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2008年 09月 04日 ( 1 )
The Saddest Song by Gordon Waller
タイトル
The Saddest Song
アーティスト
Gordon Waller
ライター
Gordon Waller
収録アルバム
Gordon
リリース年
1972年
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また今日も、あちらをこちらに連動させるのではなく、こちらをあちらに合わせる企画で、当家のこれまでの流れとはまったく無関係な曲です。

昨日のボビー・ウィットロック同様、ゴードン・ウォーラーといっても、すぐにおわかりになる人がどれだけいらっしゃるか、じつに心もとないのですが、ピーター&ゴードンのゴードンといえば、ああ、とおっしゃる方は、当家の場合はそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか。

長いあいだ音楽を聴いていると、変な経緯でわが家の棚に収まっている盤というのがいくつかあるのですが、このGordonというアルバムも、手に入れたのはかなりオフビートな状況で、「えっ、これが?」とコケそうになりました。

1973年の夏休みに、友人がヨーロッパ旅行をすることになりました。土産はなにがほしい、ときかれたので、そりゃもちろん日本にはない盤だな、とこたえました。たまたま、あの時期、60年代中期のブリティッシュ・ビートが懐かしく感じられて、デイヴ・クラーク・ファイヴだの、ジェリー&ザ・ペイスメイカーズだの、サーチャーズだの、そういったグループの名前を書いてわたし、このなかのどれかがあったらよろしく、と頼みました。

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この友だちが、60年代のブリティッシュ・ビートに詳しければ、そんなことは起こらなかったと思うのですが、ロンドンのレコード屋に入って、わたしのリストを店員に見せ、このどれかのグループの盤はあるか、ときいたのだそうです。その結果、手に入った盤が、今日の主役、ゴードン・ウォーラーの(たぶん)最初の(そしてたぶん最後の)ソロ・アルバムです。

これを「はい、おみやげ」と渡されたとき、わたしはどういう顔をしたのでしょうかねえ。間髪入れずに満面の笑みを浮かべたとは思えません。どちらかというと、戸惑ったのではないでしょうか。たとえばの話、わたしがロンドンに住むの日本演芸ファンで、東京に旅する友だちに、ツービートの昔の画像がほしい、といったとするじゃないですか? それで友人が買ってきたのが、ビートたけし監督の最新の映画のDVDだったら、ふつう、コケるでしょう?

ピーター&ゴードンのアルバムがあるといいなあ、あったら買ってきて、といったとき、わたしの頭のなかでは、かつて聴いた、♪Please knock me away and don't allow the day~とか、♪When I see her comin' down the street, I get so shaky and I feel so weak~なんてえのが、4チャンネル・ステレオで流れていたりするわけですな。それがあなた、じっさいに手渡されたのは、どこかの若い農夫が、鶏小屋で今日の夕食用に絞めるトリの物色をしているようなジャケットのLPですからね、「これはなに?」と喉元まで出かかりましたよ。

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しかし、これは旅の土産です。わたしへの好意で買ってきてくれたものです。アメリカ合衆国の歳末の習慣のように、もらった贈り物をデパートに交換にいくなんて発想は大和民族にはありませんな。わたしはにこやかに「へえ、めずらしいものがあったね、どうもありがとう」と受け取りました。ほかになにができるというのです!

しかし、人生はあざなえる縄のごとし、人間万事塞翁が馬、百パーセントいいこともないかわりに、百パーセント悪いこともありません。いかにもあの時代らしい、ジェイムズ・テイラーのボツ作品みたいなこのGordonを聴きながら、ピーター&ゴードンを懐かしがったものですが、それがいまはどうです。ピーター&ゴードンは、その後、LP、CD合わせて数枚の盤を手に入れました。でも、このGordonはその後、まったく見かけません。このときに入手していなければ、この盤を聴く可能性はゼロだったにちがいないのです。

そもそも、その後もなにも、あの時代だって、輸入盤屋でこのLPを見たことがなかったのです。ふつう、そういうことはありませんよ。どんなにめずらしいものを買っても、どこかの店で見かけて、おれは1980円で買ったけれど、この店はいくらだろう、なんて思ってチラッと見たりするじゃないですか。この盤に関しては、そういうことが一度もありませんでした。いかに売れなかったかわかろうというものです。

あの時代、ピーター&ゴードンからしてもう茗荷の宿、だれも話題にもせず(ジェイムズ・テイラーのおかげで、ピーター・エイシャーが脚光を浴びていたにもかかわらずですぜ!)、そのだれも知らないデュオの片割れのソロなんて、リリースの瞬間に忘却の彼方だったのでしょう。だから、CD化なんかされなかったにちがいありません。

あとで思いましたね。ロンドンのレコード屋の店員は、西も東もわからないお上りさんが迷い込んできて、自分がなにを探しているのかもわかっていないことを宣伝するかのように、メモなんか渡すから、ピーター&ゴードンはアウト・オヴ・プリントです、とウソをつき、売れなくて困っていたゴードン・ウォーラーのソロを押しつけて、してやったりと笑っていたにちがいない、ってね。

わたしがその場にいたら、店員など相手にせず、棚を自分で見て、日本まで持ち帰るに値する盤を相当数拾い出したにちがいありません。でも、そうなっていたら、このGordonを聴いた可能性はゼロです。だから、なにが幸いし、なにが災いするかわからないというのですよ。

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◆ Just for old times' sake ◆◆
昨日のボビー・ウィットロックのSong for Paulaのときにも書きましたが、こういうものは時間がたつと、自動的に「名盤」になってしまう傾向があります(じっさい、検索したら、「名盤」として売っている中古屋があった。まあ、「折り紙付きの駄作」なんていったらだれも買わなくなるから、多少の誇大広告はやむをえないし、作物の優劣は人それぞれの見方によるが、それにしてもなあ……)。

いや、箸にも棒にもかからない愚作なら、わたしも取り上げません。本日の看板としたアルバム・オープナーのThe Saddest Songをはじめ、I Won't Be Your RuinやBefore You Go to Sleepなど、なかなか悪くない曲が2、3あります。

そもそも、わたしはデュオ時代のゴードン・ウォーラーの声が好きでした。このアルバムはデュオのときとはまったくコンテクストが異なりますし、ゴードンも意識的にスタイルを変えていますが、元がいいので、こういう形で歌っても、ピーターがプロデュースしていたジェイムズ・テイラーの、タイムのよくない人に特有の、頭を押さえつけられるような鬱陶しさはなく、いたってあと口のよい盤になっています。

褒めるほどの盤ではないかもしれませんが、まんざら知らない人間でもない、A World Without Loveは好きだった、などというオールド・タイマーのお客さんは、たったのワン・クリック・アウェイなので、ちょっと立ち見などなさってはいかがでしょうか。

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ステージのピーター&ゴードン、といわれてもねえ……。こんな写真を見つけようと思ったわけではないが、近ごろはこのパターンがじつに多い。ギターは二人とも昔と同じギブソンJ-160E。顔を見てもわからない人は、ギターで思いだしてくれ、ということか?

by songsf4s | 2008-09-04 23:55 | その他