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2010年 09月 10日 ( 1 )
鈴木清順監督『野獣の青春』(1963年、日活)その7

当地では窓を開けて寝ると、明け方、寒くて目覚めるほどになりました。いつもはカーテン越しの陽射しで目が覚めるのですが、今朝はそういうこともなく、じつは、逆に寝過ごしてしまったのですがね!

でも、こうなると、一年中、これくらいの気候で安定するといいのだけれど、と思います。夏の暑さもこたえますが、冬の寒さだって楽ではないのでして、やっぱりSummertime and living is easyというのは真理だなあ、と思います。急がないと、夏の終わりの歌のつづきをしようにも、夏の終わりではなく、秋になってしまいそうですが、そちらは他日のこととして、今日もまた『野獣の青春』です。

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◆ 吹けば飛ぶようにヒラヒラと登場 ◆◆
『野獣の青春』、さっそく前回の続きから。

ジョーはまたしてもピンチを切り抜けましたが、しかし、なぜ取引の情報が漏れたのかという謎は解決されません。そこでジョーは、保身と、二つの組を争わせるという二兎を追って、取引に出発しようとしたときに、三光組の男を見かけた、といいます。

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つぎのシーンではその男、青木富夫が宍戸錠と江角英明に拉致され、ボスの邸に連れ込まれて、どこで取引の情報を得た、と「責め問い」(いつも「拷問」では気が利かないので、チェンジアップとして、おそろしく古い表現をもちだしてみた)を受けます。

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松竹での子役時代とはちがって、日活時代の青木富夫は、そのヒラヒラした体躯を生かして、根性の据わっていない男の役ばかりを、ひどく地味に演じていました。当家で過去に取り上げた映画では、『悪太郎』の小遣い役がその典型です。『野獣の青春』でも、口先だけは威勢がよく、じつは小心そのものの三下ヤクザを演じています。

マットを敷いてあるとはいえ(それが観客にわかってしまうのはまずいのだが、なにせ2000万の予算しかないので、これくらいのことでは撮り直しなどしない!)、階段の途中から投げ下ろされるのは、ほんとうに痛そうで同情してしまいました。火をつけられた榎木兵衛(たまたま撮影を見に来た原作者の柴田錬三郎が感激し、あの俳優にと、金一封を置いていったのだとか)にくらべれば、まあ、安全といえるでしょうけれど!

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青木富夫は、ジョーからの情報で取引に割り込むことになったとは知らないので、俺は知らない、武智(郷鍈治)の指示で動いた、と吐きます。では、武智を吐かせろ、というので、ジョー、江角英明、柳瀬志郎の三人が武智のアパートに送り込まれます。

◆ 異様な舞台が人を狂わせる ◆◆
『野獣の青春』には、まともではない人物がたくさん出てきますが、郷鍈治のアパートの部屋も、ちょっとふつうではありません。飛行機の模型が天井からむやみにぶら下がっているのです。

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そういっては模型好きの方に失礼かもしれませんが、ギャングの部屋にしては、これはやはり異常です。当たり前の飛行機ばかりでなく、子どものころに「丸」で見たような気がする、ものすごくマイナーな戦争中の爆撃機らしきものまであります。いや、そのあたりは監督のあずかり知らぬところで、スタッフが適当に集めただけでしょうけれどね。

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肝心なのは、鈴木清順がこういう奇妙な設定をもちだしたら、それは変なことが起こるサイン、前触れだということです(その点については、監督が明言している。入ってきた瞬間、俳優が「これは……」とギョッとするセットがほしいのだ、と)。

郷鍈治は留守で、部屋には情婦の星ナオミがいるだけだったので、三人は待つことにします。変な状況設定が暗示したとおり、ここで奇妙なことが起きます。銃器にしか興味を示さないはずだった江角英明が、星ナオミを見た瞬間、「いい女だあ」とわれを忘れてしまうのです。この女にすすめられて、飲めないのに酒を飲んだり、柳瀬志郎に、見張りを交代しろ、といわれても、星ナオミにべったりくっついて、云うことをきかなくなってしまうのです。

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郷鍈治に口を割られてはわが身が危ないので、ジョーは廊下から下の通りを見ていて、郷鍈治が通りかかったところに、マッチの燃えかすで書いたメモを落として、待ち伏せを知らせます。

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しかし、郷鍈治は逃げず、そのまま乗り込んできて、不意打ちで柳瀬志郎を斃します。江角英明は銃をかまえようとして、星ナオミに銃身を掴まれ、誤って彼女を撃ってしまい、それでタイミングが遅れたために、郷鍈治と銃を向け合って、一瞬、身動きできなくなってしまいます。

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結局、二人は同時に発砲し、相撃ちになって倒れます。郷鍈治は即死、江角英明は生き残り、ジョーは江角を助けて現場から逃げます。

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そこら中、警官があふれて、窮地に陥ったジョーは、たまたま死んだ竹下刑事の未亡人の家がそこにあったので、訳をいって、迎えが来るまでかくまってくれと頼みます。ここはちょっと「偶然度」がキツすぎて、苦しいかな、という展開ですが、エンディングの伏線にもなっているので、強引でもなんでも、こうせざるをえなかったのだと思います。

◆ 脇役にばかり目がいくわが人生の黄昏哉 ◆◆
今日は最後まで行けるかもしれないと思ったのですが、この映画はいつものようにエンディングまで書くわけにはいかず、そうかといって、そのどれくらい手前まで書くかは判断がむずかしく、まだ決めかねています。そのうえ、ふと興味が湧いて、青木富夫と江角英明のフィルモグラフィーなど眺めていたために、時間切れになってしまいました。

青木富夫は子役として小津安二郎の『突貫小僧』に主演したことで知られていますが、大人になってからはずっと大部屋役者で、とくに目立った作品はありません。そもそも、目立たないことがこの役者の特徴といいたくなるほどで、つねに出番はあまり多くありませんでした。

青木富夫インタヴュー


こういう人たちの晩年の作品というのが、近ごろはひどく気になります。鈴木清順の『ピストルオペラ』に出演しているということなので、近いうちに見てみることにしますが、三橋達也、大木実と共演した『忘れられぬ人々』(2001年)という映画も、ちょっと食指が動きました。昔なじみのヴェテランたちのアンサンブルというのは、オールドタイマーにはじつに楽しいものですからね。

江角英明は、過去に当家で取り上げた映画としては、やはり鈴木清順の『東京流れ者』での敵方ボス役が印象的でした。この人も長期にわたって活躍したので、いずれ、晩年の作品を取り上げたいと思います。

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江角英明(『東京流れ者』より)奥は川地民夫。

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江角英明(『東京流れ者』より)すぐ後ろに立つのは郷鍈治。

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江角英明(『東京流れ者』より)右は北竜二。

それでは、次回、『野獣の青春』を完結させることにします。


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by songsf4s | 2010-09-10 23:58 | 映画