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2007年 11月 17日 ( 1 )
Raincheck by Van Morrison
タイトル
Raincheck
アーティスト
Van Morrison
ライター
Van Morrison
収録アルバム
Days Like This
リリース年
1995年
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目下、わが家のプレイヤーには、まだ取り上げていない秋の歌が60曲ほどドラッグしてあります。そのうち8曲はヴァン・モリソンの歌で、どれにしたらいいか、かなり迷いました。いかにも秋らしい歌詞のものか、それとも、たんに音として好ましいものか、という選択です。

このRaincheckを取り上げることにしたのは、もっぱら楽曲、サウンドのよさによります。これで歌詞がよければ、ここまで引っぱらずに、秋の歌特集のトップバッターにしただろうと思うのですが、意味がさっぱりわからないのです。まあ、ヴァン・モリソンの曲の場合、すんなりわかることのほうがすくないのですがね。

◆ キャリア・クライシス? ◆◆
というわけで、本日は解釈のまねごとはしません。歌詞を投げ出して、与太話をするだけにします。では、ファースト・ヴァース。

It's not high finance
It's called heart and soul
If it's rock and roll, got to go, go, go, go, go
Gonna keep moving on up to the higher ground
Gonna keep on moving on up
I got to stand my ground
Gonna keep on moving on up
I wanna stick around
Won't let the bastards grind me down
Won't let the bastards grind me down
Won't let the bastards grind me down

ファースト・ラインからして、もうわかりません。金の問題じゃない、心と魂の問題だ、というあたりでしょうか。最後に3回繰り返される「あのろくでもない野郎どもにすりつぶされてたまるか」というラインから(bastardなんていう単語は、昔は使っちゃまずかったでしょう)、音楽業界のビジネスの問題をうたっているのではないか、という気がしてきます。その点に深入りするのは、コーラスを見てからに。

Call me raincheck in the afternoon
Call me raincheck, need a shot of rhythm and blues
Call me raincheck, on a golden autumn day
Call me raincheck, I won't fade away, I won't fade away
I don't fade away, I don't fade away, unless I want to

raincheckというのは、雨を調べるわけではなく、雨天順延などの場合の「振替券」だそうです。したがって、この場合のcheckは小切手などのcheckと同じ使われ方です。それはいいのですが、「俺のことを振替券と呼んでくれ」とはなんでしょう? 百パーセント純粋な想像、わたしが勝手につくったストーリーを書きます。

f0147840_23501944.jpgヴァンが、自分のツアーではなく、なにかのフェスティヴァルのような、多くのアクトがつぎつぎに出演するショウに呼ばれ、そこでなにかのトラブル、たとえば、ビリングを下げられたとか、だれか売れっ子の都合で、出番をかえてくれ、などの理不尽な要求をされた、なんて設定はどうでしょう? そのような、ライヴ会場でのプロモーターとのトラブルを想像しました。

以上、屋上屋を重ねた想像ですが、こういう前提で聴くと、すくなくともファースト・ヴァースとコーラスについては、意味が通るような気がします。「俺が自分でそうすると決めないかぎり、断じて消えたりはしないぞ」という「宣言」は、パフォーマーとしての決意をいっているのではないでしょうか。

golden autumn dayは、ヴァンの曲では呪文のように何度も出てくる三語で、これをそのままタイトルにした曲もあります。小津安二郎の『麦秋』を思い浮かべてしまいますが、「金色」なのは、公孫樹や麦その他の植物ではなく、陽射しではないかと思います。秋の一日をうたったCorney Islandなんていう曲を聴いていると、そう思えてきます。

◆ 四十にして起つ ◆◆
セカンド・ヴァース。

Can't take my love away, ah 'cause it's here to stay
If it fades away, come back another day
Gonna keep on moving on up to the higher ground
Gonna keep on moving on up, I wanna stick around
Gonna keep on moving on up, oh gonna stand my ground
Won't let the bastards grind me down
Won't let the bastards grind me down
Won't let the bastards grind me down

loveという言葉が出てくるので、ここでもうファースト・ヴァースでのわたしの仮定は怪しくなりますが、ラヴ・ソングなのだということが明確にされているわけでもありません。

