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2008年 01月 14日 ( 1 )
Snowball by Shorty Rogers
タイトル
Snowball
アーティスト
Shorty Rogers
ライター
Peter Ilyich Tchaikovsky (?)
収録アルバム
The Swingin' Nutcracker
リリース年
1959年
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当ブログにいらっしゃるお客さんは、スタンダードを好む方か、60年代アメリカのポップ・ミュージックを好む方なのだろうと想像しています。キンクスやグレイトフル・デッドに肩入れするのは、純粋に当方の趣味にすぎず、お客さん方には申し訳ないことと思いながらやっています。

しかし、最近はデッドやキンクスを取り上げた日でも、とりたててお客さんが減る様子はなく、昨日今日、すなわち、2回にわたるStella Blueのあとは、むしろふだんよりやや多めで、ひょっとしたら、そちらの方面の方もいらっしゃるようになったのかもしれないという解釈に傾いています。

当方の関心の方面は、世間的にいえばちょっとバラけているので、お客さんが分裂するのも仕方のないことなのかもしれません。いや、当人の頭のなかでは、けっして分裂などしていなくて、同じ平面でちゃんと連関を保っているのでありまして、キンクスからフランク・シナトラに飛んで、ディーン・マーティンからデッドに飛んでも、「飛んだ」などとはまったく思っていないんですがね!

本日は、ちょいと野暮用なぞがあったりして時間がとれず、例によって、休むかわりに、簡単に書ける「雨傘用インスト盤」を取り上げようと思います。デッド、キンクスでいらっしゃったお客さんは、申し訳ありませんが「一回休み」です。すぐにデッドに「飛ぶ」予定ですが、デッドのトラックをやるには、つねに相応の準備が必要なので、いましばらくお待ちください。

◆ 40年代、50年代のハリウッド音楽の遺産 ◆◆
f0147840_0595817.jpgというわけで、本日の冬の曲は、ショーティー・ロジャーズのSnowballです。チャイコフスキーの『クルミ割り人形』を素材にした、ビッグバンド・アルバムに収録されています。といっても、このSnowballのメロディーが、チャイコフスキーのどの曲をもとにしたものなのか、わたしにはさっぱりわかりません。クラシックにお詳しい方に、ぜひツッコミを入れていただきたいところです。

しかし、それはそれとして、これはじつに軽快でノリのいいトラックでして、さすがはショーティー・ロジャーズ、すごいものだと感じ入ります。プレイヤーのレベルも非常に高いのですが、それとは切り離して、バッキングのホーン・セクションのアレンジ(やがてこれがロジャーズの「本職」となる)が、ワクワク、ドキドキするラインになっているのです。スタン・ケントンに重用されたとか、マイルズ・デイヴィスのBirth of Coolに影響をあたえたなどといったロジャーズにまつわる「伝説」も、それほど大ハズレではないかもしれないと思えてきます。

このSnowballについてのspecificなものではなく、アルバム全体に対するものですが、いちおう参加プレイヤーを列挙しておきます。

Joe Mondragon………Bass (Acoustic)
George Roberts…… Trombone
Frank Rosolino…… Trombone
Kenny Shroyer………Trombone
Ray Triscari……… Trumpet
Jimmy Zito………… Trumpet
John Tynan………… Liner Notes
Shorty Rogers……… Trumpet, Flugelhorn, Main Performer, Arranger
John Audino…………Trumpet
Harry Betts…………Trombone
Bill Hood……………Sax (Baritone)
Conte Candoli………Trumpet
Frank Capp………… Drums
Jimmy Giuffre………Clarinet
Bill Holman…………Sax (Baritone), Sax (Tenor)
Richie Kamuca………Sax (Tenor)
Harold Land…………Sax (Tenor)
Mel Lewis……………Drums
Art Pepper………… Sax (Alto)
Bill Perkins……… Sax (Tenor)
Bud Shank……………Sax (Alto)
Pete Jolly………… Piano
Lou Levy…………… Bass (Acoustic)

f0147840_111462.jpgこのメンバーで気になるのは、まずメル・ルイスとフランク・キャップという二人のドラマーです。先日もコメントに書きましたが、ジャズ出身で、ハリウッド音楽、主としてビッグバンド、オーケストラ・ミュージック、映画音楽の世界で活躍したことが記録されているこのあたりのドラマーは、今年の研究テーマのひとつです。

