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2008年 06月 19日 ( 1 )
I Only Have Eyes for You その1 by the Flamingos
タイトル
I Only Have Eyes for You
アーティスト
The Flamingos
ライター
Harry Warren, Al Dubin
収録アルバム
Flamingo Serenade
リリース年
1959年
他のヴァージョン
別掲(本稿末尾)
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Moons & Junes特集なので、当然ながら、月が出たという歌ばかりやってきたのですが、今日は、月が見えないという歌です。といっても、曇っているからとか、月蝕だからというわけではありません。じゃあ、昼間だからだろう、なんていわれそうですが、そんな裏をかくようなものでもありません。

月が見えないという歌を満月の夜にやることはないか、とも思ったのですが、考えてみると、新月のときに月が見えないのでは当たり前です。煌々たる月夜にもかかわらず月が見えない、というところに趣向があるわけで、むしろ満月のほうがこの歌にはふさわしいようです。

いま書いていて、月蝕の歌というのもあるな、と思い、いちおうHDDを検索してしまいました。フィル・レッシュのEclipseと、ピンク・フロイドのやはりEclipseという二種がありました。たいした曲じゃないので、やりません。Total Eclipse of My Heartっていうのはなかなかいい曲でしたが、あれはだれがうたったんでしたっけ? そもそも、ハートが皆既蝕になるというのだから、天象には関係なさそうです。

◆ 困った歌詞 ◆◆
You TubeにフラミンゴーズのI Only Have Eyes for Youがありますので、よろしかったらお聴きになってみてください。画像は当時のものではなく、メンバーも大幅に異なっているでしょうが、リップシンクなので、音は盤のものです。

では、歌詞を見ていきますが、古い曲だけあって、構成がノーマルではないため、適当に切ります。以下は、大ざっぱにいって、ファースト・ヴァースとコーラスという感じのパート。

My love must be a kind of blind love
I can't see anyone but you
Are the stars out tonight?
I don't know if it's cloudy or bright
I Only Have Eyes For You, Dear

「ぼくは盲目の恋をしているにちがいない、きみ以外は目に入らないんだ、今夜は星が見えるのかい? 曇っているのか、月が輝いているのかもわからない、ぼくの目はきみを見るためだけにあるんだ」

第三者としては、馬鹿馬鹿しくて相手にする気も起きないような、じつにもってお気楽な歌詞ですが、昔はこういう曲が多かったのでしょう。よかれ悪しかれ、これがポップ・ソングというものでしてね。

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以下はセカンド・ヴァースとコーラスとブリッジが合体したようなパート。

The moon may be high
But I can't see a thing in the sky
I Only Have Eyes For You
I don't know if we're in a garden
Or on a crowded avenue

「月は高く昇っているのかもしれないけれど、空にはなにも見えない、ぼくの目はきみを見るためだけにある、いま庭園にいるのか、雑踏する大通りにいるのかもわからない」

いいかげんにしろ、と脳天に洗面器を喰らわせたくなりますが、まだ終わらないのです。

You are here and so am I
Maybe millions of people go by
But they all disappear from view
And I Only Have Eyes For You

「きみがここにいて、ぼくもいる、何百万人もの人が通っているのかもしれないけれど、みな目に入らない、ぼくの目はきみを見るためだけにある」

ケータイを操作しながら歩いている馬鹿者といっしょで、車に轢かれて死にゃあ、ちょうどいいやっかい払いだ、といいたくなります。昔、「世界は二人のために」という、不快きわまりない歌がありましたが、あれを思いだしてしまいます。

◆ フラミンゴーズ盤 ◆◆
この曲がスタンダードだなんてことは、昔はまったく知りませんでした。I only have ears for the Flamingo's versionです。まあ、アート・ガーファンクル盤がヒットしたことも覚えていますし、メアリー・ウェルズ盤もずいぶん昔に買ったものです。でも、この三者のヴァージョンを聴くかぎりでは、スタンダードの臭味はまったくなく、楽曲もそんなに古いものとは思いませんでした。

古いどころか、じつは、フラミンゴーズ盤がオリジナルだと思っていたのです。大昔のことはいざ知らず、I Only Have Eyes for Youといえばフラミンゴーズ、フラミンゴーズといえばI Only Have Eyes for Youというのは、60年代以降は常識といっていいでしょう。それくらいによくできたヴァージョンであり、決定版になったのも当然だと思います。

