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2012年 01月 26日 ( 1 )
サーチャーズとクリス・カーティスのドラミング、選曲眼、そしてヴォーカル
 
今朝、ツイッターのタイムラインを見ていたら、ある方が「恋のマジック・ポーション」という曲のことをツイートしていて、似たようなタイトルのべつの曲を思い浮かべました。

The Searchers - Magic Potion


マジック・ポーション309番と、だいぶヴァージョン番号(?)は進んでいますが、もちろんこの曲はサーチャーズにとってはアメリカでのブレイクスルーになった大ヒット、Love Potion No. 9の続編です。

もっとも、正編のほうはアメリカのドゥーワップ・グループ、クローヴァーズのヒット(作者はジェリー・リーバーとマイク・ストーラー)がオリジナルだったの対して、こちらはルー・ジョンソンがオリジナルです(作者はバート・バカラックとハル・デイヴィッド)。

なぜ、続編が正編とは異なるライターによって書かれ、関係のないシンガーによって歌われたのか、そのへんの事情は知りません。しかし、歌詞を聴けば、どう考えても、Love Potion No. 9の続編であることは明かです。

Lou Johnson - Magic Potion


I'm keep on mixing that magic potion to stimulate her emotionという脚韻を踏んだラインがなかなかキュートな歌詞です。

以前、オフィシャル・キャロル・ケイ・ウェブサイトの「顧客リスト」(?)に、サーチャーズの名前があるのを見て、ちょっと先入観をもってしまったため、本気で検討したことがなかったのですが、Magic Potionを聴いていて、再び、ドラムはだれだったのかというのが気になってきました。

メイジャー・デビューのときのドラマーはクリス・カーティスという人です。デビュー・ヒットのSweet for My Sweet(ドリフターズのヒットのカヴァー)は正しいクリップがないので(近年の再録音やライヴばかり)、そのつぎのヒット、ジャッキー・デシャノンのカヴァー。

The Searchers - Needles and Pins


Magic Potion同様、精確なショットばかりで、文句なしのドラミングです。半小節分のフィルの使い方もMagic Potionに似ていて、同一のドラマーと措定して矛盾を感じません。

ドラムを叩いたことのない人は、手数の多いプレイヤーを「うまい」と思う傾向があるようですが、わたしはそうは思いません。ドラムはタイム・キーピングが第一の仕事です。昔のドラマーの多くは、走るか突っ込むかするもので、そういう人はどれほど速く叩けようと二流です。正しくないビートは、いくら数を積み重ねても、正しいビートには変換できないのです。

めったにいませんが(ドラマーに限らず、たいていのプレイヤーはタイムが早い)、タイムが遅れるのは最悪で、そういう人は三流ないしは論外です(ザ・バンドのドラマーが代表。異常に遅くて待ちきれず、気分が悪くなる。凡人はライヴでは心拍数があがり、タイムが少し早くなるので、ザ・バンドの場合、ライヴ盤はタイムが改善されている。めったにない奇怪な現象!)。

さらにいうと、ハード・ヒットに慣れたリスナー(わたしもそのひとり)は、ソフトなバックビートを聴くと、なんとなくうまくないような印象をもってしまう傾向もあるようです。

しかし、じっさいには逆です。たしかメル・テイラーが、はじめてヴェンチャーズのセッションで叩いたとき、ハード・ヒットはするなといわれて、むずかしかったといった趣旨のことをいっていましたが、ある程度の強さで叩いたほうがタイム・キーピングが楽で、弱く叩くとミスをしやすいものです。

後年のハード&へヴィーなドラミングの時代から振り返ると、サーチャーズのドラムはうまくないように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、タイムの面でミス・ショットがほとんどない精確なプレイで、同時代のイギリスやアメリカのバンドのドラマーの多くよりずっとすぐれていると考えます。

The Searchers - Don't Throw Your Love Away


Searchers - Someday We're Gonna Love Again


ここまでの四曲、わたしにはすべて同一のドラマーのプレイに思われます。クリス・カーティスが在籍した66年までのシングル曲に関するかぎり、違和感のあるトラックはありません。改めて、このタイムの安定感が、サーチャーズの魅力的ハーモニーの土台だったのだと、強く感じました。つねに、グッド・フィーリンがあるのは、安定したタイムの賜物です。

