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2011年 08月 10日 ( 1 )
Cool guitars for a hot summer night II
 
すぐに思念がよそに流れ出ていく傾向があるため、ギターの話だったはずのものが、メンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオにまつわるあれこれへと横滑りしたせいで、前回は、用意したトラックを使い切らずに終わってしまいました。

わが友、と呼べるこの世でただひとりのギター・プレイヤー、ビリー・ストレンジさんのトラックから今宵はそろりと入ります。クリップをあげたのもわが友、オオノさん。

Billy Strange - Maria Elena


以前にも書きましたが、わたしは御大に質問したことがあります。あなたのアルバムには複数のリード・ギターがからむ曲がたくさんあるが、ご自分でオーヴァーダブをしたのか、それとも、トミー・テデスコやグレン・キャンベルなどを相方に一発で録ったのか、と。

愚かな質問というしかないのですが、予想したとおりの答えが返ってきました。ケース・バイ・ケースである、と。では、このMaria Elenaの場合はどうだったか?

後半のフェンダーらしきエレクトリックは、いかにもボスらしいサウンド、ボスらしいフレージング、まちがいなくビリー・ストレンジのプレイ、といえます。

しかし、前半のリードをとるガット・ギター(彼らはSpanish guitarないしはflamenco guitarという名詞を使い、gutという言葉を使ったのは見たことがない。やはり「はらわた」という単語は避けたいのだろう)はちょっとした難問で、今回も、ボスか否かを考えながら、じっくり聴いてしまいました。

とりあえずの結論は、こちらもボス自身のプレイである、です。トミー・テデスコだったら、どこかで飛び出しそうな高速ランが、この曲では使われていませんし、トミーのトレードマークである強いヴィブラートのかかった音もありません。そう思って聴くと、なんとなく、フレーズ尻のまとめ方がビリー・ストレンジ・スタイルのように思えてきました。

しかし、そんなことは詰まるところどうでもいいような気もします。このトラックの最大の魅力は、後半のエレクトリックによるプレイ、このソリッド・ボディーのエレクトリック・ギターという楽器の根元にふれるような、柔らかい音の出にあります。

そして、この音が描出しているのは、わたしが知っている、剛胆であると同時に繊細なビリー・ストレンジというキャラクターそのものだと感じます。

同じアルバムから、もうひとつ、涼しい曲をいってみます。

Billy Strange - Deep Purple


オオノさんがクリップに書き写してくださったライナーによれば、ドラムはハル・ブレイン、アップライト・ベースはジミー・ボンド、リズム・ギターはビル・ピットマンというラインアップだそうです。

ビリー・ストレンジはニュアンスのギタリストです。音のニュアンスは、音色、強弱、タイミングによって表現されますが、とりわけ彼が得意としたのは、タイミングのコントロールによるディテールの表現でした。この曲をなぞってみて、彼の「球持ちのよさ」、なかなか音を出さないタイミングのコントロールを実感しました。

ビリー・ストレンジとくれば、やはりこの人を出さないとバランスがとれないでしょう。

Tommy Tedesco - Quiet Night of Quiet Stars


playing for living、生きるためにプレイする、と断言した人ですから、たとえ自分の名義の盤でも、トミー・テデスコは注文に応じてさまざまなタイプの音楽を、さまざまなスタイルで「演じ」ました。

自分でやりたかったのは、後年のオーセンティックなジャズ・コンボのものでしょうが、ガット・ギターによるものも、彼が嫌わなかったものだろうと思います。「マーケッツのギタリスト」とはいわれたくない、と書いていたので、嫌いだったのはポップ系のギター・インストだったことははっきりしています。まあ、さもあらん、ですが!

