]
In the Christmas Spirit [12 inch Analog]

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas
Merry Mancini Christmas

パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith
Christmas Is... Percy Faith

ヴェンチャーズ
The Ventures' Christmas Album
The Ventures' Christmas Album

ディノ
My Kind of Christmas
My Kind of Christmas

オズモンズ(ダニー&マリー・オズモンド)
Osmond Family Christmas
Osmond Family Christmas
by songsf4s | 2009-12-12 23:54 | クリスマス・ソング
クリスマス映画5A Silver Bells (映画『腰抜けペテン師』The Lemon Drop Kidより その1)
タイトル
Silver Bells
アーティスト
Marilyn Maxwell & Bob Hope
ライター
Jay Livingston, Ray Evans
収録アルバム
N/A
リリース年
1951年
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一昨年のクリスマス・スペシャルのSilver Bellsの記事で、この曲はデイモン・ラニアンの「レモン・ドロップ・キッド」を原作とした、映画『腰抜けペテン師』の挿入曲として書かれた、ということを見てきたように講釈しました。

そのとき、こういう風に現物を確認しないまま、だれかの書いたことを引き写すのはイヤだなあと思ったので、今回は雪辱を期してみました。

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◆ クリスマスの街頭 ◆◆
一昨年の記事で、シノプシスを読んだかぎりでは、ラニアンの短編「レモン・ドロップ・キッド」と、ボブ・ホープ主演の映画『レモン・ドロップ・キッド』(1951年)とのあいだには、ほとんど連絡がないと書きました。じっさいに映画を見ても、ラニアンならこんな話はつくらないぜ、という主人公の性格設定であり、話の展開でした。

そういう話はあとにして、映画のなかでSilver Bellsが流れるシーンをとりあえずご覧あれ。一昨年の記事で推測したとおりのシークェンスで流れました。つまり、それなりに絵に添った歌詞になっているということです。

Silver Bells街頭シークェンス


なんともいえずノスタルジックに感じられるシークェンスで、こういう絵に出合えるのが、大昔の映画を見る大きな楽しみのひとつです。たんなる絵と音としてなら、わたしはこういうシークェンスを見ていれば満足してしまいます。問題は、映画には物語という次元もあることです。

◆ リメイクゆえの逸脱 ◆◆
f0147840_071530.jpg一昨年はわかっていなかったのですが、デイモン・ラニアンの「レモン・ドロップ・キッド」は、1934年にすでに映画化されているそうです。今回はそちらのほうのシノプシスを読みましたが、なんだ、ラニアンの「レモン・ドロップ・キッド」そのままの話じゃないかと思いました。

ということで、1951年のリメイク版が変な話になった責任は、最初の映画化にはないことは明らかです。いや、すでにストレートな映画化があったので、すこしひねりを入れようとして、大失敗したというパターンかもしれません。リメイクはつねにむずかしいのです。

ボブ・ホープ扮するレモン・ドロップ・キッドは競馬の予想屋です。日本の競馬場の外にいて、大げさな口上つきで予想紙を売っているようなタイプの予想屋とはちょっとちがいます。個別にカモを引っかけては、自分がいかにも事情に通じているように思わせ、それぞれの客にちがう馬に賭けさせるのです。

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「ふむふむ、ほう、そいつはすごいな」馬から直接情報をもらっているというデモンストレーション! 耳の穴にレモン・ドロップが押し込んであり、馬はそれをとろうとして、キッドの耳に口を寄せる。たんなる偶然だが、Silver Bellsを書いたレイ・エヴァンズとジェイ・リヴィングストンのコンビは、後年、馬がしゃべるテレビ・ドラマ「ミスター・エド」のテーマ曲を書いた。

たとえば、自分は獣医で、これから出走する馬の状態はよく知っているのだけれど、医者は「患者」(馬だろうが!)のことについては守秘義務があるから明かすことはできない、とかなんとかもったいぶったことをいったあげく、つぎのレースは〈アイアン・バー〉のものだ、などと吹き込みます。鉄の棒だなんて名前の馬が走るかよ、と思って見ていると、これが一着!

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「いや、〈患者〉のことはしゃべれないから」獣医のふり。

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「弟はジョッキーでねとペテン師いい」。よくある「家族親戚」パターン。

そういう調子で、つぎつぎとちがう馬を売り込んでいけば、だれかが当たります。当たった相手からは謝礼をもらい、はずれた客には二度と顔を合わせないようにする、という戦術です。

◆ 詐欺が不得意な詐欺師 ◆◆
一昨年はこの部分をまちがって書いてしまいました。わたしが読んだシノプシスがまちがっていたのか、急いでいたために、記憶していたラニアンの設定で書いてしまったのか、どちらかです。

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客にぜったい勝てない馬に賭けさせ、その賭金を預かって、馬券を買ったようなフリをして買わずに丸ごと懐に入れてしまう、というやり口は、デイモン・ラニアンの「レモン・ドロップ・キッド」のほうで、映画はちがうのです。ラニアンの原作では、ぜったいに勝てないはずのよぼよぼ馬が勝ってしまい、レモン・ドロップ・キッドが窮地に追い込まれる、という導入部でした。

1951年のリメイク版映画では、暗黒街の顔役の娘を、そうとは知らずにカモにしてしまい、〈ライトニング〉という名前だけは走りそうな馬に賭けさせます。これが〈アイアン・バー〉とは月とスッポン、スタートから嫌がり、案の定、ドンケツになって、2万ドルの損をさせてしまいます。これであとは、一昨年の記事のシノプシスに話がつながります。

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馬券売り場の前で千ドル札をひらひらさせている、という設定からして理解不能。そんなことをして無事ですむほどアメリカの競馬場は平和なのだろうか?

わたしは、この設定からしてダメだと思いました。暗黒街の顔役の娘は、このレースでもっとも大金をもったカモです。そういうカモにはできるだけ確度の高い情報を教えるのが論理的です。賭金が大きいほど報酬も大きくなるのが理屈です。最上の客にもっとも勝てそうもない馬を割り当てるようでは、一日もこの業界で生きていけないはずです。

映画はそういう観客の不満には頓着せず、どんどん先に進んでしまいます。暗黒街の顔役に脅されたキッドは、クリスマスまでに2万ドルを返すと約束し、〈外科医のサム〉という「人からものを取り出すことの専門家」に鰺のように「開かれる」のをなんとか免れます。

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盗んだダイアモンドを飲み込んだという男を、これから〈外科医のサム〉が「開く」のだといって、キッドにちょっとのぞき見させる。

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隣室からサムがやってきて、ダイアモンドをボスにわたす。レモン・ドロップ・キッドは震え上がるが、じつは、飲み込んだというのはウソで、靴からとりだしただけ。ここは笑えるシークェンス。

金を返すために、キッドはニューヨークに戻り、クリスマスのインチキ募金で金を稼ぐことを思いつきますが、市の許可証をもっていなかったために警察につかまってしまいます。

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窮余の一策、キッドは困っている老婦人のための施設をでっちあげ(キッドを脅している顔役が所有するカジノを転用する)、そのための寄付を募るといってライセンスを得ます。

◆ キャラクター設定の混乱 ◆◆
このあと、べつの悪党がキッドの金と老婦人たちを横取りし、それを取り戻すために奮闘するという展開になりますが、なんだかギクシャクした話の運びでした。

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元はカジノの急造老人ホーム、プール・テーブルをベッドがわりする。ラシャが傷んだらボールの転がり方が狂うじゃないか!

なによりも、レモン・ドロップ・キッドのキャラクターが、いい奴なんだか、悪い奴なんだかはっきりせず、大団円にいたっても、めでたしめでたし、にならないのが困りものです。考えの足りないケチな詐欺師が詐欺をやりそこない(つまり、考えの足りない下手くそなシナリオ・ライターが人物設定とプロットを混乱させ)、苦しまぎれと運で、うっかりまちがえてハッピーエンドになってしまっただけです。

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木村威夫の『映画美術』を読んで以来、暖炉のサイズに注目しているが、このカジノ兼老人ホームのマントルピースは、これまでに見たもので最大。天井まで届いているので、上にものを飾れない! じつは、警察の手入れに備えて、プール・テーブルなどを壁の向こうに収容するために、大きくつくってある。

最後に官憲の力を借りるなら、はじめからキッドを善人(いやまあ、詐欺師だから、善人はないが、デイモン・ラニアンの登場人物はみな「愛すべき悪党」なのだ。ラニアンの話を映画化するなら、「人好きのする悪人」を描く力量が必要不可欠)とするべきだし、あくまでもピカロとしたいなら、最後も警官などの力を借りずに、独力で敵対する悪党の向こうずねをかっぱらう、という話にするべきでした。詐欺師が警官と手を組むというのは、警察の腐敗への皮肉だったのでしょうかね?

はてさて、映画を見て、シノプシスを書くのが精一杯、ずらりと並べたSilver Bellsを聴くところまではたどり着けませんでした。次回、White Christmasの半分ほど、たったの39種類しかない(!)Silver Bellsの各ヴァージョンを検討し、一昨年の記事を補訂します。三月ウサギじゃありませんが、急がないとクリスマスはすぐそこ、ろくに映画を見ないうちに終わってしまいそうです!

