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2010年 09月 03日 ( 1 )
夏の終わりのそよ風は想い出を囁きかける――チャド&ジェレミーのDistant Shores
タイトル
Distant Shores
アーティスト
Chad & Jeremy
ライター
James William Guercio
収録アルバム
Distant Shores
リリース年
1966年
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昔の記事にサンプルをつけていると、しばしば記事そのものを読み返すことになり、ミスやら約束不履行に気づかされます。

一昨昨年の夏、The BeachlesのSgt. Petsound'sというのを聴きたいと書いていたのをいまになって読みました。いやはや、すっかり忘れていました。

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あのときはEMIと揉めたとやらで、どこにも落ちてなくて、聴けませんでした。もうほとぼりも冷めて、というか、冷めすぎてだれの興味も喚ばなくなってしまったくらいですが、思いだして聴いてみました。



というようなものでして、パスティーシュやパロディーではなく、コラージュにすぎません。面白いものがあればサンプルにするのですが、これじゃあねえ……。要するに2枚のアルバムを同時に聴いているようなもので、かなり気持ち悪くなります。サウンド・エディターを駆使し、時間をかけて徹底的にピッチやテンポを揃えたりといった音楽的な操作をやっていれば肯定的な気分になれますが、残念ながら、ピッチもテンポも合っていない、きわめて非音楽的なミックスでした。

◆ A Summer Songの逆襲 ◆◆
さて、前回のA Summer Songに引きつづき、今回もチャド&ジェレミーの夏の歌、Distant Shoresです。

2007年夏のオリジナル記事に委曲は尽くしたので、あまり書くことはないのですが、老人の繰り言のように、しちくどくやってみましょう。

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まずいっておくべきことは、ビルボード・チャートを見るかぎりでは、チャド&ジェレミーの代表作はA Summer Songということになるだろうし、印象としてもそう受け取っている人が多いでしょう。でも、わたしは、チャド&ジェレミーのどの曲が好きかといえば、マイクロセカンドのためらいもなく、Distant Shoresと断言します。

サンプル Chad & Jeremy "Distant Shores"

Distant Shoresは、A Summer Song 2とでも名づけるべき曲で、一作目のヒットの再現を狙いつつ、その欠点の多くを補正してあります。メイジャースケールを弾いただけみたいな単純すぎるイントロはより趣のあるコードに改善され、ヤカンが沸騰するほど馬鹿馬鹿しい歌詞は、我慢できる程度のものに改善されています。

A Summer Songの面白くもなんともないフォーク延長線上単純馬鹿サウンドは、それなりに工夫して音を積み重ねたものになっています。フルート、オーボエはまずまず効果的に使われていますし、50ドルを惜しまずに一瞬だけグロッケンシュピールを入れた努力も買えます。

A Summer Songはプレイヤーがどうこうなどと気にするほどのプレイではありませんでしたが(ドラムのタイムは上々で、バックビートは気持いいが)、Distant Shoresはハリウッドで録音され、いかにもあの時代のハリウッドらしい仕上がりになっています。

ドラムは、だれが聴いてもゲラゲラ笑ってしまうほど、デカデカとしたハル・ブレイン印がペタンと押してあります。こういうタイプの楽曲には不似合いなほど「活躍」しています。ハルだから、ということもできますが、でも、ハルだって叩かないことはしばしばあるわけで、バラッドで強く出たときには、プロデューサーの指示があったからと考えるべきです。

キャロル・ケイさんとあれこれ話していた当時、チャド&ジェレミーのトラックもいくつかやったとおっしゃっていました。確証はありませんが、Distant Shoresのベースも彼女のプレイだろうと思います。ジョー・オズボーンには聞こえません。You came(またはLove came)のところのラインの取り方は、そこへ行くか、とハッとさせられます。ルートを避けるハーモニックなラインの取り方に興趣のあるプレイです。

以上、チャド&ジェレミーを聴くなら、A Summer SongよりもDistant Shoresのほうだ、という弁でした。もちろん、箱船がどうしたとか、キャベツがなんたらとかいう、後期二枚の「アーティスティックな」アテンプトなんか、聴いた瞬間にゴミ箱にたたき込みました。あのあたりは、ハリウッドのエースたちの洗練されたプレイが聴けるのですが、楽曲がゴミばかりだと、プレイを聴く気にもなりません。

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◆ コロンビアのフォークロック路線 ◆◆
「ギター・オン・ギター6 チャーリー・バード、タル・ファーロウ、ハーブ・エリスのSo Danco Samba」という記事で、60年代中期のコロンビア、すなわちCBSのことについて書きましたが、中学一年、すなわち1966年にしばしば聴いていたコロンビアのオムニバス盤は強く印象に残っています。

バーズ Mr. Tambourine ManおよびTurn! Turn! Turn!
サークル Red Rubber BallおよびTurn Down Day
ボブ・ディラン Rainy Day Women # 12 & 35およびI Want You
サイモン&ガーファンクル Sound of SilenceおよびI Am a Rock
ポール・リヴィア&ザ・レイダーズ Kicks

といったラインアップの、あの時代のCBSの代表的チャート・ヒットを満遍なく拾ったありがたいLPで、「CBSフォークロック・サンプラー」とでも名づけたくなる編集でした。そして、このなかにチャド&ジェレミーのDistant Shoresも入っていたのです。

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モビー・グレイプの8:05など、この文脈にすっぽり収まりそうなものですが、記憶では、グレイプの曲は収録されていませんでした。チャート・ヒットではありませんからね。

紙ジャケ・ブームのおかげで、当時と同じジャケット、同じ収録曲の、日本独自編集盤がずいぶん復刻されましたが、わたしが一枚だけ買うとしたら、このCBSのサンプラーです。こんなもの、復刻する意味がまったくないだけに、理不尽にも、いまいちばん手にとってみたいアルバムです。


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Very Best of Chad & Jeremy
Very Best of Chad & Jeremy


Distant Shores
Distant Shores
by songsf4s | 2010-09-03 23:55 | 去りゆく夏を惜しむ歌