フランク・キャップについては、ビーチボーイズをはじめ、ポップ・セッションでもおなじみですが(たとえばPet Soundsのパーカッション。Pet Sounds Sessions Boxをお持ちの方は、ブライアンがフランク・キャップに「Franky, not so drrrrrr!」とかなんとか、大声で指示を出しているのをご記憶でしょう)、メル・ルイスはポップ系にはほとんど参加していないと思われます。

このSnowballではどちらが叩いているのか。それはなんともいえません。それがいえるようになることを今年の課題としているのですから! しかし、山勘でいうなら、メル・ルイスのほうではないでしょうか。

f0147840_115990.jpgジョー・モンドラゴンも多数のポップ・セッションをやっているので、以前からちょっと気にしている人です。しかし、ピアノのピート・ジョリーはさらに気になります。最初にこの人のプレイで感心したのは、クリス・モンテイズのA&Mのトラックでのことです。つぎに、友人のオオノさん(右のFtiendsリンクからいける「You Tubeを聴こう」のオーナー)が、A&M時代の彼のソロ・アルバムを発掘し、それを聴かせてもらったら、じつにグッド・フィーリンの盤で、すっかり気に入り、しばらくはよく聴いていました。最近、ちょっとだけジョリーのアルバムを入手したのですが、そのへんはまたべつの機会に。

ホーン・セクションで知っているのは、バド・シャンク、アート・ペッパーですが、Snowballでは、テナー・サックスのソロはあるものの、アルト・ソロはないので、活躍していません。

f0147840_14228.jpgショーティー・ロジャーズがプレイをやめて、裏方仕事に専念するのは1962、3年のことだそうで、このSnowballは1959年リリースですから、このトラックでミューティッド・トランペット(あるいはフリューゲルホルンか?)のソロをとっているのは、ロジャーズ自身でしょう。ピッチもよく(ピッチがどうこうなんて、失礼なことをいうものじゃないという方もいらっしゃるでしょうが、以前にもいったように、ピッチの悪いトランペッターというのは、ジャズ・コンボしかやっていない人のなかには、イヤになるほどたくさんいます)、スタイルも上品で、プレイをやめたのは惜しいと感じます。

◆ 「第三次世界大戦セッション」 ◆◆
f0147840_153590.jpgショーティー・ロジャーズのことを気にしはじめたきっかけはなんだったのか、もう忘れてしまいましたが、わたしはジャズには興味がないので、あくまでもポップ・アレンジャーとしてロジャーズが入口でした。たぶん、ハル・ブレインの回想記、Hal Blaine & the Wrecking Crewで言及されていたことから、名前を覚えたのでしょう。

どこで登場するかというと、モンキーズのマイケル・ネスミスのソロ・アルバム、Wichita Train Whistle Singsのアレンジャーとしてです。これはとんでもないセッションで、仲間内では、かつては、ぜひ発掘しなければならないアルバムの一枚でした。現在ではCD化されているようです。

どうとんでもないかというと、わたしが説明するのは面倒なので、かわりにハル・ブレインの本から、このセッションに関わる部分を引用します。一度はこの本の翻訳出版に挑戦しかけた編集者の方が、今年、再挑戦するとおっしゃっているので、その景気づけとして、かつて出版のために用意した原稿を、以下にそのままペーストします。

マイケルは電話で、「スーパーセッション」のプランを話してくれた。ハリウッドでかつてなかったようなセッションをしようというのだ。しかも、土日――ミュージシャン・ユニオンの組合員が「ゴールデン・タイム」と呼んでいる週末にだ〔特別料金がもらえる〕。チェイスンズ〔ハリウッドの高級レストラン〕のシルヴァー・サーヴィスと、集まったミュージシャンの信じられない豪華さで、このセッションは忘れられない。アレンジはショーティー・ロジャーズが担当し、プレイヤーの数ときたらとんでもなかった。トランペット、トロンボーン、サックスがそれぞれ一〇人ずつ、パーカッションが五人、ドラマーが二人、ピアノが四人、ギターが七人、フェンダー・ベースが四人、アップライト・ベースも四人、さらにまだまだおおぜいのミュージシャンがきたのだ。第三次世界大戦でもはじまるのかという騒ぎだった。じっさい、ネスミスはこのプロジェクトをそう呼ぶつもりだったが、やがて『ザ・パシフック・オーシャン』と変わり、最終的には『ザ・ウィチタ・トレイン・ホイッスル・シングス』に落ち着いた。

f0147840_162513.jpgこのセッションのウワサで、町中がハチの巣を突ついたような騒ぎになった。こんな巨大なセッションがほんとうにテープに録音できると信じる人間など、ひとりとしていなかった。わたしはありとあらゆる大物コントラクターたちの羨望の的になり、その多くが電話をかけてきて、この仕事をゆずってほしいと、なかなか魅力的な条件を提示した。だれもがこのセッションに参加したがっていたのだ。

