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2007年 12月 18日 ( 1 )
Frosty the Snowman by Bing Crosby
タイトル
Frosty the Snowman
アーティスト
Bing Crosby
ライター
Bob Thompson, Jack Halloran, Peter Matz
収録アルバム
Christmas Cocktails Part 3 (Ultra Lounge Series)
リリース年
1962年
他のヴァージョン
The Ronettes, the Chipmunks, Gene Autry, Willie Nelson, Fats Domino, the Ventures, Esquivel, Nat "King" Cole, Jan & Dean, the Beach Boys, Brenda Lee, Jimmy Durante with Jackie Vernon and June Foray, Ray Conniff, the Partridge Family, Jackson 5, Disney
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またまたヴァージョンの多い曲の登場です。しかし、ひととおり聴き直してみた結果、飛び抜けて出来がいいのは2種類のみだから、時間がなくなったら、残りはオミットすればいいので、楽勝です(なんて、いま言い切ってしまうと、あとで泣くかもしれませんが)。

しかし、問題があります。出来のよい二つのヴァージョン、ロネッツ盤とビング・クロスビー盤、どちらを先に立てるか決められないのです。いまはまだどちらでいくか決めていません。最後の5分間まで決まらないような気がします。心が決まるまでの時間、歌詞でも見てみましょう。

◆ トウモロコシの穂、ボタン、石炭 ◆◆
本日も子ども向けの歌詞です。子どもにとっては一年でいちばん楽しい時期だから、そういう歌が多いのは当然ですけれどね。子どもに話してきかせるお伽噺仕立ての曲なので、細かく割らずに、まず前半をひとまとめに。もちろん、さまざまなヴァリアントがありますが、以下の歌詞が一般的でしょう。

Frosty the snowman was a jolly happy soul
With a corncob pipe and a button nose and two eyes made out of coal
Frosty the snowman is a fairy tale, they say
He was made of snow but the children know that he came to life one day
There must have been some magic in that old silk hat they found
For when they placed it on his head he began to dance around
Frosty the snowman was alive as he could be
And the children say he could laugh and play just the same as you and me
Thumpetty thump thump thumpety thump thump
Look at Frosty go
Thumpetty thump thump thumpety thump thump
Over the hills of snow

「雪だるまのフロスティーは楽しい愉快なひと、トウモロコシの穂のパイプをくわえ、鼻はボタン、二つの目は石炭でできている、雪だるまのフロスティーなんてお伽噺だとみんなはいう、フロスティーは雪でできているけれど、子どもたちは知っている、彼がいつの日か命をもつことを、だれかが見つけたあの古ぼけたシルク・ハットには、なにか魔法が隠れていたにちがいない、あれをかぶったとたん、フロスティーが踊りだしちゃったのだから、雪だるまのフロスティーはどう見ても生きていた、子どもたちがいうには、彼はだれもと同じように、笑い、遊ぶのだそうな、バシャ、ドス、ドス、ドス、見てごらん、フロスティーが行く、バシャ、ドス、ドス、ドス、雪の積もった丘を越えて」

f0147840_0495948.jpgちょい意訳、すなわち不正確な解釈が入りましたが、だいたいにおいて合っているはずです。二つの異なる言語間の厳密に正確な互換性などありえないわけでしてね。とはいいながら、soulは少々問題ありです。ここでは霊魂、妖精などの意味で使っていると考えられますが、それでは落ち着きが悪いので、「ひと」としました。学齢前のお子さんにお話ししてやるなら、そういう言葉のほうがいいでしょう。

つづいて後半。これですべてです。いや、いろいろな演出法があり(たとえば、お話を聞く子どもとの対話をはさんだりする)、ヴァリアントが多数あるようですが、以下のような歌詞が平均的です。

Frosty the snowman knew the sun was hot that day
So he said, "Let's run and we'll have some fun now before I melt away"
Down to the village, with a broomstick in his hand
Running here and there all around the square, saying "Catch me if you can"
He led them down the streets of town right to the traffic cop
And he only paused a moment when he heard him holler "Stop!"
For Frosty the snow man had to hurry on his way
But he waved goodbye saying "Don't you cry. I'll be back again some day"

f0147840_051899.jpg「雪だるまのフロスティーは、その日は陽射しが強いとわかっていた、だから彼は、『溶けてしまう前に、走りまわって楽しく遊ぼうじゃないか』といった、箒を手に村に行き、『捕まえられるものなら、捕まえてごらん』と広場のあちこちを走りまわった、フロスティーはみんなを引き連れて通りを下り、交通整理のおまわりさんのところまで行った、立ち止まると、すぐにおまわりさんが「止まれ!」とさけぶ声が聞こえた、雪だるまのフロスティーは帰り道を急いでいたから、でも彼は『泣くことはないよ、またいつの日か戻ってくるからね』といって別れを告げたのだった」

