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2010年 01月 25日 ( 1 )
(仮)案外悪趣味なギャング by 伊部晴美(日活映画『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』より その3)
タイトル
案外悪趣味なギャング(仮題)
アーティスト
伊部晴美
ライター
伊部晴美
収録アルバム
N/A(日活映画『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』)
リリース年
1963年
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みなさんもそうだと思うのですが、このところ、プロヴァイダーのメール・アカウントより、ウェブ・メールに依存する度合いが高まっています。OSのクラッシュの影響でデータの欠損が生まれることがあるものより、ウェブ上にあるほうが安全かもしれないと、最近は考えはじめていました。

ところが、今日はどういうわけか、goo mailのアカウントにログインできなくなってしまいました。通常使うOpera(Firefoxにシェアで後れをとったために、必死に努力したらしく、最近のヴァージョンはFirefoxよりずっと高速ではるかに使いやすい。お試しあれ)はダメ、IEもダメ、しからばというので、最近はよそのエクサイト・ブログのカウンターを廻すためにしか起動しないFirefox(電話で確認しながらブラウザーを試した結果、エクサイトはFirefoxユーザー以外はカウントしないことがわかった、IEやOperaのお客さんはカウントされない)を使って、やっと入れました。

goo mailのアドレスは、過去の記事に何度か、連絡にご利用くださいと公開したのですが、Firefoxでしか入れないのでは不便なので、これを機会に、ちがうアドレスを書いておくことにします。

pocketfulofmiracles@gmail.com

こちらも毎日チェックしているので、もしもわたしになにかおっしゃりたいことがあるようでしたら、ご利用ください。以前公開したgoo mailのアカウントで何人かのお客さんがわたしに連絡をお取りになりましたが、どうも危なっかしいので、アドレス帳から削除するようにお願いします。

◆ アンチリアリズムの萌芽 ◆◆
今回見直すまで、そういう風に考えたことはなかったのですが、ランニング・タイムの表示をにらみながら見ていると、『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』は『七人の侍』タイプの「はじまるまでが長い映画」のように思えてきました。

いや、もうすこしポジティヴな言い方をすると、「準備で見せる映画」といったあたりでしょうか。『七人の侍』は、ひとりひとりのリクルート手順をていねいに描き、その「副作用」で、各人のキャラクターを明確にしていきます。

『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』は、「軍団」のリクルートはしません。この映画の「準備」は、宍戸錠扮する探偵が、信欽三の組織(その裏にまだ黒幕がいるのだが、意外性を狙った設定ではない)に潜入していく過程です。これがけっこう入念なのです。

宍戸錠は、金子信雄警部にニセの身分をつくってもらい、釈放された川地民夫をテコにして、信欽三の組織に入りこもうとします。追っ手をまいた宍戸錠は、逃走用の車を捨て、べつの車に乗り換えて、まず川地民夫の家(または愛人=楠侑子の家)に行きます。

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洋風下見板と白く塗った木の柵という組み合わせのおかげで、いかにも福生か狭山あたりの米軍住宅という雰囲気になっている。でも、妙に車の数が多く、中古車展示場みたいになっていて、思わず笑ってしまった。

ここはなかなか笑えると同時に、やがて堀久作をはじめとする日活首脳陣に「鈴木清順はわけのわからない映画をつくる」という観念を植え付けることになる、独特の「くたばれリアリズム演出」が見られるところでもあります。

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MGではサツに見つかると、福生の米軍住宅あたり(横田基地が登場することでわかるように、昔は「都下」といっていた市域を舞台に設定しているので、福生で平仄は合う)でべつの車を盗み、シーンが事務所でテレビの報道を見る初井言栄に切り替わり、テレビの画面が映ると、つぎのショットは呼び鈴を押す手のクロースアップになっています。

つぎのショットはアパートのドアの前の川地民夫と、ちょっと離れて立つ宍戸錠。つぎは建物のすぐ外に駐められた車(さっき福生で盗んできたものと受け取れる)、そしてまたキャメラはドアの前に戻ります。ここまでのつなぎも、アブノーマルとはいいませんが、ちょっとイレギュラーで、監督の指示なしに、編集者が独断でやるつなぎ方には思えません。

