人気ブログランキング |
2010年 01月 05日 ( 1 )
正月映画 Let It Snow! by the Glenn Miller Orchestra (『あなたが寝ている間に』より その2)
タイトル
Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!
アーティスト
The Glenn Miller Orchestra
ライター
Sammy Cahn, Jule Styne
収録アルバム
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
リリース年
19??年
他のヴァージョン
Dean Martin, Bing Crosby, Frank Sinatra, Andre Kostelanetz, Eddie Dunstedter, Woody Herman, Jackie Gleason, Aaron Neville, Andy Williams, Vaughn Monroe, Wayne Newton, Smokey Robinson & the Miracles, the Temptations, Johnny Mathis, Marie Osmond, the Ray Charles Singers, Chet Atkins, Herb Alpert & the Tijuana Brass, the Three Suns
f0147840_2356327.jpg

いったんシノプシスを書きはじめると、まとまりのつくまではやめられないのが困りもので、どこまで書くべきか考え込んでしまいました。前回の大晦日のパーティーでは「切れ場」になっていないので、もうすこしつづけます。

前回、書き落としたことがありました。一家の友人であり、相談役でもある人物だけは、ルーシーがフィアンセではないことを知っています。でも、おばあさんの心臓の具合がよくないので、ショックを与えたくないから、これまでどおりフィアンセのふりをつづけるようにと強いるのです。これをいっておかないと、なぜ、適当なおりに、まちがいを正さないのかわからなくなってしまいます。

f0147840_091211.jpg

やはり大晦日、病院でも職員たちがナース・ステーションで簡単なお祝いをしている最中に、ピーターは目を覚まします。すぐに家族が駈けつけ、ルーシーもやってきます。ピーターがみんなの顔を見渡して、ちゃんとわかったのに、ルーシーがだれだけわからなかったために、家族全員が、たいへんだ、記憶喪失だ、と納得してしまうところは馬鹿馬鹿しくておおいにけっこうです。

ここから、ピーターの「快復」(すでにしているのだが!)の努力やら、ルーシーとジャックの微妙なやりとりやらがあります。つまり、クリスマスの後半、元旦からの六日間がそういうあれこれの背景となるわけです。

◆ 宴のあとで ◆◆
六日の顕現祭にたどりつかなければいけないので、結末の半分ぐらい、最後の一歩手前ぐらいのところを書きます。そういうことを知りたくない方は、つぎの見出しにジャンプしてください。

クリスマスの十二日間は波瀾万丈のうちにすぎ、ルーシーはすべてを失って、ふりだしに戻ってしまいます。あーあ、がっかり、という顔でクリスマス・トゥリーを片づけるのが、そうとは明示されませんが、きっと六日、顕現祭の日なのでしょう。

f0147840_0145467.jpg

f0147840_015448.jpg

われわれが松飾りをとるところを見れば、今日は松がとれる日だから、などとわざわざいわずとも、七日だな、と思うのと同じで(と書いてから、泥縄で調べたら、七日までを「松の内」とするのは多数派ではあるけれど、六日や八日、あるいは三日や十日など、地方や考え方によってさまざまだそうな。しかし、最大公約数として、特段の説明がないかぎりは、やはり多くの人は七日と受け取るだろう)、トゥリーを片づけていれば六日とわかるのではないでしょうか。

はじめからそのつもりでシナリオを書いたのでしょうが、クリスマスの始まりと物語の始まり、クリスマスの終わりと物語の終わり(の一歩手前)をきちんと一致させてあるのがこの映画の特徴で、いってみれば「完璧なクリスマス映画」になっているのです。

f0147840_0163679.jpg

f0147840_0165142.jpg

f0147840_017040.jpg
ヤドリギの下に並んで立った男女はキスをする、という伝承も物語に取り込んでいる。クリスマス・ソングにもヤドリギは欠かせないアクセサリーであることは、2007年のクリスマス・スペシャルで何度も書いた。

