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2011年 09月 08日 ( 1 )
The Better of the Dave Clark Five 最後はベスト・オヴ
  
三島由紀夫の「太宰が浮かんで安吾が沈むとは、石が浮かんで木の葉が沈むようなものだ」というせりふはご存知でしょう。はじめてこれを読んだとき、太宰嫌いのわたしは快哉を叫びました。

デイヴ・クラーク・ファイヴが沈んだのも、わたしにとっては木の葉が沈むような椿事でした。ロッカー大得意、バラッド秀抜、リードヴォーカル超絶、ソングライティング卓越、ドラマー派手、ほかになにがいるのだ、というほどすべてを併せ持っていたのに、ユニフォームを着た、エド・サリヴァンがひいきにした、リードギターが15分もつづく退屈なソロをしなかった、といったつまらない理由で忘却されたのは、ロックンロールの歴史における最大の意外事です。

ロン・ライアンのDC5回想は示唆に富んだ面白いものでした。なによりも、DC5はキャンプまわりの芸人のなかでトップ・ランクだった、というのははじめての知見で、そうだったのか、と膝を叩きました。

ビートルズやキンクス以下、みな馬鹿げた契約をして、働いても働いても、マネージメント・オフィスとレコード会社だけが儲けていた時代に、二十一歳だったのでしょうか、自分のバンドをセルフ・マネージメントしていた若者が、EMIを相手に、なぜあれほど強硬というか巧妙というか、すばらしい交渉をやってのけられたのか納得がいきませんでした。

しかし、USベースの稼ぎ頭だった、とわかったら、だいぶ像がはっきりしてきました。キャンプ回りで有名だったということは、それだけですでにおおいに有利な立場にあります。会社のほうから契約「してもらいに」いく状況です。

もうひとつ、大いに稼いでいたのなら、自分でスタジオ・タイムを負担し、レコード会社の助けなしに原盤制作できたのも当然だったことになります。これで疑問解決です。

下手な考え休むに似たり、本日の一曲目は当時としては究極のラウド&ヘヴィーだった初期のヒット。

The Dave Clark Five - Any Way You Want It


このシリーズではバラッドを中心に並べてきましたが、リアルタイムのファンの多くは、DC5といえば、こういうタイプのサウンドを思い浮かべるのではないでしょうか、とくに初期はこのタイプのシングルがずらっと並びます。

マックス・ワインバーグは、この曲のとんでもないエコーが気になり(だれだって気になる)、御大に直接たずねています。DCは笑いながら、スタジオの裏手にいいコンクリートの壁があってね、と種を明かしていました。

録音というのは、そういうものであってほしいものだ、とわたしも笑いました。なんとかすごい音が録れないかと、みな変なことをやったものです。卓の前に坐っているばかりが録音ではないんだぜ、と思います。

いや、いまは卓の前ですべてを生み出せなければ、エンジニアとして一流ではないのでしょう。それは理解できますが、年寄りとしては、昔の音のほうに、やはり味わいを感じるというだけです。

同じタイプのトラックで、だれもが記憶しているのは、このコントゥアーズのカヴァー。いや、オリジナルなんか鎧袖一触、小指の先で吹っ飛ばすほど、マイク・スミスのヴォーカル・レンディションとDCのサウンドづくりは強力です。

The Dave Clark Five - Do You Love Me


わたしの観点からは、イントロ・ドラム・リックは、一打足りないのですが、あれ、足りないじゃん、とチラッと頭の片隅に引っかかるところが、かえってフックになっています。

計算したのでしょうかねえ。いや、しまった、と思ってから、プロデューサーとして、ミスはつねに魅力の一部、と考え直したのかもしれません。インタヴューで、しきりにドラミングのミスの話をしていましたから。

いまになるとわかりにくいかもしれませんが、当時としては、とてつもなく音圧の強いサウンドで、イギリスのみならず、アメリカを見渡しても、これほどすごい音を作っていた人はほかにいなかったのではないでしょうか。DCが私淑したスペクターだって、これほどの厚みは実現していません。

