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2008年 03月 27日 ( 1 )
Cherry Pink and Apple Blossom White その1 by the 50 Guitars of Tommy Garrett
タイトル
Cherry Pink and Apple Blossom White
アーティスト
The 50 Guitars of Tommy Garrett
ライター
Louiguy (aka Louis Guglielmi), Mack David (English lyrics)
収録アルバム
Maria Elena
リリース年
1963年
他のヴァージョン
Perez Prado & His Orchestra, the Ventures, Chet Atkins, Billy May with Les Baxter, Eddie Calvert, Jerry Murad, Stanley Black, Michel Legrand, the Fabulous Thunderbirds, the Atlantics, Pat Boone
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桜の時季となると、Cherry Pink and Apple Blossom Whiteは、ぜったいに避けられない曲でしょう。いや、嫌いなら、それでもまたいで通るのですが、楽曲としてもよくできていますし、そして、ありがたいことに、いいヴァージョンがたくさんあるのです。

じっさい、看板にできそうなのが数種類もあり、ひさしぶりの長考になりましたが、どなたでも手軽に試聴できるという理由で、50ギターズを選びました。当ブログのおなじみさんには毎度くどくて恐縮ですが、右のリンクからいけるAdd More Musicで、50ギターズのLPをリップしたMP3が公開されていますので、よろしければお聴きになってみてください。CD化はされていません。

いつもならここで歌詞の検討へと移るのですが、この曲はインストゥルメンタルとして有名ですし、英語詞はあとからつけられたものにすぎず、内容もべつに面白いというほどのものでもないので、割愛させていただきます。いや、ヴァージョンが多いので、2回に分けることになるでしょうから、後編で余裕があれば、ざっと見るかもしれません。

◆ 桜の伝播経路 ◆◆
この曲のだれでも知っているヴァージョンはペレス・プラード盤です。これがオリジナルだと思っていたのですが、原曲はフランスもので、オリジナル・タイトルは"Cerisier Rose et Pommer Blanc"というのだそうです。

cerisierという単語は知りませんが、たぶん、cherryに対応するフランス語でしょう。残りは簡単です。etはand、pommerはapple、blancはwhiteだから、英語タイトルはこれを直訳したものとわかります。スペルは知りませんが、日本では「セレーソ・ローサ」のタイトルで知られているわけで、セレーソもまたcherryに対応するスペイン語またはポルトガル語なのでしょう。

f0147840_22591958.jpgこの曲を書いたのLouiguy(ルイーギュとでも読むのか)は、エディット・ピアフの代名詞であるLa Vien Roseの作曲者でもあるそうです。「だれでも知っている曲」といえるほどのものを2曲も書いた人というのは、そうたくさんはいないでしょう。

当然、フランス人と思いたくなりますが、バルセロナ生まれのイタリア系カタルーニャ人だそうです。スペイン人といってかまわないのですが、わが友のカタルーニャ学者によると、カタルーニャ人は自分たちをスペイン人とは考えていないのだとか。

英語の資料でわかるのはこのあたりまでで、この曲の誕生の経緯や、フランスでのヒット/ミスなどはわかりません。わからないということは、伝えるべきほどのことはなにもないということのような気がします。ペレス・プラード盤がモンスター・ヒットにならなければ、だれにも知られずに消えていった可能性が大です。

◆ スナッフ・ギャレットと50ギターズ ◆◆
手続きは終わったので、各ヴァージョンの検討に移ります。今回はギターものを中心にいくことにして、まず看板に立てた50ギターズ盤。50ギターズについては、当ブログではすでに何度か言及しているのですが、検索してリンクを張るのも面倒なので、また繰り返すことにします。

リバティーのプロデューサーとして活躍した、トミー・“スナッフ”・ギャレットという人がいます。ボビー・ヴィー、ゲーリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ、ジーン・マクダニエルズなどを通じてご存知の方も多いでしょう。

f0147840_231247.jpgギャレットは、以上のようなネーム・アーティストのもの以外にも、当然、多くの盤をプロデュースしていますが、彼のもうひとつの顔といえるのが「企画盤屋」です。50ギターズ・シリーズはその代表です。ほかには、たとえば、バーバンク・フィルハーモニックなんていうスタジオ・グループ(ドラムはハル・ブレインなので、他のメンバーも想像がつく)もあります。これは、なんといえばいいのか、大昔のブラス・バンドかダンス・バンドのスタイルで、現代(いや、つまり60年代のこと)の曲をやる、というものです。