◆ 大歌手ならではの味 ◆◆
この歌が多くのひとのイマジネーションをとらえた理由はよくわかります。笑わせて泣かせるという、藤山寛美の松竹新喜劇の骨法と同じ構造だからです。陽気さの裏に、まもなく消える「命」だという陰があるので、立体的な奥行きのあるお噺になっているのです。

そう考えれば、この曲の歌い方はひとつしかないことになります。ちょっと悲しい結末が待っているのだから、陽気に歌うしかないのです。スロウ・バラッドにして、しっとり歌っているヴァージョンがありますが、勘違いもはなはだしいというべきでしょう。

たしかに、テンポを落とすと、この曲のメロディー・ラインの美しさが際だちます。でも、それでは、まもなく消える命とわかっていながら、子どもたちとはしゃいでいるという、対比による奥行きが出ません。ただの堕落したお涙ちょうだい物語です。

f0147840_0522593.jpgビング・クロスビーは数多くのクリスマス・ソングを歌っているので、Frosty the Snowmanが、彼のクリスマス・ソングの代表作だなんてことはありません。でも、うちにある15種ほどのヴァージョンのなかで、もっともすぐれているもののひとつだと感じます。ほかのことをしながら流していて、このビング盤のイントロが流れた瞬間、音楽に注意が向きます。

ビング盤は1962年の録音なので、彼の全盛期はすぎていますが、幸いにも(といわざるをえないのですが)ビートルズがアメリカ音楽を大混乱に陥れる以前なので、大スター、大歌手のオーラがまだしっかりと彼を覆っています。ここがおそらくギリギリの時期でしょう。

1962年という時期は、サウンドのほうには好影響を与えています。もう3トラック・テープ・マシンによる、マルチ・トラック録音がはじまっているからです。イントロが流れた瞬間、まだビングの声が出てくる以前に、これはいい、と感じるのは、音の手ざわりに精彩があり、厚みと広がりがあるからです。

f0147840_0531236.jpgこれは、大歌手、売れている歌手の盤に共通する美点です。予算が潤沢で、トップ・クラスのスタッフがまじめにつくっているのです。悪い条件が好結果に結びつくこともあるのが、商業音楽のむずかしいところではあるのですが、クリスマス・ソングとなると、貧相なのは好ましくないに決まっているわけで、大歌手たちがいいクリスマス・アルバムを残しているのは、ある意味で当然なのです。トップ・アーティストの場合、面白くないクリスマス・アルバムができてしまったら、それは百パーセント歌手自身の責任といっていいでしょう。

過去に当ブログで、ビング・クロスビーを看板に立てたことがあるのはただ一度、Headless Horsemanのときだけです。まったくの偶然ですが、あれもまたハロウィーンに子どもに話してやる物語でした。じっさい、このFrosty the Snowmanも、ディクションが非常によく、子どもにも歌の意味がちゃんとわかるように歌われています。こういうところにも、やはり彼が並はずれた大歌手であったことがあらわれているように感じます。

◆ ロネッツ/フィル・スペクター盤 ◆◆
ロネッツのロニー・スペクターは、ビング・クロスビーとはまったく異なるタイプのシンガーですが、イントロが流れた瞬間、たちまちサウンドに引き込まれる点は、ビング盤とまったく同じです。

f0147840_0554971.jpgバンドの人数からいったら、フィル・スペクターがプロデュースした、ロネッツ盤Frosty the Snowmanより多いヴァージョンはいくらでもあります。でも、もっとも厚みと奥行きのある音になっているのはスペクター盤です。

よく、スペクターすなわちエコーのようにいわれます。たしかに、ゴールド・スター・スタジオの4連プレート・エコーがなければ、こんな音はつくれないにちがいありません。でも、それだけのことなら、スペクターでなくとも、同じ時代にゴールド・スター・スタジオをつかった人なら、だれでもつくれることになります。残念ながら、現実には、同時代のゴールド・スターで、深いエコーをかけたからといって、同じような圧倒的サウンドにはならないことは、すでに証明が終わっています。

たとえば、デイヴィッド・ゲイツがプロデュースしたガールフレンズのMy One and Only Jimmy Boyや、ロビン・ウォードのWonderful Summer、そして、ブライアン・ウィルソンがプロデュースしたビーチボーイズのDo You Wanna Danceをお聴きになればいいでしょう。たしかに、ゴールド・スターの4連エコーでなければ、こういうサウンドにはなりません。でも、それだからといって、フィル・スペクターのような圧倒的なものを感じるかといえば、ノーです。

