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2007年 11月 29日 ( 1 )
Jingle Bell Rock by Bobby Helms
タイトル
Jingle Bell Rock
アーティスト
Bobby Helms
ライター
Joe Beal, Jim Boothe
収録アルバム
Fraulein: The Classic Years
リリース年
1957年
他のヴァージョン
Chet Atkins, Brenda Lee, Chubby Checker and Bobby Rydel, Herb Alpert & the Tijuana Brass, the Three Suns, Neil Diamond, Hall & Oates, the California Raisins
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ロックンロール時代につくられた「新しいクリスマス・ソング」、つまり、トラッドでもなく、ティン・パン・アリーの時代につくられたものでもない、という意味にすぎませんが、そのなかで好きな曲を指折り数えてみると、年代的にいって、まずトップにこのボビー・ヘルムズのJingle Bell Rockがきます。

多くのカヴァー・ヴァージョンが生まれ、すでにクラシックといってよい曲ですが、うちにあるものをくらべてみると、やはり、オリジナルのヘルムズ盤がいまでももっとも出来がよいと感じます。そのあたりについては、のちほどということに。

Bobby Helms - Jingle Bell Rock (original recording)


◆ 「ロック」という言葉の響き ◆◆
歌詞をみていくことにしますが、昨日のSleigh Ride同様、景気がいいばかりで、これといった意味のない歌です。ともあれ、ファースト・ヴァース。

Jingle bell, jingle bell, jingle bell rock
Jingle bells swing and jingle bells ring
Snowing and blowing up bushels of fun
Now the jingle hop has begun

f0147840_034570.jpg解釈するような歌詞ではないのはおわかりでしょう。ジングルベルが振れて、音が鳴るとか、クリスマスのダンス・パーティーがはじまったとか、まあ、そんなことを景気よくいっているだけです。bushelは重量の単位ですが、こういう場合はa lot ofなどと同じような意味です。hopはダンスまたはダンス・パーティーのこと。

ここで重要なのは、jingle bellという言葉に、rockという「新しい流行語」をつなげたことだけです。そう、rockという言葉が新しい響きをもっていた時代があったのです。そういう時代の気分がこのタイトルに反映され、それがこの曲の大ヒットのいくぶんかの裏づけとなったにちがいありません。

Jingle bell, jingle bell, jingle bell rock
Jingle bells chime in jingle bell time
Dancing and prancing in jingle bell square
In the frosty air

ここもまた解釈するほどの意味はなく、日本語にすると馬鹿馬鹿しく見えるヴァースです。pranceは跳ねることなので、dancing and prancingは踊り跳ねるということになります。

ジングル・ベル・スクエアという有名な場所があるのかと思い、ちょっと調べてみましたが、見あたりませんでした。この3語で検索すると、この歌詞ばかりがヒットしてしまいます。特定の場所を想定したわけではなく、日本でもときおり駅前などに大きなベルが置かれていたりしますが、そういうものを思い浮かべればいいのでしょう。

◆ アップデイトしたJingle Bell ◆◆
以下はブリッジ。

What a bright time
It's the right time to rock the night away
Jingle bell time is a swell time
To go gliding in a one-horse sleigh

rock the night awayは、一晩中踊り明かそう、ぐらいのところ。swellは形容詞の「すばらしい」という意味で使われているのでしょう。one-horse sleighは、Jingle Bellの冒頭「Dashin' through the snow, in a one-horse open-sleigh」の引用でしょう。一頭立ての橇という意味です。ここに、ロックンロール時代のJingle Bellとして、この曲を書いたという作者の意図が見えます。

Giddy-up jingle horse
pick up your feet
Jingle around the clock
Mix and a-mingle in the jingling feet
That's the jingle bell
That's the jingle bell
That's the jingle bell rock

f0147840_0233817.jpggiddyupは、馬へのかけ声で、進め、進めといった感じ。ここでのpick upは、「スピードを出す」という場合の使い方でしょう。giddyupの同類、言い換えにすぎません。mingleはmixと同様の意味で、mix and mingleは、漢熟語などにもあるような、口調を整える意味で、音を変えながら同意語を反復しただけでしょう。jinglingはチリンチリンと音をたてることですが、jingling feetといっても、足音ではなく、馬につけた鈴が鳴っているということでしょう。