以下はアマゾン・リンク(テキストのみがリンクで、画像はリンクされていないものもある)

Damon Runyon "Little Miss Marker"
ブロードウェイの天使 (新潮文庫)
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『リトル・ミス・マーカー』もシャーリー・テンプル主演で映画化されている。

Damon Runyon "Broadway Incident"
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ブロードウェイの出来事 (ブロードウェイ物語)

デイモン・ラニアン短編集『ガイズ・アンド・ドールズ』
Guys and Dolls: The Stories of Damon Runyon
Guys and Dolls: The Stories of Damon Runyon
日本語で読むのはかなりきびしい作家で、最後はオリジナルで読もうという結論に到達するかもしれない。

『レモン・ドロップ・キッド』DVD(米盤、日本語字幕なし)
The Lemon Drop Kid [DVD] [Import]
The Lemon Drop Kid [DVD] [Import]
リージョン・コード無視DVDプレイヤーないしはリージョン・コード解除ソフトが必要になる可能性が高い。
by songsf4s | 2009-12-11 23:17 | クリスマス・ソング
クリスマス映画4C White Christmas by Bing Crosby(映画『ホワイト・クリスマス』より その3)
タイトル
White Christmas
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1954年
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一昨日の夕刊に、今年、N響の指揮者になったという、アンドレ・プレヴィンのインタヴューが掲載されていました。いまや伝統音楽の世界に戻っているようなので、記事の中身はわたしには関係ありませんでしたが、プレヴィンは八十歳になったそうで、それでちょっと思ったことがありました。

f0147840_2334115.jpg八十というのは、いわゆるレッキング・クルーの中核と同じ世代だということです。1929年生まれ、同い年のハル・ブレインと仕事をする機会はめったになかったかもしれませんが、映画音楽を山ほどやったトミー・テデスコ(1930年生まれ)とは何度も顔を合わせたでしょう。キャロル・ケイも同様です。

すこし年上になるアール・パーマーとはどうでしょうか。ハル・ブレインよりは可能性がありそうです。しかし、アンドレ・プレヴィンがもっとも頻繁に撮影所で顔を合わせたドラマーは、ポップ系のプレイヤーではなく、おそらくシェリー・マンでしょう。それから、バディー・リッチのヴィデオを探したときに、アンドレ・プレヴィンがピアノ・ストゥールに坐っているクリップがあったと記憶していますが、リッチは撮影所とはあまり縁がなかったのではないでしょうか。

わたしが集めている盤が録音された時代のアンドレ・プレヴィンは、ピアニスト、作曲家、アレンジャーであって、指揮といわれてもピンと来ません。セッションではアレンジャーがコンダクトすることになっているので、そういう意味での指揮は何度もしたでしょうが、その後、純伝統音楽のほうのコンダクターになったというのは、へえ、でした。

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まあ、そんなことも知らなかったくらいだから、わたしは「角が暗い」(と落語に明るいところを示してバランスをとった。落語知らずには、このフレーズの意味はわからないので、考えないこと)のです。伝統音楽は守備範囲外、わたしの関心はハリウッドです。いや、映画の話ではなく、60年代ポップ・クラシックから、ウェスト・コースト・ジャズ、ラウンジ/エキゾティカ/ポップ・オーケストラ、そして映画スコアをも包含する広い意味での「ハリウッド音楽」ということです。

わたしはアンドレ・プレヴィンのことを「伝統音楽出身の複合ハリウッド音楽家」とみなしていました。つまり、純粋な伝統音楽の世界とはすでに縁が切れていると思っていたのです。ハリウッドに関係したら、お芸術もイワシの頭もあったものじゃありませんからね。歌がうたえたら、第二のバディー・グレコになったのではないか、ぐらいに思っていました。

そういう人がN響の指揮者かあ、と夕刊を読みながらニヤニヤしてしまいました。やはり、時代は変わったのでしょう。ハリウッド映画界のきわめてアクティヴなプレイヤーだった人が、お芸術世界で爪弾きにされないなんて、昔だったら、断じて考えられません。

プレヴィンがどれほどアクティヴな撮影所のメンバーだったかを示す事実があります。Hollywood Rhapsodyという本によると、映画のなかで俳優のかわりに「ピアノを弾く手」として「出演」した回数で、アンドレ・プレヴィンは押しも押されもせぬナンバー・ワンなのだそうです。撮影所というのは、じつにさまざま人間を必要とするものです!

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◆ オーケストラもの1 フィーリクス・スラトキン ◆◆
さて、White Christmasの増補改訂をつづけます。

オーケストラものとしてはまず、一昨年のWhite Christmasの記事を書いたときにはまだ聴いていなかった、フィーリクス・スラトキンのヴァージョンをあげなければなりません。たまたま、フィーリクス・スラトキンも、夫人のエリナーともども、アンドレ・プレヴィンと同じく、ハリウッド映画界のきわめてアクティヴなメンバーでした。

フィーリクスとエリナーは映画とポップ・ミュージックの世界で働いたために(何度も書いているように、フィーリクス・スラトキンは20世紀フォックス音楽部およびフランク・シナトラ・セッションのコンサート・マスターだった)、伝統音楽の世界での評価は低いそうですが、そういう固定観念が昔は当然だったので、べつに異とするようなことではありません。アンドレ・プレヴィンが返り咲いたことのほうが意外です。まあ、スラトキン家は、息子が(ハリウッドや流行歌手とは無縁なだけでなく)純伝統音楽世界で有名になったから、バランスはとれたことになります。肝っ玉母さん(とわたしは見ている)のエリナー・スラトキンはまだ存命なのでしょうかね。

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さて、当家ではフィーリクス・スラトキンのアルバムをけなしたことはなく、このWhite Christmasを収録したクリスマス・アルバム、Seasons Greetingsも、Fantastic Percussionほどすごくはありませんが、ストリングスのやわらかさと厚味はやはり楽しめます(オオノさん、このLPのデータをお持ちでしたら、乞ご助力)。

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◆ オーケストラもの2 エスクィヴァル ◆◆
エスクィヴァル盤White Christmasは、一昨年の記事でも面白いと書いていますが、ちょとほめ方が足りなかったように感じるので、念押しで、これは聴くに値する、と繰り返しておきます。アブノーマルなアレンジをして、楽しめるものに仕上げてくる人には、格別の敬意を表するべきだと感じました。そこらに一山いくらで転がっている「才能」ではありません。

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結果としてできあがった音は遠くかけ離れていますが、エスクィヴァルは、アティテュードにおいてゴードン・ジェンキンズに似ています。ヴァースごとに、いや、数小節ごとに、じつに細かくアレンジを変えていくのです。ハンク・マーヴィンがヴァースごとにちがう弾き方をするといったレベルの話ではなく、装飾音を楽器もろともどんどん変化させながらエンディングに突き進んでいくのです。

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ゴードン・ジェンキンズはさまざまな小技をバロック大伽藍的にちりばめたアレンジをしますが(「クリスマス・トゥリー・アレンジ」と名づけたくなる!)、似ているとはいいながら、やはりエスクィヴァルは特殊かもしれません。エスクィヴァルの場合、数小節でどんどんとサウンドの相貌、音のテクスチャーを変化させていくのです。ゴードン・ジェンキンズは相貌まで変化させたりはしません。そこに両者が生きている世界の違いがあるといっていいでしょう。歌伴か、純粋なオーケストラ音楽か、という違いです。

どうであれ、聴けば聴くほど、エスクィヴァルの盤は楽しさが増していきます。

◆ ギターもの アル・カイオラ、スプートニクス ◆◆
アル・カイオラ&リズ・オルトラーニのThe Sound Of Christmasは、ハズレ曲がないすばらしいアルバムで、そのなかでは、White Christmasは思わずニコニコするほどではなく、相対的に出来のよくないほうです。でも、このLPのコンテクストから外に持ち出し、よそのヴァージョンと並べると、じつはなかなか魅力的な仕上がりなのだと気づきます。

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White Christmasがアルバムのなかではくすんで聞こえるのは、ゆるめのテンポで静かにやっているためなのでしょう。スロウで静かなぶん、アル・カイオラのピッキングの美しさが際だつというサイド・イフェクトがあります。アル・カイオラの場合、極論するなら、ピッキングの精確さと間の取り方がすべてなのです。ヘナチョコ弦でタッピングなんかやっていたら、ぜったいにこの境地にはたどり着けないでしょう。ヘヴィー・ゲージやレギュラー・ゲージが育てたタイプのギタリストです。

f0147840_0165782.jpgこれはたぶん一昨年は言及しなかったと思うのですが、スプートニクスのWhite Christmasは悪くないじゃないかと思い直しました。Add More Musicの「レア・インスト」ページで試聴することができます。

Add More MusicでスプートニクスのWhite Christmasを聴く

バックグラウンドで流していて、スプートニクスのヴァージョンがはじまるたびに、「あれ、エキゾティック・ギターズはWhite Christmasをやっていたんだっけ?」と思ってしまいました。似ていると思いませんか>キムラさん。リードのサウンドがアル・ケイシーみたいです。

◆ ホワイト・ドゥーワップ・クリスマス ◆◆
これを「ギターもの」といってはまずいのでしょうが、フォー・シーズンズの母体となったコーラス・グループ、フォー・ラヴァーズのWhite Christmasは、歌よりギターのほうが目立ちます。というか、派手に暴れています。

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サンプル The Four Lovers "White Christmas"

というように、かなり雑なピッキングですが、それがかえって魅力的に感じられるプレイです。とんでもない荒れ球で、配球もへったくれもあったものではなく、どこへ行くんだろうと思っているうちに三振していた、という感じ。

しかし、このアレンジ、これでいいんでしょうかね。いってみれば、マーセルズのBlue Moonの延長線上に生まれたアレンジなのでしょうが、やりすぎと感じます。ここまでいったら、たんに素っ頓狂なだけ。跳ねっ返りのギターがまぐれで救ったヴァージョンです。

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The Four Lovers

◆ 懐かしき宇宙時代 ◆◆
もうひとつ、これは分類するならコーラス・グループなのでしょうが、そう呼ぶのはちょっとためらうウォルター・シューマン(アーティスト名としては「ザ・ヴォイシーズ・オヴ・ウォルター・シューマン」)のヴァージョンも、一般的ではないものの、「またかよ」の凡庸アレンジではありません。

