- タイトル
- White Christmas
- アーティスト
- Bing Crosby
- ライター
- Irving Berlin
- 収録アルバム
- Holiday Inn/White Christmas Original Soundtrack
- リリース年
- 1954年

いやはや、こんなに困惑したことは近ごろありませんでした。前回の記事で、一昨年のWhite Christmasの記事その1とその2をいざ乗り越えん、なんて書いてしまいましたが、言うは易く行うは難しなのです。
他人とはちがうことをいうのなら、これほどたやすいことはないのですが、相手は自分自身ですからね。考えることがよく似ているのですよ。瓜二つの双子、いまのわたしが思うことはほとんどすべて、一昨年のわたしが書き尽くしていました。
ということで、二年前の自分自身と百パーセント意見が合った点について確認しておきます。
ビング・クロスビーは別格として、聴くべきWhite Christmasは、ダーリーン・ラヴ=フィル・スペクター盤が大筆頭であり、以下、ドリフターズ、ヘンリー・マンシーニ、チェット・アトキンズ(2ヴァージョンの両方)、パーシー・フェイス、アンドレ・コステラネッツ、ヴェンチャーズ、アンディー・ウィリアムズ、そして大真打ちのチップマンクスです。
チップマンクスとデイヴィッド・セヴィル White Christmas
エラ・フィッツジェラルドのような、偉そうにふんぞり返って楽曲をレイプしまくる不快きわまりない女ジャズ・シンガーたちへの嫌がらせとして、なんならジングル・キャッツも入れてもいいのですが、公平にいって、猫たちのクリスマス・ソングを聴くなら、ほかの曲のほうがいいと思います。
いや、エラ・フィッツジェラルドにくらべれば、もちろん、ジングル・キャッツのほうが数等マシです。わたしは、楽曲より自分のほうが偉いと思っているシンガーは大嫌いです。楽曲に敬意をもつことが歌い手としての第一歩です。
エラよりずっと楽しいジングル・キャッツのWhite Christmas(ただし、犬のバックコーラスは不要! でも、エンディングは秀逸)
さて、以上の確認をしたうえで、ここにすこし上乗せをしていこうと思います。でもねえ、86種類並べて聴いても、やっぱりフィル・スペクターのWhite Christmasが流れた瞬間、ジンときます。この世に存在可能なクリスマス・アルバムは、今後一枚に限定されるというなら、A Christmas Gift for You from Phil Spector以外に残すべき盤は考えられません。
フィル・スペクター=ダーリーン・ラヴ=ハル・ブレイン White Christmas
◆ 「必要なことはオーティスがみな教えてくれた」 ◆◆
自分が過去に書いた記事をにらんでいたら、己が姿にギョッとなって、あぶらがタラーリ、タラーリ、二六、四六はどこがちがう、てえんで、筑波の山でとれた蟇蛙状態になってしまいましたが、かすかに曙光が見えたのは、ディーン・マーティン盤にたどりついたときです。
ファースト・ラインのofでのピッチのはずし方が天才的。一昨年の記事でも、ディノのWhite Christmasはファンなら満足できる仕上がりであると、ちゃんと書いておきました。でも、今回、聴き直して、ビリングを大幅に上げようと決めました。フィル・スペクター、ドリフターズ、ヘンリー・マンシーニ、チップマンクス、そのつぎぐらいにディノを置きたいですね。むろん、クルーナー系統のシンガーとしては、ディーン・マーティン盤はナンバーワンだと思います。
つぎに、順位を上げたくなったのはオーティス・レディング盤です。わたしはオーティス・レディング・ファンではありません。総じて涼しい歌い方を好むので、ブラック・シンガーで好きなのは、サム・クック、スモーキー・ロビンソン、エアロン・ネヴィルといったところが代表的で、オーティスがこの系統ではないのはおわかりでしょう。
しかし、久しぶりにオーティス・レディング盤White Christmasを聴いたら、ホーン・ラインが心地よく感じられました。いや、最初のほうはどうということはないのですが、May your daysのところからが面白くて(この曲の聴かせどころはここだということは一昨年も書いた)、なるほどねー、そういうラインで行くか、でした。シンプルなのですが、非常に好ましいラインで、ちょっとInto the Musicのころのヴァン・モリソンのホーン・ラインを連想します。
以前も書きましたが、スティーヴ・クロッパーによると、オーティス・レディングは自分でホーン・アレンジをやったそうです。その「アレンジ」が、ブライアン・ウィルソンみたいなもので、ひとりひとりに、おまえはこう吹け、と口笛でラインを吹いてみせるのだそうです。最後に全員いっしょにやると、ちゃんと合っていたそうで、コーラス・グループのヘッド・アレンジと同じようなやり方だったのです。
スティーヴ・クロッパーは、ホーン・アレンジに関するかぎり、必要なことはすべてオーティスに教わった、といっていました。ビリー・メイ、ネルソン・リドル、ショーティー・ロジャーズ、ニール・ヘフティーといった、ハリウッド流のゴージャスなホーン・アレンジばかり聴いていると、その対極にあるオーティスのシンプルなホーン・ラインも、野趣あふれる好ましい味に感じられます。
◆ ここではないどこか、あなたではないだれか ◆◆
フランク・シナトラのWhite Christmasも、二年前より好ましく感じられるようになりました。とりわけ、コロンビア時代の録音は声の若さがおおいに魅力的です。シナトラはWhite Christmasをコロンビア時代に二度、そしてキャピトル時代に一度録音したようですが、コロンビアの二種は両方ともけっこうだと思います。アレンジとコンダクトは、当然ながら両方ともアクスル・ストーダール。
ペギー・リーのヴァージョンも悪くありません。しかし、こういうアレンジ、こういうレンディションだと、どうしてもジュリー・ロンドンのことを考えてしまいます。ジュリー・ロンドンの代用品として聴いてしまうのです。
ジュリー・ロンドンには、I'd Like You for Christmasというオーセンティックなクリスマス・ソングがありますが、どういうわけか、クリスマス・アルバムはつくっていません。クリスマスらしいにぎやかで華やかな曲には不向きな声とスタイルだから、と考えたのでしょうか。ジュリー・ロンドンのものなら、スロウ・バラッドばかりのクリスマス・アルバムでかまわなかったのに、残念なことです。
なにしろ、聴くだけでたいへんで、書くまでは手がまわらず、オーケストラやインストについても書きかけたのですが、最後までたどり着けなかったので、そのあたりは無理にまとめず、明日以降に持ち越しとさせていただきます。
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ホワイト・クリスマス OST(ホリデイ・インOSTと2オン1)
Holiday Inn & White Christmas

フィル・スペクター クリスマス・ギフト
A Christmas Gift for You from Phil Spector

ドリフターズ二枚組ベスト
The Definitive Soul Collection

ディーン・マーティン ウィンター・ロマンス
A Winter Romance

チップマンクスvol.1
Christmas with the Chipmunks, Vol. 1

ジングル・キャッツ
Here Comes Santa Claws

ヘンリー・マンシーニ
Merry Mancini Christmas

パーシー・フェイス
Christmas Is... Percy Faith

オーティス・レディング
The Otis Redding Story

ウルトラ・ラウンジ クリスマス・カクテルズ3(ペギー・リーのWhite Christmasを収録)
Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 3
