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2010年 08月 16日 ( 1 )
『バルジ大作戦』とカール・オットー・アルベルティー
 
大作戦争映画は、しばしば広い戦闘地域を扱うことになります。『史上最大の作戦』がそうですし、『遠すぎた橋』や『パットン戦車軍団』もそうです。

いずれも、これでもか、これでもか、という物量作戦ですし、スターも大量動員されています。imdbなどでキャストをごらんあれ。

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東映正月映画の場合は、ただ豪華絢爛にして客を呼ぼうという魂胆しかなかったでしょうが、いまになって、大作戦争映画がオールスター・キャストになっていることには、ちょっとした副次効果があることに気づきました。

大作戦争映画で困るのは、いま、どこでなにをしているのかがわからなくなることです。ひとつの部隊だけを追いかける大作戦争映画というのはあまりなく(例外は『プライベート・ライアン』)、たいていの場合、あちこちの戦闘地域の出来事を、多元的に描写します。

たとえば、『史上最大の作戦』でいえば、オマハ・ビーチだの、ジュノー・ビーチだの、ユタ・ビーチだのといくつも上陸地点があるうえに、第82および第101空挺師団による降下作戦もあれば、グライダー部隊もあるし、もちろん、ドイツ軍の描写もあるしで、ちょっと気を抜くと、シャッフルされたショットがどうつながるのかわからなくなってしまいます。

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こういうときに助けになるのがスターの存在で、ジョン・ウェインやヘンリー・フォンダやピーター・ローフォードの顔を頼りに、細切れになったショットを頭のなかで接続し、それぞれの部隊の一貫性を保持することになります。

◆ 遠すぎた橋の多すぎた部隊 ◆◆
そうはいっても、『史上最大の作戦』と同じコーネリアス・ライアンの本を映画化した『遠すぎた橋』(マーケット・ガーデン作戦を題材にしている)のように、スターはたくさん出ているのに、それでもやっぱり、どこにどういう部隊がいて、いまなにをしているかという連続性を頭のなかで組み立てるのが困難な映画もあります。

これが本ならば、関係図などがあるので、わからなくなったら、だれの部隊がどう移動していったかをさかのぼって確認することもできますが、映画ではそうはいきません。多元描写の迷路のなかで観客が迷子にならないようにする責任は、作り手が負わなければならないのです。大作戦争映画の成功不成功の鍵は、いかに人物関係をわかりやすく提示するかにあるとすら思います。『遠すぎた橋』は、この種の映画の代表的な失敗例です。

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そういう意味で、前回までながながと検討した、『日本のいちばん長い日』は、外国の同種の映画と比較してものも、もっとも成功したオールスター・キャスト大作戦争映画の一本といえます。もちろん、舞台が宮城とその周辺という狭い地域にかぎられていることも幸いしているのですが、キャスティングや、シナリオと編集の工夫なくしては、こういう錯綜したストーリーラインをうまく捌くことはできないでしょう。

しばしば場所と部隊と人物を文字で明示することも、ひとつまちがえば野暮になりますが、この映画では効果を上げたと思います。もちろん、われわれにとって、西洋人より日本人のほうがずっと区別しやすいということもあるし、端役にいたるまで顔なじみの俳優で埋め尽くされているので、単純に外国映画と比較するわけにはいかない面もありますが……。

◆ 戦争も映画も物量で勝つ ◆◆
『バルジ大作戦』は、他の大作戦争映画にくらべればスターの数は少ないのですが(その分、戦車の数のすごいこと!)、おおいに脚色を加えて、ドイツ部隊の展開を現実よりシンプルにし、守勢にまわったアメリカ側も現実とはちがって広い地域に展開していないため、ここはどこ? 前線はどっち? なんてことは起きず、最後まで迷子にならずに見られます。『遠すぎた橋』もこれくらい思いきって簡略化すれば、映画として面白いものになったのではないでしょうか。

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『日本のいちばん長い日』は、日本映画としては大きな製作費をかけたのだろうと思いますが、そもそも、戦闘シーンのほとんどないめずらしい戦争映画で、大作戦争映画とはいいながら、外国製とはだいぶ味わいが異なります。

『太平洋の翼』のように、戦闘シーンのあるものをつくっても、結局、円谷プロのミニチュアが頼りで、実寸大の飛行機、戦車を大量投入する外国映画にはとうていかなわないという認識から生まれたのだろうな、なんてことを考えてしまうほど、『バルジ大作戦』は無数のタイガー戦車がアルデンヌの森狭しと疾駆します。

じっさいのアルデンヌの戦いでは、あれほど多くのタイガーIIは投入されなかったようですが、装甲が厚いおかげか、砲塔の設計のおかげか、パットン戦車の砲弾が、カンと跳ね返されてしまうところは、まるで落語の「ヤカン」そのまま、思わず笑ってしまいます。