いや、アレンジというより、声を加工していて、それが耳に引っかかるのです。しかし、なにをやったのかは明確にはわかりません。後年のフェイズ・シフターのような効果を試行錯誤でつくったのでしょう。ちょっとヴォコーダー風でもあります。

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50年代というのは、こういうエレクトロニックな音楽が、シリアス、ポピュラーの区別なく盛った時代だったのだなあ、と後追いの人間は思います。スペース・エイジ・バチュラー・パッドの世界です。エスクィヴァルはもちろん、レス・バクスターですらこの流れのなかにあり、そして最後に、脇道から出てきたジョー・ミークがするすると先行するアーティストたちを追い抜いて、Telstarが生まれる、といった印象です。

入手がむずかしいので最後におきますが、ルース・ウェルカムのツィターによるWhite Christmas(アルバムChristmas in Zitherlandに収録)は、他のWhite Christmasとは隔絶したサウンド・テクスチャーをもっていて、おおいに楽しめます。80種類のWhite Christmasをドーンと聴いたら、最後はこのヴァージョンで締めるのがよろしいようです。酔って帰ってお茶漬けを軽く一杯、という気分哉。嗚呼、White Christmasの悪酔いキツい。

White Christmas Special Edition DVD
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]
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ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
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フィル・スペクター クリスマス・ギフト
A Christmas Gift for You from Phil Spector
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ドリフターズ二枚組ベスト
The Definitive Soul Collection
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ディーン・マーティン ウィンター・ロマンス
A Winter Romance
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チップマンクスvol.1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1

ジングル・キャッツ
Here Comes Santa Claws
Here Comes Santa Claws

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas
Merry Mancini Christmas

パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith
Christmas Is... Percy Faith

オーティス・レディング
The Otis Redding Story
The Otis Redding Story

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ3(ペギー・リーのWhite Christmasを収録)
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 3
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フォー・ラヴァーズ
THE FOUR LOVERS
THE FOUR LOVERS

ジャッキー・グリーソン
Merry Christmas
Merry Christmas

ローレンス・ウェルク
22 Merry Christmas Favorites
22 Merry Christmas Favorites

エスクィヴァル
Merry Christmas from the Space-Age Bachelor Pad
Merry Christmas from the Space-Age Bachelor Pad
by songsf4s | 2009-12-10 23:58 | クリスマス・ソング
クリスマス映画4B White Christmas by Bing Crosby(『ホワイト・クリスマス』より その2)
タイトル
White Christmas
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn/White Christmas Original Soundtrack
リリース年
1954年
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いやはや、こんなに困惑したことは近ごろありませんでした。前回の記事で一昨年のWhite Christmasの記事その1その2をいざ乗り越えん、なんて書いてしまいましたが、言うは易く行うは難しなのです。

他人とはちがうことをいうのなら、これほどたやすいことはないのですが、相手は自分自身ですからね。考えることがよく似ているのですよ。瓜二つの双子、いまのわたしが思うことはほとんどすべて、一昨年のわたしが書き尽くしていました。

ということで、二年前の自分自身と百パーセント意見が合った点について確認しておきます。

ビング・クロスビーは別格として、聴くべきWhite Christmasは、ダーリーン・ラヴ=フィル・スペクター盤が大筆頭であり、以下、ドリフターズ、ヘンリー・マンシーニ、チェット・アトキンズ(2ヴァージョンの両方)、パーシー・フェイス、アンドレ・コステラネッツ、ヴェンチャーズ、アンディー・ウィリアムズ、そして大真打ちのチップマンクスです。

チップマンクスとデイヴィッド・セヴィル White Christmas


エラ・フィッツジェラルドのような、偉そうにふんぞり返って楽曲をレイプしまくる不快きわまりない女ジャズ・シンガーたちへの嫌がらせとして、なんならジングル・キャッツも入れてもいいのですが、公平にいって、猫たちのクリスマス・ソングを聴くなら、ほかの曲のほうがいいと思います。

いや、エラ・フィッツジェラルドにくらべれば、もちろん、ジングル・キャッツのほうが数等マシです。わたしは、楽曲より自分のほうが偉いと思っているシンガーは大嫌いです。楽曲に敬意をもつことが歌い手としての第一歩です。

エラよりずっと楽しいジングル・キャッツのWhite Christmas(ただし、犬のバックコーラスは不要! でも、エンディングは秀逸)


さて、以上の確認をしたうえで、ここにすこし上乗せをしていこうと思います。でもねえ、86種類並べて聴いても、やっぱりフィル・スペクターのWhite Christmasが流れた瞬間、ジンときます。この世に存在可能なクリスマス・アルバムは、今後一枚に限定されるというなら、A Christmas Gift for You from Phil Spector以外に残すべき盤は考えられません。

フィル・スペクター=ダーリーン・ラヴ=ハル・ブレイン White Christmas


◆ 「必要なことはオーティスがみな教えてくれた」 ◆◆
自分が過去に書いた記事をにらんでいたら、己が姿にギョッとなって、あぶらがタラーリ、タラーリ、二六、四六はどこがちがう、てえんで、筑波の山でとれた蟇蛙状態になってしまいましたが、かすかに曙光が見えたのは、ディーン・マーティン盤にたどりついたときです。



ファースト・ラインのofでのピッチのはずし方が天才的。一昨年の記事でも、ディノのWhite Christmasはファンなら満足できる仕上がりであると、ちゃんと書いておきました。でも、今回、聴き直して、ビリングを大幅に上げようと決めました。フィル・スペクター、ドリフターズ、ヘンリー・マンシーニ、チップマンクス、そのつぎぐらいにディノを置きたいですね。むろん、クルーナー系統のシンガーとしては、ディーン・マーティン盤はナンバーワンだと思います。

つぎに、順位を上げたくなったのはオーティス・レディング盤です。わたしはオーティス・レディング・ファンではありません。総じて涼しい歌い方を好むので、ブラック・シンガーで好きなのは、サム・クック、スモーキー・ロビンソン、エアロン・ネヴィルといったところが代表的で、オーティスがこの系統ではないのはおわかりでしょう。



しかし、久しぶりにオーティス・レディング盤White Christmasを聴いたら、ホーン・ラインが心地よく感じられました。いや、最初のほうはどうということはないのですが、May your daysのところからが面白くて(この曲の聴かせどころはここだということは一昨年も書いた)、なるほどねー、そういうラインで行くか、でした。シンプルなのですが、非常に好ましいラインで、ちょっとInto the Musicのころのヴァン・モリソンのホーン・ラインを連想します。

以前も書きましたが、スティーヴ・クロッパーによると、オーティス・レディングは自分でホーン・アレンジをやったそうです。その「アレンジ」が、ブライアン・ウィルソンみたいなもので、ひとりひとりに、おまえはこう吹け、と口笛でラインを吹いてみせるのだそうです。最後に全員いっしょにやると、ちゃんと合っていたそうで、コーラス・グループのヘッド・アレンジと同じようなやり方だったのです。

スティーヴ・クロッパーは、ホーン・アレンジに関するかぎり、必要なことはすべてオーティスに教わった、といっていました。ビリー・メイ、ネルソン・リドル、ショーティー・ロジャーズ、ニール・ヘフティーといった、ハリウッド流のゴージャスなホーン・アレンジばかり聴いていると、その対極にあるオーティスのシンプルなホーン・ラインも、野趣あふれる好ましい味に感じられます。

◆ ここではないどこか、あなたではないだれか ◆◆
フランク・シナトラのWhite Christmasも、二年前より好ましく感じられるようになりました。とりわけ、コロンビア時代の録音は声の若さがおおいに魅力的です。シナトラはWhite Christmasをコロンビア時代に二度、そしてキャピトル時代に一度録音したようですが、コロンビアの二種は両方ともけっこうだと思います。アレンジとコンダクトは、当然ながら両方ともアクスル・ストーダール。



ペギー・リーのヴァージョンも悪くありません。しかし、こういうアレンジ、こういうレンディションだと、どうしてもジュリー・ロンドンのことを考えてしまいます。ジュリー・ロンドンの代用品として聴いてしまうのです。

ジュリー・ロンドンには、I'd Like You for Christmasというオーセンティックなクリスマス・ソングがありますが、どういうわけか、クリスマス・アルバムはつくっていません。クリスマスらしいにぎやかで華やかな曲には不向きな声とスタイルだから、と考えたのでしょうか。ジュリー・ロンドンのものなら、スロウ・バラッドばかりのクリスマス・アルバムでかまわなかったのに、残念なことです。

なにしろ、聴くだけでたいへんで、書くまでは手がまわらず、オーケストラやインストについても書きかけたのですが、最後までたどり着けなかったので、そのあたりは無理にまとめず、明日以降に持ち越しとさせていただきます。

White Christmas Special Edition DVD
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]
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ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
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フィル・スペクター クリスマス・ギフト
A Christmas Gift for You from Phil Spector
A Christmas Gift for You from Phil Spector

ドリフターズ二枚組ベスト
The Definitive Soul Collection
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ディーン・マーティン ウィンター・ロマンス
A Winter Romance
A Winter Romance

チップマンクスvol.1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1

ジングル・キャッツ
Here Comes Santa Claws
Here Comes Santa Claws

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas
Merry Mancini Christmas

パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith
Christmas Is... Percy Faith

オーティス・レディング
The Otis Redding Story
The Otis Redding Story

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ3(ペギー・リーのWhite Christmasを収録)
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 3
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 3
by songsf4s | 2009-12-08 23:52 | クリスマス・ソング
クリスマス映画4A White Christmas by Bing Crosby(映画『ホワイト・クリスマス』より その1)
タイトル
White Christmas
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
White Christmas Original Soundtrack
リリース年
1954年
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なんだかなあ、と思いながら、本日のクリスマス映画は『ホワイト・クリスマス』です。

なぜ「なんだかなあ」なのかというと、ひとつは、『スイング・ホテル』を取り上げた以上、その姉妹篇である『ホワイト・クリスマス』を無視するわけにもいかないだろうと、他動的理由で見たということです。

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もうひとつ、楽曲のほうのWhite Christmasには、人生をはかなんでしまうほど無数のヴァージョンがあり、とうていすべてを聴くことができないのは、わたしとしては癪なのです!