クリスマスがはじまるのは十二月二十五日(二十四日はあくまでも前夜祭だということをお忘れなく。まだクリスマスははじまっていないのである)、終わるのは一月六日なので、冒頭にクリスマスをもってくる映画はよくあります。どちらかというと、クリスマスはクライマクスではなく、オープニングに使われることのほうが多いのではないでしょうか。

でも、そのようにはじまっても、クリスマスの終わりを描いた映画というのは、わたしはこのWhile You Were Sleeping以外に知りません。クリスマス・トゥリーの飾りつけをする場面はよく見ますが、それを片づける場面となると、さてどうでしょうか、わたしはほかに見た記憶がありません。

f0147840_0201285.jpg

f0147840_0202172.jpg

f0147840_0202887.jpg

f0147840_0203696.jpg

f0147840_0204475.jpg

f0147840_0205478.jpg
結婚祝いの家具を二人でピーターのフラットに運び込んだあとで、ジャックはルーシーをアパートまで送ってくるが、アイスバーンで二人ともまともに歩けなくなってしまう。このシーンはなかなか笑えると同時に、ロマンティックな味わいもある。

この六日のシーンは、偽りの上に築いた空中楼閣とはいえ、フィアンセと家族を同時に得るという幸福な十二日間が終わり、「ハレ」から「ケ」の時間に戻るという、夢の終わりにふさわしいもので、このあとにハッピーエンドがあるな、と予感させる甘みもあります。あとは、どういう終わり方にするか、その方法さえまちがえなければいいだけです。そこまでは書かずにおきますが。

なお、この映画には猫が活躍するシークェンスがあるのですが、それは丸ごとカットして、猫ブログの「善猫、悪猫、金持ち猫――映画のなかの猫たち その3」という記事にしました。まだつづきがあって、あちらの記事も二回に分け、続篇を書く予定です。

◆ 2曲目のむずかしさ ◆◆
さて、音楽です。タイトルで流れるナタリー・コールのThis Could Beは、オープニングにふさわしいアッパーなサウンドで、けっこうな選択だと思います。ただし、どの映画でもそうですが、うまくはじまったときの切所は、つねに二曲目です。オープニングがうまくいけば、そのぶんだけ、二曲目の困難は増します。この映画も、あちゃあ、という、大失敗のつなぎです。

f0147840_030497.jpg

たとえば、アヴァン・タイトルで、回想部分を前に出し、そのあとでThis Could Beを流し、タイトルに入るという処理が考えられます。たぶん、監督と編集者は、そういう処理も試みたでしょう。でも、うまくつなげずに諦め、タイトルのあとに回想シーンを置いたのだと思います。

思うに、音楽を生かすためにもっとも重要なことは、いかにうまく無音部をつくるかなのです。わたしがサウンド・エディターだったら、回想部分は音楽なしの処理を監督に進言します。気持ちのよいグルーヴのタイトルの直後に、べつの曲を入れるのは下策です。アヴァン・タイトル案を採用しないのなら、次善の策は、二曲目をThis Could Beの直後に置かず、数秒(プラス、関係のないつなぎのショットで目玉も移動させる)でいいから、あいだに無音部をはさむ処理をすることです。つながらない曲をつなげるよりは、無音のほうがずっとマシです。

f0147840_031187.jpg

f0147840_0311527.jpg

なぜ、曲をつなぐのがむずかしいか? キーとテンポとグルーヴの三つの次元に配慮し、どの次元でもイヤなズレによる軋みを起こさずに、きれいにつなげなければいけないからです。

ここに回避策のヒントがあります。次元を減らす方法です。キーのない音、つまりドラムやパーカッションだけの小節をはさむ方法がひとつ。逆にグルーヴやリズムがわかりにくいもの、たとえば、ストリングスだけのキューを間にはさむ、という方法もあります。

