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2012年 01月 17日 ( 1 )
東宝映画のOST2種―『白昼の襲撃』(日野皓正)と『さらばモスクワ愚連隊』(八木正生&黛敏郎) その2
 
『白昼の襲撃』の話に入る前に、前回の『さらばモスクワ愚連隊』のサンプルをもうひとつ貼りつけておきます。

サンプル 八木正生「セッション」(『さらばモスクワ愚連隊』より)

記憶というのは欠落したり、薄れたり、いろいろあって、これほど信頼できないものはないのですが、われわれの生活はこれを基礎に成り立っているのだから、驚きます。

映画や音楽なんていうのも、記憶を基礎に、さまざまな比較対照をおこない、いいだの、悪いだの、まあまあだのといっているのだから、なんだか申し訳ないようなものですが、ちょっと資料の助けを借りるぐらいしか、改善のしようがないように思えます。

『白昼の襲撃』のOSTをOさんに聴かせていただく段になって、ああ、あれか、と思った映画は、加山雄三がスナイパーに扮するものだったのですが、データを確認しようとしたら、そんなものは見あたりませんでした。

よくよくフィルモグラフィーを見ると、加山雄三がスナイパーをやるのは、堀川弘通監督『狙撃』(1968年)でした。東宝映画ですが、共演は浅丘ルリ子。

はじめて浅丘ルリ子が日活以外の映画に出ているのを見たのは、植木等主演の『日本一の男の中の男』だった、なんてことを思いだしましたが、そのつぎの他社出演が『狙撃』だったようです。

『白昼の襲撃』も『狙撃』も、封切り当時に見ています。残念ながら、どちらも記憶がうすれて、ディテールは浮かんできません。

加山雄三が、暗殺者というダーティー・ヒーローを演じるにいたったのはどういう理由だったのでしょうか。連想するのはアラン・ドロンが殺し屋になるジャン=ピエール・メルヴィルの『サムライ』です(音楽は『冒険者たち』のフランソワ・ド・ルーベ)。

ジャン=ピエール・メルヴィル監督『サムライ』予告編


『サムライ』には強い感銘を受けました。『サムライ』の日本公開は1968年3月、『狙撃』の封切は同年11月。『ゴルゴ13』も同じ11月に連載がはじまったそうです。

それぞれの作り手たちはなにも意識していなかったのかも知れませんが、すくなくとも受容のレベルにおいては、なにか、こういった傾向をよしとする気分があったのであり、中学生のわたしも、その時代の気分に反応したのだろうと思います。

東宝はアクション映画、アンチ・ヒーロー映画のメッカではなく、この時点で加山雄三にアクション映画のダーティー・ヒーローを演じさせたのは、やはりなにかの意図があったのだろうと思います。

正統的ヒーローの役に戻りますが、『狙撃』は、森谷司郎監督『弾痕』、西村潔監督『豹は走った』(1969年)へ、さらに再び殺し屋を演じた西村潔監督『薔薇の標的』(1972年)へとつながっていきました。『薔薇の標的』以外は封切で見ています。すでに若大将シリーズは見なくなっていて、こういう系統のものだけを選って見ていました。

そういう流れのなかで『白昼の襲撃』(西村潔監督、1970年、東宝)も封切で見ました。しかし、『狙撃』と混同するぐらいなので、ただ「見た」という記憶と、テーマ曲のシングル盤を友だちから買い取った記憶だけが残っています。シノプシスを読むと、『狙撃』のようなプロフェッショナルの話ではなく、アマチュアの犯罪物語のようです。

例によってゴタクが長くなりましたが、音を聴きましょう。『白昼の襲撃』の挿入曲のひとつ。

日野皓正クインテット「スネイクヒップ」(映画『白昼の襲撃』より)


つづいて、シングル・カットされたテーマもどうぞ。こちらはクリップがないので、サンプルで。

サンプル 日野皓正クインテット「白昼の襲撃のテーマ」

「スネイクヒップ」と同系統の、当時の言葉でいう「ジャズ・ロック」タイプのトラックです。

たぶん、1967年からはじまったインパルスの一連のアルバムが嚆矢なのでしょうが、69年にハービー・マンのMemphis Undergroundがヒットしたことによって、この「ジャズ・ロック」といった名前で呼ばれた、ジャズ・プレイヤーによる8ビート、ないしは、非オーソドクス4ビートのサウンドがひとつの潮流になっていました。

いっぽうで、ラロ・シフリンも思いだします。

Lalo Schifrin - On The Way to San Mateo (from a movie "Bullitt")


このような伝統的な4ビートとは異なる、ジャズ・プレイヤーによるロック・ニュアンスの映画スコアというのは、同時多発的なものだったのでしょうが、やはりラロ・シフリンはその代表だったと思います。

4ビートではなく、5拍子ですが、『ブリット』よりすこし前のラロ・シフリンの中間的、折衷的スコアの代表作。

Lalo Schifrin - Mission: Impossible


こういうさまざまなものが、日野皓正の『白昼の襲撃』が生まれる前提、底流になっていると感じます。当時は、流れの真ん中をいくサウンドと捉えていました。つまり、すごく新しい音、というわけではないものの、これからはこういうのがふつうでしょ、といったニュアンスです。じっさい、ラロ・シフリンはDirty Harryでこのスタイルを確固たるものにし、大きな流れを形作ることになります。

いや、そこまでいくとお先走りになってしまうので、もう一曲、『白昼の襲撃』からサンプルを。こんどはオーソドクスな4ビートです。

サンプル 日野皓正クインテット「海」(映画『白昼の襲撃』より)

主としてドラムとベースが理由なのですが、いまになると、こちらのタイプのほうが好ましく感じます。ドラムの日野元彦はすこしタイムが早く、16分などで一部のビートを雑に叩く傾向があり(やはりジャズ・ロック系のスコアをたくさんやったジョン・グェランに似ている!)、また、キックの使い方も違和感があるので、テンポの遅い曲のほうが安心して聴けます。

クリップを探していて、『白昼の襲撃』の時期の日野皓正クインテットのライヴにぶつかったので、それも貼りつけておきます。

日野皓正クインテット with 井上忠夫、三原綱木「The Time And The Place」


やはり、ドラムのタイムが少し早いのが気になりますが、時代の気分がストレートにあらわれたサウンドだと感じます。

最後に、またまた記憶の話に戻ります。ご記憶の方がいらしたら、ぜひコメントしていただきたいのですが、日野皓正をわれわれ子どもが知ったのは、なにかのテレビ番組でのことだったのではないでしょか。日野皓正クインテットがハウス・バンドで、毎回なにかプレイしたという記憶があるのですが、ひょっとして末期の「ビート・ポップス」かもしれません。はっきり思い出せなくて、なんとも気色が悪いったらありません!


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黛敏郎および八木正生(CD)
さらばモスクワ愚連隊(オリジナル・サウンドトラック)
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日野皓正クインテット(CD)
白昼の襲撃(オリジナル・サウンドトラック)
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ラロ・シフリン
Bullitt (1968 Film)
Bullitt (1968 Film)


フランソワ・ド・ルーベ(『サムライ』と『冒険者たち』の2ファー)
Le Samourai/Les Aventuriers
Le Samourai/Les Aventuriers
by songsf4s | 2012-01-17 23:46 | 映画・TV音楽