予告篇


◆ 一面銀世界のはずが…… ◆◆
ともあれ、梗概をできるだけ手早く述べます。

『ホワイト・クリスマス』は『スイング・ホテル』(『ホリデイ・イン』)の続篇ではないものの、同趣向の企画として、当初は『ホリデイ・イン』と同じく、ビング・クロスビーとフレッド・アステアという配役を予定していたようです。しかし、アステアが断ったために、その役はダニー・ケイがやることになりました。

『ホワイト・クリスマス』もまたバックステージものです。二人の主役は第二次大戦中に同じ部隊に配属され、ダニー・ケイがビング・クロスビーの命を救い、すでにソング・アンド・ダンス・マンとして名をなしていたビングが、戦後、ダニー・ケイとデュオを組み、おおいに売れる――ここまでが導入部です。

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ビングのところにかつての戦友から手紙(いや、電報だったか。もう忘れてしまった!)が届き、フロリダで舞台に出ている妹たちの歌とダンスを見てくれないかと頼まれて、二人はそのクラブに行き、戦友の妹たちのパフォーマンスを見ます。

Sisters


ここでビング・クロスビーは姉のローズマリー・クルーニーを、ダニー・ケイが妹のヴェラ・エレンを好きになります。ダニー・ケイはひときわ熱心で、ビングを口説き落とし、姉妹のつぎの仕事先であるヴァーモントのインについて行くことになります。

車中では四人でSnowを歌い、いかにも『ホワイト・クリスマス』という気分になるのですが、登場人物や観客の期待に反して、ヴァーモントには雪がなく、ダニー・ケイが「列車をまちがえたぞ、まだフロリダにいるらしい」などといいます。



ウィンター・リゾートなのに雪がないのでは商売あがったり、姉妹の仕事先のインも客がなく、満足にギャラが払えそうもないことがわかります。仕方ない、帰ろうかといったところで主があらわれると、これがビングとダニーの軍隊時代の上官だった将軍。

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今回の宿屋は「コロンビア・イン」という名前だが、外観、内装ともに『ホリデイ・イン』の農場によく似ている。こちらには母屋の隣に大きな納屋があることがもっとも目立つ相違点だろう。

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雪なしスキー・リゾート経営者であるこの将軍のピンチを救おうと、ビングとダニーがあれこれ画策し、いっぽうでビング・クロスビーが誤解され、腹を立てたローズマリー・クルーニーがニューヨークへ行ってしまうというルーティンがあったりして、最後はクリスマス・イヴにインで華やかなショウが繰り広げられ、誤解も解け、盛大にWhite Christmasを歌ってエンド・マーク、という運びになります。

◆ 50年代ハリウッドの色彩感覚 ◆◆
もちろん、傑作を期待したわけではなく、あくまでも個々のショウ・ナンバーの出来が優先、話は二の次と思って見ました。じっさい、プロットのほうはどうということもなく、やはりソング&ダンスの映画でした。

しかし、色彩感覚のすばらしさに圧倒されるいっぽうで、フレッド・アステアの不在を痛感させられるナンバーばかりでした。アステアを前提とした企画なのだから、アステアがダメだとなっても、方向転換はできなかったのでしょう。

The Best Thing Happen


このThe Best Things Happen When You're Dancingでは、ダニー・ケイもがんばっています。でも、これが精一杯で、激しい動きのあるダンスでは、べつのダンサーがヴェラ・エレンの相方をつとめています。

ヴェラ・エレンの姿態とダンスは魅力的なので、ダニー・ケイに合わせて振り付けをスケール・ダウンするわけにもいかず、肝心なところにくると主役はフレーム・アウトし、ヴェラ・エレンの動きについていける本職のダンサーが登場する、という処理にせざるをえなかったことがはっきりと伝わってきて、ちょっと居心地が悪くなります。いやはや困ったなあ、フレッド・アステアがダメなら、ジーン・ケリーに話をもっていくべきだったねえ、と55年遅れのボヤきがでますよ。

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しかし、ダニー・ケイとフレッド・アステアを比較するなどという無益なことをしない方なら、どのショウ・ナンバーも楽しめることでしょう。楽曲やアレンジもいいのですが、衣裳と装置の色彩が圧倒的なのです。アステアがダメならジーン・ケリーじゃん、などと無意味な無いものねだりをしなければ、この映画のショウ・ナンバーはどれもたいしたものです。

マンディー(クリスマス・カラー、タンバリン)


この赤と緑の補色をベースにした異様な配色は、クリスマスを意識したものなのでしょうが、それにしても、よくやるぜ、というデザイン。呆れつつ、おおいに楽しみました。楕円形の赤いタンバリンという発想もすごい!

フィナーレ~ホワイト・クリスマス


サンタクロースの衣裳を女性向けにアレンジするというのは、あまり見ないような気がします。たいていは、あのまんまの衣裳を女性が着るのではないでしょうか。いや、アメリカのメンズ・マガジンには、超ミニのサンタクロース衣裳というルーティンがありますが、あれもコートはふつうのデザインでしょう。この映画はサンタクロース装束風ドレス! 後にも先にも、そんなものはこの映画でしか見たことがありません。

◆ 86種類のWhite Christmas ◆◆
さて、ほかにクリスマス・ソングがあればそちらへ逃げるのですが、どういうわけか、クリスマス映画なのに、『ホワイト・クリスマス』に登場するクリスマス・ソングは、White Christmasただ一曲なのです。

しいていうと、Snowは冬の歌なので、最近の超拡大解釈クリスマス・ソング・クラウドに入れても差し支えないかもしれません。とはいうものの、堂々とクリスマス・ソングを名乗って銀座八丁を練り歩けるほどのオーセンティシティーは、もちろんありません。ものを知らない若者を騙すクリスマス・ソング巨大オムニバス・ボックス販売業者の策略にのるなんてえのは、いい年をした大人(今日、アメリカ人の若者に道をきかれたときに、sirをつけられてしまった。よほどの年寄りに見えたのだろう!)のすることではないでしょう。

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White Christmasの爆発的増殖に備えて導入したメディア・プレイヤー・ソフト、Media Monkeyの検索結果には自動的にナンバーがつけられる。White Christmasは86種。他のソフトと併用しているが、大量のカヴァーがある曲に関してはこれが主力になりそうな気配だ。THX>キムラさん。

となると、このシリーズの趣旨からいって、ここでWhite Christmas各種ヴァージョンの検討へといくわけですが、そりゃ無理ってものです。いや、いちおう、できるだけたくさん聴いて、一昨年のWhite Christmas その1White Christmas その2に書ききれなかったこと、二年間で考えが変わった点を書こうと思ったのですよ。

でも、愕きました。いまのわたしの考えるようなことはどれも、すでに二年前のわたしがくわしく書いていたのです。86種のWhite Christmasを流しっぱなしにして、書きものや調べものをしているじゃないですか。で、曲が替わったとたんに、おお、鳴りのいいスタジオじゃん、いいエンジニアだねえ、みごとなバランシング、これこそが録音というものでありんす、いまどきの録音なんか薄っぺらくてお歯に合わないねえ、なんて思いつつ、プレイヤーにフォーカスを移して確認するじゃないですか。

そうすると、ヘンリー・マンシーニのWhite Christmasであると表示されているのです。マンシーニはいつもハリウッドのRCAのスタジオAだから、録音がよくて当たり前。で、一昨年の記事を見ると、ヘンリー・マンシーニのWhite Christmasは、冒頭を聴いた瞬間にすばらしいと感じると、もう先回りして書いてあるのですよ。われながら、なんとみごとな一貫性、と勘当しましたね。いや、感動しましたね。

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いや、こんな手前味噌だけで終わってはあんまりなので、なんとか次回、一昨年の自分をロール・オーヴァーするべく、White Christmasのかゆいところに手を届かせる努力をしてみるつもりです。つまり、今日はもう疲れた、さよなら、といいたいだけですけれどね。それはそうでしょうに。一日中、White Christmasを聴きつづけてごらんなさいな!