音のつなぎというのは、音楽監督よりもむしろサウンド・エディターの職掌なので、音楽監督がだれだからどうこうとは言いにくい面があります。そして、むずかしさはたぶんそこにあります。音楽監督は、このシーンにはこのキューという風に録音するだけで、挿入曲とスコアのキーやテンポのことまでは考えてくれないでしょう。

かくして、このWhile You Were Sleepingのタイトルと回想シーンのような、それとはっきりわかる大きな段差につまずいて、客が居心地悪げにイスのなかで身じろぎしてしまうような音のつなぎが生まれます。もっと神経をとぎすませて、細部に細心の注意を払って編集してちょうだいね。

◆ ディノのための曲 ◆◆
いや、そんなことを書く予定ではありませんでした。前回からずっと、一昨昨年のクリスマス・スペシャルで取り上げたLet It Snow!の補足をしようと思っているのに、なかなかそこにたどりつけなくて、いや、参りました。しかも、たどりついたと思ったらもうほとんど時間切れ、ゆっくり書いている余裕はありません。

まず申し上げておくべきことは、ディーン・マーティン盤が飛び抜けてよい、という以前の考えにまったく変わりはないということです。ディノがベストという考えはより強固になり、いまでは微細にディノ盤のすぐれた点を語ることができますが、まあ、お客さん方にとっては幸いなことに、その時間はありません。Let It Snow!を聴くならディノ、これだけご承知おきあれ。



いやまったく、ディノのために誂えたようなキャラクター(つまりメロディーよりも、歌詞に描かれた語り手のキャラクターがこの曲のもっとも重要なポイントなのである)で、このヴァージョンを知っていたら、ふつう、カヴァーしようなんて考えは失せると思うのですが。

一昨昨年の記事でも、ディノのLet It Snow!には別テイクがあることを書きましたが、ほめませんでした。なぜ褒めなかったかといえば、いや、これはサンプルにしましょう。

サンプル Dean Martin "Let It Snow!" (alt. ver.)

プロダクション面から聴く方なら、一聴たちどころにオルタネート・ヴァージョンの欠点がおわかりでしょう。トラックが凝りすぎなうえに、ミキシングのバランスが悪いのです。とくに後半のストリングスが、ラインの出来がいいぶんだけ、ディノを押しのけて前に出てくるのが、歌伴としては大失点です。

f0147840_0344120.jpg

逆にいえば、これがディノではなく、わたしの嫌いなシンガーのトラックであったら、ストリング・アレンジと女声コーラスが素晴らしいと絶賛していたでしょう。ぜんぜん聞こえなくてまったくかまわない歌手というのは山ほどいますが、ディーン・マーティンは残念ながら、そのなかには入りません。

いま、突然、ディーン・マーティンのカラオケをたくさんもっていることを思いだして、Let It Snow!がないか見たら、ちゃんと入っていました。これはリリース・テイクのトラック・オンリーです。

サンプル Dean Martin "Let It Snow!" (track only)

わたしのようにすぐにその気になる方は、これでディノごっこにいそしんでください。わたしなんか、ディノのタイミングでletのところを歌っちゃっていますもんね。

いや、馬鹿はおいておくとして、トラック・オンリーを聴くと、アレンジャーとプロデューサーとエンジニアがどれほど素晴らしい仕事をしたかがよくわかるものです。このトラックもすんげえ音をしていますぜ。This is THE Hollywood sound!!!

◆ オーケストラ ◆◆
ディノのことに終始してしまいそうで、困ったものです。まあ、それでもかまわないのですが、もうちょっとだけ。一昨昨年の記事では、なぜかこの曲のオーケストラものはないと書きましたが、その後、いくつか聴きました。

f0147840_0405516.jpg

まず、典型的なポップ・オーケストラ・ヴァージョンといえる、アンドレ・コステラネッツのものです。これがどういうわけか速い4ビートでやっていて、なんだかSleigh Rideでも聴いているような気になってきます。録音もアレンジもいいのですが、Let It Snow!を聴いた気だけはしない不思議なヴァージョンです。褒めてるのか貶しているのか、といわれても困ります。自分でもどっちなんだかわからないのですから。