アーティスト・イメージというのは馬鹿にならないもので、反逆的ポーズなんていうのに、われわれ子どもはコロッと騙されたりしました。しかし、ユニフォームを着て、身奇麗にし、深々とお辞儀をして、にっこり笑い、手を振るのも商売なら、体制を嗤い、客を足蹴にするのもまた商売、どちらも商売にすぎません。

だったら、わたしは、これは芸術よ、なんていって盤を売りつける詐欺師より、これはただの商品、それ以上のものではない、よけいな期待はするな、とはじめから宣言して商品を売りつける商売人のほうが好きです。お芸術商人は陰湿で不愉快です。偉そうにするのは、タダで盤を配ってからにしてもらいたいものです。

ずっとバラッドを中心にやってきたので、もはやその系統の曲に大事な積み残しはなく、自然にロッカー、シャウターへと向かいます。つぎは、わがDC5フレンド、キムラセンセがコメント欄で、これがマイク・スミスのベストと断じられた曲を。

The Dave Clark Five - Concentration Baby!


わたしは、フィル・スペクターの強い影響下でつくられていた時期のDC5に執着がありますが、マイク・スミスの力量がこの曲に十分に発揮されているという点では、まったく異論がありません。

ジョン・レノンが一度だけDC5に言及したことがあります。「自分たちの曲でもっとも気に入っているのはどれか?」という記者の質問に、この曲をあげました。

The Dave Clark Five - Glad All Over


質問がアホだから、うんざりして、ビートルズの曲ではなく、そのときヒットしていた他人の曲をあげたのでしょう。でも、ほかにいくらでも曲があるのに、DC5のGlad All Overを選んだということは、それなりに意味があったのではないでしょうか。

Glad All OverはDC5の最初の大ヒットですが、すでにそのサウンドの特徴は明瞭にあらわれています。卓越した楽曲とアレンジメント、エコーを駆使した録音、ストレートで力強いビート、マイク・スミスの圧倒的ヴォーカル、コーラスというより、厚い「集団ヴォーカル」の突進、こういったものにプラスすることの、甘みの淡いあっさりした叙情性のある(これまた「集団ヴォーカル」による)バラッド群によって、彼らは多くのヒットと、忘れがたいオブスキュア・トラックを生みました。

もう一曲、ごく初期のストレート・ロッカーを。

The Dave Clark Five - Thinking of You Baby


どこからこういうアレンジが生まれことやら! ブライアン・ウィルソンも、ときおり、絶句するようなアレンジをしますが、DC5も、こうすればこうなると、計算があったのだろうか、と考え込んでしまうアレンジがかなりあります。このThinking of You Babyも、よくぞこんなグルーヴを発明した、と思います。

これまで、デニス・ペイトンのサックスにふれていないことを思いだしました。DC5の場合、ノーマルなブロウ・テナーもやらないではありませんが、サックスの主な用途は、ベースとやキック・ドラムと協力して、厚みのある低音部をつくることです。

DC5は、リーダーのDC以外が、だれも目立とうという気がなかったようで、いまさらのように、チーム・ワークのよさに感心します。とりわけ、デニス・ペイトンは地味な仕事をきっちりやっています。

当時だって、すごい音だとは思っていましたが、いま、そこにある、トランジスター・ラジオから、当たり前のように流れてきた曲でもあったので、DC5の特殊性をほんとうの意味で感じ、理解していたとはいえなかったのだなと、今回、すこし距離をとりながらまとめて聴き直してみて、改めて思いました。

まだヒット曲の積み残しがあるのですが、べつにすべてを網羅しなければならないというものではないし、そもそも、ノン・ヒットにスポットを当てようと思ってはじめたことなので、そろそろ店じまいにします。

最後の曲はBecause、なんていう手もあったでしょうが、それもしゃらくさいので、いまのいままでわたしも知らなかった曲にしました。

マイク・スミスとマンフレッド・マンのマイク・ダボの1976年のアルバムから。後年のポール・マッカトニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スターの曲とはべつものです。

MIke Smith & Mike D'Abo - Free As A Bird


クリップの説明によると、これは2008年のマイク・スミスの葬儀のときに流された曲だそうです。マイク・スミスに安らかな眠りを。


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by songsf4s | 2011-09-08 23:55 | ブリティシュ・インヴェイジョン