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たしかに、歌詞をくわしく検討すれば、ものすごく古めかしいスタイルで書かれていることはわかりますが、それをいうなら、50年代だって、古めかしい歌詞の曲はいっぱいありましたからね。歌詞の面でも、大きな変化は60年代に起こるのです。

フラミンゴーズ盤を聴いて、ものすごく古い曲だとは思わなかった理由は、アレンジとサウンドにあります。コードも古いものとはちがうだろうと思います。フラミンゴーズ盤のヴァースはC-Gm7(またはBb)の繰り返しですが、Cに対するBbの音がつくりだすこのセヴンス・フィールは、古いヴァージョンにはないものです。

アンプのトレモロを使い、リヴァーブもきかせたギター・リックも、スタンダードとはおよそ縁のないものです。そもそも、イントロのBb7-G-D7という、なんでもないコードからしてなかなか魅力的で、ささやかなものですが、これまたすぐれたアレンジのアイディアといえるでしょう。

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コーラス・グループというのは概して好かないのですが、よく考えると、それは白人のことで、50年代から60年代初期にかけてのドゥーワップ・グループはかなりもっているようです。なぜなのか、と考えてみましたが、白人のハイパー・スムーズなハーモニーは嫌いで、テクスチャーのあるハーモニーが好ましく感じられるからだろうと思います。

フラミンゴーズのハーモニーが、という言い方は避けますが、すくなくとも、I Only Have Eyes for Youに関するかぎり、彼らのハーモニーおよびヴォーカル・アレンジもなかなか好みです。つまるところ、この曲の魅力は、I only have eyes for youというコーラスのところの響きにあるのですが、リヴァーブの使い方がうまいこともあって、ちょっとした鳥肌もののシークェンスです。このたぐいのリヴァーブ・ドレンチト・ハーモニーとしては、リトル・アンソニー&ディ・インペリアルズのGoin' Out of My Headとどっちが魅力的かというぐらいです。

みんなこんな調子だったら、フラミンゴーズも、インペリアルズぐらいには有名になっていたはずですが、いくつか買ってみたかぎりでは、I Only Have Eyes for Youほどのトラックはありません。I'll Be Homeがまあまあか、というぐらいで、あとは凡庸なドゥーワップという印象です。

◆ ジョージ・ゴールドナー ◆◆
エンド・レコードのオーナーで、フラミンゴーズのプロデューサーだったジョージ・ゴールドナーは、なかなか華々しいキャリアの持主ですが(フランキー・ライモン&ザ・ティーネイジャーズのWhy Do Fools Fall in Loveのプロデューサーであり、のちにジェリー・リーバー&マイク・ストーラーとともに、レッド・バード/ブルー・キャットをつくり、そして、たちの悪いギャンブルの借金のために会社をつぶす)、I Only Have Eyes for Youでは、めずらしく判断ミスをしたのだそうです。

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フランキー・ライモンとジョージ・ゴールドナー

I Only Have Eyes for Youをシングル・カットしたまではよかったのですが、なんとB面にしてしまい、表はGoodnight Sweetheartにしたのだそうです。フラミンゴーズといえばI Only Have Eyes for Youという評価はもう動かしようがないほど決定的になっていますが、だからというわけではなく、無心に聴いても、Goodnight Sweetheartには、I Only Have Eyes for Youのような、聴いた瞬間に、こいつはすごいや、とうなるような魅力はありません。なにを勘違いしたのかと思います。

当然、こういう間違いはDJに正されます。彼らは盤をフリップして、B面のI Only Have Eyes for Youばかりかけたそうです。だれが聴いても、どっちがいいかといったら、I Only Have Eyes for Youのほうに決まっているわけで、まちがえようがないと思うのですが、当事者はやはりべつなのでしょう。どうであれ、45にしておいたのは幸運でした。そうじゃなければ、ひっくり返してもらうことすらできないわけでしてね!

ほかには、それほど面白いヴァージョンはないのですが、明日以降に、いくつかかいつまんで聴いてみる予定です。

ヴァージョン一覧

Frank Sinatra(2ヴァージョン)
Billy Vaughn & His Orchestra
Esquivel
Paul Smith
Paul Weston
The Lettermen
Mary Wells
Ray Conniff
Spike Jones(2ヴァージョン)
Helen Forrest
Art Garfunke
Doris Day
Lew Sherwood
Dinah Shore

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by songsf4s | 2008-06-19 23:56 | Moons & Junes