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ただし、タイガーIIはパットンの実物で代用したので(おかしいと思って記事をアップしたあとで調べ、8月17日に修正。やはり、記憶にあったとおり、IIはIを土台にさらに厚着をしたようなごついデザインだった)、一目で米独の区別がつかないため、映画的効果を妨げています。

『バルジ大作戦』の面白いところは、奇襲が功を奏し、また、タイガーIIの厚い装甲のおかげもあって、戦闘においては勝っていたドイツ機甲師団が、最後は燃料切れで身動きがとれなくなって負けてしまう、という点です。連合軍の補給基地を襲って、燃料を奪取するというのは、はじめから作戦に組み込まれていたというのだから、泣けてきます。

もちろん、大東亞戦争も、もとはといえば油飢餓からはじまったこと、パレンバン奇襲作戦なんか、油田をとりにいったわけで、ドイツ機甲師団の油ぎれ敗戦はよそ事ではありません。日本だって、戦争末期には、船はあっても動かす油がなく、連合艦隊は飾り物になってしまったのだから、バルジの戦いは身につまされます。

パレンバン奇襲作戦


周囲の情勢でやむをえず、という形ではなく、日本が再び主体的に戦争をするとしたら、やはり食料とエネルギーしか理由は考えられないでしょう。食料またはエネルギー危機が起きたら、熱くならずに、交渉で解決するよう、国民が後押ししないと、大東亞戦争の轍を踏むこと請け合いです。戦記本は読んだほうがいいし、戦争映画も見たほうがいいのです。たいていの戦争は「生のまま」では実利をもたらさない、「調理」が必要だということがよく理解できるようになります。

亡父につきあって、ときおり「水戸黄門」を見ていました。時代考証もハチの頭もあったものではなく、呆れかえったドラマだと思いますが、一点だけ、頷けることがありました。「とりあえず戦ったうえで、話し合いに持ち込む」ということです。

水戸黄門が先に印籠を出さず、まずチャンバラをやり、武力の優劣がある程度見えたところで、「静まれい!」とやるのは、戦争のエッセンスを五七五に詠んだような、あざやかな抽出です。そう考えれば、なぜ大東亞戦争が悲惨な結果を招いたかは火を見るよりも明らかです。明確なゴール設定をせず、負けと判断する基準もなく、手仕舞いすることなど考えていなかったためです。

◆ ナチスの軍服を着て生まれてきた役者 ◆◆
戦争のことなど棚に上げて、サスペンス映画として『日本のいちばん長い日』を見る、といったくせに、結局、戦争の問題に足を取られて、七面倒なことも考えざるを得なくなりましたが、今回も、細部で楽しもうと思っただけなのに、つい戦争と人間の問題にしがみつかれてしまいました。

『バルジ大作戦』を見ていて、アッハッハ、と笑ったので、そのことを書こうと思ったのです。どこで笑ったか?

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カール=オットー・アルベルティーという俳優です。榎木兵衛を膨らませたような異相で、いつもすごく気になる脇役です。この映画も、なんだかあいつが出てきそうだと思っていたら、ちゃんとロバート・ショウの部下で出てきたので、べつにコミカルな演技をするわけでもないのに、思わず笑ってしまいました。

カール=オットー・アルベルティーという人の顔を記憶したのはこの映画。

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この『戦略大作戦』でも、『バルジ大作戦』と同じく。タイガー戦車の戦車長、ただし、旧型のタイガーIのほうです。

あちらのほうの記事でも書きましたが、『戦略大作戦』では、銀行から金塊を奪取しようとするクリント・イーストウッド、テリー・サヴァラス、ドナルド・サザーランドらの連合軍ならず者部隊が、銀行前に居座った、たった1台のタイガー戦車に手を焼く、というシーンで、その戦車長としてカール=オットー・アルベルティーが登場します。

この役者は、ほかの映画ではあまり表情を変えず、それが売りもののようなところがあるのですが、『戦略大作戦』では、金塊の分け前をもらって「戦線」を離脱するときに、ニッコリ笑うのがなんとも印象的でした。本国ではもっと大きな役をやっているのでしょうが、ハリウッド映画のなかでは、『戦略大作戦』がアルベルティーの代表作だと思います。

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フィルモグラフィーを見ると、ハリウッド映画初出演は『大脱走』だったようです。子どものころに見たきりなので、カール=オットー・アルベルティーがどんな演技をしたのか、まったく記憶にありませんが、第二次大戦の捕虜収容所を舞台にした映画ですから、やはりドイツ軍兵士に扮したのでしょう。

八月にはなにか戦争映画を取り上げようと思って、ウェブが使えなかったあいだに数本の戦争映画を見たのですが、そのなかの一本がこれ。やっぱりカール=オットー・アルベルティーが出ていました。

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やはりナチス将校の役ですが、この『パリは燃えているか?』では、SS(ナチス親衛隊)の将校に扮します。これがこの映画のなかでは唯一といっていいくらいの笑えるシーンなのですが、そのへんは次回に書きます。



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by songsf4s | 2010-08-16 23:56 | 映画