そして、その日がやってきた。一九六七年十一月十八、十九の両日だ。ショーティーはしゃかりきになって、すばらしいアレンジメントを書いてきた。アール・パーマーとわたしは、天にものぼる気分だった。こういう巨大なバンドのケツを蹴り上げるのは、まさにドラマーの夢だからだ。レコーディングの最中にもしばしば休憩をとって、われわれは豪華な食事をたっぷり詰めこんだ。サックス/オーボエのジーン・チープリアーノは、リードが詰まるのではないかというほどキャヴィアを食べていた。みんな、キャンディー・ストアに入った子どもみたいなものだった。レッキング・クルーのふたりのトランペッターは、ほんとうに破裂しそうになるまで食べまくっていた。

最後に、わたしはマイケルに、なんだってこんな金のかかるセッションをやったのかときいた。政府が彼のポケットから五万ドルをもっていこうとしているので、税金を払うかわりに、この騒々しい帳尻合わせをすることに決めたのだ、というのが彼の説明だった。これで彼は国税庁とケンカしないですみ、われわれの年金プランもちょっとしたカンフル剤を打ちこまれて、八方が丸くおさまったのだった。

とまあ、そういう馬鹿騒ぎのパーティーだったのであります。このセッションが終わったとき、トミー・テデスコがフェンダー・テレキャスターを天井に向かって投げ上げ、それが床に激突する音も盤に記録されています。さらにトミーは、壊れたテレキャスターを額縁に収め、自宅に飾っていたことも、ハリウッド音楽ファンにはよく知られている逸話です。

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◆ 善意の人 ◆◆
そのようにして、ショーティー・ロジャーズに対するわたしの関心ははじまり、ときおり盤を買ったりしていましたが、そろそろ時間切れになってきたので、あとはすこしエピソードを加えるだけにとどめ、本日はこのへんでおしまいということにさせていただき、彼のさまざまな仕事については、またの機会に譲ることにさせていただきます。

f0147840_116332.jpgロジャーズは、ボビー・ジェントリーのデビュー盤、Ode to Billie Joe(1967年)のアレンジによって、ジミー・ハスケルとともにグラミーを得ています。また、フランク・シナトラがジャンキーのドラマーに扮した映画『黄金の腕の男』では、じっさいの音はロジャーズのバンドが担当し、どうやらロジャーズはスクリーンにも登場したようです。

つぎは、ヘンリー・マンシーニが自伝に書いたエピソード。すでにマンシーニの記事に書いていますが、ロジャーズのエピソードとして繰り返しておきます。

f0147840_11410100.jpgユニヴァーサル映画から馘首されたマンシーニは、旧知のブレイク・エドワーズのすすめで、彼が監督をすることになっていたテレビ・ドラマ、Peter Gunnの音楽を担当することになります。この音楽が評判を喚び、マンシーニにアルバム化の話が持ち込まれました。会社は、アーティストとしてはショーティー・ロジャーズがいいだろうという意見で、マンシーニはロジャーズに会うことになりました。マンシーニの話を聞いたロジャーズは、やってもいいけれど、これはきみのベイビーなのだから、きみ自身の名前で盤をつくるべきじゃないかと、マンシーニにすすめたのだそうです。

結局、マンシーニ名義でリリースされたPete Gunnのサントラは、グラミー賞発足初年度のAlbum of the Yearを受賞し、マンシーニは名声への第一歩を踏みだすことになります。自伝のなかで、当然ながら、マンシーニはロジャーズに深く感謝しています。ハリウッドを代表するセッション・シンガーであるトム・ベイラーも、パートリッジ・ファミリーの仕事で知り合ったロジャーズについて、very sweet、すごく付き合いやすい人物だったと褒めちぎっています。この話からも、ロジャーズの人柄のよさがうかがえます。

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by songsf4s | 2008-01-14 23:56