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2008年 01月 06日 ( 1 )
The Coldest Night of the Year by Nino Tempo & April Stevens
タイトル
The Coldest Night of the Year
アーティスト
Nino Tempo & April Stevens
ライター
Barry Mann, Cynthia Weil
収録アルバム
The Best of Nino Tempo & April Stevens
リリース年
1965年
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いつまでも正月休みというわけにもいかない、そろそろまじめに更新しようと思って、昨日、winter、snow、coldという三つのキーワードでHDDを検索してみました。「いや、あるもんだねえ」と、幇間につぎつぎと「山号寺号」を並べられた若旦那みたいなことをいってしまいました。

八代目春風亭柳枝の『山号寺号』のように、「おかみさん拭き掃除」だの、「看護婦さん赤十字」だの、「時計屋さん今何時」だのといったおかしな山号寺号に類するハズレもあります。Cold TurkeyやCold Heartなんて曲も、フィービー・スノウ、ジョニー・ウィンター、エドガー・ウィンターなんていう人も、冬にはなんの関係もありません。

f0147840_0184395.jpgそういうハズレを取り除いても、思ったよりたくさんあるもので、ファイルを全部ドラッグしたら、プレイヤーが雪国の家のようにきしむのじゃないかと思うほどです。呆れるのは、何年も前に買ったものなのに、まったく記憶のない曲がかなりあることです。もっていても、もっていることすら知らないのでは、なんのために盤を買うのかわからなくなってしまいますが、音楽を聴くというのは、まあ、こんなものなのは、みなさまご存知のとおり。すべてHDDに取り込んで、検索をかけられるようになったのは、たいへんな福音です。

アルバムという枠組みをはずし、縦割りではなく、横割りで音楽を聴いてみよう、ということが、このブログをはじめた動機のひとつでしたが、いざやってみると、あまり注目していなかったトラックに改めて注意を向ける、というサイド・イフェクトがありました。

本日の曲、ニーノ・テンポ&エイプリル・スティーヴンズのThe Coldest Night of the Yearは、もっていることすら知らなかったなんていう、ひどい待遇を受けていた曲ではありません。でも、彼らのベスト盤にはほかにもいい曲がかなりあり、とくに出来がいいものとは思っていなかったのに、ほかの冬の曲のあいだにはさまって出てくると、いままで思っていたよりずっといい曲に感じられました。コンテクストというのは面白いもので、こういうことがあるから、ときおり、アルバムの枠組みをはずして曲を聴くのは有益なのです。

◆ 新Baby It's Cold Outside ◆◆
それでは、歌詞を見ていきます。バリー・マンとシンシア・ワイル作品の本ブログ二度目の登場です。男女デュエットを想定した曲なので、ニーノ・テンポが歌うラインは[N]、エイプリル・スティーヴンズが歌うラインは[A]、そして、二人で歌うところは[B]という印を付けました。

[A]Baby baby it's late and you'd better go, it's after three
[N]Honey please have a heart, just look at that snow, take pity on me
[N]I can hear that north wind blowing and the fire is oh so warm
[A]Well I know you should be going but how can I send you out in that storm

エ「ベイビー、もう遅いわ、帰ったほうがいいわよ、もう三時をまわっちゃったもの」
ニ「そんな冷たいことをいうなよ、あの雪を見てごらん、もっとやさしくしてくれよ、北風が吹きすさんでいるのが聞こえるじゃないか、暖炉の火の暖かいことったらないぜ」
エ「あなたを帰さなければいけないのに、あの吹雪のなかに送り出すなんてできないわよね」

つづいてコーラス。

[N]Baby its cold out there
[A]And it's getting colder
[N]Baby it's cold out there
[B]Getting colder, matter of fact, better cuddle up here, it's the coldest night of the year

「外はひどい寒さだし、まだどんどん寒くなっている、じっさい、ここで抱き合っていたほうがずっといい、一年でいちばん寒い夜なんだから」

この二人がどういう関係で、なぜ男は深夜、彼女の家を去らねばならないのかは説明されていません。三時に帰っても、妻が納得するようには思えない、だから不倫ではない、と仮定しても、三時でもなんでも、帰らなければならない背景はうまく想像できません。明るくなってから男が出ていくのを近所に見られるのをはばかっている?

