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2009年 12月 05日 ( 1 )
クリスマス映画3B Happy Holiday by Bing Crosby(『スイング・ホテル』より その2)
タイトル
Happy Holiday
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Irving Berlin
収録アルバム
Holiday Inn Original Soundtrack
リリース年
1942年
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前回は、ビング・クロスビーがコネティカットの農場というか「ランチ」というか、そういう場所で、祝祭日だけ営業するインを開くことになった、というところまで書きました。

このインが成功するか否かはこの物語の焦点ではありません。年間15日の営業日数では、東京のホテルのショウの十倍ぐらいの値段にしないと、とてもペイしないでしょう。はじめから現実的な話ではないのです。

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本文とは関係ないが、この映画のアステアのダンスのなかでは、このかんしゃく玉を破裂させながら踊る場面が楽しめた。もちろん、いちいち投げつけていたのではきれいに破裂しないので、パイロがメカニズムをつくり、アステアが複雑なコレオグラフィーを完璧にこなして、きれいにタイミングを合わせたのだろう。また、アニメーションも補助的につかったのではないだろうか。

かつてのマネージャーの紹介で、このホリデイ・インで働きたいという若い女性(マージョリー・レイノルズ)がやってきます。ソング&ダンス・ガールです。そして、ビングが、こういう曲を作ったといって彼女に歌って聴かせるのがWhite Christmasです。

ホリデイ・イン ホワイト・クリスマス・シークェンス


このシークェンスはエンディングの伏線になっています。どうというほどのものではないのですが、でも、伏線を張っておくのはつねに大事なことです。ついでに、書き忘れないようにと自分に念を押すのですが、White Christmasの歌詞がああなった理由は、この映画を見てよくわかりました。これまたこの映画のエンディングの状況に根ざしているのです。その点についてはのちほど。

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ビング・クロスビーがWhite Christmasを歌いながら、パイプの柄でベルを叩いてオブリガートを入れる。これがエンディングの伏線。

◆ シンデレラを求めて ◆◆
こんな調子でプロットを書いていては終わらないので、すこし端折ります。マージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インでビング・クロスビーの相方として歌い、踊り、演じることになります。

いっぽう、フレッド・アステアがビング・クロスビーとの競争に勝って結婚したヴァージニア・デイルは、百万長者に引かれてどこかへ消えてしまいます。泥酔したアステアは「コネティカット」(アメリカでもいろいろな読み方をされるのだろう。「コネクティカット」へ行った、と発音が強調される)のホリデイ・インにやってきます。

ここでマージョリー・レイノルズを相手に、フレッド・アステアは、そのキャリアのなかでもっとも奇妙な振り付けのダンスをやります。真っ直ぐに立っていられない男のダンスです。『ドランクモンキー酔拳』というカンフー映画がありましたが、あれはこれをヒントにしたのじゃないかと思ってしまいます!

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あとからきたマネージャーは、すばらしいパートナーだったという評判を聞き、その女性を新しい相方に、とは思うものの、だれと踊ったのかがわからず、彼女を求めて、アステアと二人で何度もホリデイ・インを訪れることになります。そのたびに季節に合わせた歌と踊りがあるというのが、この映画の趣向です。

ビング・クロスビーのほうは、またしても相方/想い人をアステアに奪われまいと、あれこれ策略を弄するというルーティンが繰り返され、結局、そのトリックに気づいたマージョリー・レイノルズは、ホリデイ・インを去り、アステアの相方としてハリウッドでスターになります。

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◆ またしてもメタ映画シークェンス ◆◆
失意のビング・クロスビーは、ホリデイ・インを閉じてしまいますが、やがて気を取り直して、ハリウッドの撮影所を訪れます。エンディングに入るので、これから見るのだから、結末は知りたくないという方はここまでにして、つぎの見出しにジャンプしてください。

ビング・クロスビーとフレッド・アステアの顔合わせと、二人の「ソング&ダンス」は堪能できるものの、映画としては他愛のない話で、ここまでは可もなし不可もなし、と思って見ていました。でも、最後はちょっとしたものです。

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フィルムの音を低減するために、キャメラ全体を巨大なブリンプで覆った。厚田雄春によると、ブリンプがなくて布団をかぶせてやっていた時期があったという!

