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2009年 06月 13日 ( 1 )
Exodus by the Mantovani Orchestra (『栄光への脱出』より その2)
タイトル
Exodus
アーティスト
The Mantovani Orchestra
ライター
Ernest Gold
収録アルバム
Mantovani Plays Music from Exodus and Other Great Themes
リリース年
1961年
他のヴァージョン
Ernest Gold (OST), Connie Francis, Henry Mancini, Earl Grant, The Gene Rains Group, Les Baxter, Martin Denny, Ferrante & Teicher, Grant Green, the Duprees, the Tornados, the Lively Ones, the Originals
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Exodusのテーマというのは、子どものころ、古い時代のものとしてもっとも嫌ったタイプの曲でした。だいたいが大上段の大袈裟なものは好みではなく、シンギング・スタイルにしても、歌いあげる人はほとんどすべて願い下げという人間なのです。わたしが育ったのは、甘いバラッドでも感情をこめず、さらっと歌うのが最上とされた時代なのです。つまり、ジョン・レノン王朝です。

Exodus by the Mantovani Orchestra (『栄光への脱出』より その2)_f0147840_19471926.jpgしかし、人生は逆転につぐ逆転、大学受験のころだったか、ある夕食のとき、ふと魔が差し、どこからかの到来物だというわさび漬けをちょいと食べたら、これが案のほか悪くない、というので、こんな摩訶不思議な食べ物がこの世に存在する意義を了解し、俺も大人になったか、と思いました。

まあ、だいたいにおいて、テイストというのは、このようにちょっとした気の迷いから、突然変異的に変化していくわけで、このブログでも、子どものころだったら、ぜったいに聴かなかった楽曲、サウンド、アーティストをたくさん取り上げています。もちろん、断じて大嫌い、あの世にいってもまだ拒否しつづけるであろう、おばさんジャズ・シンガー群というのもありますが、そういうのははなから縁がないものと放擲するとして、やはり、とほうもないテイストの大変動を経験しつつ、老年、晩年へと驀進しているのでありました。

◆ コニー・フランシス ◆◆
Exodusという曲に対する嫌悪が薄れたのは比較的最近、十年ほど前だったか、コニー・フランシス盤を聴いてからのことです。いや、そもそも、わたしはコニー・フランシスという人があまり得意ではなかったのです。カンツォーネ式の音吐朗々というのは、上記の定義からもわかるように、すべて拒絶というのがわたしの趣味の基本ですから。

Exodus by the Mantovani Orchestra (『栄光への脱出』より その2)_f0147840_20172343.jpgしかし、かつてビルボード・トップ40ヒットを全曲集めるという願をかけたことがあり、三十代半ばから、自分の好き嫌いと、なにを買うかは、基本的には無関係という主義でやってきました。ビルボード・チャートが買えといえば、わたし個人が、こいつの歌い方は嫌いだ、といっても、拒否権は発動できず、財布も参加して、三者間の話し合いで決定するのです。財布がこの盤はリーズナブルであるといい、ビルボード・チャートがこれは買いだと命じれば、わたし個人の好みは多数決で負けてしまうのです。やってみてわかったのですが、この一見馬鹿げた買い方も、おおいに益するところがありました。が、まあ、それはべつの話なので、これで打ち切り。好きでもないシンガーのボックスを買ってしまったのには、そういう背景があったということです。

ボックスを聴いてわかったのですが、コニー・フランシスは後年スタイルを一変し、音吐朗々はやめてしまいます。そのあたりのノンヒット曲はおおいに楽しめるのですが、これもまたこの文脈ではよけいな話なのでカット。Exodusのときは、まだ大上段の大袈裟節、それでこの大上段の大袈裟の極北にある曲をやっちゃうのだから、マイナスにマイナスを乗じてプラスに転じるというやつで、ここまでくれば大笑いできます。しかも、なんのつもりか、Havah Negilahとメドレーというか、自在に入れ替わるハイブリッドなのです。ふつうのカヴァーとはいいかねますが、まあ、冗談みたいな曲だから、こういうアプローチもありだろうと考えたら、子どものころは嫌いだったこの曲がそれほど悪くもないと思えてきたのです。

