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2011年 11月 19日 ( 1 )
The Best of Jim Gordon補足6 E.C. was NOT there
  
今日こそはPet Soundsのゴールを目指そう、などと思っていたのですが、昨夜の k_guncontrol さんのコメントにお答えしようとしているうちに考えが変わりました。

Pet Soundsはまた棚上げ、ジム・ゴードンがプレイしたエリック・クラプトンのエポニマス・タイトルド・ソロ・デビューをやります。

まず、k_guncontrol さんのコメントをコピーしておきます。三つのパラグラフがありますが、本日検討するのは第一パラグラフのみ。

「Delaney and Bonnieのアルバム、特に "On Tour" で強烈な躍動感が聞けますが、同じ様なメンバー構成のEC某のファースト・ソロは何故あれほど躍動感に乏しい凡作なのか、ということが昔から今日まで一貫して不思議です。楽曲が不出来ということは無いと思うのですが」

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先にお断りしておきます。エリック・クラプトンについてわたしが感じるのは、不快感と憐憫の混合物です。不快感はギターについて、憐憫は歌について。

これほど歌えない人が、ギターを弾く仕事のついでに歌うようになったのは、ご本人にとってはじつに、そしてリスナーにはそれに倍する不幸だったと思います。

ということで、前の段落でファンにはお帰りいただけたでしょうから、ここから先はリラックスして「うちうち」の話を書きます。まあ、できるだけ偏見と侮蔑と不快感を捨て、冷静に書くつもりですけれどね。

わたしがクラプトンの関係した盤を聴く理由は二つ。ブラインド・フェイスにはスティーヴ・ウィンウッドがいた、ソロ・デビューとドミノーズ時代にはジム・ゴードンがいた、です。

まあ、最近は寄る年波、ひどく寛容になってきて、中三のとき、クリームのOutside Woman Bluesを聴いて、Sunshine of Your Loveはダサダサだけど、こっちは悪くないじゃん、と思ったことを書いておきます。

Cream - Outside Woman Blues


ありゃ? 記憶のなかでは悪くないんですが、現物はやっぱりダサダサじゃないですか。クラプトンもひどいけれど、ドタンバタン暴れているだけのドラムのひどさはその数段上をいっています。

まあ、中三の小僧が、Sunshine of Your Loveよりはマシじゃん、といったにすぎず、たいしたことじゃないので、ご放念あれ。I Feel Freeもそこそこじゃないかと思ったのですが、もうやめておきましょう。

ブラインド・フェイスは軽い失望でした。スティーヴ・ウィンウッドはまずまずなのですが、トラフィックのときのように、隅々までウィンウッド的なもので満たされていたわけではありませんでした。

クラプトンのほうは、天才少年と同じバンドでやってみたら、かつてのクラブでのジャムの子どもっぽいライヴァルではなく、とほうもないシンガーが出現していたことに気づき、すっかり萎縮してしまったため、バンドのダイナミズムというものが生まれませんでした。ジム・カパーディーやデイヴ・メイソンのような図太さはなかった、繊細で小心な人間なのだ、と褒めておきましょうかね。

かくしてウィンウッドはひとりになり、John Barleycornという、地味ながら、大人への道を歩みはじめたことを示す、チャーミングなアルバムをつくり、クラプトンはウィンウッド・ショックと道ならぬ恋にさいなまれて、ディレイニー&ボニーのたんなる雇われギタリストになることに心の平安を見出します。

以上、講釈師の見てきたような嘘っぱちでした。ここからが本題。

最初のソロ・アルバムを聴く前に、まずラジオからこの曲が流れてきました。

Eric Clapton - After Midnight


悪くないと感じました。いま聴いても、これだ、なんて叫んだりはしませんが、そこそこの出来だと思います。

リズム・セクションは、ピアノがリオン・ラッセルであることをのぞけば、デレク&ドミノーズと同じ、ジム・ゴードン、カール・レイドル、ボビー・ウィットロック(オルガン)です。しかし、ホーンやコーラスのせいもあって、ドミノーズとはずいぶん距離のあるサウンドになっています。

いちおう、J・J・ケイルのオリジナルを置きます。大人としては「悪くない」と思いますが、子どものときに聴いたら、あまり面白いとは思わなかったでしょう。

J.J. Cale - After Midnight


そのあと、アルバムを聴きました。ハイスクールの寮で、後輩が買ってきたのをざっと聴いただけだから、通り一遍の印象ですが、面白くないな、と思いました。

これはシングルになったのだったか、そのソロ・デビューから一曲。

Eric Clapton - Let It Rain


こちらは、管もなければコーラスもなし、ドミノーズに近いノーマルなコンボです。しかも、曲も、ドミノーズのレパートリーとして、やがて何度もプレイされ、In Concertでは、ジム・ゴードンが圧倒的なプレイをすることになります。

