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2009年 04月 14日 ( 1 )
Search for Vulcan [from Thunderball] by Leroy Holmes (『サンダーボール作戦』より)
タイトル
Search for Vulcan
アーティスト
Leroy Holmes
ライター
John Barry
収録アルバム
The Crime Scene (Ultra-Lounge Vol. 7)
リリース年
不明(60年代)
他のヴァージョン
Ray Barretto, the John Barry Orchestra
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どうも今年の春は様相がおかしく、近所の桜並木の染井吉野のなかにはまだ見ごろといえる株がいくつかあるいっぽう、その脇ではもう躑躅が開花しはじめていますし、わたしの好きな花水木も咲きはじめました。

しかし、この時期に目にあざやかなのは新緑のほうでしょう。欅はどの木も日々緑が豊かになっていくのがはっきりわかります。欅よりさらに好ましいのは楓類で、さまざまな種類の楓がふさふさとやわらかな葉を茂らせています。毎年、あれを見るたびに、これは食べられないのだろうかと思います。さわるとなんともいえない手触りで、食べられそうな気がしてくるのですが……。

◆ ヴァルカン捜索 ◆◆
Thunderballシリーズをもう1イニング延長したはいいのですが、もはや飛び抜けた出来のものはなく、どれを看板に立てるかで苦慮してしまいました。こういうときには、珍なほうへと気分は傾くのですが、その方面でも、こりゃたまらん、と腹を抱えるほどのものはありません。そこで、微妙に方向転換することにしました。

じつは、いちばん面白く感じたのは、Thunderballのテーマではなく、挿入曲のSearch for Vulcanのリロイ・ホームズによるカヴァーなのです。これはかなり高得点なので、テーマではないから、などと了見の狭いことはいわず、これを看板に立てることにして、サンプルをいってみましょう。

サンプル

このトラックを単独で聴いても出来のいいことはわかりますが、オリジナルを聴くと、いっそうそれが明瞭になります。



というわけで、ずいぶんとオリジナルとはへだたったところに成立したカヴァーなのです。とりわけ、C-Ab-GおよびBb-F#-Fという冒頭のエキゾティックなギターのフレーズは、一瞬、どこから出現したのかと考え込んでしまいましたが、オリジナルでは派手に、ホットに鳴っているホーン・ラインを、極度に縮小し、クールにプレイしたものだとわかり、うへえ、でした。オリジナルのメロディー・ラインは背景のリフのように扱われ、オルガンと女声コーラスがやっていますが、この処理も粋です。

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どういうわけか、リロイ・ホームズのSearch for Vulcanは、ウルトラ・ラウンジ・シリーズに重複して収録されていて、このLeopard Skin Fuzzy Samplerという巻でも聴ける。

リロイ・ホームズはオーケストラ・リーダーとして、主に映画音楽のカヴァーで売った人ですが、アレンジャー、オーケストレーターとして、MGMやUAで多くのシンガーのバッキングもしたそうです。いくつか曲も書いていて、当家では、一昨年のクリスマス・ソング特集で、アル・カイオラとリズ・オルトラーニによるHoliday on Skisを取り上げ、サウンドのみならず、ホームズの楽曲の出来も賞賛しています。

ホームズはインスト曲の作り方を知っている人だったのでしょう。そういうところが、このSearch for Vulcanのギター・リックにもあらわれていて、ギター・インスト好きとしては、思わず乗ってしまうわけです。ほんのささやかなところでの解釈、処理なのですが、こういうことができれば、アレンジャーとしても成功するのではないかという気がします。

◆ ジェイムズ・ボンド・ゴーズ・ウェスト ◆◆
すこしだけテーマのカヴァーの落ち穂拾いをしておきます。

このカヴァー群について、どうしてそうなったのかなあ、と首をかしげることがあります。前回、アル・カイオラのカヴァーについて、アレンジが西部劇音楽のようだと書きました。カイオラは西部劇のテーマのカヴァーで有名な人だから、これについてはべつに不思議でもなんでもありません。

でも、このパターンがほかにもたくさんあるのは、いったいどういうことなのでしょう? Goldfingerその3でふれた、チェルトナム・オーケストラも、アコースティック・ギターのストロークがこの西部劇パターンですし、すでに言及済みのダン&デイル、ディック・ハイマン、パーシー・フェイスもやはり、アコースティック・ギターが同じリズムでストロークしています。

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いや、これが西部劇のテーマだというのなら、そういう風にパターンが偏っても異とするには足らないでしょうが、ジェイムズ・ボンドもの、しかも、バハマの海を舞台にした話が、なんで馬が疾駆するような表現になってしまうのでしょうか。さっぱり意味がわかりません。まったくおかしなことがあるものです。

◆ テーマのカヴァー拾遺 ◆◆
f0147840_1382656.jpg毎度けなしてばかりのジェイムズ・ボンド・セクステットは、この曲に関してはまずまずのパフォーマンスです。ドラムがフィルインをほとんど入れないため、フィルインで突っ込むジョン・グェランの悪癖(フィルインで突っ込み、バックビートに戻るときに微妙な間を入れて調整するというのは素人の特徴なのだが!)が最小限に抑制され、結果として、タイムがそこそこ安定したおかげです。グェランさえいなければ、なかなかいいメンバーだということが、Thunderballのカヴァーでよくわかります。とくにサックスがけっこうで、だれだっけとメンバーを見ると、バディー・コレット。やっぱり、うまい人だったんですねえ。まあ、下手な人がスタジオで有名になるはずがありませんが、グェランという例外もあるので……。

同じ系統としてはジャズ・オールスターズがありますが、こちらは、ギターがなぜかPeter Gunnのリックを弾いています。とくに面白いアイディアではないように思うのですがねえ。あまりレベルの高いプレイではありません。

f0147840_139427.jpgオーケストラでドーンとぶちかます方向は、ジョン・バリーがサントラでやっているから、それだけですでに不利なのですが、そういうカヴァーが生まれてしまうのは、やはりやむをえないところでしょう。いちばん派手なのはローランド・ショウのヴァージョンで、ジョン・バリーを圧倒してやろうという気迫が感じられます。しかし、ドラムがもたつき気味で、そこで大きくマイナス点がついてしまいます。百日の説法屁一発では譬えがちがうかもしれませんが、ほかが完璧でも、ドラムがヘボだとすべてぶち壊し、ゼロ以下になってしまいます。

レグ・ゲストはペラペラしたサウンドの12弦をリードに使っているところが楽しめます。レイ・バレートー盤は、途中で出てくるストリングスのアレンジが変わっていて、そこだけ印象に残ります。レイ・マーティンはアレンジはいただけませんが、二度登場するギターはなかなかけっこうです。ハリウッド録音なので、だれか知っているプレイヤーかもしれません。

あとはとくにふれなければならないヴァージョンはないようです。それにしても、チェルトナム・オーケストラは、この曲でも依然としてシャレなのかマジなのか判断ができず、思案投げ首ですわ。

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by songsf4s | 2009-04-14 23:28 | 映画・TV音楽