White Christmas Special Edition DVD
ホワイト・クリスマス スペシャル・エディション [DVD]
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ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
Holiday Inn & White Christmas

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas
Merry Mancini Christmas
by songsf4s | 2009-12-07 23:59 | クリスマス・ソング
クリスマス映画3B Happy Holiday by Bing Crosby(『スイング・ホテル』より その2)
タイトル
Happy Holiday
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1942年
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前回は、ビング・クロスビーがコネティカットの農場というか「ランチ」というか、そういう場所で、祝祭日だけ営業するインを開くことになった、というところまで書きました。

このインが成功するか否かはこの物語の焦点ではありません。年間15日の営業日数では、東京のホテルのショウの十倍ぐらいの値段にしないと、とてもペイしないでしょう。はじめから現実的な話ではないのです。

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本文とは関係ないが、この映画のアステアのダンスのなかでは、このかんしゃく玉を破裂させながら踊る場面が楽しめた。もちろん、いちいち投げつけていたのではきれいに破裂しないので、パイロがメカニズムをつくり、アステアが複雑なコレオグラフィーを完璧にこなして、きれいにタイミングを合わせたのだろう。また、アニメーションも補助的につかったのではないだろうか。

かつてのマネージャーの紹介で、このホリデイ・インで働きたいという若い女性(マージョリー・レイノルズ)がやってきます。ソング&ダンス・ガールです。そして、ビングが、こういう曲を作ったといって彼女に歌って聴かせるのがWhite Christmasです。

ホリデイ・イン ホワイト・クリスマス・シークェンス


このシークェンスはエンディングの伏線になっています。どうというほどのものではないのですが、でも、伏線を張っておくのはつねに大事なことです。ついでに、書き忘れないようにと自分に念を押すのですが、White Christmasの歌詞がああなった理由は、この映画を見てよくわかりました。これまたこの映画のエンディングの状況に根ざしているのです。その点についてはのちほど。

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ビング・クロスビーがWhite Christmasを歌いながら、パイプの柄でベルを叩いてオブリガートを入れる。これがエンディングの伏線。

◆ シンデレラを求めて ◆◆
こんな調子でプロットを書いていては終わらないので、すこし端折ります。マージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インでビング・クロスビーの相方として歌い、踊り、演じることになります。

いっぽう、フレッド・アステアがビング・クロスビーとの競争に勝って結婚したヴァージニア・デイルは、百万長者に引かれてどこかへ消えてしまいます。泥酔したアステアは「コネティカット」(アメリカでもいろいろな読み方をされるのだろう。「コネクティカット」へ行った、と発音が強調される)のホリデイ・インにやってきます。

ここでマージョリー・レイノルズを相手に、フレッド・アステアは、そのキャリアのなかでもっとも奇妙な振り付けのダンスをやります。真っ直ぐに立っていられない男のダンスです。『ドランクモンキー酔拳』というカンフー映画がありましたが、あれはこれをヒントにしたのじゃないかと思ってしまいます!

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あとからきたマネージャーは、すばらしいパートナーだったという評判を聞き、その女性を新しい相方に、とは思うものの、だれと踊ったのかがわからず、彼女を求めて、アステアと二人で何度もホリデイ・インを訪れることになります。そのたびに季節に合わせた歌と踊りがあるというのが、この映画の趣向です。

ビング・クロスビーのほうは、またしても相方/想い人をアステアに奪われまいと、あれこれ策略を弄するというルーティンが繰り返され、結局、そのトリックに気づいたマージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インを去り、アステアの相方としてハリウッドでスターになります。

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◆ またしてもメタ映画シークェンス ◆◆
失意のビング・クロスビーは、ホリデイ・インを閉じてしまいますが、やがて気を取り直して、ハリウッドの撮影所を訪れます。エンディングに入るので、これから見るのだから、結末は知りたくないという方はここまでにして、つぎの見出しにジャンプしてください。

ビング・クロスビーとフレッド・アステアの顔合わせと、二人の「ソング&ダンス」は堪能できるものの、映画としては他愛のない話で、ここまでは可もなし不可もなし、と思って見ていました。でも、最後はちょっとしたものです。

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フィルムの音を低減するために、キャメラ全体を巨大なブリンプで覆った。厚田雄春によると、ブリンプがなくて布団をかぶせてやっていた時期があったという!

ハリウッドの撮影所は、ビング・クロスビーの「休日だけ営業する田舎のイン」というアイディアが気に入り、歌まで含めて、これを映画化します。ビングが訪れたのは、このセットなのですが、これがホリデイ・インをスタジオで再現したという設定なのです。

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コネティカットの田舎にあるインだと言い張っていたものを、こんどはハリウッドのスタジオにつくられたホリデイ・インのセットであるといって見せる!

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監督、撮影監督、撮影助手の3人が載るクレーンもすごいが、ブームはもっとすごい。鯨用釣り竿か! なぜこんなに太いのだろうと考え込んでしまった。細いと動かしたときに揺れてしまい、ドップラー効果でピッチが揺れてしまうから? いや、考え過ぎかもしれないが!

これはちょっとした「メタ」で、アッハッハでした。だって、この映画自体のここまでのシーンに使ってきたホリデイ・インのセットを、こんどはハリウッドのスタジオで再現されたホリデイ・インのセットだといって見せるわけですからね。同じセットに二つの役割をふったのです。このメタ映画的シークェンスが、『ホリデイ・イン』の映画としてもっとも楽しい部分です。

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マージョリー・レイノルズがホリデイ・インのセットで演技をはじめる。この前に、ヒロインは女優で、ハリウッドでの成功の虚しさに気づき、自分があとにしてきたホリデイ・インを再訪する悲しい場面である、と説明される。このいけずうずうしい脚本はたいへんけっこう!

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セットにやってきたビングがそっと置いていったパイプに、マージョリー・レイノルズは目をとめる。

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このセットでマージョリー・レイノルズはWhite Christmasを歌う。陽が燦々と輝くクリスマスのハリウッドで、コネティカットのホワイト・クリスマスを夢見て帰ってきた、というのがこの歌詞のオリジナルな意図だったのかもしれない。

◆ 昔の記事の訂正 ◆◆
昨年の元旦にこの映画の挿入曲、Let's Start the New Year Rightを取り上げ、そのなかでつぎのように書きました。

「ビング・クロスビー、フレッド・アステア、マージョリー・レイノルズという3人の主役たちのあいだで、なにかもつれたものがあり、それをチャラにして、新しい年はきちんとスタートしよう、というのではないでしょうか」

「シノプシスを読んでも、Let's Start the New Year Rightが劇中のどこに出てくるのかわかりませんが、歌詞から考えれば、エンディング近くではないでしょうか」

両方とも大ハズレのコンコンチキでした。Let's Start the New Year Rightが登場するのは、ホリデイ・インの営業中、キッチンでビング・クロスビーが調理をし、マージョリー・レイノルズがそれを皿に受けるといった場面です。もつれた関係をチャラにするとか、そういうコンテクストではありませんし、エンディングにはだいぶ間がある浅いところ(開業直後の大晦日)に出てきます。

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いえ、エンディングでも出てくるのですが、さまざまな曲のハイライトの一部にすぎず、この曲で万事めでたく解決、かくして大団円、という使われ方ではなかったのです。

◆ ハッピー・ホリデイ ◆◆
さて、この映画で歌われる三大クリスマス・ソングのもう一曲、Happy Holidayが本日の眼目です。テーマ曲なので、まずオープニングのサウンド・コラージュの一部として登場します。しかし、フル・ヴァースが歌われるのは、ホリデイ・イン開業の日、クリスマスのことです。

Happy Holiday Bing Crosby


人生にうんざりしたらホリデイ・インにいらっしゃい、というコマーシャル・ソングなので、開業にはふさわしいというか、図々しいというか、そういう歌詞になっています。どうであれ、なかなかけっこうな曲で、こういう映画にはふさわしいテーマ曲です。

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◆ アンディー・ウィリアムズとペギー・リーのカヴァー ◆◆
ホリデイ・インのコマーシャル・ソングでは具合が悪いということで、カヴァー・ヴァージョンは異なる歌詞をつけています。アンディー・ウィリアムズ盤はサンタ・クロースが登場する、ご家庭向き、お子様向きの歌詞にしています。

アンディー・ウィリアムズのクリスマス・アルバムには、一昨年も何度か賛辞を呈しましたが、アンディー・ウィリアムズが好きとか嫌いとか、そういうことには関係なく、いいアレンジをきれいに録音した盤で、サウンドは楽しめます。アンディー・ウィリアムズは何度もこの曲を録音しているようで、ヴァリアントがありますが、どれも悪くありません。

歌ものとしてはもう一種、ドラスティックにアレンジを変えたペギー・リーのヴァージョンも魅力的です。

ペギー・リー ハッピー・ホリデイ


というように、ものすごく速いワルツ・タイムでやっているのです。ほかにこの曲の似たアレンジというのは、わが家にはありません。並べて聴くと異彩を放ちます。薄くミックスされた、管のアンサンブルによるカウンター・メロディーがクール。ドラマーも好みです。

これまた、先日の『めぐり逢えたら』の記事で、アル・カイオラとリズ・オルトラーニのSleigh Rideが収録された編集盤としてご紹介した、ウルトラ・ラウンジ・シリーズのクリスマス篇2に入っています。同じことばかり書いていますが、ウルトラ・ラウンジはハリウッド産ラウンジ・ミュージックの精華を集成した一大シリーズで、とりわけ3枚のクリスマス篇はじつに楽しい編集になっています。

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本文とは関係ないが、これはEaster Paradeを歌うシーン。

◆ オーケストラもの ◆◆
オーケストラによるカヴァーとしては、まずパーシー・フェイス盤があります。アップテンポの軽快なアレンジで、おめでたい祝日の気分になります。

ヘンリー・マンシーニほどの高打率ではないにしても、パーシー・フェイスもやはりハズレがありません。アレンジとコンダクトは重要ですし、この部分については、ヘンリー・マンシーニとパーシー・フェイスはまったくの別人です。しかし、両者ともハリウッドのRCAのスタジオAでの録音(マンシーニはほとんどつねにそうだったことがわかっている)でしょうから、音のテクスチャーが似ても不思議はありません。

さらにいえば、ツアーはべつとして、スタジオ録音に関するかぎり、相当数のプレイヤーが重なっているはずです。だれそれオーケストラとか、なにがしオーケストラといった名前がついていても、じっさいにスタジオでプレイするのはフルタイムのメンバーではなく、第一級の腕をもつスタジオ・プレイヤーです。そして、ポップ・オーケストラのメッカはハリウッドなのだから、時期の近いものはメンバーが重複している可能性が高いのです。

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独立記念日のショウ。こんな豪華版では、テーブル・チャージだけでとんでもない値段になるのは確実だなあ、と貧乏性のわたしは怖くなった!