バーバンク・フィルハーモニックは、The First (Maybe the Last)というデビュー盤のタイトルが示すとおり、1枚で消えたようですが(確証なし。たんにセカンドを発見できないだけ)、50ギターズは、Add More Musicの50ギターズ・ページにおけるキムラさんの解説によれば、20枚以上の盤を残したのだそうで、大成功企画だったことになります。これに匹敵するシリーズはエキゾティック・ギターズ(キムラさん命名するところのEG's)だけでしょう。こちらもAdd More Musicで聴くことができますので、2種のヒット企画の比較なんてことをなさってみてはいかがでしょう。

50ギターズの成功は、アイディアの独創性(まあ、マンドリン合奏のギター版みたいなものなので、きわめてオリジナルというわけではありませんが)とサウンドのよさのたまものだと思います。

◆ 50ギターズ盤Cherry Pink ◆◆
わたしは最初の2枚しかもっていないので、現物のクレジットを確認したわけではないのですが、途中からアレンジャーがアーニー・フリーマン(ボビー・ヴィーをはじめ、ギャレットはしばしばフリーマンを起用している)になり、そのあたりから、サウンドが非常によくなってきたのだと考えています。

キムラさんの解説によると、アーニー・フリーマンがクレジットされるようになるのが、まさにこのCherry Pink and Apple Blossom Whiteが収録されたアルバム、Maria Elenaからなのだそうで、たしかに、さもあらん、という音作りになっています。

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From left to right; arranger Ernie Freeman, producer Snuff Garrett, drummer Earl Palmer. 左からアーニー・フリーマン、スナッフ・ギャレット、アール・パーマー。壁面の吸音材の形状から、場所はユナイティッド・ウェスターン・リコーダーと考えられる。

Add More Musicで現在のところ聴ける10枚しか知りませんが、これまでの50ギターズの盤のなかでは、Maria Elenaがもっとも充実していて、なかでも、このCherry Pink and Apple Blossom Whiteは最上位にくるものと考えています。リード・ギターのトミー・テデスコのプレイを楽しむなら、ほかのトラックのほうがいいでしょうが、この企画の本来の目的である、多数のギターによるアンサンブルという面では、じつによくできています。

まず第一に、アレンジがはまっています。メロディーのおかげでカウンター・メロディーをつくりやすかったという面もあるでしょうが、じゃあ、ほかのヴァージョンもみなそうかといえば、そんなことはないのだから、これはアーニー・フリーマンの手腕といえます。

どこがいいかというと、なんといっても、後半(サード・ヴァース以降)のカウンター・メロディーです。後半はオブリガート隊(オーケストラ風にいえば、メロディー担当の「第一ギター」に対し、「第二ギター」という感じ)のある右チャンネルに、ずっと耳を取られっぱなしになるほどです。

50ギターズでは、トラップ・ドラムが使われるのは稀で、この曲でもドラムはブラシによるスネアのみです。活躍するのはコンガほかのラテン・パーカッションで、Cherry Pink and Apple Blossom Whiteも、いつものように、派手にコンガが鳴り響いています。うまい人じゃないと、こんなにきっちりした音は出ません。ひょっとしたら、アール・パーマーが、スネアではなく、コンガを叩いたのではないかという気がします。むちゃくちゃにスナップの利いた、おそろしく痛そうな音! コンガが生き物だったら撲殺されちゃいそうです。

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Earl Palmer in a movie set with conga drum. アール・パーマーとコンガ。1961年の映画The Outsiderのセットで。

もともと50ギターズは全体のアンヴィエンスが気持ちいいのですが、この盤ではいよいよ音の空間表現が堂に入ってきたと感じます。エンジニアがだれかわかりませんが、名のある人でしょう。

