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2008年 09月 24日 ( 1 )
The Best of Jim Gordon その6

そろそろ後半の選曲をはっきりさせないと、なにか書こうにも書けないので、まだ変更のおそれありですが、いちおう、以下のようなベスト・オヴ・ジム・ゴードン2トラック・リストをつくってみました。

第2部
01. Mason Williams - Overture
02. Johnny Rivers - Rockin' Pneumonia, Boogie Woogie Flu
03. Dave Mason - World In Changes
04. Derek & The Dominos - Evil
05. Bread - Move Over
06. The Yellow Balloon - Follow The Sunshine
07. Frank Zappa - St. Alfonzo's Pancake Breakfast
08. Frank Zappa - Father O'blivion
09. Alice Cooper - I'm The Coolest
10. George Harrison - You
11. Seals & Crofts - Hummingbird
12. Tom Scott - Blues For Hari
13. Traffic - Hidden Treasure
14. Mike Post - The Rockford Files
15. Harry Nilsson - Together
16. Bread - Friends And Lovers
17. Johnny Rivers - Life Is a Game

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第3部
18. The Everly Brothers - Lucille
19. The City - Snow Queen
20. Alice Cooper - Road Rats
21. Steely Dan - Parker's Band
22. Joe Cocker - The Letter
23. Joe Cocker - Cry Me A River
24. Joe Cocker - With A Little Help From My Friends
25. Frank Zappa - DC Boogie
26. Derek & The Dominos - Let It Rain
27. The Everly Brothers - (Instrumental)

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2と3のちがいはなんだというと、3のほうは「なんらかの理由で置き場所に苦慮し、はみ出したもの」です。第2部のコンテクストと不和を起こした曲といいますか。たとえば、ザッパとドミノーズはものすごく長いライヴ・トラックで、楽曲の流れを妨げるという理由で、ジョー・コッカーは曲の前後にしゃべりやらなにやらがあって、曲間がスムーズではないという理由で最後にまとめました。

また、ジョー・コッカーのトラックもそういう側面が重なっているのですが、ジム・ゴードンひとりではない、他のプレイヤーとのダブルドラムだというので「雑部」に編入したのがスティーリー・ダンのParker's Bandです。ジョー・コッカーではジム・ケルトナーとの、そしてスティーリー・ダンではジェフ・ポーカロとのダブルです。

Snow Queenは、CDが錆びてノイズが出てしまったので、プレイは第一級なのに、本編からはずしたという事故品です。たんなるリストではなく、「現物」をつくっているので、状態のいいファイルが手に入らなければ、本編からはずさざるをえないのです。

急ぎに急いだ結果、MP3DirectCutによる冒頭・末尾の無音部の削除や、MP3Gainによるレベルのノーマライズも完了して、ほぼin the canとなりました。こういうことをやると、材料集め、吸い出し、MP3変換、タグ入れ、選曲、試聴、ふるい落としと補足、並べ替え、試聴、ファイル編集、ノーマライズ、パッケージング、とこれだけの作業をしなければならないので、じつは記事を書いているひまなんかないのです!

◆ Mason Williams - Overture ◆◆
大ヒット曲、Classical Gasを収録したアルバムPhonograph Recordのオープナーです。こういう特殊な曲というのは置き場所がむずかしく、こちらもオープナーに使うしかないと考え、第二部の一曲目としました。

8トラックぐらいまでの時代にはよくあったことなのですが、大人数でいっぺんに録ろうとすると、コンソールのインプットが足りなくなりました。それでなにが起こるかというと、ドラムに当てられるマイクの数が2、3本へと減らされ、いたって大ざっぱな音になってしまうのです。

このOvertureも、そういう「足りない音」「コクのない音」で、まるで小学校の体育館で録音したようなドラムです。もちろん、原則として、わたしはそういうドラム・サウンドは好きではないのですが、このアルバムでのプレイは面白いものが多く、なにか一曲はとっておきたいと思ったのです。そろそろツアーに出る時期が迫っていて、ジム・ゴードンの純粋スタジオ・プレイヤー時代末期の仕事という意味もありますし、インストなので、派手なドラミングをしていて、プレイ自体はいいものがそろっているのです。

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わたし自身が悩まされたことなので補足しておきます。ハル・ブレインの回想録、Hal Blaine & The Wrecking Crewに付されたトップテン・ヒッツ・リストに、メイソン・ウィリアムズのClassical Gasがリストアップされていますが、これは厳密には誤りです。ハルはライヴのほうでプレイしたにすぎず、スタジオ録音のヒット・ヴァージョンはジム・ゴードンのプレイです。