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戦争中なので、国威発揚フィルムがショウのなかに織り込まれている。

それが、どのオーケストラもレベルが高く、録音がよく、多くのトラックが楽しめる造りになっている理由です。ハリウッド流の品質保持戦略なのです。もちろん、これはオーケストラにかぎった話ではなく、50年代後半から60年代にかけての、あらゆるハリウッド産ポップ・ミュージックに共通する基本理念なのですが!

ジャッキー・グリーソンもまたハリウッド録音なので、共通の基盤でオーケストラ音楽をつくっています。ただし、グリーソンの盤にははっきりとした型があります。「ナイス&イージー・サウンド」とでも名づけたくなるような、テンポの緩い、パーカッション系の音のほとんどない、ドリーミーなサウンドです。

Happy Holidayもやはり、典型的なジャッキー・グリーソン・スタイルでアレンジされていて、手ざわりはパーシー・フェイス盤の正反対ともいえるものです。にもかかわらず、というか、それゆえに、かもしれませんが、これはこれでおおいに楽しめるヴァージョンです。

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また、たんなる偶然ですが、ビング・クロスビーの歌うOST盤のあとにジャッキー・グリーソン盤Happy Holidayを置くと、後者がスロウなコーダに聞こえ、一体の曲のようになります。OSTはBフラットでスタートしますが、途中で転調し、Cで終わります。ジャッキー・グリーソン盤のキーはCなので、そのままつながってしまうのです。

同じように、パーシー・フェイス盤のあとにおいても、コーダに聞こえます。パーシー・フェイス盤はたしかFで終わるので(もう確認の余裕がない時間帯!)、きれいに転調した印象になります。

よけいな話はともかく、Happy Holidayは、オーケストラ・アレンジでも楽しく聴ける曲です。めずらしいことに、どのヴァージョンもどこかに魅力があるという、けっこうな取り組みでした。

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スイング・ホテル [DVD] FRT-191
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スイング・ホテル(ホリデイ・イン) オフィシャル版
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ホリデイ・イン OST(ホワイト・クリスマスOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
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パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith
Christmas Is... Percy Faith

ジャッキー・グリーソン
Merry Christmas
Merry Christmas

ペギー・リー
Christmas with Peggy Lee
Christmas with Peggy Lee

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
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Andy Williams
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
by songsf4s | 2009-12-05 23:38 | クリスマス・ソング
I'll Capture Your Heart by Singing by Bing Crosby & Fred Astaire(『スイング・ホテル』より その1)
タイトル
I'll Capture Your Heart by Singing
アーティスト
Bing Crosby, Fred Astaire and Virginia Dale
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1942年
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このところ、毎日、タイトルが長いから削れといわれてばかりいます。そのため大幅に省略し、大事な情報をたくさん書き落としたので、以下にわたしが意図した正しいタイトルを書いておきます。

クリスマス映画3のA I'll Capture Your Heart by Singing by Bing Crosby, Fred Astaire and Virginia Dale(映画『スイング・ホテル』より その1)

エクサイトに思いきり嫌がらせをされましたが、気を取り直して、以下、本文。

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これまで比較的新しい映画を見てきたので、こんどは古典的クリスマス映画にしようと思案し、『スイング・ホテル』にしました。

いまや原題の「ホリデイ・イン」のほうがわかりやすいのですが、公開当時は、もちろん、ホテル・チェーンのホリデイ・インは知られていなかったし(この映画がヒントになってホテル・チェーンが生まれたのだから当然!)、そもそも「イン」といわれても、宿屋、居酒屋を連想する観客はほとんどいなかったのでしょう。

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それでやむをえず「ホテル」という言葉を織り込んで、ビング・クロスビーとフレッド・アステアの共演作にふさわしい単語をあれこれ考え、アステアのほうから『スウィング・タイム』を思いだし、『スイング・ホテル』というタイトルを捻り出したのだと想像します。出来の悪い邦題なので、そろそろ『ホリデイ・イン』と改題するべきです。ここでは原題のカタカナ書きで通します。

『ホリデイ・イン』は映画としての出来を云々する以前に、わたしの考えでは、三曲の有名なクリスマス・ソングが歌われたために、クリスマス映画の古典としてリストからはずすことができません(もう一曲、クリスマスとは関係のない有名曲の初出でもあるのだが、そのことは後述)。テーマ曲のHappy Holiday、Let's Start the New Year Right、そしてもちろん、White Christmasの三曲です。

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たまたま、今日、バックアップをHDDに書き戻した関係で、検索するとWhite Christmasは80種ほどがあふれてこぼれだし、おぼれそうになったので、今日はやめておくことにしました。一昨年のWhite Christmas その1White Christmas その2で委曲は尽くしたので、今年はどこかで軽く補足するだけにするつもりです。

◆ 「ソング&ダンス・マン」の人格分離 ◆◆
いちおうプロットを追います。『ホリデイ・イン』は典型的なバックステージもので、ビング・クロスビーは歌手、フレッド・アステアはダンサーと、そのままの役を演じます。

話はクリスマス・イヴのナイトクラブからはじまります。ビング・クロスビー、フレッド・アステア、双方の相方をつとめている女性が、二人のあいだにはさまっていたけれど、結局、アステアを選び、ビングを袖にする、ビングはこれを機会にコネティカットの山荘に引っ込み、現今いうところの「スロウ・ライフ」を送ることにしたと宣言する、というのが導入部。

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このビング・クロスビーとフレッド・アステアの「友情ある対立」をめぐって、ストーリーは展開することになります。フレッド・アステアの役は、悪人ではないものの、ビング・クロスビーの敵役なので、脚本はそれなりに配慮してはいるものの、損な役回りです。でも、『アステア・ザ・ダンサー』によると、仲のいいビングと共演できて楽しかったと回想しているそうです。

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この設定の妙味は、フレッド・アステアがしばしば演じた「ソング・アンド・ダンス・マン」の話ではなく、ソングとダンス、双方の第一人者の顔合わせなので、「ソング・マン」と「ダンス・マン」に役割が完全分離している点にあります。設定から考えて、主演はビング・クロスビーとフレッド・アステアしかない、となったのか、それとも、この顔合わせが先に決まって、それに添って書かれたのか。まあ、後者でしょうね。この二人でなければうまくいかない設定です。

もちろんミュージカル仕立てで、ビングは歌い、アステアはソング・アンド・ダンスの両方をやります。あまり目立たないようにと気を遣ったのでしょうが、アステアの歌だって、ビングほどではない、というだけで、十分に魅力的です。

I'll Capture Your Heart by Singing


最初のナンバー、ビング・クロスビー、フレッド・アステア、ヴァージニア・デイルの三人組ショウ芸人が演じるのは、"I'll Capture Your Heart by Singing"です。ビング・クロスビーのクルーニングとフレッド・アステアのタップを生かすための、バラッドとダンス・チューンを合体させたハイブリッド・アレンジが秀逸です。もちろん、楽曲の出来も上々。さすがはアーヴィング・バーリン、聴いたとたん、すぐに歌いたくなってしまいます。ファースト・ヴァースのhot toddyとdead bodyの押韻にはおおいに笑いました。

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◆ 年間15日 ◆◆
しかし、コネティカットの田舎に引っ込んだビング・クロスビーは、翌年のホリデイ・シーズンにいたり、一年のカントリー・ライフをかえりみて、かくてはならじ、商売をしようと決意し、(たぶん)ニューヨークのフレッド・アステアの楽屋を訪ねます。

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「ハイウェイの生活は一休み、農場でくつろぎの一時をどうぞ、ダンス、フロア・ショウ、家庭料理、休日のみ営業」といったことが書いてある。

というようなビラをわたし、休日にだけ営業するインを開きます。innは宿屋や居酒屋などの訳語をあてられますが、この「ホリデイ・イン」は二階があって宿泊できそうではあるものの、そういう様子はまったく描かれず、ナイトクラブのような営業形態です。つまり、飲食物とショウで客をもてなすのです。

この部分がアーヴィング・バーリンの原案のようで、年間15日の休日に合わせて、季節感のある曲をこのクラブを舞台に歌い、踊る、という趣向です。したがって、これまた純粋なクリスマス映画ではなく、クリスマスにはじまり、クリスマスに終わる、年中行事絵巻ミュージカルなのです。

トレイラー


以上のクリップでおわかりでしょうが、この映画からはEaster Paradeも生まれています。休日に合わせて楽曲を書くとなると、当然、イースターの歌も必要で、この曲の誕生となったのでしょう。

わたしは、曲を聴いた順というか、映画を見た順が逆だったので、以前は、Easter Paradeが、フレッド・アステアではなく、ビング・クロスビーの持ち歌とされている意味がよくわかっていませんでした! 初出は『ホリデイ・イン』のビング・クロスビー・ヴァージョン、のちにこの曲からフレッド・アステアとジュディー・ガーランドの『イースター・パレード』がつくられた、という順番です。

話はまだ前ふりぐらいのところなのですが、例によってまったく時間が足りず、あとは次回へとつづく、とさせていただきます。

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スイング・ホテル(ホリデイ・イン) 廉価版
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ホリデイ・イン OST(ホワイト・クリスマスOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas
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by songsf4s | 2009-12-04 23:31 | クリスマス・ソング
クリスマス映画2 Sleigh Ride/Jingle Bells by Roy Rogers & Dale Evans(映画『めぐり逢えたら』より)
タイトル
Medley: Sleigh Ride/Jingle Bells
アーティスト
Roy Rogers & Dale Evans
ライター
Leroy Anderson and Mitchell Parish, James Pierpont
収録アルバム
Christmas Is Always
リリース年
1967年
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クリスマス映画2本目は、トム・ハンクスとメグ・ライアンの『めぐり逢えたら』(Sleepless in Seattle, 1993)です。