つづいてセカンドにして最後のヴァース。

[A]Baby baby I know if you wanted to, you'd brave the snow
[N]But I haven't been well, I might catch the flu or a cold in my nose
[N]Lets snuggle close together while the whole world turns to ice
[A]Just the victims of the weather, sending you home now just wouldn't be nice

エ「その気になれば、あなたが雪なんかものともしないのはわかっている」
ニ「でも、おとなしくしていたわけじゃないから、インフルエンザか鼻風邪にかかってしまうかもしれない」
ニ「世界が氷に変わっていくあいだ、ぴったりくっついて抱き合っていようじゃないか」
エ「天気のせいだものね、いまあなたをうちに帰すわけにはいかないもの」

そして、コーラスを繰り返してフェイドアウトします。

◆ 兄弟と夫婦 ◆◆
f0147840_0112245.jpgこういう歌をうたっている男女デュオですが、ニーノとエイプリルは、ひとつ違いの兄と妹のコンビです。エイプリルのほうは50年代はじめにトップ・テン・ヒットがあったのですが、彼女のキャリアを好まない恋人のせいで一度は引退しました。ニーノほうはセッション・プレイヤーとして活躍していましたが、カムバックした妹とデュオを組み、アトランティックと契約して、Deep Purpleがチャート・トッパーになりました。しかし、その直後にビートルズのアメリカ上陸があり、彼らのキャリアは瞬くうちに尻すぼみになっていきました。

ニーノはフィル・スペクターの片腕としても知られています。ということはつまり、ニーノ&エイプリルのセッションでも、スペクターのギャングがプレイしたことになります。Deep Purpleのドラマーはアール・パーマー、レーベルがホワイト・ホエールに変わってからのAll Strung Outはハル・ブレインと思われますが、The Coldest Night of the Yearはほとんどドラムが聞こえず、だれとも判断しかねます。いずれにしても、歌を引き立てるだけの地味なバッキングです。オブリガートを弾いているスパニッシュ・ギターのプレイヤーなど、ちょっと気にかかるのですが。

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この曲を書いたのは、バリー・マンとシンシア・ワイルです。コーラスのI-IV-V進行(じっさいのキーに即していえばB-E-F#)は、バリー・マンが書き、フィル・スペクターのプロデュース、ライチャウス・ブラザーズの歌でチャート・トッパーになったYou've Lost That Lovin' Feelin'と同じコード進行なので、似たような雰囲気があります。この曲はYou've Lost That Lovin' Feelin'のヒットからまもない録音のせいか、アレンジャーのジミー・ハスケルは、コーラスで盛り上げるようなアレンジを採用してはいませんが、いまになると、大編成によるスペクタレスクな音にしておけばよかったのに、と思います。

でも、ニーノとエイプリル、とくにニーノの鼻にかかった声は好みなので、これはこれでいいのかもしれないと思います。エイプリルも、とくに囁き声のときはなかなかけっこうなのですが、かすかに太い感触があり、それが彼女を大スターにするのを妨げたと感じます。

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明示されているわけではありませんが、やはりどことなく不倫のにおいのする歌です。それさえなければ、Baby It's Cold Outsideと同工異曲で、なんならクリスマス・ソングに繰り込んでもかまわないのではないかと思いますが、この翳りはクリスマス向きではないので、ありがたく冬の曲として頂戴しました。

f0147840_0271263.jpgジェリー・ゴーフィンとキャロル・キング、ジェフ・バリーとエリー・グリニッジという、バリー・マン=シンシア・ワイル同様、ソングライター・チームとしてヒットを連発した夫婦がやがて破鏡の嘆をかこったのに対し、わたしの知るかぎり、バリー・マン=シンシア・ワイルはいまでも夫婦で、そういう仲のよさがあったから、シンシア・ワイルは、あくまでもシャレとして、不倫のにおいのある歌詞を夫の作曲に託すことができたのかもしれません。翳りがあるといいましたが、それがイヤな印象をあたえないのは、そのへんに理由があるような気もします。
by songsf4s | 2008-01-06 23:57 | 冬の歌