盤に付されるクレジットにもしばしば間違いがあり、どの曲だったか、ハルは、自分がプレイしたカーペンターズの曲に、ジム・ゴードンがクレジットされているものがあるといっていましたが、逆に、ハル自身が記録の混乱に一役買うこともあるのです。なにごとも鵜呑みにするな、疑問に感じることがあったら、どんなに小さなことでも解決するまで粘り抜け、ということでしょう。

◆ Johnny Rivers - Rockin' Pneumonia, Boogie Woogie Flu ◆◆
ジョニー・リヴァーズといえば、みなさんご存知なのは60年代中期のヒット曲でしょう。しかし、70年代に入ってもいくつかいいアルバムがあり、その筆頭が、このRockin' Pneumonia, Boogie Woogie Fluを収録したL.A. Reggaeです。

いつかきちんと分析したいと思っていますが、歌がうまいわけでもなければ、とくに味があるわけでもないシンガーが、10年の長きにわたって第一線でヒットを出しつづけたには、なにか立派な理由があるにちがいありません。たぶん、彼の身体的能力ではなく、頭脳のほうに秘密の鍵があると思うのですが、1966年から聴きつづけているのに、いまだに確たる結論にたどり着けません。

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中央、RaggaeのRの字の左側がジム・ゴードン

ヒューイ・スミスのR&Bヒットをカヴァーした、このRockin' Pneumoniaは、ジム・ゴードンに狂っていた時代のど真ん中で聴いたせいもあって、長年聴きつづけてきたトラックです。こういうテンポ、こういうグルーヴがお好みかどうか、ということになるでしょうが、わたしはおおいに好んできたプレイです。緊張感のある速いのももちろん好きですが、こういう、すこし後ろに重心をかけたグルーヴというのは、自分でプレイすると気持ちのいいものです。

ただし、じっさいに聴いていただければわかりますが、現代とはビート、グルーヴに対する考え方が根本的に異なっていた時代の産物なので、不愉快な重さ、肉体的な衝撃というべき馬鹿げた重量感はありません。あくまでもどこにタイミングの基準点を置くかによって、うしろよりのグルーヴを作り出しているだけであって、ジム・ゴードンの左手のヒット自体は軽めです。これこそが昔の味です。こういう、重心はしっかりあるのに、うっとうしいよぶんな重量がなく、軽味すら感じるグルーヴというのは、いまの重さ一本槍のお子様たちにはぜったいにつくれないでしょう。もちろん、機材とエンジニアとプロデューサーにも責任があるのですがね。

フィルインとしては、00:55、2:05のふたつの出来がよく、とくに前者のハイ・タムとスネアのピッチの差は理想的です。1:55のフロアタムの8分2打だけという極度に短いフィルインも、典型的なジム・ゴードン・ブランドで、シブくてけっこう。彼はたまに、フロアタム一打のみというアクセントも使います。時期によってはハルそっくりにチューニングしているので、このフロアタムの一打が、ハルとジミーのプレイを聴き分ける決定的手がかりになったことすらあります。

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じつになんとも凝りに凝ったジャケットで、二重になった外側はフィルムマウント、内側はフィルムという、巨大な35ミリ・スライド・フィルムの形式をとっている。これは、「マウント」から抜き出したジャケットの内側部分、すなわち、コダックのリヴァーサル・フィルムを拡大してみました、という思い入れでデザインされた部分。

それにしても、このチューニングのときのジム・ゴードンのキャムコ・セットに一度坐ってみたいですねえ(まだ希望をもっているので過去形にせずにおく!)。4分でスネアとハイ・タムを交互に叩くだけでエクスタシーでしょう。うーん、しかし、同じブランドのセットでも、近ごろのはちゃんと鳴らないからなあ……。

この記事ではあくまでもジム・ゴードンが主役なのですが、このRockin' Pneumonia, Boogie Woogie Fluでは、相方であるジョー・オズボーンのプレイももちろんけっこうですし、どちらか判断できないのですが、ラリー・カールトンまたはディーン・パークスの「規定演技のみ、インプロヴなし」というギターも美しく、そしてラリー・ネクテルのピアノも、彼の代表作というべきレベルにあります。Bridge Over Troubled Water「明日に架ける橋」なんかより、よほど楽しいプレイです。まあ、ニューオーリンズ・ファンにいわせれば、もっとナスティーに粘っこくやらなくちゃあ、でしょうが、ハリウッドはこれくらいがほどよいとされる土地なのです。

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ジャケットのみならず、中袋もリヴァーサル・フィルムのメタファーで貫かれている。これは36枚撮りを6枚に切ったところ、という雰囲気になっている。そして、黄色いダーマトでマーキングもしてあるという凝りよう。って、ここまでくると、カメラマン、デザイナー、編集にしか、意図がわからないだろうと思うが!