最初の葬礼のシークェンスで、トム・ハンクスが妻を失い、幼い息子と二人だけになってしまったことが描かれます。そして、妻のことを思いださせる場所ばかりのシカゴを去り、シアトルに移住するというのが導入部です。

Sleepless in Seattle pt.1


冒頭のクレーン・ショット、トム・ハンクス親子から、会葬者とその背後に見える町並みへとキャメラが移動していくところは、ちょっとハッとさせられます。

◆ またしてもアブノーマル・ヴァージョン ◆◆
それから一年半後、という文字が入って、クリスマス・イヴから話は動きはじめます。メグ・ライアンとビル・プルマンが、クリスマスの晩餐のために、メグ・ライアンの実家へと出発するところは、ちょっと笑いました。ビル・プルマンが晩餐に出席するメグ・ライアンの家族、親戚の名前と特徴を暗記するところです。

もっと可笑しかったのはつぎのクリップの冒頭。

Sleepless in Seattle pt.2


プロップか衣裳のだれかが仕込みをやったにちがいありませんが、ウェディング・ドレスの肩がみごとにビリッとやぶれて、その具合のよさに拍手したくなりました。仕込みの人間としては、きれいにやぶれた瞬間、監督をふりかえって、ガッツ・ポーズでしょう!

母親が昔着たウェディング・ドレスを試着しながら、メグ・ライアンと母親がかわす会話が、定石通りに、この物語の前口上になっています。「It's like a magic」がキーで、ドレスがやぶけてしまうのも「It's a sign!」、この結婚がうまくいかないことを暗示します。

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以上、地ならし完了、恋人たちはべつべつの車で帰途につきます。このへんはややわざとらしい展開ですが、メグ・ライアンをひとりにして、車のなかでラジオをきかせ、そのラジオから流れてくる声に気持を添わせるには、婚約者といっしょではぐあいが悪いというのはよくわかります。観客にあまりわかられすぎても、ほんとうはまずいのですが。

車中最初のラジオ・プログラムは、これまたお約束という感じで、クリスマス・イヴだから、クリスマス・ソングが流れます。ちょっと変わった選択です。いえ、Jingle Bells(ジングル・ベルの過去記事)とSleigh Ride(スレイ・ライドの過去記事)を、メドレーではなく、合体させたもので、楽曲としてはノーマルです。でも、なぜロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤なのか?

サンプル ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ「ジングル・ベル/スレイ・ライド」

なんだか、この曲も、映画に使われたものは、盤としてリリースされているヴァージョンとは微妙に異なるように思えます。というのでコードを弾いてみたら、盤はノーマルなピッチ(D)、映画はクォーターノートで、盤より微妙にピッチをあげてありました。変なことをするものですねえ。どういう意図かはわかりません。ピッチがあがると明るくはなりますが、このロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズのジングル・ベル/スレイ・ライドは、もとのままのピッチで十分に明るいのに!

星の数ほどあるJingle BellsやSleight Rideのなかから、どのような意図でこのロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ盤を選んだかはわかりませんが、このひょうきんなサウンドに乗ってメグ・ライアンが運転するすがたはおおいに魅力的で、そういうマッチングを狙ったのかもしれません。

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◆ クリスマスに欲しいものは? ◆◆
局を替えると、電話人生相談といった感じの番組になり、シアトルに住む八歳の子ども、冒頭に登場したトム・ハンクスの息子ジョナが登場し、クリスマスにはパパに新しい奥さんをプレゼントして欲しいといいます。

メグ・ライアンがラジオをききながら、思わず、イヤな女(電話相談の精神科の女医)、ジョナ、いうこときいちゃダメよ、電話を切りなさい、というけれど、結局、ドクターはトム・ハンクスを電話口に引きずり出します。

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ここでトム・ハンクスが語った死んだ妻の思い出話がアメリカ中(といっても、もちろん、この番組がネットワークされている範囲だが)の女性の関心を喚んでしまう、というのが、この物語のほんとうの意味での発端です。

タイトルのSleepless in Seattleは、この女医がトム・ハンクスにつけたあだ名、「シアトルの不眠症さん」という意味です。ついでにいえば、邦題の『めぐり逢えたら』は、この映画が下敷きにしたケーリー・グラントとデボラ・カー主演の『めぐり逢い』(An Affaire to Remember。監督はなんとレオ・マケアリー!)に由来しています。

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ということで、ここから、『ボギー俺も男だ』が『カサブランカ』のエンディングへと動いていったように、Sleepless in SeattleもAn Affair to Rememberのエンディングを再現するべく、アールデコの装飾が楽しいエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキを目指して動きはじめます。

この映画のいいところ、男でも楽しめる理由は、メタ・メロドラマになっているところです。メロドラマによるメロドラマ批評なのです。いや、ロマンティック・コメディーによるメロドラマ批評でしょうか。ストレートなコメディーでもなければ、ストレートなメロドラマでもなく、でもやっぱり、女性観客としては、エンディングでハンカチを取り出す、という風につくってあります。

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メグ・ライアンが友だち(名前は忘れたがロバート・ゼメキスの『抱きしめたい』で顔を覚えた)といっしょにヴィデオで『めぐり逢い』を見るという、いかにもメタ映画らしいシーン。

わたしは男なので、どこで泣けるかではなく、どこで笑えるかのほうが気になります。メタ・メロドラマであると同時に、映画によって映画を語るメタ映画でもあり、登場人物たちはしきりに昔の映画に言及します。

いちばん笑ったくだりは、トム・ハンクスと友人夫婦の会話です。ヴァレンタインズ・デイにエンパイア・ステート・ビルディングの展望デッキで待つという、「ファン」からの手紙(出版社社員のメグ・ライアンが、取材の一環として書いた)の話を聞き、友人の奥方が、それって『めぐり逢い』じゃないの、ほんとうにいい映画だったわ、もう泣けて泣けてと、エンディングの誤解とそれが解けるシーンの仕方話をひとくさりやります。

男たちは、An Affair to Rememberときいて、ありゃChick's movie(女が見るもの)だ、と関心を示しません。わたしもこの男たちに強く同意します! トム・ハンクスの友人は、いちばん泣ける映画はやっぱりDirty Dozen(特攻大作戦)だな、といって、ジム・ブラウンのことを話しはじめます。

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メグ・ライアンがエンパイア・ステート・ビルディングに駆けつけるが、もう展望デッキは閉まったといわれてしまう。どうしても人に逢わなくていけないのだと懇願すると、「『めぐり逢い』だね?」といわれる。「あの映画をご存知?」とメグ・ライアンがきくと、「女房が好きでね」とこたえたのは笑った。あくまでもchick's movieなのだ!

わたしも、そうだな、泣ける映画っていうのは、メロドラマじゃなくて、戦争映画とかウェスタンとか、そういうのが多いな、と笑いながら同意しました。ストイシズムが極点に達するようなシーンに、男の多くは反応するのではないでしょうか。このへんが、この映画の「メタ」な楽しさで、こいつはメロドラマじゃないの、と眉に唾しながら、最後まで見てしまう理由だと思います。

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展望デッキへのエレヴェーターは老警備員が運転する。この警備員が益田喜頓そっくり!

以上、映画としても悪くない出来で、ご家族で見ても、カップルで見ても、困惑するような場面はないでしょう。まあ、八歳の子どもが父親に、新しい奥さんをもらったらセックスするの? なんていうところで腹の底から笑うには、ひとりで見たほうがいいかもしれませんが!

クリスマス映画というより、冒頭にクリスマスが出てくるだけで、クライマクスはヴァレンタインズ・デイに設定されていますが(当然、中間にはニュー・イヤーズ・イヴのカウント・ダウン・パーティーと、日本でいえば除夜の鐘にあたる、新年の花火のシーンもある)、寒い時期の季節感に添ってつくられたウェルメイドな作品で、クリスマスに見るのもけっこうだろうと思います。

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展望デッキで待ちくたびれる子どもを空撮で捉える。ちょっとしたシーンにもヘリコプターを飛ばせるハリウッド映画はやはりうらやましい。

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◆ 追加ヴァージョン ◆◆
Jingle Bellsについては他の機会にゆずり、ここでは一昨年のSleigh Rideの記事をすこし補足しておきます。

アヴァランシェーズ盤がもっとも好きだというのは変わりませんし、他のヴァージョンに関する評価も、一昨年に書いたことを訂正する必要は感じません。ロネッツ、ヴェンチャーズ、アンディー・ウィリアムズ、リロイ・アンダーソンあたりも楽しめる、という考えも変わっていません。

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一昨年にはふれなかったヴァージョンをいくつか見ます。なんといっても素晴らしいのは、またしてもアル・カイオラとリズ・オルトラーニのクリスマス・アルバムSound Of Christmasに収録されたものです。

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イントロは印象的だし、カイオラにしてはめずらしく、オクターヴ奏法も織り込んで、技のあるところをほんのすこしだけ見せびらかしたプレイぶりも楽しいし、リズ・オルトラーニも、他のトラックより少し前に出るオーケストレーションをしています。コンボならアヴァランシェーズ、オーケストラありならこのアル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤でしょう。

目下、これを収めた編集盤は見あたらないようですが、ちょっと変則的なヴァージョンならCDで聴くことが出来ます。一昨年のクリスマス・スペシャルでは何度も称揚した、キャピトルのUltra Loungeシリーズのクリスマス篇第2集に収録されたヴァージョンです。