ジャッキー・グリーソンも、いかにも彼らしい、ナイス&イージー・スタイルでこのLet It Snow!をカヴァーしています。さすがはハリウッド録音という、広がりのあるサウンドはすばらしいものです。



落語の「長短」じゃありませんが、なかなか音が出てこなくて、聴くほうは思わず身体が前にのめってしまいます! この遅さを面白いと感じないと、ジャッキー・グリーソンは楽しめません。「長短」の気短な兄貴分はジャッキー・グリーソンが嫌いでしょうねえ。

ロニー・オールドリッチとロンドン・フェスティヴァル・オーケストラの共演というのもあります。オールドリッチのピアノが主役なので、オーケストラによるシンガーのバッキングと大差がなく、ポップ・オーケストラによるヴァージョンとはいいかねます。オーケストラは後半で活躍します。なかなかいいラインをつくっていて、後半だけは楽しめます(ロニー・オールドリッチが好きとか嫌いではなく、ピアノは聴かないだけ)。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
オーケストラではなく、ビッグバンドのものとしてはウディー・ハーマンのLet It Snow!があります。わたしはビッグバンドが好きなのですが、ただしダウン・サイドがあります。専属歌手による歌があることです。ビッグバンド・サウンドは楽しいのですが、歌は歌、サウンドはサウンド、べつべつに聴きたいなあ、というか、歌はいらないなあ、としばしば思います。ウディー・ハーマンのLet It Snow!もそのタイプで、サウンドは楽しいのですが、歌は凡庸が凡庸の羽織を着て凡庸の披露目にきたという趣で、眠ってしまいます。まあ、眠りそうになるとバンドが前に出てくる仕掛けになっていますが。

今回改めて聴き直し、Let It Snow!ではなく、なにかべつの歌詞が載っている曲だとしたら、悪くないのだが、と思ったものがいくつかあります。とりわけ、アレンジとサウンドがすごいと思ったのはビング・クロスビー盤です。ビングのLet It Snow!は少なくとも2種類あるようですが、これは(たぶん)新しいほうのステレオ録音ヴァージョンです。



間奏は微妙なエキゾティカ味があるし、ライド・ベルのプレイはお見事。じつに気持のいいグルーヴです。

フランク・シナトラのヴァージョンは一昨昨年はあまり褒めなかったような気がします。今回聴き直して、パイド・パイパーズ風のコーラスが以前より面白く感じられました。コーンのところを、lots of cornと替えていることにも今回初めて気がつきました。たしかに、「たっぷりもってきたぜ」のほうがいいと思います。



まだ、ほかにも悪くないものがありますが、もう余裕はゼロ。このへんで切り上げるとします。

f0147840_050280.jpg


ディーン・マーティン ア・ウィンター・ロマンス
A Winter Romance
A Winter Romance

DVD
あなたが寝てる間に… [DVD]
あなたが寝てる間に… [DVD]

ビング・クロスビー
Bing Crosby's Christmas Classics
Bing Crosby's Christmas Classics

フランク・シナトラ
Christmas Songs by Sinatra
Christmas Songs by Sinatra

ジャッキー・グリーソン
Snowfall
Snowfall

OST
While You Were Sleeping: Original Motion Picture Score
While You Were Sleeping: Original Motion Picture Score

ナタリー・コール
Greatest Hits, Vol. 1
Greatest Hits, Vol. 1
OSTには挿入曲は収録されていない。タイトルで流れるのはナタリー・コールのThis Will Be。

グレン・ミラー
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
Swingin' Santa with the Glenn Miller Orchestra
ルーシーが訪ねた夜、キャラハン家の居間にはグレン・ミラーのLet It Snow!が流れている。

ロニー・オールドリッチ
Christmas with Ronnie Aldrich
Christmas with Ronnie Aldrich
by songsf4s | 2010-01-05 23:56 | クリスマス・ソング