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2010年 10月 17日 ( 1 )
池部良主演、本多猪四郎監督『妖星ゴラス』(東宝映画、1962年) その2

前回、現代的ディザースター映画の嚆矢は『タワーリング・インフェルノ』と書きましたが、こちらは1974年の製作、『ポセイドン・アドベンチャー』は1972年の製作だそうです。後者のほうが日本でいう「パニック映画」の嚆矢ということになります。

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しかし、どちらもわたしの理想「大災害映画」にはほど遠い、限定された空間のなかでの小さな出来事をあつかったものにすぎません。『エアポート'75』(1974年)も同断です。

映画配給会社の宣伝部というのは、ほんとうに想像力豊かな人たちが集まっていて、しばしば驚かされますが、「パニック映画」ブームのときは彼らの才能が極点に達しました。The Taking of Pelham 1-2-3、すなわち「ペラム行123番列車乗っ取り」というケイパー物語を『サブウェイ・パニック』と命名したり、(ここで、あとはなんだっけとMovie Walkerで検索し)Two Minutes Warningというクライム・サスペンスを『パニック・イン・スタジアム』と命名したり、みごとなものでした。

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巡り合わせにすぎませんが、ちょうど『ジョーズ』というモンスター映画の亜種のようなものが大ヒットして、この種の、人間以外の生物が人間に襲いかかるものも「パニック映画」のサブジャンルとみなされるようになったようです。クモとかヘビとかアリとかハチとかシャチとかワニとかアマゾンの小魚とか、いやはやいろいろなものに襲われたものです。

ということは、大昔の『恐怖のミイラ男』とか『大アマゾンの半魚人』(ATOKは「半漁」と変換し、危なく確定しそうになった。そりゃ半農半漁というやつでしょうに!)なんてのも「パニック映画」かよ、と思ったら、Movie Walker(ということはすなわち責任はキネマ旬報)では「ホラー・パニック映画」という言葉をつくっていました。ジョージ・ロメロのゾンビものはこちらに分類されるようです!

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云わずと知れた『大アマゾンの半魚人』。これで子どもが生まれると、大アマゾンの4分の1魚人になる勘定。音楽はまだユニヴァーサルの社員だったヘンリー・マンシーニ。

こんなことをいっているとワケがわからなくなってきます。ヒチコックの『鳥』はどうなのだとか、『マタンゴ』もあるぞとか、『エイリアン』はどうしようとか、パアなことをいいだしかねません。

結論として、「パニック映画」という無茶苦茶な言葉は定義できない、したがって意味を成さないと考えます。だって、『ピラニア』と『サブウェイ・パニック』が同じジャンルというのは、いくらなんでも無理でしょうに。ディザースター映画のほうがまだしも意味を成します。

地道にディザースター映画にもどって考えると、『宇宙戦争』などというのは、ジョージ・パルのオリジナル版(1953年)も、スピルバーグのリメイクも、「地球規模の大災害を扱った映画」という定義でいえば、ディザースター映画に分類していいような気がします。まあ、どちらも感銘を受けるほどの出来ではありませんでしたが、リメイク版の最初の来襲シーンなど、大流星雨の降下と同じ絵柄でした。

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オリジナル版の『宇宙戦争』(1953年)。ひょっとしたら『ゴジラ』は、『キングコング』のみならず『宇宙戦争』の影響も受けたのではないかと思う。

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以上六葉はリメイク版『宇宙戦争』より。こちらを見ると、スピルバーグは『ゴジラ』をつくりたかったのではないかと感じる。ジョージ・パルのオリジナル『宇宙戦争』→本多猪四郎のオリジナル『ゴジラ』→スピルバーグのリメイク版『宇宙戦争』という影響関係を仮定したくなる。リメイク版の宇宙人のヴィークルだか戦闘ロボットだかは、オリジナルより爬虫類的につくられている。

◆ マニュアル航行 ◆◆
ジャンルなどというものは正面からぶつかると泥沼になるので、「そういうもの」と思っておけばいいのでしょう。広げすぎた風呂敷を畳み、『妖星ゴラス』へと撤退します。

古い映画を見ていると、製作者の意図とは関係なく、しばしばその時代の風物に惹きつけられてしまいます。『妖星ゴラス』は1980年代を想定した1960年代の未来映画ですが、当然ながら、1962年のパラダイムに縛りつけられています。