◆ マントヴァーニ ◆◆
オリジナルはしかたないとして、カヴァーはやはりすこし斜かいにアプローチしたほうが面白い出来になるタイプの曲ではないかと思うのですが、それは机上の空論のようで、じっさいには、奇手を弄さず、大袈裟なOSTに正面からぶつかっていくアレンジのほうが成功するように思われます。

大上段となれば、やっぱりマントヴァーニ。大袈裟の国から大袈裟が羽織を着て大袈裟の披露目にやってきたようなひとですから、当然です。いや、揶揄しているわけではなく、マントヴァーニのExodusはほんとうにいい出来だと思います。

マントヴァーニ


後述するほかのオーケストラものと比較するとわかるのですが、弦のみというマントヴァーニ盤の入り方はじつにグッド・フィーリンです。全体を通しても、管を前に出したり、管の腕力でドカーンとフォルテシモにするということも控えた結果、終盤のフォルテが効果的で、なかなかクレヴァーなアレンジだと思います。

マントヴァーニは大上段の大袈裟に関しては右に出る者なしというエクスパートだから、この楽曲にはじめから組み込まれている、エモーショナルな大揺れをどう処理するかについてはいろいろ考えをめぐらせ、スケールは大きいままで、波の振幅だけは小さめにして、彼としては例外的な、揺れの少ない免震構造をとったのでしょう。賢明な判断だったと思います。

◆ オーケストラもの ◆◆
ついでなので、さらにオーケストラを。

映画の公開直後にリリースされたレス・バクスター盤は、リード楽器はあくまでもピアノ、そこに弦や管やパーカッションをからませていくというスタイルです。アレンジとしては悪くないと思うのですが、ピアノのプレイは好きになれません。変なくずし方をする悪趣味なプレイヤーです。

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1967年のアルバム、Encore! More of a Concert Soundに収録されたヘンリー・マンシーニ盤は、Music from Hollywoodと題され、『黄金の腕』や『ドクトル・ジバコ』などのテーマ曲や挿入曲とのメドレーになっています。オーケストラなので、イントロは当然派手にやっていますが、印象に残るのはエンディング(といってもメドレーだからつぎの曲につながるのだが)におけるヴァイオリンのプレイです。アーノー・ニーフェルドというプレイヤーで、わたしの知らない方面では名の通った人なのだろうと想像されます。とはいえ、このメドレーのなかでは、『黄金の腕』のような曲のほうがうまくいっているように感じられます。

ビルボード・チャート上では、この曲はファランテ&タイチャー盤の圧勝でした。1961年に2位までいっています。わたしが子どものころにイヤというほど聴かされたのも、このヴァージョンです。ファランテ&タイチャーはピアノ・デュオですから、当然、リード楽器はピアノですが、ピアノだけではポップ・ヒットを生みだすのきわめて困難です。彼らのヒット曲というのは、つまるところ、オーケストラ音楽といってかまいません。

ファランテ&タイチャー Exodus


てな理屈はさておくとして、どうでしょうかねえ。個人的にはこういうプレイはあまり好みません。そもそもピアノをリードに使うこと自体を好まないのですが、それにしても、ファランテ&タイチャーは趣味がよくないといつも思います。それがこういう曲に出合うと、いよいよキンキラキンのコテコテに突っ走るわけで、安ピカの仏像みたいなサウンドです。Exodusという曲は好かない、という子どものころから長くつづいた思いこみは、このファランテ&タイチャー盤が原因でした。

コンボものにはまったく手をつけられなかったので、もう一回、Exodusを延長させていただきます。
by songsf4s | 2009-06-13 23:56 | 映画・TV音楽