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2010年 04月 26日 ( 1 )
横浜映画

一気に鈴木清順『花と怒涛』をしあげようという気がなかったわけではないのですが、今日は「どうも野暮用が多くていけねえ」と、エースのジョーのボヤキ節になってしまい、次回送り、または、さらに先に送ることにしました。

かわりに今日は、家じゅう引っ繰り返すCD、LP、書籍大整理のおかげで、画集などの大型本の箱から出てきた雑誌をネタにします。

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「市民グラフ ヨコハマ」という横浜市が発行していた季刊誌の1984年の号です。グラフ雑誌サイズなので、文字が切れてしまいましたが、左下に「全ページ特集 シネマ・イン・ヨコハマ ヨコハマ映画名鑑」とあります。すっかり忘れていましたが、20年近く前に横浜の古書店で買ったものです。

◆ 横浜映画リスト ◆◆
じつは、この特集で楽しいのは作品インデクスです。それだけ見ているぶんには極楽です。ただし、先回りしていっておくと、これは網羅的なリストではありません。わたしが知っているかぎりでも、数本、重要な映画が抜けています。ともあれ、ご覧あれ。

そのまえに、見開きページになっている索引をどのようにスライスしたかの概念図を示しておきます。

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ほんとうはまだ左につづくところで切って、下のカラムにつづいているということにだけご注意ください。画像編集ソフトでつなげるとまともな並びになります。

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赤いアスタリスクをつけたのは、とくに重要というか、好みの映画です。『赤いハンカチ』(その1その2その3その4その5その6その7)、『拳銃は俺のパスポート』(その1その2)ともに、すでに詳細に検討しています。

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つぎのスライス。『黄金の野郎ども』は日活アクション末期の裕次郎映画ですが、何十年も前に浅草の邦画三本立てで見たきりで、記憶が曖昧なため、なにも書かずにおきます。

『俺は待ってるぜ』は裕次郎のベストのひとつで、ずっと前から取り上げようと思っているのですが、いまだに果たせずにいます。したがって、これまた『黄金の野郎ども』とは異なる意味で、ここではなにもいわずにすませます。

『帰らざる波止場』は裕次郎=ルリ子のムード・アクションの佳作で、とりあげたいとは思っているのですが、VHSしかもっていないために、いまだに実現していません。わたしの感覚では「日活アクション」というのは、このあたりで終わっています。ニューアクションは当時まったく見なかったので、べつのジャンルに感じます。『赤いハンカチ』がお好きな方は、『帰らざる波止場』も楽しめるでしょう。

『激流に生きる男』は、この撮影中に赤木圭一郎が事故死したという理由で印象深い映画です。リリースされたものは、高橋英樹が代役に立ったものです。「横浜映画」としては、下の運河が高速道路になる以前の吉田橋がとらえられていたことが印象に残っていますが、これまた何十年も再見していないので、ほかのことは記憶が飛んでいます。あの運河が残っていればなあ、と思うことしばしばです。

つぎのスライス。黒澤明『天国と地獄』の前半はほとんど舞台劇のようで、キャメラは浅間台にある三船邸からほとんど動きません。これが後半の捜査過程の動きをより生彩のあるものにしていて、さすがは黒澤、という演出です。わたしは黒澤明のシリアスな系譜が大の苦手で、娯楽性と社会性のミクスチャーは『天国と地獄』ぐらいが限界、これ以上シリアスになると馬鹿に見えるよ、といつも画面に向かって不満をいっています。

『天国と地獄』にも吉田橋周辺が登場しますが、なんだか変だと思っていたら、なにかの本に、あれはセットだと書かれていました。現実をコピーする気がなかったのか、吉田橋周辺のムードがよく表現されているとはいいかねます。それに対して、黄金町ガード下の「魔窟」のセットはリアルでした(まさかロケのはずはないから、セットと決めつけているのだが……)。

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『天国と地獄』の黄金町ガード下のシーン。シルエットは山崎努。

考えてみると、『天国と地獄』の舞台で印象に残っているのは、結局、横浜ではなく、鎌倉の稲村周辺の描写のようです。石山健二郎=木村功コンビの動きと周囲の描写は現実からの乖離がなく、おおいに楽しめました。この映画もロケ地散歩をやってみたいとずっと思っているのですが、小田原(早川鉄橋)まで行くのがめんどうでいまだに実現していません。

『霧笛が俺を呼んでいる』についてはすでに詳細に検討しました。わたしの横浜映画三本指に入れます。映画として楽しいばかりでなく、横浜の描写もすぐれています。ついでに、城ヶ島まで行ってくれたのもけっこうでした。

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つぎのスライスは裕次郎映画が2本。『夜霧のブルース』はこの十数年再見していませんが、大人になって見たとき、子どものときに見たことを卒然と思いだしたほど印象の強い、やや変わり種の映画でした。小林正樹の『切腹』にヒントを得たそうですが、たしかに、構成は似ていますし、やや陰惨な描写があるのも似ています。日活アクションとしては、かなりオフビートな部類で、「いつもの裕次郎=ルリ子のムード・アクション」とはいえません。横浜映画としては、港の鉄橋をとらえたショットが印象的でした。