スペクターの音は、エコーの靄に包まれてはいます。でも、それだけではないなにかが、エコーの靄の向こうにあるのが、つねに感じられます。彼のサウンドの中心には、強固な核があるのです。それが、彼と同時代に、ゴールド・スターで深いリヴァーブをかけて録った他の音楽とは決定的に異なる点です。

f0147840_0564528.jpgその核はなんなのか、表面的には2本ないし3本のベースに同じラインを弾かせていることなどがあげられはしますが、それだけのことでないのはいうまでもありません。非論理的な言い方になってしまいますが、常識はずれに長いリハーサル(これを嫌って、リオン・ラッセルはスペクターのセッションにいかなくなったし、長時間、12弦ギターを弾いていてたために手を切ったハワード・ロバーツは、後年、スペクターをきびしく指弾している)のあいだに、土台の地固めをするからだ、なんていいたくなります。

いや、冗談ではなく、スペクターがリハーサルにとほうもない時間をかけたのは、自然に「固まる」のを待っていたからではないかと思います。リヴァーブでぐずぐずに「煮込んで」も、型くずれのしない、強固な核ができるまでは、テイクに入れなかったのじゃないでしょうか。

この曲では、ハル・ブレインはBe My Babyを再演しています。イントロこそ、あのキック・ドラムではありませんが、あとはBe My Babyのビート・パターンをすこしだけスピードアップして、派手に、華やかにプレイしています。アヴァランシェーズのSleigh Ride同様、このフィル・スペクター盤Frosty the Snowmanもヴェンチャーズのクリスマス・アルバムに影響をあたえたにちがいありません。

◆ 他のヴァージョン ◆◆
f0147840_0575786.jpgまず、いいな、と思うのは、この曲のオリジナル・ヒット・ヴァージョンと思われるジーン・オートリー盤です。こういうあたたかい味わいのあるシンガーというのは、そうそういるものではなく、とりわけ現代にはどこにも見あたらなくなったものです。子どもに話しかけるFrosty the Snowmanのような曲にはぴったりで、アメリカの親たちは、この曲を子どもに買い与えるなら、いまでもオートリー盤を選ぶのではないかと想像します。そういう歌声です。

チップマンクス盤もいい出来です。この曲を歌うにはぴったりのキャラクターです。親はジーン・オートリー盤を与えたがるけれど、小さな子どもは、こっちがいい、とチップマンクスを選ぶのではないでしょうか。

f0147840_582070.jpgミッキー・マウスを中心とした、ディズニーのキャラクターたちの歌うヴァージョンは、日本の子どもが、声を聴いてそれとわかるわけではないので、あまり意味がないことになります。いまではDVDでしょうね。でも、クリスマス・アルバムはアートワークも非常に重要で、とくに子ども向けのものには、楽しいつくりのものがたくさんあります。子どもではなく、親のほうが幼い時代を懐かしんで、ディズニーのクリスマスLPをほしがるかもしれません。いや、LPとなると、世代的にはいまの親ではなく、その親、おじいちゃん、おばあちゃんですね。

ヴェンチャーズ盤は、子どものころからなじみなので、流れれば、うん、とうなずきはします。しかし、このアルバムの他のトラックにくらべると、それほどいいほうの部類とはいえないでしょう。アレンジはTequilaを借用しています。それも、オリジナルのチャンプス盤ではなく、彼ら自身のカヴァーをベースにしたという印象です。

ファッツ・ドミノのFrosty the Snowmanもわるくありません。お話おじさん的なキャラクターですからね。ファッツのクリスマス・アルバムの欠点は、予算不足が露骨に音の表面に浮き上がっていることです。ファッツ自身は、かつてのような味わいを失っていません。

とくに言及しておかなくてはならないのは、これくらいだと思います。あとは、それぞれのファンのためにやっているという感じで、それ以外の人には無関係という程度の出来でしょう。たとえば、ジャン&ディーンやビーチボーイズのファンは、やはり彼らのヴァージョンがほしいわけで、チップマンクスでもいい、というわけにはいかないでしょう。それだけの意味しかないと思います。

You Tubeにあるアニメは、映像より、音楽がいいと思いました。歌っているコーラス・グループの名前が知りたいところです。

いけない、やっぱり書き落としがありました。ウィリー・ネルソン盤も悪くない出来です。子ども向けの声とも思えないので、これは、クリスマスに子どものころのことを思いだしたい大人たちのためのヴァージョン、というところでしょうか。そうそう、エスクィヴァル盤も、例によって珍が入っていますが、悪くありません。

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by songsf4s | 2007-12-18 00:02 | クリスマス・ソング