コードは簡単だし、音程のジャンプもなく、歌いやすい曲なので、ちょっとやってみようかという方のために、いちおう歌詞を見てみましたが、意味らしい意味はなく、要するに、軽快に、明るく歌えばいいだけの曲だとおわかりいただけたでしょう。

◆ ナッシュヴィルのエースたちの手腕 ◆◆
歌詞にはたいした意味はなく、わたしが気に入っているのは、楽曲と軽やかなサウンドです。たまたま、ベア・ファミリーの2枚組ベスト盤にセッショノグラフィーが載っているので、以下にデータを書き写します。

録音日は1957年10月29日、場所はナッシュビルのBradley Film & Recording Studio、プロデューサーはポール・コーエン。パーソネルは以下の通り。

Bobby Helms……vocal
Thomas Grady Martin……guitar
Walter "Hank" "Sugarfoot" Garland……guitar
Roy Q. Edenton or Harold Ray Bradley……rhythm guitar
Bob L. Moore……bass
Murray M. "Buddy" Harman Jr.……drums
Owen Bradley……piano
(poss.) Anita Kerr Singers……vocal chorus

バディー・ハーマン、シュガーフット・ガーランド、グレイディー・マーティン、ハロルド・ブラッドリー、オーウェン・ブラッドリーといった、50年代後半から60年代前半にかけてのナッシュヴィルのレギュラー、エース級がずらっと顔をそろえています。ケイデンス時代のエヴァリー・ブラザーズなどと共通するメンバーです。

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左からボブ・ムーア、グレイディー・マーティン、バディー・ハーマン

だからといって、派手なプレイをしているわけではありません。50年代から60年代はじめまでのプロというのは、いたってストイックなもので、必要以上のことはしません。バディー・ハーマンは、いわばナッシュヴィルのハル・ブレインで(ロイ・ナップ・パーカッション・スクールではハーマンのほうが先輩。60年代のアメリカ音楽を支えた二人のドラマーが同じ音楽学校の出身だというのには驚く)、無数のセッションでプレイしていますが、63年以後のハル・ブレインのような、ド派手なトラックはありません。安定したビートを提供することを本分とした、昔気質のドラマーです。60年代初期のエルヴィスのヒット曲で、彼のプレイを堪能することができます。

バディー・ハーマンのシンプルで安定したプレイが代表するように、ナッシュヴィルらしい独特のグルーヴがあるところがこの曲の大きな魅力です。シャッフル・ビートというのは、平板にやってはいけないもので、ゆりかごが揺れるような、それこそ、「スウィング」する感覚がないと心地よくないものです。さすがは50年代の人たちは、自然に気持ちのよいシャッフル・ビートをつくっています。時代が下るにつれて、シャッフルの技は忘れられていくわけで、いまになると人間国宝的な技に思えます。

◆ 失われた伝統芸、シャッフル・フィール ◆◆
そのことは、近年のカヴァーを聴けばよくわかります。どれもみなひどいものです。シャッフル・フィールのない、たんなるバックビートしか叩いていません。ニール・ダイアモンド盤しかり、ホール&オーツ盤しかり、カリフォルニア・レーズンズ盤しかり。そろいもそろってダメなドラマーばかりです。

こうしたドラマーたちに、「シャッフルのスウィング感」なんていっても、「そりゃなんのことだ?」と聞き返されてしまうにちがいありません。エイト・ビートとシャッフルの本質的な違いは、音符の並び方などではなく、グルーヴのちがい、「気分のちがい」なのだということもわかっていないボンクラどもです。この30年ほどの音楽の我慢ならない腐れぶり、ドラマーの堕落ぶりが、この三つのヴァージョンに凝縮されて詰まっています。ただデカいビートを叩くことしかできないのでは、ドラマーとはいえないでしょう。そんなのばかりになってしまったので、わたしは同時代の音楽と縁を切ったのです。

あまりいいカヴァーはないのですが、そのなかでチェット・アトキンズ盤は、アレンジ、サウンドは安直でまったくいただけないものの、ギター・プレイの凄みは堪能できます。いつ聴いても、どの時代のプレイでも、チェット・アトキンズはわたしにはエイリアンです。どうしたらこんなプレイができるのか!

