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2010年 08月 17日 ( 1 )
『パリは燃えているか?』とゲルト・フレーベ


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◆ 勝利は一種類ではない ◆◆

『日本のいちばん長い日』その7で、『バルジ大作戦』を取り上げようと考えたきっかけを書いたのに、前回はその点にふれるのを失念してしまいました。

『バルジ大作戦』では、ロバート・ショウ(だれでもそういうが『ロシアより愛をこめて』はきわめて印象的だったし、『ジョーズ』の漁師もはまり役)扮するヘスラー大佐がドイツ側の主役で、指揮官を務めています。このヘスラー大佐にはコンラート(劇中、ドイツ兵も英語をしゃべるので、コンラートも英語式に「コンラッド」と発音されるが)という老従卒がついています。映画の終盤で、ヘスラーはコンラートと対話します。

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ヘスラー大佐「やったぞ、コンラート!」
コンラート伍長「では、わたしが間違いで、われわれが勝ったのですか?」
ヘ「いや」
コ「では、負けたということですか?」
ヘ「いいや」
コ「勝ちもしなければ負けもしないとは、どういうことですか?」
ヘ「最上の結果を得た。つまり、このまま戦争は継続されるということだ」
コ「いつまでですか?」
ヘ「永遠にだ。いつまでもずっと、ずっとつづくのだ」
コ「でも、終わりというものがあるのでは?」
ヘ「おまえはなにもわかっていないな、コンラート。知性のある人間ならだれでも、1941年の時点で、ドイツが勝つはずのないことを知っていた」
コ「それでは大佐、われわれは三年ものあいだ、勝利の望みがないままにずっと戦い続けてきたのでありますか?」
ヘ「勝利というものは一種類ではないのだよ。われわれの軍隊が生き延び、われわれがこの軍服を着続けられること――それこそがわれわれにとっては勝利なのだ」

狂ってる、といいたくなりますが、よくよく考えると、日本の軍人がこのヘスラー大佐より正気だったとも言い切れません。いや、もちろん、じっさいの戦闘をもとにしたとはいえ、所詮、架空の物語、アメリカ製娯楽映画であり、アメリカの脚本家がつくりあげた、かつての敵国ドイツの軍人の肖像にすぎないのですが、妙にリアリティーのある述懐でした。

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◆ ベルリンからの使者 ◆◆
さて、前回のつづき、カール=オットー・アルベルティーの『パリは燃えているか?』出演シーンです。

『パリは燃えているか?』は、ドミニーク・ラピエールとラリー・コリンズの同題のノンフィクションにもとづく映画で、ドイツのパリ占領末期の数日間を描いています。戦闘場面も少なく、外国のオールスター・キャスト大作戦争映画のなかで、『日本のいちばん長い日』にもっとも近い映画です。

ヒトラーは、撤退するときはパリを火の海にしろとフォン・コルティッツ将軍に命じるのですが、将軍はその命令が気に入らず、なんとかおだやかにパリ占領の幕を引きたいと考えています。したがって、本国からの使者を嫌がっているのですが、そこに、SS(親衛隊)の将校が面会をもとめて待っていると知らされ、不機嫌な顔で執務室に入っていきます。

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で、このSSの将校のひとりが、前回の主役カール=オットー・アルベルティーなのです。SSのふたりは、ヒトラーの催促を伝えに来たのではないかと思い、このパリ司政官は渋い顔をしていたのですが、彼らの用件は、なんとルーヴルにある美術品をベルリンに運ぶ命令を受けていて、その作業の許可を得たいというものだったのです。

将軍は内心ズルッとなりながらも、それは顔に出さず、勝手にしろ、ただし、ルーヴルはレジスタンスに占領されている、と嫌味をいいます。

カール=オットー・アルベルティーもいつも気になるのですが、この将軍を演じたゲルト・フレーベがまた第二次大戦を扱った戦争映画の常連で、やはりものすごく気になる人なのです。

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◆ ロバに乗った軍曹 ◆◆
最初に見たゲルト・フレーベの映画は『史上最大の作戦』でした。東京のロードショウ館で見てから、さらに二番館に落ちてまた再見したほど小学校のときに好きだった映画で、とくに気に入っていたシーンがいくつかあります。たとえば、夜間行軍中にドイツ部隊とアメリカ部隊がすれちがって気づかないところ、それからもちろん、以前、この映画のテーマ曲を取り上げた記事でおおいに賞揚したウイストルハム村のシーンもそうでした。

そして、このシーンも、子どもの大のお気に入りでした。

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デブのおっさんがのろまなロバにまたがって、牛の乳搾りでもするためなのか、大小雑多な金属容器をカランカラン鳴り響かせて、よたよたやってくる、というじつにのんびりしたショットなのです。そして、海に目をやると、なんだか様子が変で、いぶかしげな顔をします。

と思うや、大音響がして、それこそ史上最大規模の大艦砲射撃がはじまり、雨あられと砲弾が飛んできます。

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この日を一日千秋の思いで待っていたフランス人は、命の危険もものかは、狂喜乱舞し、ドイツの兵隊は、ロバから降りて右往左往あわてふためきます。

まず日本映画ではお目にかかれないだろうというド派手な爆発シーンで、それまでの変なオッサンのコメディー・リリーフから、一転して地獄の様相を呈するところが、子どもには驚きでした。

こういうシーンに登場した人ですからね、忘れるわけがないのです。

◆ 第三の男ハンス・クリスチャン・ブレヒ ◆◆
ちょっと脇道に入りますが、『史上最大の作戦』の艦砲射撃のシーンでは、もうひとり、やっぱりいたか、という俳優が登場します。

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この記事の冒頭に登場させた、『バルジ大作戦』の従卒も演じた、ハンス・クリスチャン・ブレヒという俳優です。ドイツ人俳優は、ハリウッド映画に出るときは、やはりナチス軍人が多いのでしょう。『バルジ大作戦』では伍長でしたが、『史上最大の作戦』では少佐で、砲兵隊の指揮官です。ただし、とんでもない艦砲射撃で危うく命を落としそうになる役です。

◆ 佐官もある ◆◆
さて再び、ゲルト・フレーベです。フレーベの出世はすごいものです。『史上最大の作戦』では軍曹だったのが、『パリは燃えているか?』では将軍ですからね。全編出ずっぱりで、最後のドイツ軍パリ司政官の苦悩を演じています。

本国での作品は知りませんが、外国映画に出演したものとしては、『パリは燃えているか?』はフレーベの代表作のひとつといえるでしょう。ただし、映画全体としては、残念ながら、いま見るとひどく間延びしていて、サスペンスが薄く、『日本のいちばん長い日』より数段落ちる作品だと思いますが。

『パリは燃えているか?』と同じ1966年に公開された『トリプル・クロス』でも、フレーベはナチス軍人に扮しています。こちらの階級は大佐で、階級は同じなのに、なぜかユル・ブリナー大佐にこき使われます。

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妙にきれいな絵だと思ったら、撮影監督はアンリ・アルカンだった。

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手前にフレーベ、奥はユル・ブリナー。この暖炉が巨大で、天井まで装飾がつづいている。ナチスらしさを出すための誇張?

なかなかドイツ機甲師団のブリッツクリークのようなわけにはいかず、歩みが遅いため、もう一回だけ、戦争映画で活躍したドイツ人俳優の話をつづけたいと思います。


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by songsf4s | 2010-08-17 23:57 | 映画