ハリウッドの撮影所は、ビング・クロスビーの「休日だけ営業する田舎のイン」というアイディアが気に入り、歌まで含めて、これを映画化します。ビングが訪れたのは、このセットなのですが、これがホリデイ・インをスタジオで再現したという設定なのです。

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コネティカットの田舎にあるインだと言い張っていたものを、こんどはハリウッドのスタジオにつくられたホリデイ・インのセットであるといって見せる!

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監督、撮影監督、撮影助手の3人が載るクレーンもすごいが、ブームはもっとすごい。鯨用釣り竿か! なぜこんなに太いのだろうと考え込んでしまった。細いと動かしたときに揺れてしまい、ドップラー効果でピッチが揺れてしまうから? いや、考え過ぎかもしれないが!

これはちょっとした「メタ」で、アッハッハでした。だって、この映画自体のここまでのシーンに使ってきたホリデイ・インのセットを、こんどはハリウッドのスタジオで再現されたホリデイ・インのセットだといって見せるわけですからね。同じセットに二つの役割をふったのです。このメタ映画的シークェンスが、『ホリデイ・イン』の映画としてもっとも楽しい部分です。

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マージョリー・レイノルズがホリデイ・インのセットで演技をはじめる。この前に、ヒロインは女優で、ハリウッドでの成功の虚しさに気づき、自分があとにしてきたホリデイ・インを再訪する悲しい場面である、と説明される。このいけずうずうしい脚本はたいへんけっこう!

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セットにやってきたビングがそっと置いていったパイプに、マージョリー・レイノルズは目をとめる。

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このセットでマージョリー・レイノルズはWhite Christmasを歌う。陽が燦々と輝くクリスマスのハリウッドで、コネティカットのホワイト・クリスマスを夢見て帰ってきた、というのがこの歌詞のオリジナルな意図だったのかもしれない。

◆ 昔の記事の訂正 ◆◆
昨年の元旦にこの映画の挿入曲、Let's Start the New Year Rightを取り上げ、そのなかでつぎのように書きました。

「ビング・クロスビー、フレッド・アステア、マージョリー・レイノルズという3人の主役たちのあいだで、なにかもつれたものがあり、それをチャラにして、新しい年はきちんとスタートしよう、というのではないでしょうか」

「シノプシスを読んでも、Let's Start the New Year Rightが劇中のどこに出てくるのかわかりませんが、歌詞から考えれば、エンディング近くではないでしょうか」

両方とも大ハズレのコンコンチキでした。Let's Start the New Year Rightが登場するのは、ホリデイ・インの営業中、キッチンでビング・クロスビーが調理をし、マージョリー・レイノルズがそれを皿に受けるといった場面です。もつれた関係をチャラにするとか、そういうコンテクストではありませんし、エンディングにはだいぶ間がある浅いところ(開業直後の大晦日)に出てきます。

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いえ、エンディングでも出てくるのですが、さまざまな曲のハイライトの一部にすぎず、この曲で万事めでたく解決、かくして大団円、という使われ方ではなかったのです。

◆ ハッピー・ホリデイ ◆◆
さて、この映画で歌われる三大クリスマス・ソングのもう一曲、Happy Holidayが本日の眼目です。テーマ曲なので、まずオープニングのサウンド・コラージュの一部として登場します。しかし、フル・ヴァースが歌われるのは、ホリデイ・イン開業の日、クリスマスのことです。

Happy Holiday Bing Crosby


人生にうんざりしたらホリデイ・インにいらっしゃい、というコマーシャル・ソングなので、開業にはふさわしいというか、図々しいというか、そういう歌詞になっています。どうであれ、なかなかけっこうな曲で、こういう映画にはふさわしいテーマ曲です。

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◆ アンディー・ウィリアムズとペギー・リーのカヴァー ◆◆
ホリデイ・インのコマーシャル・ソングでは具合が悪いということで、カヴァー・ヴァージョンは異なる歌詞をつけています。アンディー・ウィリアムズ盤はサンタ・クロースが登場する、ご家庭向き、お子様向きの歌詞にしています。

アンディー・ウィリアムズのクリスマス・アルバムには、一昨年も何度か賛辞を呈しましたが、アンディー・ウィリアムズが好きとか嫌いとか、そういうことには関係なく、いいアレンジをきれいに録音した盤で、サウンドは楽しめます。アンディー・ウィリアムズは何度もこの曲を録音しているようで、ヴァリアントがありますが、どれも悪くありません。

