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2010年 08月 20日 ( 1 )
Generique by Martial Solal (ジャン・ベッケル監督『黄金の男』より)

もうご記憶されている方はほとんどいらっしゃらないでしょうが、ずっと以前、『黄金の男』という映画のテーマ曲をお持ちの方がいらしたら、お聴かせ願えないだろうかと、当ブログで呼びかけたことがあります。

そのときは反応がなく、やっぱりダメかと思ったのですが、あとから、当家のご常連さん方ならご存知「三河のOさん」からメールをいただき、めでたくも、子どものときに好きだったテーマ曲をふたたび聴くことができました。

f0147840_004868.jpg『黄金の男』というのは、ジャン=ポール・ベルモンド主演、ジーン・セバーグ共演のフランス映画で、日本では1965年に公開されました(製作は前年)。小学校のとき、つづけて同じ映画を見たのは、記憶するかぎりでは『眠れる森の美女』『史上最大の作戦』、そしてこの『黄金の男』の三本だけです。

『黄金の男』のときは中学受験を目前に控えていたので、初見、再見、ともに親に黙って、塾をサボって見ました。いや、ジャン=ポール・ベルモンドも、ジーン・セバーグも知っていたわけではなく(小学生がゴダールの『勝手にしやがれ』を見るはずがない)、偶然に見たにすぎないのですが、ひどく気に入って、ぜひもう一度見たいと思い、たしか66年の正月、受験を目前にして再見したと記憶しています。

その数年後、一度だけテレビで見た記憶はありますが、あとはもうまったくチャンスなし、今日まで来てしまいました。いまだに日本語版DVDはリリースされていないようで、仕方ないから、フランス語版、英語字幕で見ました。

◆ お子様趣味をあと知恵ではかれば ◆◆
ウェブ、とくにブログというのはインフレ世界のようです。「傑作」「最高」「お薦め」ばかりがゴロゴロしていて、そういうのを見ると、死んでも「お薦め」なんかするものか、と思います。

だいたい、知らない人になにかを薦めるなんて、正気じゃありません。人間の好みは千差万別、蓼食う虫も好きずき、他人の好みなんかわかるはずがありません。長年つきあってきた友人になにかを薦めるときだって、気に入る確率は50パーセント以下だと思っています。

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なによりもバカげているのは、「自分は好きだ」という卑小なことを云っているだけなのに、それがユニヴァーサルな真理であるかのように、「傑作」「お薦め」という言葉を使うことです。自分は好きだ=世界中の人間すべても好む、なんて等式が成り立つと思っている知性の欠如と無神経にはゾッとします。

これから、お客さん方のほとんどどなたも見たことがないであろう映画のことを書きますが、「傑作」である気遣いなど、爪の先ほどもないので、そのつもりでお読みください。小学生が面白いと思った映画を、いまのわたしが見てどう思うか、というささやかなことを書くだけです。

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結論からいえば、失望はしませんでしたし、子どものころの俺の趣味はひどいものだ、とも思いませんでした。子どものときに気に入った点は、今回もやはり面白いと感じました。ただし、公開当時に見れば楽しめたかもしれないものの、いまでは古びてしまった箇所もあり、逆に、いまになって価値が増した部分もあると感じます。そうしたことを、以下、あれこれうがってみようと思います。

◆ 『続・勝手にしやがれ』かなあ…… ◆◆
ジャン=ポール・ベルモンドは密輸品の運び屋をやっています。一仕事やったその依頼主から、つづいておいしそうな話が持ち込まれるのですが、相棒は、結婚するのでもう危ない仕事はしたくないと乗ってきません。ひとりでいいか、と先方にきくと、べつの相棒を紹介する、といわれます。

仕事はレバノンまで金塊を運ぶというもので、そのための車、トライアンフTR4をあずけられ、相棒のジーン・セバーグを紹介され、船に乗ります。ベルモンドはライター、セバーグはカメラマンで、旅の本を書くためにレバノンを訪問する、というカヴァーです。

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このままおとなしく金塊を運んでいては映画になりません。ベルモンドはしきりにジーン・セバーグをたらし込もうとし(このあたり、『勝手にしやがれ』を想起させる)、みごと成功します(そうじゃないと映画にならない!)。

ここでベルモンドは野心を起こします。いま金塊を押さえているのは俺だ、というんで、組織と連絡を取ろうとしたジーン・セバーグを騙して、金塊トライアンフ(車体そのものが金でできている。ゴールドフィンガー好みの仕掛け)を持ち逃げします。

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ジーン・セバーグは組織の恐ろしさを知っているので、なんとか穏便にことを収めようとするいっぽう、ジャン=ポール・ベルモンドのほうは、金塊を売りさばこうとして、そのたびに組織に邪魔され、三〇〇キロの金があるだけで、現金なしになって、ジーン・セバーグとも別れ、ギリシャ、イタリア、ドイツを転々とします。

◆ フレンチ・ポップ風テーマ曲 ◆◆
以上でプロットはいいでしょう。あとはエンディングを残すばかりというところまで書きました。

子どものとき、無理に時間を作って再見した理由は明快です。またテーマ曲が聴きたかったことと、ジーン・セバーグをもう一回見たかったことです。

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まず、今回の数十年ぶりの再見で、音楽はどうだったか。これについては、映画を再見する以前に、三河のOさんのご厚意でファイルをいただき、記憶していたとおり、じつに楽しい音だと思いました。あの時代には目立たなかったかもしれないサウンドで、むしろ、いまのほうが歓迎されるだろうと思います。

サンプル Martial Solal "Generique"

小学校六年生のテイストもバカにならんと思いましたよ。小なりといえども、やっぱり俺は俺だ、いまと好みは同じ、なんて感心しちゃいました。女声スキャットとコンボ・オルガンのコンビネーションがいかにも60年代らしい味わいで、「お薦め」なんかしませんが、たとえば『黄金の七人』のテーマがお好きな方なら、あるいは楽しめるかもしれません。あの時代のヨーロッパでしかつくられなかったタイプのポップ・チューンで、その後、こういうサウンドは地球上から姿を消しました。

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左からゲルト・フレーベ、ジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグ

このGeneriqueというタイトルはどういう意味かと思って調べ、ズルッとなりました。映画テレビ用語で、creditsのことだそうです! つまり、オープニング・クレジットの背景で流れる曲、ということであり、タイトルなんてもんじゃなかったのです。たぶん、日本でもよくあるように、OST盤をリリースする予定がなく、ずっと後年リリースするときに、たんなる記号としてつけられたタイトルなのだと思います。

映画を再見してみて思ったのは、テーマ曲ばかりでなく、ほとんどすべて4ビートで埋め尽くされたスコアもおおいに楽しめる、ということです。楽しいトラックがたくさんあるのですが、今日はすでに時間切れ、まだスクリーン・キャプチャーすら手をつけていないありさまなので、そのあたりは、次回、サンプルをあげつつ検討することにします。


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by songsf4s | 2010-08-20 23:32 | 映画・TV音楽