ちなみに、オリジナル(だと思う)のヒューイ・ピアノ・スミス&ザ・クラウンズのRockin' Pneumonia and the Boogie Woogie Fluは、シャッフルと4/4の中間とでもいいたくなる微妙なグルーヴで、一度聴いてみる価値はあるでしょう。さらにちなみに、ジェリー・ガルシアのソロ・アルバム集大成の付録のアウトテイク集でも、この曲を聴くことができます。スタジオ・ジャムだから、気負いこんで聴くようなもんじゃありませんが。たしか、デッドのヴァージョンもあったと思います。

◆ Dave Mason - World In Changes ◆◆
すでに取り上げたOnly You Know and I Knowと同じく、デイヴ・メイソンのソロ・デビュー盤、Alone Together収録曲です。

f0147840_029781.jpgどういう意味なのかよくわからないのですが、ジム・ゴードンもジム・ケルトナーもそろってロンドンにいた時期があるらしく、あげくの果てに、ハリウッド・ベースのニルソンまでもがロンドンに居坐って、ゴードン、ケルトナーを含む、ハリウッド、ロンドン混成部隊で録音したりしたことがあります。ゴードンかケルトナーがいないと録音ができなくて、しかたなくニルソンはロンドンにフラットを借りたのか(どういう巡り合わせか、ここでキャス・エリオットとキース・ムーンが変死している。ホーンティッド・ハウス!)、もっと積極的に、これからはロンドンの時代だと思ったのか、いったいなんなんでしょうねえ。

おかげで、ドミノーズのみならず、ジョージ・ハリソンやらジョン・レノンやらゲーリー・ライトやら、さまざまなイギリス録音が残されることになりました(たいていの場合、ケルトナーも同じ時期に同じアーティストの録音をしている!)。デイヴ・メイソンがゴードンやケルトナーと録音することになったのは、そういう口コミの結果なのでしょう。「伝説のマッドドッグ・コンビ来倫、最新流行ハリウッド・サウンドをお求めの方はいますぐお申し込みを」だったのかもしれません。

ゴードン、ケルトナーのイギリスへの道は、ジョー・コッカーのマッドドッグス&イングリッシュメン・ツアーが起点だったにちがいありません。一時期、リオン・ラッセルまでロンドンにいて、裏で動いていたわけですしね。ほら、ドミノーズの幻のデビュー・シングルのバックステージです。フィル・スペクターまでロンドンにいたんだから、まるでレコーディッド・イン・ロンドン、キャリフォーニアです。

プレイとしては、この曲はスネアのサウンドが好ましい、というのがまず第一点。ジム・ゴードンはハル・ブレインの「弟子」というわけではないのですが、プロとして、だれかの技を参考にしたとしたら、やはりハル・ブレインしかいないでしょう。ジェフ・ポーカロが「あの時代、ジム・ゴードンはハル・ブレインの遺産相続者だった」といっていますが、そういう位置にあったことがあるのです。この曲のスネアのサウンドは、まさにハル・ブレインの遺産だと感じます。

一カ所、スティック同士を衝突させるミスをしていますが、こういうのもご愛敬でしょう。あんまり完璧にやられてしまうと、逆に困るわけでしてね。それから、ジム・ゴードンには無関係ですが、この曲でのオルガンのサウンドは、あの当時にあってもなんだか無性に懐かしいものでした。いま聴いてもいい音だと思います。