Chet Atkins - Jingle Bell Rock


このチェット・アトキンズのクリスマス・アルバム、East Tennessee Christmasは80年代の録音ですが、わたしが知るかぎり、彼はもう一枚クリスマス・アルバムを録音しています。そのChristmas with Chetは、昨日もふれたAdd More Musicで聴くことができるので、ギター・ファンの方は右のFriendsリンクからどうぞ。近々、このアルバムの収録曲にもふれる機会があるだろうと思います。

ハーブ・アルパート盤は、昨日も申し上げたように、ハル・ブレインが叩いているので、平板な、シャッフルになっていないシャッフルを聴かされる心配だけはありません。とくにいい出来のものとは思っていませんでしたが、ホール&オーツやニール・ダイアモンドの無惨なカヴァーを聴いたあとだと、ドラム、ベース、リズム・ギターのつくりだすシャッフル・フィールがじつに心地よく感じられます。

f0147840_0323810.jpgスリー・サンズ盤は、うーん、ギターはいいんだけど、という感じで、またしてもチューバの音が疳に障ります。なんでチューバが必要なのでしょうか。思いつくのは救世軍のバンドぐらいですが、それがチューバの出所だとしたら、計算違いも甚だしいでしょう。救世軍の音楽を聴きたい人が何人いると思っているのでしょう?

ブレンダ・リー盤は、ボビー・ヘルムズのオリジナルとそれほど異ならないリズム・セクションで録音していると思われますが、あまり乗れません。ストリングスも女性コーラスも邪魔です。

チャビー・チェッカーとボビー・ライデルのデュエットは、アルバム・トラックとして、手間をかけずに雑に録音したという感じで、どこといって取り柄がありません。クリスマス・ソングというのはこういうのが多くて困ったものです。フィル・スペクターみたいに、ふだん以上にエネルギーを注ぎこむ人はきわめてまれで、彼のクリスマス・アルバムが古典になったのも当然だと感じます。

◆ キャプテン・サンタ物語 ◆◆
ひととおり各ヴァージョンを並べて聴いてみて、オリジナルのボビー・ヘルムズ盤の魅力がいっそう際だって感じられるようになりました。近年のカヴァーのように派手なプレイはまったくしていないのに、このヴァージョンがもっとも華やかに感じるのは、ボビー・ヘルムズの明るい声とレンディション、ナッシュヴィルの手練れたちのリラックスしたグルーヴのおかげです。

映画『リーザル・ウェポン』のアヴァン・タイトルの冒頭、LAの夜景の空撮シーンでこの曲が流れます。あのシーンにほかのヴァージョンをはめ込んだところを想像してみましたが、まったくうまくいかないと感じました。クリスマスらしい華やかな雰囲気にかけては、やはりヘルムズ盤が抜きんでています。それがちょうど半世紀前のリリースのときに6位までいく大ヒットとなり、さらに翌年から連続で4回もチャートインした理由です。

Jingle Bell Rockの45回転盤のB面には、Captain Santa Clausという曲が収録されていました。子ども向けの曲でしょうが、Jingle Bell Rockなどよりずっと楽しい歌詞になっています。サンタクロースの橇が壊れたので、今年のクリスマスのオモチャはなしになってしまった、さあ、たいへん、どうしよう、という歌です。

Bobby Helms - Captain Santa Claus (And His Reindeer Space Patrol)


できればこの特集で取り上げたいと思っていますが、そのチャンスがなかった場合にそなえて、いまふれておきます。ボビー・ヘルムズの盤を手に入れるなら、Captain Santa Clausも収録されているかどうか確認したほうがいいでしょう。このB面のほうも、クリスマス・シーズンになるとわたしはよくかけています。


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ボビー・ヘルムズ(オリジナル・レコーディング、MP3アルバム、ボビー・ヘルムズは新録音が多いのでMP3ダウンロードでも注意が必要)
Fraulein
Fraulein


チェット・アトキンズ
East Tennessee Christmas
East Tennessee Christmas
by songsf4s | 2007-11-29 00:03 | クリスマス・ソング