歌ものとしてはもう一種、ドラスティックにアレンジを変えたペギー・リーのヴァージョンも魅力的です。

ペギー・リー ハッピー・ホリデイ


というように、ものすごく速いワルツ・タイムでやっているのです。ほかにこの曲の似たアレンジというのは、わが家にはありません。並べて聴くと異彩を放ちます。薄くミックスされた、管のアンサンブルによるカウンター・メロディーがクール。ドラマーも好みです。

これまた、先日の『めぐり逢えたら』の記事で、アル・カイオラとリズ・オルトラーニのSleigh Rideが収録された編集盤としてご紹介した、ウルトラ・ラウンジ・シリーズのクリスマス篇2に入っています。同じことばかり書いていますが、ウルトラ・ラウンジはハリウッド産ラウンジ・ミュージックの精華を集成した一大シリーズで、とりわけ3枚のクリスマス篇はじつに楽しい編集になっています。

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本文とは関係ないが、これはEaster Paradeを歌うシーン。

◆ オーケストラもの ◆◆
オーケストラによるカヴァーとしては、まずパーシー・フェイス盤があります。アップテンポの軽快なアレンジで、おめでたい祝日の気分になります。

ヘンリー・マンシーニほどの高打率ではないにしても、パーシー・フェイスもやはりハズレがありません。アレンジとコンダクトは重要ですし、この部分については、ヘンリー・マンシーニとパーシー・フェイスはまったくの別人です。しかし、両者ともハリウッドのRCAのスタジオAでの録音(マンシーニはほとんどつねにそうだったことがわかっている)でしょうから、音のテクスチャーが似ても不思議はありません。

さらにいえば、ツアーはべつとして、スタジオ録音に関するかぎり、相当数のプレイヤーが重なっているはずです。だれそれオーケストラとか、なにがしオーケストラといった名前がついていても、じっさいにスタジオでプレイするのはフルタイムのメンバーではなく、第一級の腕をもつスタジオ・プレイヤーです。そして、ポップ・オーケストラのメッカはハリウッドなのだから、時期の近いものはメンバーが重複している可能性が高いのです。

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独立記念日のショウ。こんな豪華版では、テーブル・チャージだけでとんでもない値段になるのは確実だなあ、と貧乏性のわたしは怖くなった!

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戦争中なので、国威発揚フィルムがショウのなかに織り込まれている。

それが、どのオーケストラもレベルが高く、録音がよく、多くのトラックが楽しめる造りになっている理由です。ハリウッド流の品質保持戦略なのです。もちろん、これはオーケストラにかぎった話ではなく、50年代後半から60年代にかけての、あらゆるハリウッド産ポップ・ミュージックに共通する基本理念なのですが!

ジャッキー・グリーソンもまたハリウッド録音なので、共通の基盤でオーケストラ音楽をつくっています。ただし、グリーソンの盤にははっきりとした型があります。「ナイス&イージー・サウンド」とでも名づけたくなるような、テンポの緩い、パーカッション系の音のほとんどない、ドリーミーなサウンドです。

Happy Holidayもやはり、典型的なジャッキー・グリーソン・スタイルでアレンジされていて、手ざわりはパーシー・フェイス盤の正反対ともいえるものです。にもかかわらず、というか、それゆえに、かもしれませんが、これはこれでおおいに楽しめるヴァージョンです。

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また、たんなる偶然ですが、ビング・クロスビーの歌うOST盤のあとにジャッキー・グリーソン盤Happy Holidayを置くと、後者がスロウなコーダに聞こえ、一体の曲のようになります。OSTはBフラットでスタートしますが、途中で転調し、Cで終わります。ジャッキー・グリーソン盤のキーはCなので、そのままつながってしまうのです。

同じように、パーシー・フェイス盤のあとにおいても、コーダに聞こえます。パーシー・フェイス盤はたしかFで終わるので(もう確認の余裕がない時間帯!)、きれいに転調した印象になります。

よけいな話はともかく、Happy Holidayは、オーケストラ・アレンジでも楽しく聴ける曲です。めずらしいことに、どのヴァージョンもどこかに魅力があるという、けっこうな取り組みでした。

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スイング・ホテル(ホリデイ・イン) 廉価版
スイング・ホテル [DVD] FRT-191
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スイング・ホテル(ホリデイ・イン) オフィシャル版
スイング・ホテル [DVD]
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ホリデイ・イン OST(ホワイト・クリスマスOSTと2オン1)
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Ultra-Lounge: Christmas Cocktails, Pt. 2
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アンディ・ウィリアムス・クリスマス・アルバム
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by songsf4s | 2009-12-05 23:38 | クリスマス・ソング