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2011年 10月 11日 ( 1 )
The Beatles Studio Sessionsを聴く その2 Please Please Me
 
前回に引きつづいてのThe Beatles Studio Sessions、今回はひとつ前に戻って、デビュー・アルバムのPlease Please Meです。

確認のために、当たり前の事実を少々。その後、事情が変わってしまいますが、昔はまずまちがいなく、ルーキーはシングルでスタートし、ヒットが出れば、それcash inだ、というので、アルバムを録音しました。

出来星のスターなどというのは、あっという間に消えるものだったので、キャッシュ・インにおいては、なによりもタイミングが重要だと見なされていて、人気がしぼむ前に急げと、準備もへったくれもなく、スタジオに入るのが当たり前でした。

かくして、Please Please Meをシングル・ヒットさせた四人のルーキーは、手持ちの曲だけでスタジオに押し込まれ、すでにシングルとしてリリースした4曲のほかに、アルバムをつくるのに必要なあと10曲を、一日のセッションで録音することになりました。

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それではPlease Please Meのトラック・リスティングを。

1. I Saw Her Standing There *
2. Misery *
3. Anna (Go To Him)
4. Chains
5. Boys
6. Ask Me Why *
7. Please Please Me *
8. Love Me Do *
9. P.S. I Love You
10. Baby It's You
11. Do You Want To Know A Secret *
12. A Taste Of Honey *
13. There's A Place *
14. Twist And Shout *

(末尾にアスタリスクを付した曲は、Studio Sessionsになんらかのヴァージョンが収録されたもの)

ジョージ・マーティンの考えは、ビートルズのライヴをそのまま録音する、というものだったので、当然ながら、のちのアルバムのように、レコーディング中にアレンジが大きく変化して、テイク・カウントがリメイクになるといったことは、このデビュー・アルバムでは起こりませんでした。たんに、いいテイクが得られるまで、同じことを繰り返しているだけといっていいでしょう。

それではデビュー盤のオープナーのリリース・ヴァージョンから。エンジニアが曲名をSeventeenといっていますが、これはI Saw Her Standing Thereのワーキング・タイトルです。ライヴでもそのように紹介していたのではないでしょうか。

The Beatles - I Saw Her Standing There (mono)


たとえばハル・ブレインのカウント・インは形式が決まっていて、つねにきちんとやっています。しかし、ビートルズはテイクのたびにちがうし(とくにジョン)、ときには、口のなかで「two, three, four」などとつぶやいているだけのものもあります。身振りだけでも通じるのだから、それでかまわなかったのでしょう。

では、ただのカウント・インまで有名になってしまった、ビートルズの最初のアルバムの劈頭を飾る曲の、そのまたテイク1を。

サンプル The Beatles "I Saw Her Standing There" (take 1)

I Saw Her Standing Thereのカウント・インは、自然なものではなく、曲の一部として、あとから演出されたものだったことが、このテイク1のノーマルなカウント・インでわかります。

ライヴ感のあるカウント、などという奇天烈なことを書いているクリップがあって、よせやい、ライヴのカウントなんて、はっきり聞こえないようにやったり、ジェスチャーやアイ・コンタクトだったりするのがふつうだ、マイクに向かってはっきりカウントしたのは演出にきまってるじゃないか、と思ったのでした(もっとも、ビートルズは、歓声がうるさくて声など聞こえないので、ブーツで思いきり床を踏みならしたりしていたが)。

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初期のビートルズの不安定なタイム、よりスペシフィックにいえば、突っ込んだり走ったりする傾向は、このI Saw Her Standing Thereにもはっきりあらわれていますが、主としてポールの、そしてジョンのヴォーカルによって、その欠点を補い、結果的におおいなる魅力をたたえた曲になっています。

リンゴのドラミングとジョージのギターはのちのテイクのほうがいくぶんか改善されますが、ヴォーカルに関しては、このテイク1はかなりの出来で、テイク2より上です(テイク2はリンゴもかなり危ない)。いずれにしても、すでにライヴではイヤというほど歌っていたので、手に入ったものです。

I Saw Her Standing Thereは、それなりに完成した状態で録音に入っていますが、今度の曲は、悪い意味でスリリングです。

The Beatles - There's a Place


いや、それなりに好きな曲で、このリリース・ヴァージョンが悪い意味でスリリングだといっているわけではありません。初期テイクを聴くと、よくまあ、こんな状態からあそこにたどり着けたものだ、と感心してしまうのです。

このアルバムのリンゴのドラミングは、彼の不安定さがストレートにあらわれたものが多いのですが、There's a Placeのフィルインはおおむねうまくいっています。どのテイクが、というのではなく、どれもエンディングのフィルインで大きなミスはしていません。

このへんがバンドのドラマーの不思議なところで、要するに、得手不得手があり、どんなタイプでも万遍なくうまくできるわけではなく、ツボにはまればいいプレイをする、ということなのでしょう。

サンプル The Beatles "There's a Place" (take 2)

わたしは初期ヴァージョンをべつのブートでもっていたので、いまさらびっくりしたりはしませんが、はじめてこのヴァージョンを聴くと、あらら、となるでしょう。イントロからして、こんなんで大丈夫か、というショボさですからね。

それがリリース・ヴァージョンではちゃんとああなったのだから、ジョージ・マーティンがしっかり仕事をしていたことがわかります。オーヴァーダブ以前の、ジョージのギターのみによるイントロでは話になりませんが、ハーモニカを加えることによって、印象的なイントロに化けているのです。

それはギター・コードだけではじまるMiseryでも同じで、ジョージ・マーティンは四人に自由にやらせておいて、オーヴァーダブやテープ編集で補強可能かどうかをつねに検討していたのでしょう。例によってリリース・テイクから。

The Beatles - Misery


I'll Get Youなどがその典型ですが、初期のビートルズは、必要もないのに、よくメイジャー・コードに6thの音を装飾として入れていました。Miseryでもジョンは6thを入れています。これはすぐにやらなくなってしまうため、結果的に、初期のトラックだけの特徴となり、いまでは懐かしく感じます。

サンプル The Beatles "Misery" (take 7)

この状態で録音に入ったということは、ジョージ・マーティンは当然、イントロはあとで作り直す考えだったのだろうと想像します。

この別テイク集を聴いて思ったのは、基本的なアレンジは、彼ら自身が自分たちで考えていたのだろう、ということです。ジョージ・マーティンは、はじめから、このようにやれ、と指示するわけではなく、彼らにやりたいようにやらせたうえで、製品として必要な基準を満たすための補綴を提案していったのでしょう。ビートルズにはそれがもっとも適切なプロデューシング・スタイルだったのだろうと思います。


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by songsf4s | 2011-10-11 23:33 | ブリティシュ・インヴェイジョン