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2011年 10月 15日 ( 1 )
The Beatles Studio Sessionsを聴く その6 Help! 前編
 
The Beatles Studio SessionsでもっているのはHelp!までなので、そろそろこのシリーズも大詰めです。

むろん、他のブートを使って、この先をつづけることもできます。しかし、建前でなく、あるいは留保をつけずに、ただただ楽しいと感じるのはRubber Soulまでですし、White Album以降は興味を失い、他のものを聴いていたほどなので(中高生は忙しいし、買えるLPもかぎられていた。60年代に生きていれば、ホットでなくなったものをいつまでもかまっている余裕はなかった。忙しい時代だったのだ)、いまも特別な思いはありません。

いや、Help!はMy first Beatles LPなので、いいも悪いもあるか、ただただ愛しい、なのです。どうであれ、生涯にHelp!のA面ほど徹底的に聴いた盤はありません。回数においても、密度においても。

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ゴタクはともかく、オフィシャル盤のトラック・リスティングを。

1. Help! *
2. The Night Before *
3. You've Got to Hide Your Love Away *
4. I Need You *
5. Another Girl *
6. You're Going to Lose That Girl *
7. Ticket to Ride *
8. Act Naturally
9. It's Only Love *
10. You Like Me Too Much *
11. Tell Me What You See
12. I've Just Seen a Face
13. Yesterday *
14. Dizzy Miss Lizzie *

(末尾にアスタリスクを付した曲はThe Beatles Studio Sessionsになんらかのヴァージョンが収録されたもの。ほかに、Yes It Is、I'm Down、Bad Boyといった同時期のシングル曲やThat Means a Lot、If You've Got Troublesなどの未発表曲も対象になっている)

それでは、映画『ヘルプ!』のタイトル・ソングを映画からのクリップで。

"Help!" (opening sequence)


どこかの宗教団体が、生け贄のしるしに指輪を使っているのです。ところが、生け贄に決まった女性が、リンゴのファンだったために、その指輪をリンゴ(ご存知のように指輪が好きなのでRingoという綽名になった)にプレゼントしてしまったことから起こる珍騒動(むろんジェイムズ・ボンドのファースのつもりだろう)を描いた映画で、指輪がない、いったいどこへやった、というところから、それがリンゴの指にはまっているのをしめすショットへ移り、歌がはじまります。

最初の映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』は、モノクロで、ドキュメンタリー・タッチ、シネマ・ヴェリテ的スタイルでしたが、『ヘルプ!』は一転して、カラーのアクション・コメディーです。

批評家は渋いものを好むので、映画としての世評は『ア・ハード・デイズ・ナイト』のほうがはるかに高いのですが、わたしはどちらも好きですし、どちらも同等に価値があると思っています。

とりわけ、プロモーション・ヴィデオの先駆として見るならば、『ヘルプ!』の先進性は明らかでしょう。アイドルをアイドルらしく見せる「動くピンナップ」としては、『ヘルプ!』のほうが上です。

アルバムではなく、曲のほうのHelp!は1965年4月13日に録音がおこなわれ、12テイクが記録されています。それでは別テイクへとまいります。

The Beatles - Help (take 1 and 3)


というように、アルバムHelp!からは、トラックとヴォーカルの録音が分離されたことが、この曲のテイクにもあらわれています。ヴォーカルが加えられているのはテイク9以降で、結局、テイク12がOKとなったと、マーク・ルーイゾーンはThe Complete Beatles Recording Sessionsに書いています。

それでは2種類のテイクを。

サンプル The Beatles "Help!" (take 7, backtrack)

サンプル The Beatles "Help!" (take 9)

テイク9はジョンのヴォーカルがリリース・ヴァージョンとは異なります。Help!は、She Loves Youと同じく、コーラスから入り、ヴァースがあとになるアレンジですが、そのコーラス(Help! I need somebody以下の部分)でのジョンのヴォーカルは、リリース・ヴァージョンでは、ジョンひとり分ですが、テイク9では、同じラインをジョン自身が繰り返すダブルになっています。

ヴォーカルのダブル・トラッキングはビートルズの録音ではごくふつうのことで、シングルのほうがすくないほどです。Help!の場合も、リリース・ヴァージョン、テイク9ともに、ヴァース(When I was younger以下の部分)ではダブルを使っています。

当然の慣行として、コーラスでもジョンの声をダブルにしてみたものの、ポールとジョージのコーラスとの関係からいっても、うまくはまらず、ここはダブルではないほうがいい、という判断になったのではないでしょうか。妥当な決定だったと思います。

時計を見て、今夜はもう一曲が限界だな、とあたくしも妥当な決定をしましたw

2曲目はシングルのほうで、Yes It Isとまいります。これはリリース・ヴァージョンではなく、Anthology収録ヴァージョンのクリップからどうぞ。

The Beatles - Yes It Is (take 2 and 14, edited)


Anthologyでこれを聴いたときは、ええ、はじめはこんなだったのか、と驚いていたら、すっとなじみのアレンジへとすべりこんでいって、おお、さすがはジョージ・マーティン、と思いました。

この曲はHelp!セッションのごく早い段階、1965年2月16日に録音されていて、テイク14がOKとされています。

テイク2のときだけ、ふざけたのかと思っていたのですが、どうもそうではないような気がしてきました。

The Beatles - Yes It Is (take 1)


まだ歌詞に穴があって、ナンセンス・シラブルで置き換えているので、冗談のように聞こえます。でも、全テイクを繰り返し聴いているうちに、そうか、ジョンは、じつは、本心からこういう風に歌いたかったのかもしれない、と考えるに至りました。

ジョンはPlease Please Meについて、あれは元々ロイ・オービソン風のスロウ・バラッドだったのに、ジョージ・マーティンの考えで(たしかポールも賛成だったような)あのように変更されてしまったといっています。

ソロになってからのジョンの、あの曲、この曲を考え合わせると、つまりジョン・レノンというのは「そういう人間」「そういうシンガー」だったのだ、という結論が見えてきます。

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思えば、This Boyだって、ほんとうはひとりで、肩をすぼめるように歌いたかったのではないでしょうか。I'm a Loserから彼の変化がはじまったというのが定説のようになっていますが、それはどうかな、と思います。

まあ、たしかに内心をパブリックにしていくのはあのあたりからかもしれませんが、でも、初期からずっと彼の曲には暗さと寂しさが揺曳しています。You've Got to Hide Your Love Awayは、ディランの強い影響下に生まれた、なんて、ジョンの「あれは俺のディラン・ソング」とかいう説明を鵜呑みにした定説を追認していいものかどうか……。

わたしはディランを目くらましに使ったと思います。本音をストレートにさらすのはイヤだったのではないでしょうか。This Boy、Baby's in Black、Yes It Isを並べると、なんだかブライアン・ウィルソンのプライヴェートなバラッドの系譜へとトンネルがつながっているような気がしてきます。

次回、もう一度、Help!関連曲を検討します。


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by songsf4s | 2011-10-15 23:55 | ブリティシュ・インヴェイジョン