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2008年 01月 05日 ( 1 )
Ski Surfin' by Avalanches
タイトル
Ski Surfin'
アーティスト
Avalanches
ライター
Wayne Shanklin
収録アルバム
Ski Surfin'
リリース年
1964年
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正月休みはいかがお過ごしでしたでしょうか。わが家では、初詣のあと、七福神巡りでもしようかと思ったのですが、福禄寿、恵比寿の二福であえなく挫折しました。なにしろ、肝心の弁天さんがいらっしゃるのが鶴岡八幡宮と江ノ島というのだから、混雑でとうていたどり着けなかったのです。恵比寿堂のある本覚寺は、境内にたくさん屋台も出て、ほどよいにぎわいが心地よいものでした。

落語「七福神」では、「おいおい、船屋さん、うちには七福あるといったが、それではまだ二福じゃないか」と旦那がいうと、船屋は「いえ、二福でいいんです。旦那が大黒様、お嬢様が弁天様、お宅は呉服屋さん、しめて七福です」というサゲになっています。わが家は呉服屋ではないので、残念ながら、まだ五福足りないままです。

◆ ヴェンチャーズ・セッションのレギュラーたちによるワン・ショット・プロジェクト ◆◆
本日はクリスマス・ソング特集ですでに何度も取り上げた、アヴァランシェーズの登場です。しかし、クリスマス・ソング特集で小出しにした彼らの曲は、いわば露払い、アルバム・タイトルになっていることでもわかるように、今日のSki Surfin'が、楽曲といい、軽快なアレンジといい、豪快なプレイといい、冬の曲にはめずらしい明るさといい、際だってすぐれたトラックなのです。

冬の歌にも明るく楽しいものがないわけではありませんが、なんたって寒いので、気分はしぼみがち、ダウナーな曲へと向かう傾向があるようです。ふと思ったのですが、その根本原因はクリスマスではないでしょうか。

どういうことかというと、明るく楽しい冬の曲は、どんどんクリスマス・ソングに吸収されてしまうように思われるのです。Let It Snow!しかり、Baby It's Cold Outsideしかり、I've Got My Love to Keep Me Warmしかり、Warm Decemberしかり、みな、たんなる冬の曲でしかないものが、クリスマス・ソングとして扱われるようになったものです。かくして、ダウナーな冬の曲だけが取り残されることになるというしだい。

あまりアップテンポが似合わない季節のようですが、わが家にある冬の曲でアップテンポのものというと、なんといってもこのSki Surfin'なのです。これがクリスマス・ソングにとりこまれずに残っていたのは、アヴァランシェーズが無名だからに過ぎないのではないでしょうか。Ski Surfin'が仮にヴェンチャーズ名義だったら、とうの昔にクリスマス・アルバムにじゃんじゃん収録されるようになっていて、冬の歌のほうに繰り込むことは不可能になっていたでしょう。

しかし、アヴァランシェーズというワン・ショットのスタジオ・プロジェクトに参加したメンバーは、初期ヴェンチャーズ・セッションのレギュラーたちです。ビリー・ストレンジ、トミー・テデスコというハリウッドを代表するエース・ギタリスト、ドラムのハル・ブレインの3人は、初期ヴェンチャーズを支えたプレイヤーたちですし、ベースのデイヴィッド・ゲイツも、上記3人ほどではないにしても、ヴェンチャーズの録音に(および、ときにはツアーにも)参加したプレイヤーです。

このメンバーを見ただけで、音を聴かなくても予想がつくのですが、じっさいのサウンドもじつにすばらしいものです。アルバム全体を見ても、捨てるところのない充実した出来ですが、とりわけSki Surfin'は、軽快なグルーヴ、予想外のところに飛ぶコード(Eではじまった曲が、最後はAb7になる。このヴァースとブリッジの対照がじつによろしい)と、半音が入る奇妙なスケールのメロディー・ラインが相まって、60年代ギター・インストゥルメンタルのなかでも、白眉といえるトラックになっています。

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ビリー・ストレンジとトミー・テデスコという組み合わせだと、両方とも大エース・ギタリストなので、格によって自動的にリードが決まるというわけにはいきません。はじめて聴いたとき、どちらがどのパートをプレイしているのか、わたしには判断できませんでした。そこで、ビリー御大と知り合ったころ、Ski Surfin'では、どちらがヴァースを弾き、どちらがブリッジを弾いているのかとお伺いをたててみました。御大の回答は「あのころ、トミーとはリックを交換し合っていたから、いまとなっては、わたしにもどちらがどちらなのかわからない」というものでした!

トミー・テデスコすでに没し、ビリー・ストレンジ親分にはもはや判断がつけられないとなれば、われわれが好きに想像していいことになります。わたしの判断は、ヴァースでメロディーを弾くだけのプレイはビリー、ブリッジの暴れるプレイはトミー、というものです。いや、自信はありません。ビリー・ストレンジというプレイヤーは、メロディー・ラインを美しく弾くことにかけては、ハリウッドのエースのなかでも抜きんでていた、という事実だけを頼りにしての判断です。

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トミー・テデスコ。弦の張ってあるものならなんでもござれ。

◆ 文句なしのナンバーワン ◆◆
f0147840_23561149.jpgアヴァランシェーズのSki Surfin'は、かつてはサーフ&ロッド・アンソロジーに一度収録されたことがあるだけで、全体を聴くには、中古LPを手に入れなければなりませんでしたが、近年、ようやくCD化されたので、いまではその気になれば、いつでも聴くことができます。

ビリー・ストレンジ氏にヴェンチャーズ・セッションについて問い合わせをしたとき、当時、仲間内で評判になっていたアヴァランシェーズについて、そういう名義で盤をつくったのをご記憶ですか、とたずねてみました(ハリウッドのスタジオ・エースたちは、たいていが万単位の曲を録音しているので、記憶していないものも数知れずある)。御大は、よく覚えている、聴いてみたいが、手もとに盤がない、とおっしゃっていました。すぐにレッキング・クルーMLのオオノさんがLPを発掘し、それをディジタル化して、ビリー御大にプレゼントできたのは、われわれの喜びとするところでした。

f0147840_23545276.jpgプレイしたご当人もぜひ聴いてみたいとおっしゃるほどの盤です。これが埋もれてしまったのは、たんなる不運にすぎず、「実力」のしからしむるところではありません。ヴェンチャーズ名義だったら、代表作のひとつに数えられていたことでしょう。好みだけでいえば、60年代のギター・インスト・アルバムのナンバーワンです。ご興味のある方は、とりあえず、右のFriendsリンクからAdd More Musicに飛び、「Rare Inst. LP」ページで、LPリップをお聴きになってみてください。

Ski Surfin'というタイトルのアルバムなので、クリスマス・ソング特集ですでに取り上げたSleigh RideBaby It's Cold OutsideI've Got My Love to Keep Me Warmのみならず、ほかにも冬の曲が満載されています。残りのトラックについては、これから二月いっぱいくらいで、おいおい取り上げることになるでしょう。なにしろ、わたしにとってのナンバーワン・インスト・アルバムなので、3曲や4曲取り上げたくらいで終わらせるつもりはないのです。
by songsf4s | 2008-01-05 23:55 | 冬の歌