たまにはカントリー方向に曲がってみるのもチェンジアップになるかもしれません。

Merle Travis - The Sheik of Araby


マール・トラヴィスの「独演会」といった雰囲気の、テレビ・スタジオらしき小さな会場でのリラックスしたライヴ・ヴィデオを見たのですが、なかなか興味深いものでした。ほう、と思ったのは、チェット・アトキンズについての逸話です。

マール・トラヴィスはキャピトルと契約して大人気を博したのですが、それを見て、RCAが対抗馬として見つけてきたのがチェット・アトキンズだったのだそうです。しかし、チェットのギターに満足したRCAのだれとかが、ところで、きみは歌はどうなんだ、ときいたら、ぜんぜん歌えない、というのでがっかりした、というくだりをマール・トラヴィスが仕方話でやって、客を湧かせていました。

チェット・アトキンズのものと信じていたスタイルは、じつはマール・トラヴィスのものだった、なんていわれたら、信じちゃいそうなほど、彼らのギター・プレイには近縁性があります。

一度でもクリップを見たことがおありになればわかりますが、マール・トラヴィスもチェットと同じように、ひとりでプレイしたものがたくさんあり、上掲The Sheik of Arabyも、親指でベースないしはコードを入れながらのプレイです。

それでは、キャピトルのスターと、RCAが見つけたその対抗馬のデュエットを。

Chet Atkins and Merle Travis - Muskrat Ramble


いやあ、カントリー・ピッカーの頂点に立つ二人なので、ただただ感心するばかりです。速さより、音の美しさに技がにじみ出ています。

カントリー・ピッカーに傾きはじめると、どこまでもずぶずぶとはまりこんでいき、ジョー・メイフィスだの、ジェリー・リードだのと、永遠に終わらなくなってしまいます。いずれ、ギター・オン・ギター・シリーズの続編として、カントリー・ピッカー・ギター・デュオというので改めて特集を組むことにします。

できるだけ好きなギター・プレイヤーを網羅しようとしているのですが、そんなことをいったら、あと10回ぐらいはやらないと収まりそうもありません。忘れないうちにこのお父さんを。

Les Paul - How High The Moon (1991)


この曲は、レス・ポールがメアリー・フォードと組んでいた時代の大ヒットです。じっさい、そちらは圧倒的なヴァージョンで、なんだ、ロックンロールというのはレス・ポールがつくったのか、と口をあんぐりしますが、あえて、年をとってからのライヴ・クリップを貼りつけました。やはり指の動きが見たいのと、マルチ・トラッキング抜きでも上手いことを知っていただくためです。

レス・ポールのことを話しはじめると長くなるので、一点だけ。彼の発明や開発は驚くべきものですが、一プレイヤーとして振り返ると、印象に残るのは、華やかさ、明るさです。

だれがだれより上手いなんてことをいったところで、つまるところ、比較のしようがありませんが、レス・ポールの生来の明るさは、彼のキャリアと、われわれが彼のサウンドに抱くイメージを決定したと感じます、その意味で、バディー・リッチ、ハル・ブレイン、レス・ポールはわたしの頭のなかの同じ部屋に住んでいます。

しかし、好きなドラマーを並べたら、あっというまに終わるでしょうが、ギタリストは無限につづけられそうです。最近、ジョー・オズボーンのインタヴューを読んで、へえ、そういう関係だったのかと、新たな目で見るようになったプレイヤーの曲を。

Roy Buchanan - Misty


ロイ・ブキャナンのプレイをじっと見守り、最後にちょっとだけ加わるのはマンデル・ロウで、この人のクリップも用意したのですが、置き場所がなくなってしまいました。

ジョー・オズボーンがルイジアナでジェイムズ・バートンといっしょにプレイしていたというのは知っていましたが、ベースに転じるきっかけになったのは、ロイ・ブキャナンとバンドメイトになってしまったことなのだそうです。エディ幡にじゃんけんで負けたルイズ・ルイス加部が、ギターからベースに転じたようなものです。

しかし、60年代ハリウッドを代表する3人のフェンダー・ベース・プレイヤー、レイ・ポールマン、キャロル・ケイ、ジョー・オズボーンが、いずれも本来はギタリストだったことになり、やはりそういうものか、と思いました。ちがうのはラリー・ネクテルだけ、といいたくなりますが、彼もギターをプレイしたことがありました。

例によって、話があらぬほうに流れたので、本日はここまで。まだ材料はありますが、つづけるか否かは未定です。


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ビリー・ストレンジ
Mr. Guitar
Mr. Guitar


マール・トラヴィス
The Merle Travis Guitar
The Merle Travis Guitar
by songsf4s | 2011-08-10 23:55 | Guitar Instro