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2012年 01月 10日 ( 1 )
内田吐夢監督『血槍富士』(東映)と小杉太一郎のシンフォニック・ジャズ・スコア その1
 
年末年始は、忠臣蔵関係を中心に時代劇を数本見ました。いずれも一定ラインより上の出来でしたが、とりわけ二本、感銘を受けたものがありました。その二本とも、片岡千恵蔵主演、というのが、なんだか妙な感じです。

片岡千恵蔵が大スターだった時代を知っているのは、わたしの世代が最後ぐらいでしょう。そういう俳優の主演した映画を取り上げるのは、やや気が引けますが、そのうちの一本『血槍富士』を見てみることにします。内田吐夢の戦後第一作にして代表作のひとつ、という点で、いまも「現役」の映画といっていいだろうと思います。

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『血槍富士』(1955年)は道中もの、ロード・ムーヴィーに分類できるでしょう。ただし、道中でつぎつぎといろいろな人物や事件に出合う、というより、「グランド・ホテル」形式に近いタイプです。

同じ道筋を旅するさまざまな人々の人生を輪切りにしてみせる話で、ホテルなどの閉じられた場所に居合わせた人々の人生模様を描く「グランド・ホテル」形式を、ロード・ムーヴィーに変換した、といっていいだろうと思います。

旅をするのは、江戸に名代の茶碗かなにかをもっていく武士(島田照夫)とその槍持ち(片岡千恵蔵)および供の小者(加東大介)というのが第一。

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この三人連れと旅路をともにするのは、江戸に出て侍になるというみなし子、旅芸人の母と娘、巡礼(進藤英太郎)、あんま(小川虎之助)、挙動不審の男(月形龍之介)、御上のご用聞きもつとめる小間物屋(という設定はかなり苦しい。いや、そういう人物設定自体はかまわないが、どこのだれに使われているかが問題。その地元でしか活動できないはず)、父と年頃の娘などです。こうした人々の運命が、旅をつづけるうちに互いに絡まり合って話が展開していきます。

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プロットを追う前に、スコアのことを少々。それが目当てで見たわけではないのですが、タイトル・ロールがはじまってみたら、音楽が面白くて、ほほう、でした。

サンプル 小杉太一郎「血槍富士メイン・タイトル」

昔の時代劇としてはノーマルに感じられる入り方をするのですが、途中からシンフォニック・ジャズが混入してくるところで、こりゃいいや、と手を叩きました。メイジャーに転調するところや、フレンチ・ホルンの使い方なども、おおいに好みです。

こういうのは微妙なので、当方の勝手な思いこみ、または、たんなる偶然かもしれず、小杉太一郎がシンフォニック・ジャズを意図したかどうか、タイトル・ロールの段階では判断を留保したのですが、話に入ったところ(上掲のサンプルで、台詞が出てくる少し前)で、シンフォニック・ジャズを意図したのだとはっきりわかりました。

これは、開巻直後、片岡千恵蔵扮する槍持ちが、足にまめができて歩けなくなり、心配した主人が膏薬を渡して、あとからくればよい、というところで、この侍が情け深い人間であることを印象づけるシークェンスです。

ベニー・カーターがプレイしたといわれる、『パリのアメリカ人』を思い起こさせるアルト・サックスの使い方に、はっきりとアメリカ映画のスコアの影響があらわれています。

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露骨な4ビートではないにせよ、時代劇にシンフォニック・ジャズ的なスコアをつけることには、いろいろな立場があるでしょうが、わたしは、とくに違和を感じず、なかなかいいじゃないか、と思って見ました。

いずれにしても、仔細に検討すれば、純粋に邦楽ないしは邦楽的テイストの音楽だけで貫かれた時代劇など、まずないはずです。他の映画ジャンルと同じように、時代劇のスコアもまた、きわめて雑食的なものなのです。

今日は時間があまりとれなかったので、プロットについては、後半の音楽と合わせて次回送りにさせていただきます。


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by songsf4s | 2012-01-10 23:54 | 映画