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どこが変則的かというと、前半はふつうにアル・カイオラ&リズ・オルトラーニのSleigh Rideなのですが、途中でJingle Bellsに化けてしまうのです。これはジミー・マグリフのヴァージョンだそうで、別個に録音したものをあとから編集でつなげてしまったのです。

ただし、ほとんど短縮はしていなくて、ちゃんとエンディングまでたどりつき、そこからすぐにジミー・マグリフのJingle Bellsがはじまってしまうだけなので、それほど強引な処理というわけでもありません。LPとはだいぶマスタリングがちがうし、ステレオ定位も異なるので、わたしは、これはこれでいいと思います。

あと数分まできてしまったので、ここからは電報。無茶苦茶にいいとはいいませんが、ヴェラ・リンのヴァージョンもそこそこ楽しめます。70年代の録音ですが、ヴェラ・リンだから昔の風味でつくってあり、オーケストレーションもわるくありません。

スプートニクス盤は微妙です。ドラムが馬鹿みたいなのがいただけませんが、ギターはそこそこ楽しめます。ほかにもちょっと追加盤があるのですが、このへんでいいでしょう。アル・カイオラ&リズ・オルトラーニ盤はほんとうに素晴らしい出来です。

めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]
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アヴァランシェーズ
Ski Surfin'
Ski Surfin'

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ2
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
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リロイ・アンダーソン
Sleigh Ride: The Best of Leroy Anderson
Sleigh Ride: The Best of Leroy Anderson

ヴェンチャーズ
The Ventures' Christmas Album
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Andy Williams
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム

ロイ・ロジャーズ&デイル・エヴァンズ
Christmas Is Always
Christmas Is Always
by songsf4s | 2009-12-02 23:53 | クリスマス・ソング
クリスマス映画1 Jingle Bell Rock by Bobby Helms(『リーサル・ウェポン』より)
タイトル
Jingle Bell Rock
アーティスト
Bobby Helms
ライター
Joe Beal, Jim Boothe
収録アルバム
Fraulein: The Classic Years
リリース年
1957年
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今日からクリスマス・スペシャル2009として、クリスマス映画を取り上げます。

「クリスマス映画」とはどういうもののことだ、なんて正面切っていわれると困るのですが、まあ、クリスマス・フレイヴァーが濃厚なのもあれば、ごく薄味なのもある、つまり、じつに多様である、と逃げをうっておきます。

たとえば、『三十四丁目の奇蹟』のように、主人公はサンタ・クロースなんていう、どこからどう見ても堂々たる「クリスマス映画」があるいっぽうで、ほんのささやかな背景としてクリスマスを利用しているだけの映画もあります。

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この箱絵コラージュはよそから拝借してきただけで、当家でこれから取り上げる予定の映画とは関係ない。いや、このなかから二本ぐらいはやるかもしれないが……。

今回はストライク・ゾーンを大きくとり、なんらかの意味でクリスマスに言及している映画、ということにして、ブラッシュ・ボールやナックルも使える余地をつくっておきます。

なにしろ、まだ見ていない映画も予定表にリストアップしているので、どこかで躓いたら、クリスマスの飾りがほんのちょっと画面に出てくるだけの「あの映画」(ヒント ロックンロール映画)なんかで穴埋めをしなければならない事態もないとはいえないのです。

あるいは、たんに飽きてしまい、箸休めに日活映画に走る、という事態も考えられなくはないので、そうなってしまったときにはどうかご容赦のほどを。

trailer


◆ ヴァージョンちがい…… ◆◆
さて、今日のクリスマス映画はご存知『リーサル・ウェポン』の第一作です。この映画は開巻早々乗りました。なんたって、Jingle Bell Rockのイントロ・リックではじまるのだから、そりゃずるいというか、これなら成功間違いなしというか、音楽の力を最大限に利用したオープニングでした。

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もちろん、絵作りとしてもけっこうな出来で、ボビー・ヘルムズの歌声に乗ってLAの夜間空撮とくるのだから、これはどんな客だって乗ります。

と、これだけ書けば、この曲は一昨年のクリスマス・スペシャルで細かく検討したことでもあるので、あとはごちゃごちゃいう必要がないような気がするのですが、なかなかどうして、当ブログではものごとがスッキリ、あっさり、瞬時に終わらないことになっています。

大昔に見たきり(もう20年以上たっているのだから愕く!)で、当時は気づいていなかったらしいのですが(気づいたとしても忘れてしまった)、今回、久しぶりに見直したら、えー、それはないじゃん、とひっくり返りました。ボビー・ヘルムズの声であることは間違いないのですが、ギターをはじめ、トラックは大きく異なっているのです。

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『リーサル・ウェポン』OSTのフロント。ただし、Jingle Bell RockはOST盤には収録されていない。挿入曲はスコアではないから、盤に収録されないこともめずらしくないが、最初と最後のクリスマス・ソングをオミットすると、このスコアは退屈。典型的な「チープ・エイティーズ・スコア」で、シンセの音にはガックリする。オーケストラはどこへ消えたのだ、と毎度毎度、映画館で叫んでいた。まあ、『リーサル・ウェポン』のスコアは、ジョルジオ・モロダーやヴァンゲリスあたりのスコアにくらべればまだしもだったが、どちらにしろ、チープ・エイティーズの産物であることに変わりはなく、マシだというだけで、すぐれているわけではない。

歌い手のキャリアが長く、レーベルを渡り歩いた場合、昔のヒット曲を再録音するというのはよくあることです。ボビー・ヘルムズもレーベルを移っています。Jingle Bell Rockはヘルムズの代表作だから当然ですが、調べてみたら、やはりやっていました。それも二度にわたってです。

いや、シンガーはそんなものだからしかたありません。でも、映画がなぜわざわざ再録音ヴァージョンを使ったのかがわかりません。ときおり、なにかの加減で使用許諾を得られないことがあるようで(『パルプ・フィクション』にド下手ライヴリー・ワンズの無惨なSurf Riderが使われたのが典型的な例。あの映画は大嫌いだが、とくにライヴリー・ワンズのSurf Riderが流れるところでは、心臓麻痺を起こしそうになった。よくまあ、あんなひどい代物を見つけ出したものだ!)、そんなあたりかもしれません。

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Bobby Helms with Jim Reeves

もちろん、出来としてはオリジナル・ヴァージョンのほうがはるかにすぐれています。そもそもオリジナルはキーがDなのに対して、再録音は(クォーターノートなので近似的にいうだけだが)Eで歌っています。この変更もよくありません。オリジナルにあった、クリスマスらしいゆったりとした気分が失われて、なんだかこせこせした雰囲気が感じられます。

しかし、感心するのは、それでもやはりグッド・フィーリンがあることで、その点はボビー・ヘルムズの明るいキャラクターのおかげなのだと思います。

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主人公の二人の刑事、マーティン・リグズ(メル・ギブソン)とロジャー・マートフ(ダニー・グローヴァー)は、重要参考人の家に着く。屋根に雪だるまの人形があることにご注意。

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この爆発はとんでもなかった!

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二人のスタントマンは、予想外の大爆発に愕いたにちがいない。パイロ・テクニシャンだって計算違いをすることはある。映画の撮影はじつに危険だ。

◆ ターニング・ポイント ◆◆
再録音盤を使ったのは大きな失点でしたが、しかし、この曲を冒頭にもってきたのは大正解で、わたしのような人間は、いい曲を使ったというだけで音楽監督に拍手を送り、よし、この映画は見るぞ、という気になります。

いや、そういうのは金を払ったときのことではなく、テレビでなにげなく見はじめたときのことですけれどね。ああいうときというのは、最初の15分ぐらいは、見るか寝るかどっちにするか迷うのですよ。どこで判断するかというと、まずなによりもキャメラの動かし方を中心とした画面作りのよしあしなのですが(ゆったりとしたパーンかなんかで、そのリズムがいいと、よし、と思う)、音楽がいい場合も、よし、ゴーだ、と即決します。

どうであれ、『リーサル・ウェポン』はアクション映画の歴史において、重要な転換点となった作品です。あの当時も感心しましたし、今回見直しても、やはりよくできていると思いました。

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気分よくスタートした映画だが、このショット(空撮で高層フラットの一室をとらえ、そのなかの人物に寄ったところで、このカットにつなげられる)のあたりで、Jingle Bell Rockは終わる。空撮のリズムとはちがうし、話に入ったのだから、歌が終わるのはいい。だが、そのあとどうするかは、非常にむずかしいということは、『狂った果実』のときにも書いた。ここも、水と油のものをぎこちなくつないでいる。シンセだけは勘弁して欲しかった!

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スコアは躓いて失望したが、映像表現には唸った。ほんのちょっと前だったら、高層ビルから人が飛び降りる、という場面では、絵はぜったいにこうはならなかった。表現の質が変わりはじめたのだ。

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いや、シナリオはそれほどいいとは思いません。しかし、メル・ギブソンには目を見張りましたし(1980年だったか、正月二日の満員立ち見で見たきりだが、『マッド・マックス』のときに、これほど身のこなしがよかったという記憶はない)、演出と編集も、留保したいところはある(とくに演出)にせよ、新しい時代の到来を告げる、といってよいレベルです。

アクション映画が現在のようなスピード感を手に入れはじめたのは、『リーサル・ウェポン』のころからだったと記憶しています。各カットが極端に短くなり、無数のカットの積み重ねによって、運動感覚をつくるようになったのです。

この映画からもう一曲と考えていたのですが、例によって時間が足りず、次回に持ち越しとさせていただきます。

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by songsf4s | 2009-11-27 23:57 | クリスマス・ソング