しかし、このスタジオ・ヴァージョンにはなにかが足りません。ドゥエイン・オールマンだ、というご意見には、相応の正当性を認めつつ、それはここでは除外します。

簡単にいえば、足りないのはジム・ゴードンです。まったくの別人のように聞こえます。それはなぜなのか? そこがよくわかりません。

人間だから、好不調というのはあるでしょう。ジミーもまだ、未熟なところがあった、ともいえるかもしれません。しかし、すでにすごいプレイをした盤がいくつかあり、まさに才能が輝きはじめた時期です。

ジム・ゴードンの特徴は軽快さです。アール・パーマー、ハル・ブレイン、ジム・ケルトナーといった、ハリウッドの同時代のドラマーに比較して、もっとも軽快なサウンドをもっていました。

それが、Let It Rainや、このアルバムに収録された他の多くの曲では、ひどく鈍重に聞こえます。だるいビートです。

これがいちばんましなビートでしょうか。

Eric Clapton - Bottle Of Red Wine


Eric Claptonというアルバムは、録音場所がよくわかりません。二枚組デラックス盤には、LAはヴィレッジ・レコーダー、ロンドンはアイランドとオリンピック・サウンドの二カ所となっていて、どのトラックがどこというクレジットはありません。

エンジニアは、スタジオとは関係なく、ビル・ハルヴァーソンひとりがクレジットされています。プロデュースとアレンジはディレイニー・ブラムレット。

ボーナスとして収録されたトラックはいずれもハリウッドで、A&Mとサンセットがクレジットされています。

そのボーナスから、キング・カーティスとの共演をいってみます。カーティスのアルバムに収録されたものです。ボビー・ウィットロックのいないドミノーズに、ディレイニー・ブラムレットがリズム・ギターで入った形で、録音はLAのサンセット・サウンド。

King Curtis - Teasin'


やはり、ジム・ゴードンのベストに入れるような出来ではありませんが、すくなくともLet It Rainよりは上出来です。いや、それにしても、やはりジミーのプレイとサウンドが重い。なぜこの時期のスタジオ録音はこうも重いのか、謎です。

うーむ。よくよく考えたのですが、セットを替えてみた、ぐらいしか解釈を思いつきませんでした。スネアのチューニング自体、ふだんよりやや低めです。

そのつぎのLaylaは、しばらく借りて、数回、聴きました。曲としていいと思ったのは、Why Does Love Got to Be So Sad。

Derek and The Dominos - Why Does Love Got To Be So Sad


あらら。改めて聴くと、やっぱりセットが違うのではないかと感じます。スネアもフロアタムも、クラプトン・デビューとは、まったく違う音です。こちらはドラム・デヴィルが誕生しつつあることを感じるドラミング。

いやはや、うんうん唸ってばかりで、いっこうにタイピングが進まず、思案投げ首です。これほど不思議なアルバムはありません。

いつまでも考えていてもしかたがないので、はじめのk_guncontrol さんのコメントに戻ります。クラプトン・ソロ・デビューは「なぜあれほど躍動感に乏しい凡作」なのか?

わたしの観点からは、浅いレベルではいたって単純な現象です。ジム・ゴードンのプレイが冴えない、これだけしか理由はありません。

しかし、なぜあれほどプレイヤーがこんなくすんだビートばかり叩いているのか、ということについては、さっぱりわからない、としかいいようがありません。

それはエンジニアリングのせいなのか? イエス&ノーです。エンジニアリングもいいとはいえませんが、それだけで、これほど鈍重なサウンドになるとは思えず、やはり、プレイ自体にも、セットないしはチューニングにも、おおいに問題があったと考えます。

念のために記しておきます。今回は2種類のミキシングを収めた2枚組デラックス版を参照しました。Let It Rainなどは、ディレイニー・ブラムレットのミキシングのほうがいいと思いますが、しかし、それは些末なことにすぎず、ミックスが違ったからといって、ジム・ゴードンのプレイの印象がよくなることはありませんでした。

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ひとつ、思いだしたことがあります。当時、このクラプトンのデビューは評判が悪く、いまでは名盤とされている、とk_guncontrol さんがおっしゃっていますが、その点について。

われわれ子どもの印象は、なんだか爺むさい、というあたりでした。クリームは、よかれ悪しかれ、好こうが嫌おうが、きわめてロック・バンド的で、ティーネイジャーにはわかりやすく、ちょっと聴けば、好きか嫌いかすぐに答えが出ました。

しかし、ソロ・デビュー盤は、あまりロック的な手触りがなく、われわれの知らない別種の音楽のように感じられました。ちょっと聴いただけで、「関係ない音楽」と思いました。

いま聴いても、クラプトンの盤に共通する、色気のない、悪い意味で乾いた手触りが明白で、ガッツとハートのない、無意味無価値な音の並びにしか思えません。

だから、当時、評判が悪かったというのは、ごく当たり前の現象だと思います。k_guncontrol さんのおっしゃるとおり、その後、評価がひっくり返ったことのほうが間違いです。

これまたよくある現象で、後年の名声と人気から、昔の作品を逆算してしまうという過ちにすぎないでしょう。


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by songsf4s | 2011-11-19 23:56 | ドラマー特集