あれこれクリップを漁っていて、BBCライヴに遭遇しました。これでサーチャーズのドラマーに関する疑問は消えました。エンベッド不可クリップではあるし、アップローダーのコメントをご覧になっていただきたいので、ご面倒でもユーチューブのほうにいらしていただくしかありません。

The Searchers - Magic Potion (live, Chris Curtis on lead vocal)

この「ChrisCurtisFan」というハンドルのアップローダーのコメントによれば、1960年から66年まで、クリス・カーティスはサーチャーズのリーダーであり、シングルA面曲の選択をおこない、B面曲の多くを書き、アレンジでも中心的役割を果たした、のだそうです。そして、サーチャーズのアイデンティファイアともいえる、あのハイ・ハーモニーを歌っていたのも、クリス・カーティスだというのです。

リーダー兼ドラマーといっても、チャレンジャーズのリチャード・デルヴィーのように、ドラムはハル・ブレインに任せて、プロデュースに専念した人もいますが、ライヴを聴いても、タイムは安定していて、クリス・カーティスはスタジオでもプレイしたと、今回、改めて検討して、結論を出しました。

ブリティッシュ・ビートの第一波集団で比較すると、カーティスのタイムはトップでしょう。60年代中盤にはB・J・ウィルソンが登場しますが、タイムだけで云うなら、BJと比較しても、カーティスのほうが精確です。

サーチャーズ・ファンの多くは、彼らの安定感、品のよいサウンド、すばらしい選曲、そして、独特のハーモニーに魅力を感じているはずです。こうしてみると、結局、それは、クリス・カーティスのキャラクターだったのだという結論になります。

ということで、サーチャーズのハーモニーの特徴がよくあらわれた曲を。

The Searchers - It's In Her Kiss


このハイ・ハーモニーはわがフェイヴなのですが、クリス・カーティスの声だったわけです。そのへんのことをよくわかっていなかったのだから、我ながら驚き、また恥じ入りますが。

ライヴ・クリップを少々。

The Searchers - When I Get Home


なるほど、でした。この曲の場合、おおむねマイク・ペンダーとクリス・カーティスのデュエットで、ハイ・パートはカーティスが歌っています。

16分はすこし寸詰まる傾向がありますが(アール・パーマーといっしょで、「それがスタイル」という感じ)、よけいな力を入れず、リラックスして安定したバックビートを叩いていて、この時代のバンドのドラマーとしては異例といっていいでしょう。

The Searchers - Farmer John/Don't Throw Your Love Away (live)


クリス・カーティスは、ハーモニーでフラットしていますし(モニターがないうえに、ドラムを叩いているのだから、同情の余地はおおいにある)、ドラミングは、やはり16分ですこし拍を食っている(とくにストップからの戻りのフィルインの入りが微妙に早い)のがすこし気になりますが、当時のレベルでいえば、そんなのは小さな、小さなキズにすぎず、安定感のある、いいグルーヴをつくっています。

サーチャーズは子どものころに知っていたのはLove Potion No.9だけで、LPは後年の再発で買ったので、後追いなのですが、それにしてももう30年以上聴いてきたことになります。不思議なことに、その間ずっと、音だけで満足し、きちんと歴史を調べたことがありませんでした。

調べてみれば、サーチャーズの魅力というのは、じつは、マイク・ペンダーではなく、クリス・カーティスが中心になって生みだされたものだということがよくわかりました。無精はよろしくありません。

66年にサーチャーズを離れたあと、クリス・カーティスはジョン・ロードと親しくなり、サーチャーズのときのように、卓越した選曲眼を発揮することになります。

ジョン・ロードがディープ・パープルをつくり、この曲をカヴァーすることになったのは、クリス・カーティスの示唆によるものなのだというので、またまた驚きました。

Deep Purple - Hush


自分のバンドがなくなっても、まだ選曲眼のよさは十全に発揮していたわけで、「ぶれない」というのは、国民のすべてがウソだと見破っているいることを承知で、一貫してぶれずにデタラメを言い続けている大うそつき親玉政治屋ではなく、クリス・カーティスのような人に使うべき言葉でしょう。


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サーチャーズ(3枚組)
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サーチャーズ
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ルー・ジョンソン
Incomparable Soul Vocalist Big Top Recordings
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ディープ・パープル
ハッシュ(K2HD/紙ジャケット仕様)
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by songsf4s | 2012-01-26 23:50 | ブリティシュ・インヴェイジョン