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2008年 01月 23日 ( 1 )
Winter Has Me in It's Grip by Don McLean
タイトル
Winter Has Me in It's Grip
アーティスト
Don McLean
ライター
Don McLean
収録アルバム
Homeless Brother
リリース年
1974年
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ここまで冬の歌を聴いてきて思うのは、だいたいふたつに大別できそうだということです。アッパーとダウナーという、いつもの分類です。アッパー、ダウナーともに、冬の抑鬱的な気候に対する反応で、雑駁な言い方になってしまいますが、冬に勝つか負けるか、冬に立ち向かうか、冬にしてやられるか、という形式になるようです。

ディノのような全天候型は、冬は冬でまたオツなもんでね、てえんで、スキー場に向かう列車やコテージを最大限に利用しちゃったり(A Winter Romance)、吹雪に降り込められるという悪い状況(Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!Baby It's Cold Outside)も、タコな制御ソフトウェアがバグってエレヴェーターに閉じこめられたら、なんと美女と二人きりだった、みたいな幸運に転じてしまいます。しかし、これはまあ、銀幕の出来事のようなもので、ふつうの人間の場合、内部温度が低い状況で冬に遭遇するのは、弱り目に祟り目でしかありません。

というわけで、歌にも現実の人生を反映したリアリティーがもとめられるようになった70年代の、ふつうの人間がエネルギー・レベルの下がった状態を歌ったダウナーな曲の登場です。ドン・マクリーンの代表作American Pieは、あちこちにエニグマティックなところがある(じっさい、さまざまなことに暗示的に言及している)歌詞で、さながらグレイトフル・デッドの曲のように議論百出になり、そろそろ研究書でも出そうな騒ぎですが、本日のWinter Has Me in It's Gripは、いたってわかりやすい歌です。

◆ 冬の心と夏の海 ◆◆
それではさっそく歌詞へ。この曲はヴァースではなく、コーラスから入っているので、まずそのコーラス。

Winter has me in it's grip
Think I'll take a summer trip
On a sunny sailing ship
Where the shells lie in the sand

「冬にしっかりつかまえられてしまった、夏の旅でもしようか、ヨットにでも乗り、太陽を浴びて、貝殻が砂に埋まっている土地へ」

sailing shipは、そのままなら帆船です。それがドン・マクリーンの意図かもしれませんが、ヨットのことを指していると受け取っておきます。ヨットといっても、日本でいうひとり二人が乗るセコなのではなく(ああいう帆つき小舟は正確には「ディンギー」と呼ぶ。松本隆が「君は天然色」で「渚を滑るディンギーで」と書いたあれのこと。細部にこだわる作詞家なので、図体が大きく、とうてい「渚を滑る」わけにはいかない「ヨット」を避けたにちがいない)、あちらの金満家がかならずもっている、大きなキャビンのある外洋航行用機帆船のことです。

summer tripという表現もちょっと引っかからないわけではないのですが、ここはとりあえずこのまま通りすぎ、ファースト・ヴァースへ。

I feel so lonely
I'm too young to feel this old
I need you and you only
When the weather gets this cold

「ひどくさみしい、若いのだから、こんなに年老いた気分になるはずがないのに、こういうふうに寒くなると、きみが必要になる、ただきみだけが」

f0147840_0125085.jpgこれまでに見てきた冬のアッパーな歌が証明していますが、冬の必需品はパートナーです。パートナーが欠落すると、冬は必然的に陰鬱にならざるをえないという仕組み。いや、音楽の場合、つまるところ、アッパーとダウナーの分かれ目は、季節にかかわりなく、パートナーの有無にあるのですが、ほかの季節にくらべ、冬は一段とダウナーになるように思われます。

コーラスを繰り返したのち、セカンド・ヴァースへ。

There's no use in going
'Cause it's cold inside my heart
And it's always snowing
Since the day we broke apart

「でも、旅に出たって無駄なことだ、ぼくらが別れてからずっと、心のなかが冷え、いつも雪が降っているのだから」

面倒なことはなにもないようなので、サード・ヴァースへ。

I tried to run from winter
Like this spring and summer run to fall
But when the weather's in you
There's no hiding place at all, that's why--

「春から夏へ、そして秋へと、ずっと冬から逃げようとした、でも、自分のなかに季節があるのでは、どこにも逃げ場などありはしない、だから――」

といって、またコーラスへとつながります。this springといっているので、歌のなかの「現在」はまだ十二月なのかもしれません。旧臘中にこの曲のことを思いだしていれば、とも思いますが、どちらにしろクリスマス・ソングで忙しかったので、年明けにまわしたことでしょう。

◆ シンプルなコード・チェンジとバッキング ◆◆
コード進行はシンプルで、コーラスはG-Bm-C-D-C-D-F-Am-D、ヴァースも一部が異なるだけで、ほとんど同じです。フルートの間奏だけは、最後がEmなので、解決せずに、サスペンドした感覚を残します。エンディングもフルートなので、キーはGなのに、最後はEmですから、一回りせずに、宙ぶらりんで終わります。歌詞に合わせたエンディングにしたのでしょう。

f0147840_014994.jpgアコースティック・ギター2本、フルート、コーラス、ベル、ウッドブロック、タンバリンなどの軽いパーカッション類のみの静かなバッキングですから、サウンドの細部についてどうこうという意見はありません。

ただし、なにも考えずに手近なものですませたというわけではなく、歌詞の内容を考えたうえでのアレンジだと感じます。パーカッション・アレンジはかなり凝っています。また、I need you and you onlyのところの、ペダル・ポイント的に下降していくハーモニーは、なかなかパセティックで、ちょっと迫るものがあります。

大作American Pieにくらべれば、まったくささやかな小品ですが、ドン・マクリーンという人の本質は、こちらのほうにあるのでしょう。寂しいようで、自己憐憫のほのかな甘さもちゃんとある、なかなか好ましい歌です。Vincentがお好きな方なら、こちらも気に入るでしょう。

ドン・マクリーンは、American Pieの印象が強く残っていますが、キャリア全体を通してみると、基本的にはゴードン・ライトフットをひ弱にした、といってわるければ、上品にしたようなシンガーというふうに感じます。パセティックなバラッドを歌っても、過度に感傷的にならない資質があり、あっさりとしたあと口なので、とくにファンではありませんが、ときおり引っ張り出しては聴いています。

もうすこし書くべきこともあるようですが、この冬のあいだに少なくとももう1曲、できればさらに1曲、ドン・マクリーンを取り上げたいと思っているので、残りの話はそのときにでも。なにしろ、まもなく「あの人」の命日なので、十年以上遅れて「喪主」を買って出たドン・マクリーンの出番なのです。

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by songsf4s | 2008-01-23 23:57 | 冬の歌