Put on your dancing shoes, dance away your blues
When I'm feeling like this, I got nothing to lose
Wanna keep on moving on up to the higher ground
Wanna keep on moving on up and I'll stick around
Wanna keep on moving on up, got to stand my ground
Won't let the bastards grind me down
Won't let the bastards grind me down
Oh, won't let the bastards grind me down

f0147840_23515913.jpgダンス・シューズを履き、踊って憂さを晴らそう、そういう気分になったら俺は強いんだぜ(nothing to lose→失うものがない→怖いものなし)、というわけで、わたしには、やはりパフォーマーとしてのキャリアのことをうたっているように思えます。

この曲を書いたとき、ヴァンは四十代後半、そろそろ五十の声が聞こえるという年齢でしょう。そういうことも、「もっと高いところにいってやる、自分で決めるまでは、断じて消えたりはしない」という「宣言」に影響しているように思えます。

◆ すべてがはまったグルーヴ ◆◆
この曲はかなり速めのワルツ・タイムで、元気いっぱいではないものの、「消えたりするものか」という宣言と見合う、「静かな力強さ」とでもいうような感触のあるサウンドです。

全体にいいプレイだと感じますが、全編で大活躍するリード・ギターのトーンとプレイが非常に好ましく、おもわずギターに手が伸びます。ヴァンという人は、ライヴではもちろん、スタジオでもインプロヴの多い人なので、あまり面倒なコード進行は使わず、多くの曲がプレイヤーを「甘やかす」ような構造になっています。この曲も基本は3コードなので、ヴァンだけでなく、他のプレイヤーも思う存分インプロヴできます。

f0147840_2353485.jpgこういうメロディー、コード、歌詞、すべてがシンプルな曲の場合、出来の如何は、プレイヤーのレベルと、その場の「気合い」にかかってきます。非常に心地よいグルーヴに感じるということは、全員、いい仕事をしたということです。リード・ギターのみならず、ドラムも、アコースティック・リズムも、ピアノも、ベースも、そしてホーン・セクションやバックグラウンド・ヴォーカルも、イヤなトーン、イヤなプレイはまったくなく、間然とするところのないトラックです。ドラマーはなかなかグッド・テイストで、サウンド、チューニング、タイム、フィル、いずれも好みです。ときおり繰り出す高速ストレート・シクスティーンスなんか味があります。

ヴァン・モリソンは、かならずホーン・セクションを入れるので、管のアレンジも気になるところですが、この曲は、WavelengthやInto the Musicのような、70年代後半の諸作に近い雰囲気で、ピー・ウィー・エリスというアレンジャーが、ヴァンの好みに合うように気を遣ったのではないかと感じます。わたしの好みにも合っていますがね。

f0147840_23544062.jpgわが家には、1995年のダブリンでのライヴ・ヴァージョン(ブート)もあります。スタジオ盤と非常に近い時期に録音されたもので、「オリジナルから時間がたちすぎて、ぐずぐずに形が崩れたライヴ・ヴァージョン」という腐った臭いのする代物ではなく、なかなか楽しめます。ただ、ドラムは悪くないものの、ギターはスタジオ盤のほうがずっといいと思います。

しかし、近ごろのブートは、そうといわれないとわからないほどの高音質で、こんなことでいいのだろうかと思います。正規盤と区別がつきませんよ。ヴァン・モリソン・ブートレグ・ディスコグラフィーなんていうものまで見つけてしまいました。とんでもなく長いキャリアの持ち主で、しかも、不活発だった時期がほとんどないため、正規盤の数もハンパじゃないのですが、ブートの数ときたら、汗牛充棟の三乗ぐらいはありますぜ。いやはや、呆れました。

ヴァン・モリソンの秋の曲は、一週間以内にもう一度登場させるつもりです。こんどはもうすこし「オーセンティックな」歌詞のものになるでしょう。
by songsf4s | 2007-11-17 23:51