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だれにでもわかるつなぎ方は、

建物の外に停まる車=>車から出てくる宍戸錠と川地民夫=>ドアの前の二人=>呼び鈴を押す手

といったところではないでしょうか。そういうノーマルな手順を踏まないところに、鈴木清順らしさがあるのですが、それは後年、すでに清順が名を成してから見はじめた若造の印象にすぎないのでしょう。リアルタイムで見た日活首脳陣は、なぜわかりにくくするのだ、と思ったかもしれません。

◆ 清順十八番、倒錯カップル艶笑シーン ◆◆
このつなぎ方は明らかに意図的です。速いつなぎで、しかもカードをシャッフルしたように、カットのつなぎ順が月並みではないので、観客は一瞬、「猫だまし」を喰らったようになり、ノーマルな「映画のなかの時間経過」の観念から切り離されます。感覚が宙に浮き、非現実的世界に突入するのに必要な心理的準備がととのってしまうのです。

そして、覗き窓から見える赤い灯り。ストリップでもはじまりそうな音楽。覗き窓の向こうの女(楠侑子。まさにうってつけの役)の呆けた表情。男を引っ張り込んだな、と一方的に女を責める男、黄色いライティング、その下で嫉妬する男をからかい、殴られて歓ぶ女――これぞまさしく、「清順的なるもの」のカードをずらっとテーブルに並べたシークェンスです。

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紅灯の巷ならいざ知らず、玄関のあたりを赤い照明にしている家もなければ、居間を真っ黄色にしている家もありません。でも、このアパートに入る直前の、スムーズではないショットのつなぎで、われわれは「ここからは奇妙なことが起きる」という心の準備ができているので、まるで『東京流れ者』のクラブ〈アルル〉のように変梃な照明デザインも、このカップルの奇怪なふるまいも、「そういうもの」として受け入れます。

いや、当時はやはり受け入れがたかったのでしょうかねえ。プログラム・ピクチャーに「作家性」なんかありはしないから、ただ「なにをいっているのかわからない」という評価だったのかもしれません。

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赤い男と……

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黄色い女、なにか意味があるのか?

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「おまえ、案外、悪趣味だな」

いや、そもそも、日活アクションはまともな批評の対象ではなく、しかも、その日活アクションのたんなる同時上映作品では、批判もなにも、見た人すら少なく、だれも、ここでなにか起きていることに気づかなかったのかもしれません。鈴木清順が一部の批評家に注目されるようになるのは、この『くたばれ悪党ども』が封切られた1963年なのだそうですが、そのきっかけとなったのはべつの映画なのです。

ともあれ、このシークェンス全体を音でどうぞ。

サンプル 「案外悪趣味なギャング」

途中で「ハサミ」は入れていません。川地民夫が楠侑子を痛めつけていたと思ったら、急にネットリなってしまうのですが、じっさいに、カットのつなぎで、一瞬にして甘いムードになっているのです。

そして、川地民夫が楠侑子と抱き合いながら、宍戸錠に「どこへ行くんだ?」と話しかける、一オクターヴ上がった、半分笑ったような台詞が妙に可笑しくて、川地民夫はちょっと倒錯的な人間を演じたときが一番いいなあ、と思います。川地の倒錯演技は、同じ年に撮られたつぎの清順映画のひとつの大きな柱になります。

たったひとつのシークェンスだけでおしまいとは情けないかぎりですが、まだ猫をかぶって控えめにやっていたころの鈴木清順としては、もっとも本性をあらわした場面なので、まあ、やむをえないとご容赦あれ。次回は、本格的にギャングたちのしつこい身元追求の手順を見ます。


DVD
探偵事務所23 くたばれ悪党ども [DVD]
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OST
日活映画音楽集~監督シリーズ~鈴木清順
日活映画音楽集~監督シリーズ~鈴木清順

日活映画音楽集~スタアシリーズ~宍戸錠
日活映画音楽集~スタアシリーズ~宍戸錠
by songsf4s | 2010-01-25 23:04 | 映画・TV音楽