◆ Derek & The Dominos - Evil ◆◆
ドミノーズの空中分解したセカンド・アルバムのセッションからのトラックで、Crossroadsボックスで陽の目を見ました。わたしはクラプトンが大の不得手なのですが、因果なことに、スティーヴ・ウィンウッドとジム・ゴードンが大好きなもので、ブラインド・フェイスとドミノーズのアウトテイクを聴くために、しかたなく、このボックス(LPの時代だった)を買いました。人生ままならず、とかくこの世は生きにくいですなあ。

f0147840_0363287.jpgだいたい、ジョン・メイオールとブルーズブレイカーズなんて、わたしには悪い冗談にしか思えません。中学の終わりだったか、高校のはじめだったか、クラプトンが有名になったあとで、あのへんのものが日本でもリリースされましたが、友だちが買ってきたのを脇から聴いて、子どものわたしは、なんという子どもっぽさ、と苦笑しました。日本語を勉強しはじめたイギリスの子どもの漢字書き取り練習帳を見せられたら、どんな気分がすると思いますか? それですよ。ブルーズにあこがれたイギリスのお子様たちの雑記帳です。

ブルーズブレイカーズには関心ゼロ、ヤードバーズはベック時代が好き、クリームはジンジャー・ベイカーのタイムの悪さにうんざり、だから、Crossroadsボックスははじめからほとんど無縁なのです。そして、それが目当てだったブラインド・フェイスの(わたしの言い方だと、あくまでも「スティーヴ・ウィンウッドの」だが!)アウトテイクが問題外の出来だったため、あちゃあ、投資回収率0パーセントかと絶望しかけました。

しかし、たった1曲ですが、このEvilがあったので、買った甲斐があったと安堵しました。Evilにおけるジム・ゴードンのプレイは、ボックスの残りすべてがゴミでも、「まあいいか」と大束なことがいえるほどすばらしいものです。

f0147840_0422274.jpgジム・ゴードンがもっとも状態のいい時期の録音ですし、テンポもちょうどよく、おそらく、好きにやってよいと赦免状が出たのでしょう、やりたい放題にいろいろな技を繰り出しています。ジム・ゴードンのタイムがもっともよかったときに録音されたこと、ライド・ベルを多用していること、派手なタムタムのプレイが堪能できること、以上の三つがこのトラックの美点です。控えめな褒め方だなあと思ったあなた、あなたは大いなる勘違いをしています。ジム・ゴードンが本気でタムタムとライド・ベルを叩いたら、尋常ではないことになるのを覚悟するべきなのです。そのへん、誤解なきよう。

そして、近年、ドミノーズのスタジオ録音を集大成した、Complete Studio Sessionsというセットがリリースされましたが、これにはすばらしい福音があります。ヴォーカルを削った、バックトラック・オンリーのEvilがはじめて陽の目を見たのです。もともとドラムを聴くには歌は邪魔ですから、これでゆったりとジム・ゴードンの凄絶なライド・ベルに惑溺することができます。

◆ イエロー・バルーン、フランク・ザッパ ◆◆
少しスピードアップするために、ブレッドは飛ばします。イエロー・バルーンは、そちらの方面(どちらの方面?)では「有名な無名バンド」です。Yellow Balloonというバンド名と同名の曲だけ、マイナーヒットしていて、かつてLP時代に編まれたライノのNuggetsシリーズではひとつの目玉になっていました。近年、サンデイズドからCDが出たので、いろいろわかってきて、プレイヤーも判明しました。

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このメンツを見れば、悪いトラックができるはずがないのはおわかりでしょう。ジム・ゴードンのプレイは特級品ではありませんが、一級品のレベルには達しています。

ジム・ゴードンは、ApostropheとImaginal Diseaseという、二枚のフランク・ザッパのアルバムでプレイしています。どちらも興味深いのですが、ここではまずApostropheから2曲を選びました。といっても短い断片のようなもので、曲間なしでつながっているため、2曲合わせてやっと1曲という雰囲気です。

こういうものに興味をもつのはプレイヤーだけかもしれませんが、この譜面を叩けたら一流のプロの証明、といった感じで、まるで試験問題みたいにアクロバティックなプレイです。ザッパをご存知の方なら、こういうタイプの曲があるのはわたしが説明するまでもないでしょう。必要なら、これくらいのことをやってのけるのは、ジム・ゴードンなら当たり前ですが、しかし、こんな曲芸じみたことをやらせるプロデューサーは、そうはたくさんいないので、「類似品」はないだろうと思います。

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今日は飛躍的にスピードアップした(当社比)ので、この調子でいけば、あと3回でジム・ゴードン特集を完了できるでしょう。ということは、一週間後ぐらいには追悼アール・パーマー特集をスタートできるかもしれません。とにかく、そのつもりで盤集めと吸い出しを進行中です。


by songsf4s | 2008-09-24 23:58 | ドラマー特集