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2009年 09月 18日 ( 1 )
メアリー・トラヴァーズ没す その1

まだエリー・グリニッチの追悼記事も終わっていないのに、こんどはPP&Mのメアリー・トラヴァーズの訃報が入ってきました。

昨夜、O旦那のサイト、Wall of Hound(右のFriendsリンクからどうぞ)のBBSで、We'll Meet Againを歌ったヴェラ・リンが健在だということを知り、いや、めずらしい「ニュース」を読むものかな、とうれしくなったのですが、その直後に新聞サイトに行き、メアリー・トラヴァーズの訃報を読みました。ライト前ヒットのあとにセカンド・ゴロでゲッツー、という趣ですな。

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その昔のヴェラ・リン(上)と近影。上品なおばあさんになった。めでたしめでたし。

何度か書きましたが、わたしはフォーク・ミュージックというものをほとんど聴かず、ピート・シーガーを聴けなんていわれたりすると、勘弁してよー、いいドラマーが叩いている盤があれば聴くけどさあ、と無茶苦茶なことをいってごまかしています。

ディランだって、たとえケニー・バトリーのようなタイムの悪い人でもいいから、とにかくだれかがストゥールに坐って、ステディー(またはアンステディー!)・バックビートを叩いてくれないと、15秒から30秒のどこかで眠っちゃうのです。

なぜかといえば、わたしは音楽を、多数の音が累々と積み重なったタブローのようなものと捉えているからであり、地味な線描を見ても、あ、そう、と通り過ぎてしまうのですな。

◆ Do Not Sing Out! ◆◆
この定義から必然的に導きだされることですが、それなりの厚みのあるサウンド・レイヤーを構成しているものなら、たとえフォークでも、楽しめる場合があります。子どものころ、多少は聴いた「フォーク」ミュージックというと、まずキングストン・トリオ、そしてPP&Mでした。

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PP&M

もちろん、どちらもフォーク・ミュージックというより、「アコースティック・ポップ・ミュージック」というほうが実態に近いでしょう。50年代終わりから60年代はじめにかけての「モダーン・フォーク・ミュージック」というのは、正確にいえば、商品になりにくいものに砂糖を加え、口当たりをよくした「商業フォーク」というべきものでした。

Sing Out!系のフォーク・ピュアリストは、このへんはフォーク・ミュージックとは認めないのではないでしょうか。わたしが好きだというのは、そういうことです。ポップ・ミュージックだから聴くのであって、フォーク・ミュージックだから聴くのではありません。

そういう観点から、どのアルバムが好きかというと、子どものころもいまも、Albumです。ポール・バターフィールドやマイケル・ブルームフィールドのプレイは期待はずれですが、全体としては、いい曲を集め、うまく料理したウェル・メイド・アルバムといっていいでしょう。

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PP&M "Album" (1966)

そのつぎはSee What Tomorrow Bringsでしょうかね。あとは、アルバムとして好きというものはなく、個々の楽曲単位で好きなものがあるだけです。

◆ 夏の通り雨のような ◆◆
PP&Mの曲でなにかひとつだけ好きなものをあげるなら、Album収録のSometime Lovin'です。いまこれを書いている段階ではまだアップしていませんが、この曲はサンプルを聴いていただくつもりです。

サンプル Sometime Lovin'

だいたい、PP&Mのハーモニーというのは、合っているんだか、合っていないんだか、よくわからないところがあります。ラインの取り方がしばしばアブノーマルですし、複数の人間によるスラーを多用するので、ときとして、危なくなることがあるのだと思います。そのはずれそうなクリティカル・モーメントが非常に魅力的なのですがね。

ラインが変なところに行くのは、男女混声ハーモニーに由来する、ピッチの取引の結果なのでしょう。ノーマルなラインだと、全員が、ときとして、高すぎたり低すぎたりして、歌えないところにいってしまうので、あっちの無理をこっちにもってきて解決し、とやっているうちに、初期ビートルズのジョンとポールのハーモニーに通じるような、変なところへ行く結果になるのだと考えています。

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PP&M "See What Tomorrow Brings"のフロント。デザインはかのプッシュ・ピン・スタジオ、写真はバリー・フェインスティーン。もっとも好きなアルバム・ジャケットの1枚。曇り空の微妙なニュアンスがいい。

これだけアブノーマルなハーモニーがすし詰めになっているのだから、無意識ということは考えられません。はじめはともかく、途中から、このような奇妙なラインを意識してつくるようになっていったにちがいありません。だって、PP&Mの唯一にして最大の財産は、このアブノーマルなハーモニー・ラインなのだから、当然です。

うーん、明日には宍戸錠に戻ろうと思っていたのですが、もう一回ぐらいはPP&Mを書かないと義理が悪そうです。よって、この項も「つづく」とさせていただきます。
by songsf4s | 2009-09-18 01:00 | 追悼