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ロケットには翼がありますし、航法はどうやらマニュアルらしく、spaceshipではなく、ただのshipのメタファーになっています。慣性航法に切り替えると(この考え方はすでに取り入れている。かなり早いのではないだろうか)、キャプテンは潜望鏡で周囲の容子を見ますし、航海図のように定規やコンパスで線など引くところはじつに新鮮です。

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コンピューターに見えなくはないものも積まれている。不思議にAltair(なんてコンピューターを覚えている人がいるかどうか知らないが)に似ている。

そういう映画をつくれたのは、このころが限界ではないでしょうか。たぶん、60年代後半には(それがどれほどアンリアリスティックな表現になっていようと)コンピューター制御の考え方が出てきて、三角定規の出番はなくなってしまうでしょう。

ギョッとしたのは「無重力室」です。

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名前のとおり、無重力状態になる部屋で、ここで宇宙飛行士たちが訓練しているのです。地上で無重力状態を実現するには、当然ながら重力を制御する技術が必要です。そんなことはできないから、大型の輸送機を高度何万フィートだかまで上昇させ、自由落下することで無重力状態をつくって訓練しているわけで(スカイツリーの最上階でエレヴェーターのワイヤが切れたら、なかにいる人はそれなりの長さの自由落下、すなわち無重力状態を経験できるだろう!)、重力の制御は昔から実現がきわめて困難と考えられています。

つくられた時点では未来物語なのだから、なにをしてもいいようなものですが、無重力室などというものをつくれる技術があれば、ゴラスのコースを変えることも不可能ではありません。無重力室は重力の影響をキャンセルできるのだから、スケールこそ異なれ、ゴラスの重力の影響をキャンセルする基礎技術はすでに持っていることになるのですから。

どうしても南極にロケットを据えつけ、地球の軌道を変更したいのであっても、あんな「300人様収容大バーベQ場」みたいな代物をつくる必要はなく、炎の出ないクリーンな重力エンジンで太陽系の彼方にまでだってすっ飛んでいけます。水と炎は特撮の頭痛の種、そのひとつから解放されたのに、残念なことをしました。あのロケットはどう見てもガスレンジの親玉ですからね。

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でも、視覚的に表現しようのない重力エンジンでは「点火!」といったって、なにも起きず、計測機器のリードアウトが関の山だから、映画製作者としては、そんなもの使えるか、でしょうね。

◆ 俺ら宇宙のパイロット ◆◆
今日はなにがなんでも『妖星ゴラス』を終えようと、ちょっと無理矢理にまとめようとしたのですが、うまくいかず、その部分は次回まわしとして、今日も石井歓のスコアからサンプルをあげておきます。

今日は純粋なスコアではなく、また酒場で流れる「現実音」、それに挿入歌があるので、それをいってみます。

サンプル 石井歓「グランドキャバレー」

ゴラスの観測に行く宇宙飛行士たちが、出発の前夜に飲むシーンがあり、これはその酒場で流れている音楽です。

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バーカウンターには天本英世がいて、宇宙飛行士に一杯おごってやり、「宇宙に行く君たちが生き残って、地球にいる俺たちはゴラスにやられてあの世行き、ということもありうるな」などといいます。天本英世は役名もなく、このシーンにしか出てきません。

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映画では台詞がかぶったりしてよく聞こえないのですが、単体で聴くと、断片ではありますが、なかなかけっこうなラウンジ・ミュージックで、こういうのを使い捨てにしていかなければいけないのだから、映画音楽はなかなか大変です。

もう一曲は、シャレみたいなものなので、生真面目な方はお聴きにならないように警告しておきます。

サンプル 石井歓 「俺ら宇宙のパイロット」

「山男の歌」の宇宙版といったおもむきのシンガロング・ソングで、劇中、若い宇宙飛行士たちが二度にわたって歌います。サンプルにしたものはショート・ヴァージョンで、上述のキャバレー・シーンに使われたものです。リズムのとりにくいドドンパ・アレンジなのがくせ者で、素人たちの歌は乱れに乱れて、じつに楽しい仕上がりです!

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それでは次回こそ完結を目指して、またしても「つづく」とさせていただきます。


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by songsf4s | 2010-10-17 23:58 | 映画・TV音楽