『夜霧よ今夜も有難う』はとくになにかいう必要はないでしょう。しばらく再見していないので、つぎに見たときは、石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明の三人が逃げ込む教会のファサードを確認したいと思っています。

◆ さらに気になる映画 ◆◆
このなかで、それはどうかな、と思った映画もあります。『張込み』(野村芳太郎監督、1958年、松竹)に横浜が出てくるといっても、冒頭、宮口精二と大木実が横浜駅の階段を上って列車に乗り込むだけのショットがちらっと出てくるだけです。横浜映画とはいいかねます。映画の出来はまずまずでしたが。

『日本のいちばん長い日』のどこに横浜が出てきたか、といいたくなりますが、あの天本英世守備隊長は子安の部隊を率いているのです。でも、あのシーンはどこで撮っても同じ、子安にロケに行くほどひまではなかったでしょう。横浜映画からオミットするべきです。

いや、天本英世はドンピシャリの役でしたなあ。笑っちゃいましたぜ。

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しかし、いちばん笑ったのは、田崎潤厚木基地指令と平田昭彦副官のコンビ。『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』の「赤イ竹」のボス、副官コンビとまったく同じ! 先につくられたのは『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』のほうなので、岡本喜八のジョークなのかもしれません。『日本のいちばん長い日』のプロデューサーのひとりは「ミスター東宝特撮」田中友幸、というのは無関係か……。ちなみに音楽は両方とも佐藤勝です!

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『日本のいちばん長い日』厚木基地の幹部、田崎潤(手前)と平田昭彦。

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『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』〈赤イ竹〉のボスと幹部。左から平田昭彦、田崎潤、天本英世。

『乾いた花』(篠田正浩監督、池部良・加賀まりこ主演、武満徹音楽、一九六四年、松竹)はなかなか印象的な映画で、篠田正浩のベストだと思います。この雑誌には、殺しのシーンが横浜駅近くの店で撮影されたと書かれていますが、それより、池部良が住む界隈は横浜橋商店街でのロケだったように記憶しています。こんど、たしかめておきます。

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「こんどたしかめておく」つもりだったが、すぐに見つかったので、さっそくキャプチャー。これは大岡川のたぶん黄金町のあたり(『乾いた花』)。

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はっきりと「横浜橋通商店街」と看板が見える。人物は池部良(『乾いた花』)。

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これも横浜橋商店街でのロケではないか。人物は中心あたりに池部良、その向かって右に佐々木功(『乾いた花』)。

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シルク・センターも出てくる。内部もロケだろう(『乾いた花』)。

『やっさもっさ』(渋谷実監督、淡島千景・小沢栄太郎主演、1953年、松竹)は未見ですが、たしかに獅子文六の原作は終始一貫横浜を舞台にしています。開巻いきなり、GIの町だったころの馬車道通りの描写があり、ほほう、と思いました。馬車道角の「珈琲屋」(この文字を見ると、ハンバーガーが食べたくて焦がれ死にするであろう友だちが数人いる。馬車道の珈琲屋がなくなって、マックが繁盛する時代はまちがっている)はまさにGI相手の店として出発したことがよくわかりました。小説『やっさもっさ』によれば、いまでは考えられないほど「危険なストリート」だったようです。そういうことが映画に描写されているかもしれないので、ぜひ見てみたいと思います。

◆ まだある重要な横浜映画 ◆◆
このリストから抜けている映画はたくさんありますが、あれがないのはまずいじゃない、と立腹しかかったのは、鈴木清順の『密航0ライン』(長門裕之主演、1960年、日活)です。公開当時はまったく重要ではなかった映画だから、無視されてもしかたがないのですが、でも、十八歳の子どもだって、清順シネマテークでこの映画を見たときは、あ、石川町だ、あ、伊勢佐木町だ、とすぐにわかったし、とくに石川町のロケはいいところを選んだと思ったくらいで、地元の雑誌としては、注目して欲しかったと思います。鈴木清順のロケ地選択はやっぱりうまいのです。

ちょっと記憶が錯綜しているのですが、同じ時期に、同じようなキャストで撮った『けものの眠り』(鈴木清順監督、長門裕之主演、1960年、日活)も、やはり横浜を舞台にしているようです。この映画も見ているのですが、1972年に池袋文芸座で見て以来、再見していないので、すっかり記憶が飛んだか、または『密航0ライン』に吸収されてしまったようです。久しぶりに清順シネマテークで10本ほど束にして見てみたいものです。

もうひとつ気になる映画があります。小津安二郎のたぶん『東京の合唱〔コーラス〕』(または『大学は出たけれど』か)に、岡田時彦(それとも斉藤達雄?)がサンドイッチマンになって町を歩いているシーン(市電から子どもたちが父親のすがたを目撃する)がありましたが、あれは映画のなかの設定は東京でも、ロケは横浜でおこなったということをなにかの本で読んだ記憶があります。そういわれて、日本大通りのあたりかな、と思ったのですが、この『市民グラフ ヨコハマ』では言及されていません。これも機会があれば確認する、ということで宿題にします。

またしても箇条書きのような記事で、お退屈さまでした。もう時間切れなので、手直しせずにこのままで。
by songsf4s | 2010-04-26 23:58 | 映画