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2007年 07月 25日 ( 1 )
Beyond the Reef by Elvis Presley
タイトル
Beyond the Reef
アーティスト
Elvis Presley
ライター
Jack Pitman
収録アルバム
From Nashville to Memphis: The Essential 60's Masters
リリース年
1993年(録音は64年)
他のヴァージョン
山口淑子(李香蘭), Marty Robbins, The Ventures, The 50 Guitars
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◆ 暗礁の彼方に? ◆◆
エルヴィスの当ブログ初登場がこの曲なのは、ちょっとぐあいが悪いなあ、と感じています。このBeyond the Reefは録音時にはリリースされず、1980年のボックスElvis Aron Presleyではじめて日の目を見たそうです。いや、エルヴィスの場合、録音とリリースの時期が大きくズレているケースは、とくに60年代には多いので、そのことと内容は直接には関係がないのですが、この曲は出来がいいとはいいがたいのです。よって、エルヴィスのことはあとまわしにして、マーティー・ロビンズのときに棚上げした歌詞の検討をします。

山口淑子の「珊瑚礁の彼方に」では、この曲はヴァース/コーラス/ヴァース/コーラスという構成だと書きましたが、ヴァース/ヴァース/ブリッジ/ヴァースという構成と考えたほうがよさそうです。謹んで訂正いたします。もっとも、ブリッジなのかコーラスなのか判断しにくくて、また訂正するかもしれません。

とにかく、ファースト・ヴァースを見ます。クロスビー盤、ロビンズ盤、エルヴィス盤、みなすこしずつ歌詞が異なるのですが、ここではエルヴィス盤を使います。

Beyond the reef
Where the sea is dark and cold
My love has gone from me
And my dreams grow cold

すでにちょっとふれましたが、ここは「珊瑚礁の彼方の暗く冷たい海の土地へと 愛しい人は去り、わたしの夢も冷たくなっていく」といったあたりの意味です。ふつう、And my dreams grow oldと歌われるようで、ロビンズはそう歌っていますし、クロスビーもそうしていたようです。「夢が冷えていく」というのはちょっと面白いのですが、coldが重なるのはどうかな、とも感じます。

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わが家にある盤には訳詞がついているのですが、「暗礁の彼方」という訳で、ズルッとなりました。人間というのは、同じ語からずいぶんいろいろなイメージを浮かべるものだな、とだけ(首をかしげつつ)申しておきます。

つぎはセカンド・ヴァース。

There'll be no tears
There'll be no regretting
Will she remember me?
Will she forget?

夢が意味を失い、やがて涙も悔恨の念もなくなるなるだろう、というつながりなのでしょう。彼女はわたしのことを忘れないだろうか、それとも忘れてしまうだろうか、というのは、あまりにもよくあるパターンですが、そうなってしまうのは、それだけ普遍的な想いなのだということでしょう。

◆ 貿易風の吹く場所 ◆◆
つぎはコーラスだかブリッジだかよくわからない部分です。

I'll send a thousand flowers
Where the trade winds blow
I'll send my lonely heart
For I love her so

どっさり花を贈るのはいいとして、「貿易風」でわたしの思考は足踏みしてしまいました。いや、正確にはWhereが問題なのです。「貿易風の吹くところに」山ほど花を贈る、といっていますが、あれえ? ハワイには貿易風が吹いているはずだが、と思って世界大百科を引くと、「北東貿易風の卓越する熱帯にある」とちゃんと書いてありました。

ということは、わたしは、語り手と去った恋人の位置関係を逆に考えていたのでしょうか? 語り手は、珊瑚礁のある島にいるのではなく、たとえばアメリカ本土にいて、恋人は貿易風の吹く珊瑚礁の島に去っていった?

やはり、それはないですよね。恋人が去ったのは海が暗くて冷たい場所だというのだから、珊瑚礁の島とは思えません。たんに、貿易風という言葉を使いたかっただけで、意味までは考えていなかったと受け取っておきます。

むりやりに、語り手はアメリカ本土にいる、恋人はハワイのはるか向こうのどこか海が冷たい国に去った、ハワイ(ないしは珊瑚礁の島)はたんなる経由地にすぎない、と想定してもいいのですが、それは「あんまり」でしょう!

ちなみに、trade windを貿易風と訳すのは勘違いなのだということを、いま調べていて知りました。このtradeは「貿易」「交易」のことではなく、「《古》 通った跡; 《廃》 通った道」という古い意味で使われているのだそうです。帆船の時代にはtrade windを利用して船が通ったわけですから。

◆ From Nashiville to Hawaii ◆◆
エルヴィス盤は、そんなにひどい出来というわけではないのですが、なにかがうまくいっていない感じがします。

ジョーダネアズがハーモニーをつけているのですが、これが邪魔でエルヴィスの声がよく聞こえないというのが、わたしの不満の最たるものです。なにもこんなに頭から尻尾までずっと、エルヴィスの歌にかぶさらなくてもいいじゃないか、ひとりで歩けない病人をよってたかって支えているみたいだぞ、と思います。コーラスないしはブリッジのところだけジョーダネアズが入ってくるというアレンジなら、ずっとよかったのにと感じます。

スティール・ギターはエルヴィスのナッシュヴィル・セッションのレギュラー、ピート・ドレイクですが、どうなのでしょうか……。いや、下手だというのではなく、なにかピッタリこない感じがします。気のせいか、ハワイの色よりナッシュヴィルの色を感じてしまうのですが……。

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ピート・ドレイクとエルヴィス

微妙なちがいにすぎず、並べて聴かないかぎり意識しなかったと思うのですが、ロビンズ盤は、カントリー・バンドではなく、きちんとハワイアン・バンドの雰囲気になっているのに対して、エルヴィス盤は、カントリー・バンドがテンガロン・ハットを脱ぎ、首にレイをかけただけで、とりあえずハワイアンぽくしてみた、という印象があります。

これはデモないしはテスト録音にすぎず、あとできちんとやり直すつもりだったのではないか、などと想像したくなります。ピート・ドレイクがよくないというということではなく、ロビンズ盤でスティール・ギターをプレイしたジェリー・バードが、心底、ハワイアン(というよりポリネシアン・ミュージックのようですが)が好きだったということも影響しているのかもしれません。

宿題となっている「スティール・ギター」については、つぎのヴェンチャーズおよび50ギターズによるインスト篇で(できれば)考えたいと思います。
by songsf4s | 2007-07-25 21:38 | 夏の歌