スナッフ・ギャレットは、リバティーのプロデューサーでありながら、自社のカスタム・レコーダーでは録音せず、しばしばユナイティッド・ウェスターンを使っていたということなので、そのあたりからエンジニアの候補は3人ぐらいに絞り込めますが、コメント欄で専門家にツッコミを入れられる可能性が高いので、推測はせずにおきます。

ただひとつ残念なのは、トミー・テデスコの見せ場がないことですが、それはほかのトラックで聴けばいいことです。

◆ ザ・ストレンジ・ヴェンチャーズ ◆◆
つぎは、好みだけでいえば、ヴェンチャーズ盤です。こちらのほうを看板にしようかと最後まで迷ったぐらいで、リード・ギターのプレイにかぎれば、じつに楽しいヴァージョンです。

f0147840_2315424.jpg初期のヴェンチャーズ(Cherry Pink and Apple Blossom Whiteは、アルバムThe Colorful Ventures収録)は、とくにそれを否定するデータ(コントラクト・シートの記載)が出てこないかぎり、ビリー・ストレンジがリードをとったと考えればいいことになっています。この曲でのサウンド、スタイルにも、ビリー・ストレンジであるという想定を否定する材料はありません。ふだんのヴェンチャーズ・セッションにおけるビリー・ストレンジのサウンドであり、スタイルです。

ヴェンチャーズ盤Cherry Pink and Apple Blossom Whiteのなにがいいといって、コード・プレイをたっぷり楽しめることです。この曲はハーモニーをつけやすいメロディーラインで、ビリー・ストレンジは、下にハーモニーをつけて2本の弦をいっしょに弾くプレイを多用しています。

しからば乃公も、てえんで、ちょっとなぞってみましたが(テープ速度をいじったらしく、ハーフ・トーンなので、チューニングを変えなくてはならないのがつらいが、たまたま50ギターズもハーフ・トーンなので、並べてプレイすると便利!)、速すぎて追いつけず、もうすこし練習しないとなあ、と敢闘むなしく敗退。

このプレイを、よけいな音を出したり、弦の1本をスカにしたりせずに、すべてきれいにやっているあたりは、さすがはボスです。この曲は日本でも有名なのに、昔、アマチュア・ヴェンチャーズ・コピー・バンドのものを聴いたことがないのは不思議だと思いましたが、このコード・プレイはちょっと敷居が高かったのだと、弾いてみてわかりました。

◆ チェット・アトキンズ ◆◆
もうひとつすばらしいヴァージョンがあります。チェット・アトキンズ盤です。Cherry Pink and Apple Blossom Whiteでは、例の親指でベースを入れる、チェット・アトキンズといえばだれでも思い浮かべるあのプレイはしていませんが、伝家の宝刀は抜かずとも、通常兵器のみでやっても、うまいひとはやっぱりうまいのです。

f0147840_23214958.jpgチェットは、ビリー・ストレンジとはちがう箇所ですが、やはりコード・プレイを多用しています。純技術的に見れば、こちらのほうが難度が高いでしょう。じっさい、よくこんなプレイを連続的に息もつかせず繰り出すものだと呆れます。空振りだのよけいな音だのといったものはいわずもがな、音をちびっちゃったなんていう「記録に表れないエラー」もありません。その他、ただ聴いているだけではなにをしたのかわからないプレイもあり(じゃあ、やっぱり、またなぞったか、といわれちゃいそうですが、なぞりません。無理です)、毎度ながら、すごいものです。

バッキングはアップライト・ベース、リズム・ギター、サイドスティックのみのドラム、カウベルというシンプルな編成で、マンボではなく、ルンバ風のノリです。サイドスティック以外に、スラップスティックか、またはドラムスティック同士をたたき合わせているような音がときおり聞こえるのが、ちょっと気になります。バディー・ハーマンあたりが、サイドスティックのプレイをしながら、同時に、そのサイドスティック・プレイをしている左手のスティックを、右手のスティックで叩く、なんていう高等技術を使った可能性もゼロならず。こういうのは、その場で見てみたいものです。

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ハリウッドのチェット・アトキンズ。背後のギタリストはハワード・ロバーツ。そういうメンバーで、ハリウッドで録音された盤があるのだそうだが、残念ながら未聴。ぜひ聴いてみたい一枚。

◆ アトランティックス ◆◆
もうひとつギターものがあります。オーストラリアのサーフ・インスト・バンド、アトランティックスです。このバンドについては、昨夏、Theme from A Summer Place by the Lettermenの記事ですでにふれています。

オーストラリアというお国柄を反映して、大英帝国インスト・バンド群の頂点に君臨するシャドウズの影響が濃いところが、このバンドの面白いところですが、よく似ているから面白いわけではありません。なんだか、ドサ廻りのシャドウズの偽物、シャドウズがグレて、サーフィン野郎に変身し、下品な曲を投げやりにやっているみたいなところが面白いのです。つまり、早い話が、あまりうまくないのです。

サーフ・マニアは下手なバンドの非音楽的ノイズに対する強い免疫をもっているので、このかぎりではないでしょうが、わたしの場合、小学校のときに好きだったBomboraとAdventures in Paradiseの2曲があれば、それで十分と思っています。もうすこしエキゾティカ方面をやっていれば、まめに集めるのですが、サーフ・ミュージックとパンク・ミュージックが兄弟であることを証明するようなトラックのほうが圧倒的に多いのです。

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で、アトランティックス盤Cherry Pink and Apple Blossom Whiteの出来は如何というと、うーん、どんなものか、です。ギターはそこそこがんばっていますし、なにをどうしたのかよくわからない不思議なサウンドによる効果音的なギターのオブリガートも、面白いか面白くないかはさておき、変わっていて耳を驚かしますが、ドラムに絶句してしまうのです。

それも、タイムがいいの悪いの、上手いの下手のなどという以前の問題で、どうしてそういうプレイを選択したのか理解に苦しむ、というリズム・アレンジなのです。まるで、幼児にスティックをもたせ、いまからおじさんたちがギターを弾くから、そこでなにか叩いてごらんとやらせてみた、というおもむき。意表をつく意外千万プレイの連続で、なにがしたいのかさっぱりわからず、大人の常識では意図を推しはかることは不可能です。

まあ、凡庸ではないことはたしかですし、音楽に笑いを求める人にも向いているかもしれないので、ゲテ好き、いかもの食いの方は、アトランティックスをひとつお試しあれ。

◆ ファビュラス・サンダーバーズ盤 ◆◆
ギターもののCherry Pink and Apple Blossom Whiteの棚卸しは以上をもって完了で、切りがいいのですが、ここで終わってしまうと、明日がつらそうなので、もうすこしつづけます。

f0147840_23493198.jpgギターものに近い雰囲気なのが、ファビュラス・サンダーバーズによる、ブルーズ・ハープが中心になったエレクトリック・ブルーズ・バンド編成のヴァージョンです。そういうタイプのバンドがやるには不向きな曲ですが、そのミスマッチの面白さを狙ったものでしょう。そもそも、時期的に(1981年リリース)わたしの守備範囲外で、なんにも知りません。たんに、オムニバス盤に入っていただけです。

こういうバンドだと、身近なところで、バターフィールド・ブルーズ・バンドと比較してしまうのですが、ギターはマイケル・ブルームフィールドから一段下がるどころか、九十三段ぐらいは落ちるので比較になりません。ハープは、ポール・バターフィールドと比較しても、それほど失礼ではないだろう(もちろん、バターフィールドに対して)と感じます。でも、バターフィールドのハープは、歌なんかやめたほうがいいってくらい、圧倒的にうまいですからねえ。やっぱり負けています。

しかし、退屈な80年代のものにしてはいいほうで、ナスティーな南部風味も悪くありません。とはいえ、これを機会にこのバンドを集めようとは思いませんでした。

残るヴァージョンの大部分を占めるオーケストラ/ビッグバンドものは、明日以降に持ち越しとさせていただきます。
by songsf4s | 2008-03-27 23:54 | 春の歌